第23話 運命を変えろ!

綾乃「(私は、不運だ。カラスにフンは落とされる。雨の日は必ずと言っていいほど車に水をかけられる。テストも正解なのに解答欄を間違えて書いて0点だったこともある。自動販売機でジュースを買おうとして小銭を溝に落とす。棚の上からたらいが頭の上に落ちてくる。本当にいろいろなことがあった。中学の時は親に反発することも多く、悪い仲間とゲームセンターに入り浸っていた。それも自分の運が悪いからと適当な理由をつけていた。本当は分かっていた。運が悪いのは自分が弱いからだ。

高校、社会人も同じような感じで進んでいき、会社の倒産も自分の不運が原因だと思っていた。だけど・・・・・・)」


初めて必要とされた・・・・・・一條一城が彼女を受け入れたのだ。そして・・・・・・


一城「それと綾乃。一ついい作戦がある。」


綾乃「作戦ですか?」


一城「何のために麻婆豆腐ロシアンルーレットをやったと思ってんだ。あの時の成果を見せるんだ。」


綾乃「あの特訓・・・・・・」


一城「あの時、俺は数を指名した。例えば5個あるうち3回で回避しろとな。」


綾乃「その時確か回避できると思って4回目で激辛を引いたんですよね。」


一城「そういうことだ。つまり・・・・・・」


一城は綾乃を指差した。


一城「行けると思ったら引いてみな作戦だ!」


他のメンバーが目をパチクリさせていた。


葵「ネーミングダサすぎですね。」


静流「もうちょっといい名前無いのかい。」


一城「お前ら傷口に塩塗るなよ・・・・・・」


綾乃「では、行ってきます。」


恵「綾乃さん、頑張ってください!」


綾乃「やっぱり私の味方は恵ちゃんだけだよ~!」


綾乃は恵も手を掴んでブンブンと上下に振った。


一城「それと綾乃、もう一つアドバイスだ。」


綾乃は一城の方を見た。


一城「山札はお前に味方しているぞ。」


綾乃「え・・・・・・どういうこと?」


一城のアドバイスを理解できないまま綾乃は椅子に座った。そして対戦相手の日光知事があくびをかみ殺しながらやってきた。


日光知事「ふぁ~やっとオラの出番だっぺか。」


よっこいしょ。と言いながら席に腰を下ろした。


日光知事「君のことは分かっているよ。チーム一の不幸体質さん。」


綾乃「その情報どこで手に入れたのですか?」


日光知事「裏情報を教えるわけにはいかないっぺ。」


綾乃「裏情報!?」


日光知事「なあんてね。結果は知事のパソコンからデータが入るからね。君の勝率が一番低いところから不運かと思って。」


綾乃「(そんなデータがあるとは知らなかった・・・・・・ここで私が負けたらチームは負ける。気を引き締めていかないと。)」


第17ラウンドが始まった。綾乃は1,000円、日光知事は3,000円を賭けた。互いにカードを表にし、綾乃は10。日光知事はK{10}だった。


綾乃の2枚目のカードは5だった。


綾乃「(合計で15・・・・・・ヒットしてもいいけどおそらくオーバーになる。)」


綾乃は悩みに悩んでヒットをし、3枚目でスタンドをした。日光知事は2枚目でスタンドをした。


結果は・・・・・・綾乃(10・5・7)合計22のバースト。日光知事は(K{10}・6)の合計16。最初の試合は日光知事に軍配があがった。


スコア:茨城県:9万6000円 栃木県:10万4000円


綾乃「(しまった・・・・・・でもそのままでも15対16だからどちらにしろ負け・・・・・・やっぱり運がないな・・・・・・)」


第18ラウンド。ともに1,000円チップを一枚賭けた。


葵「何やってるんですか。もし勝っても追い越せないじゃないですか。」


綾乃はJ{10}2枚目のカードはK{10}。合計が20。相手のオープンのカードが8。2枚目でスタンドしたため綾乃の勝ちとなったが、合計3,000円。合計額が9万9000円のため、栃木とは1,000円差があるためこのまま流れれば茨城の負けになる。


