第22話 綾乃へのバトンパス
前回のあらすじ。栃木との冬の資金戦第1戦のブラックジャックで頼みの綱であるエースの恵が1勝もできずに終わってしまった。
恵「ごめんなさい・・・・・・一勝も出来ないまま終わってしまいました。」
一城「俺の方こそすまない。お前に重圧を背負わせてしまう形になってしまって。」
静流「でも珍しいわね。恵がここまで負けてしまうなんて。」
葵「毎回強運だとさすがに引きますけどね。」
恵は目からうっすら涙をこぼした。引くと言われて涙腺が緩んでしまったのだ。
静流「こらっ!そんなこと言わないの!」
葵「すいません・・・・・・つい。」
一城「じゃあ恵の仇を討つために勝つしかないか。」
静流「負けたら今年の食費代全額負担してもらうからね。」
一城「は?そんな額用意できるか!?」
一城はカジノルームに向かった。
赤奈「第2戦、一條知事と今宮様の試合になります。」
今宮「君が若くして連勝を続けている一條知事かい。あまりオイラの知事に戦わせないようにここで決着をつけさせていただきます。」
一城「そうするわけにはいかない。今回の資金戦で勝ってCランクに上がるんだ。」
今宮「では、その野望をオイラが打ち砕きます。」
今宮は鋭い目で一城を睨んだ。
赤奈「それでは賭け金を出して下さい。」
一城は10,000円を賭けた。今宮は1,000円を賭けた。今宮は口では仕留めると言っておきながらこのまま勝ち逃げする作戦とした。
一城がカードを取ると8と3の合計11となった。今宮は4だった。
一城「ダブルします。」
一城は3枚目のカードを見て無表情でカードを置いた。今宮は3枚目のカードを引いて考えていた。考えて4枚目のカードを取った。そしてスタンドを宣言した。
赤奈「それでは今宮様、手札を公開してください。」
今宮「合計22のバーストをしてしまった。」
一城「合計21です。」
スコア 茨城:8万8000円,栃木:11万2000円
一城「(俺のターンで少しでもリードを奪っておかないと。)」
次のターン、一城が10,000円を賭け、今宮は5,000円を賭けた。
一城「(相手のカードはQ。ブラックジャックの可能性もあるがエースじゃないからインシュランスは使えない。)」
今宮は2枚目のカードを表向きにした。
一城「♣のA、つまりブラックジャック!?」
5,000円の金額×2.5倍=1万2500円(1,000円未満は切り捨てるため1万2000円と一城の賭け金1万円合わせて2万2000円を取られた。
スコア 茨城:6万6000円,栃木:13万4000円
一城「(負けたか・・・・・・また差が開いてしまった。)」
一城は3ターン目同じく10,000円を賭けた。今宮は1,000円と今宮はまた逃げの戦法を使った。カードは一城は2。今宮は7だった。
一城「(2枚目のカードは9。この回は積極的に行くしかない。)」
一城はダブルを宣言した。今宮も同じくダブルを宣言した。賭け金を互いに倍にした状態でのバトルとなった。
赤奈「今宮様、合計20(7・4・9)。一條知事、合計21(2・9・K{10})。勝者、一條知事。」
スコア 茨城:9万円,栃木:11万円
一城「まだ2万も差がある・・・・・・相手はこのまま逃げの戦法を使ってくるだろう。」
ラストターン、今宮は最後のターン同じく1,000円を賭けた。
一城は5万円を賭けた。
今宮「ほう、逃げましたか。千円チップを一枚出せば次の人にバトンを渡せるのに。」
一城「俺は簡単には逃げないですよ。この試合に勝って次の人に繋げるだけですよ。」
今宮「まあいいですけどね。」
今宮はカードを取るとQと9の合計19となった。
今宮「(19・・・・・・いい数字ですね。これならこのままスタンドしていけば問題はございません。)」
一城のカードは♠のAだった。
今宮「(そうですか・・・・・・エースならブラックジャックの可能性もありますね。)」
赤奈「今宮様、インシュランスなさいますでしょうか?」
今宮「いや、このままで・・・・・・」
一城「ホントにいいのでしょうか?」
今宮「なんでしょうか。ここでインシュランスを取る理由は・・・・・・」
一城「万が一俺がブラックジャックだったら、この試合、俺たちの勝ちですよ。」
今宮「そんな適当を・・・・・・あっ。」
今宮は戦況を理解した。
今宮「(しまった。逃げに徹底し過ぎて逆に追い込まれた。ここでブラックジャックを出されると5万に2.5倍で12万5000円。こっちは11万しかないから全財産を失って負ける。これは・・・・・・)」
今宮はインシュランスを宣言し、保険金の1,000円チップを出した。
一城「スタンドで。」
一城は2枚目のカードをめくらなかった。つまり、一城の手札はブラックジャックではないということに。
今宮「(く、保険金が無駄に・・・・・・)」
今宮はスタンドをした。
赤奈「今宮様、Q{10}と9の合計19。一條知事、Aと9の合計20。勝者、一條知事。」
今回の勝利で10万2000円。合計192,000円を手に入れ。第2ラウンドを終わらせた。
一城「しゃ!見たか!」
恵「すごいですね。最後で10万ほどを取るなんて。」
静流「確かにこれでウチの勝ちは見えてきたわね。」
葵「でも、全額賭けなかったですけど・・・・・・」
一城「そこまで大博打はしないよ・・・・・・ブラックジャックはシビアなゲームなんだから。」
赤奈「では次の方、準備をお願いします。」
葵「次は、私ですね。このままサクッと終わらせましょう。」
一城「気をつけろよ。こちらが圧倒的に有利でも逆転されるのがギャンブルの恐ろしいところだ。」
葵「肝に銘じておきます。」
葵は首をぽきぽき鳴らし、カジノルームに向かった。
日枝「よろしくお願いします。」
葵「こちらこそ、でもこのままだと負けますよ。あと8,000円で何ができますか?」
日枝「噂通り、煽って集中力を削ぐ作戦のようですね。」
葵「(やはりバレますか・・・・・・)」
第9ラウンド、日枝は2000円、葵は1,000円を賭けた。
赤奈からカードを取ると葵のカードは9と8の合計17となった。今宮はKだった。
葵「(ここは4までを信じて引くか?いえ、私はあくまで逃げの戦法。ここで無駄な攻めはしない。)スタンドで。」
日枝「ヒットします。」
日枝は一枚カードを受け取った。
日枝「スタンドで」
葵「早かったですね。もしかしてバーストしました?」
日枝「どうでしょう?」
お互いにカードをオープンした。葵は9と8の合計17。日枝はK{10}と5と6の合計21。
日枝「私の勝ちですね。」
葵「別に、この試合はあなたに勝つわけではありません。ウチの最後はお荷物さんですから。」
綾乃「アイツ・・・・・・好き放題言ってからに・・・・・・」
葵「そのため、このリードを保つために戦います。」
日枝「そうですか。でもここで取れるだけ取っておきます。最後の逆転を狙うために。」
スコア 茨城県:18万7000円 栃木県:1万3000円
こうして、12ターンまで終わった。結果は・・・・・・
葵「3万5000円で抑えました。」
一城「よくやった!」
静流「あとは任せて、私がこのまま逃げ切って綾乃に繋ぐわ。」
静流がカジノルームに向かった。
栃木からはレモン牛乳片手に足利が現れた。
足利「お前、覚えてるの。前の剣城知事の娘なの。」
静流「ええ、お久しぶりです。足利さん。」
足利「その澄ました態度、いじやけるのよ。足利が完膚なきまで叩きのめしてやるの。」
13ラウンド目が始まる。
静流は1,000円、足利は10,000円を賭けた。
カードは、静流は3。足利はJだった。
静流「(2枚目のカードは9。合計は12。)ヒットします。」
3枚目のカードは4だった。
静流「(これは・・・・・・悩みどころね。16は行くか行かないか・・・・・・)」
一城「なあ、恵はヒットするか?」
恵「どうでしょう・・・・・・たぶん私ならヒットしますね。」
葵「私もそうですね。」
綾乃「私なら迷わずヒットしますね。」
一城「こりゃ、バーストするかな?」
綾乃「え?」
静流は考えた挙句、もう一枚ヒットをすることに。
静流「(4枚目は・・・・・・10!?)スタンドします。」
表情はポーカーフェイスを装っているが、内心は冷や汗だった。
足利は2枚目でスタンドした。
赤奈「それではカードをオープンしてください。剣城様、3,9,4,10の合計26のバースト。足利様、J{10},5。合計15。勝者、足利様。
スコア 茨城県:14万4000円 栃木県:5万6000円
静流「(しまった。3枚目で、止めておけばよかった・・・・・・)」
第14ラウンド目、静流は1,000円、足利は10,000円を賭けた。
カードは、静流は10。足利は4だった。
静流の2枚目は、7だった。
足利「ダブルなの。」
足利は3枚目のカードを受け取った。
一城「綾乃、もしお前ならどうする?」
綾乃「これはスタンドですかね?」
一城「なら、逆に俺はヒットするかな?」
綾乃「さっきから私の意見に背いて言ってませんか。」
一城「そうだけど。」
綾乃「ウチに味方は誰もいないの!?」
そんな客席の騒ぎはよそに静流は・・・・・・
静流「スタンドします。」
赤奈「それではカードをオープンしてください。剣城様、10,7,の合計17。足利様、4,A{11},3。合計18。勝者、足利様。」
足利「足利の勝ちなの。」
スコア:茨城県:10万3000円 栃木県:9万7000円
その差は6,000円程になった。
赤奈が山札をシャッフルしようとしたが一番上のカードがひらりと落ちた。そのカードはダイヤの2だった。
一城「やっぱりな。ヒットしていれば勝ってたよ。」
葵「ほんと、どれだけ予想が外れているのですか。」
恵「二人とも綾乃さんをいじめないでくださいよ。」
しかし、残りの2試合はともにバーストして結果は6,000円の差で綾乃にパスをすることになった。
静流「ごめん、差を縮めてしまった・・・・・・で、綾乃はなに体育座りしているの?」
恵「いろいろありまして・・・・・・」
綾乃「ハハハ・・・・・・どうせ私はお荷物ですよ。」
一城「悪かったって、謝るから。それと綾乃。一ついい作戦がある。」
綾乃は顔を上げた。
綾乃「作戦ですか?」
一城「何のために麻婆豆腐ロシアンルーレットをやったと思ってんだ。あの時の成果を見せるんだ。」
綾乃「あの特訓・・・・・・」
綾乃はまだピンと来ていなかった。しかし、この作戦がハマることに・・・・・・次回、栃木戦、決着!!
第22話(完)
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