綾乃「(消極的な時に勝つとかやっぱり運がないのか・・・・・・)」


その時、綾乃の脳裏にある言葉が浮かんだ。カジノルームに行く直前に一城に言われた言葉だ。


綾乃「(山札はお前に味方しているぞ・・・・・・どういうことよ。)」


第19ラウンド目。綾乃は前のラウンドと同じ1,000円を賭けた。しかし、日光知事は2万円を賭けた。


日光知事「ここであなたのメンタルを破壊させます。」


綾乃「(この人・・・・・・本気だわ。チップの多さから伝わってくる。)」


ダメだ・・・・・・相手の気迫に吞まれちゃダメだと無表情を貫いていたが冷や汗ダラダラだった。カードは綾乃は9。日光知事は10だった。


綾乃の2枚目のカードは7だった。合計は16。正直もう一度勝負してもいい感じだが・・・・・・


綾乃「・・・・・・スタンドします。」


恵「ダメだ・・・・・・綾乃さんは戦意を喪失しています。」


静流「くっ・・・・・・ここまでか。」


一城「・・・・・・俺は最後のターンで決まると思う。」


葵「もう負けは決定ってことですか?」


一城はニヤリと笑った。


一城「綾乃が勝つ方にオールベットするよ。」


恵・葵・静流「え?」


その自信ありな表情に3人は困惑していた。


日光知事はスタンドを宣言した。結果は綾乃は9・7の16。日光知事は10・7の17で日光知事の勝利。合計4万1000円が栃木陣内に入った。


スコア:茨城県:7万5000円 栃木県:12万5000円


綾乃「赤奈さん。一番上のカードを見せてください。」


赤奈「承知しました。」


カードを見せると5のカードが出た。


綾乃「そう・・・・・・。」


綾乃はフフッと微笑みだした。


日光知事「何ですかその不気味な微笑みは。」


綾乃「失礼、これでわかりました。あの麻婆豆腐の特訓の意味が。」


日光知事「麻婆?」


最後の20ラウンド目。日光知事は3万7000円を賭けた。勝てば全額奪い取れる計算だ。綾乃は6万2000円をベットした。考え方は彼女も同じだ。


日光知事「(これで勝った方が全財産奪える。最後だし当然の選択か。)」


綾乃の手札は10。日光知事はQ{10}。日光知事の2枚目はJ{10}。合計20のため綾乃が勝つにはブラックジャックを出すか合計21を出すしかなかった。


日光知事「スタンド。(勝った!オラたちの完全勝利だっぺ!)」


綾乃は2枚目のカードを見た。綾乃はヒットを宣言、この時点でブラックジャックの可能性は消えた。赤奈から3枚目のカードを受け取った。そのカードを受け取った瞬間。顔が青ざめた。


日光知事「3枚目でバーストしたか。残念だっぺ。」


綾乃「す・・・・・・スタンドします。」


控え室では恵、静流、葵はガックリと落ち込んでいた。


静流「負けたか・・・・・・」


葵「よく頑張りましたよ。」


恵「綾乃さん・・・・・・引きずらなければいいのですが。」


一城「いや・・・・・・お前ら、綾乃の手札見てみろ。」


モニターに映っている綾乃の手札を見た。


恵・葵・静流「!!」


赤奈「それではカードをオープンしてください。」


日光知事「オラは20だっぺ。」


日光知事はQとJを出した。


赤奈「三葉様、手札を出してください。」


綾乃は2枚カードをだした。10とK{10}の合計20である。しかし、このままでも引き分けのため負けが決まってしまう。


日光知事「そのもう一枚のカードは出さないんですか?」


日光知事は綾乃の持っているカードを取り上げた。


日光知事「このままだったらドローで持ち金がゼロになることはなかったのに。」


日光知事は取り上げたカードを見た。カードを表にした瞬間、日光知事の顔が青ざめた。


日光知事「クローバーのA!?」


赤奈「三葉様の合計は21。よってこの勝負、茨城県の勝利です。」


結果は茨城県の勝利。20万を総取りする結果になった。


日光知事「なぜだ!20なのに勝負したのか!?」


綾乃「そうですね。普段の私ならスタンドしますね。一條知事のあの言葉がなければね。」


日光知事「まさか・・・・・・麻婆豆腐か?」


綾乃「麻婆豆腐の時、例えば5個あるうち3回で回避する時、回避できると思って4回目で激辛を引いた。それが私の不運の正体だったの。だから逆に絶対に無理なところをできると思ってやったの。」


日光知事はフッと乾いた笑いを漏らした。


日光知事「私たちの負けです。あなたの精神力に完敗です。」


日光知事はメンバーを連れて茨城県庁を後にした。


一城「やったな。」


綾乃「ありがとうございます。一城さんのおかげで勝負することができました。」


一城「俺はお前が勝つって信じてたからな。」


恵「ごめんなさい・・・・・・私負けたって諦めていました。」


綾乃「しょうがないよ。普段の私なら負けてたと思うから。」


静流「でもその逆境を跳ね返したのはすごいよ。今回の試合は綾乃のおかげで勝てたんだから。」


葵「絶対負けると思ってたけど。」


一城「葵!」


葵「今回はあなたのおかげで勝てました。お礼をいいます。」


綾乃「!?」


綾乃は葵の思いがけない一言に驚きを隠せない綾乃だった。


翌日、ギャンブル課のメンバーで祝勝会をすることに。場所は綾乃の特訓場所の中華料理店だ。


恵「ん~この麻婆豆腐おいしい!」


静流「ほんと、綾乃毎回これが食べられるなんてズルいわね。」


綾乃「私はいい思い出なんてないですよ!」


一城「まあいいじゃないか。これで綾乃の不運の正体もわかったわけだし。」


綾乃は麻婆豆腐を一口運んだ。すると顔がだんだん赤くなっていた。


店員「一つ言い忘れてたけど。実は一つ大量山椒入りが入っているのよ。」


静流「まっまさか・・・・・・」


綾乃「あ~~~~~~~!!!」


綾乃は水を取ろうとしたがコップを葵に奪われ水を飲み干された。


綾乃「鬼~~~~!!」


葵「やっぱりまだ不運は治っていませんね。」


その後、全員が笑いに包まれた。その時、一城のスマホが鳴った。


一城「阿波美知事からか。どうしたんだろう?」


一城が電話に出た。内容は昨日の佐賀対鳥取の結果報告だった。実力なら鳥取の方が上だが結果はなんと・・・・・・


一城「佐賀が・・・・・・勝った!?」


第23話(完)

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