第21話 冬の資金戦開幕

時が進み翌年の1月。正月休み明けの4日、ギャンブル課の今年初出勤となった。


一城「おはよう・・・・・・久しぶりの出勤だから体がなまっているな・・・・・・」


一城はギャンブル課の部署に向かった。ドアを開けると4人とも紅茶を飲んでリラックスしていた。


一城「明けましておめでとう・・・・・・新年早々のんびりしすぎだろう。」


静流「あけおめ~いや~私たちも久しぶりに出勤したから一旦落ち着こうということで。」


葵「それで恵がハーブティーを入れてくれたんです。リラックス効果があるダージリンって紅茶らしいですよ。」


綾乃「一城知事も飲みますか?」


一城「そうだな、逆にリラックスしすぎて眠りそうだけど。」


一城は静流にティーカップを受け取ると、紅茶を注がれた。一口飲むと一城の目がトロ~んとなった。


静流「それでいいんじゃな~い。」


一城「そうだな~今日の公務はこれで終りょ・・・・・・」


一城はティーカップを机に置いた。


一城「ちが~う!!今日は冬の資金戦の作戦会議立てるんだよ!!」


葵「そんな大声出さないでください。せっかくの紅茶が不味くなってしまうじゃないですか。」


一城「不味いもクソもあるか!そのために部署を訪れたんだから。」


一城は咳払いをした。


一城「改めて今回の資金戦だけど、徳島と鳥取は決定だ。」


静流「両方とも一度負けているからリベンジマッチだね。」


綾乃「あともう一戦は埼玉、群馬、栃木のどれかだろうね。」


一城「もし全チーム戦うとしたらどこと戦うか?」


恵「埼玉と群馬は戦ったことありますけど栃木はないですよね。」


一城「一度対戦してみたいですけどね。この冬の資金戦を全勝すればCランク昇格も夢じゃない。死ぬ気で勝ちに行くぞ!」


恵・葵・綾乃・静流「了解!」


一城は鳥取に挑戦状を提出した。(徳島には直接提出しに行ったので)結果的に鳥取と徳島の挑戦状を受諾され、栃木と埼玉に挑戦状が来た。一城は栃木の方を受諾した。ゲームは、栃木はブラックジャック。鳥取はポーカー。徳島はテキサスホールデムとなった。まずは2月上旬の栃木戦に向けて綾乃の運の悪さを克服するために一城は茨城で有名な中華料理屋に綾乃を呼んだ。


一城「来たか。待っていたぞ。」


綾乃「ご飯に誘ってくれたのはいいのですが、なぜ中華料理店に?」


一城「綾乃、ロシアンルーレットって知ってるか?」


綾乃「知ってますよ。銃を使って1つに弾を入れて死ぬか死なないかの賭けをするやつですよね。」


一城「さすがにそんな物騒なことはしないけど今回綾乃の運試しをするために麻婆豆腐のロシアンルーレットをしてもらう。」


机の上には5つの一口量の麻婆豆腐がある。


一城「今回店員さんにお願いして一つ山椒をたっぷり入れた激辛麻婆豆腐がある。それを避けるのが今回お前のミッションだ。」


綾乃「私、辛いの苦手なんですよね。当てたら大変そう・・・・・・」


一城「俺も食べるか・・・・・・って量多いな。」


店員「茨城県知事には頑張ってほしいのでビッグサービスね!」


と、この店の名物店員さんに大盛麻婆豆腐を出された。


一城「たしか、普通でもこの量じゃなかったでしたよね・・・・・・」


綾乃「私、辛いの苦手なんですけど・・・・・・」


一城「なら、ますます頑張らないとな。」


一城は少し微笑んだ。


綾乃「(おっ鬼・・・・・・)」


綾乃は椅子に座り、麻婆豆腐を吟味していた。


綾乃「(見た感じ全部同じね。匂いとかでばれそうな気もするけどそれじゃあロシアンルーレットの意味ないわよね)」


綾乃は一番左の麻婆豆腐を選び、それをレンゲですくい口に運んだ。


綾乃「{モグモグ}辛くない!美味しい!」


一城「それは普通の麻婆豆腐だな。」


一城は首を傾げた。


一城「(さすがにいきなりあたりを引くってことはないか)」


綾乃は2回目3回目4回目も美味しい麻婆豆腐を当てた。


綾乃「(今のところハズレを引いていない。運が向いてきた?)」


綾乃は二分の一の確率で右の麻婆豆腐を選んだ。口に運ぶと。


綾乃「ん?」


綾乃の様子がおかしい。


綾乃「辛っ!!あ~~~~~~~~~~!」


綾乃は山椒入りの麻婆豆腐を当ててしまった。あまりの辛さに悶絶していた。


一城「綾乃、水だ!!」


綾乃は一城に水を受け取り飲み干した。


綾乃「うぅ・・・・・・まだ口の中が痺れる・・・・・・」


一城「あとちょっとなのに惜しかったな。」


店員「今度はギョーザにするかい?中にタバスコ大量に入っているやつを用意してますよ~」


一城「店員さんもノリノリですね・・・・・・そうだ、お代は・・・・・・」


店員「お代はいいよ。特別にタダ。」


一城「いや、さすがにタダってわけには・・・・・・」


すると店員さんは血相を変えた。


店員「いいんだよ、私の言う通りにしろ!」


一城「でも・・・・・・」


店員「騒ぐんじゃないよ!」


店員さんは値切りを断られると怒られてしまうのである。


それから数日後。栃木との資金戦当日になった。今回は茨城での試合のため県庁入り口で栃木の人たちを待っていた。


静流「どう、少しは運が上振れた?」


綾乃「そんな簡単に運がよくなるわけないじゃないですか・・・・・・毎回辛い麻婆豆腐食べさせられて口の中がヒリヒリしていますよ。」


一城「悪いって、でもこれで攻略法ができたから。」


恵「攻略法ですか?」


一城「そう。ただ綾乃をいじめていたわけじゃないからな。」


綾乃「もしそうだとしたらパワハラで訴えますよ・・・・・・」


葵「私はもっと辛いのを食べさせてやりますけどね。」


一城「本当のイジメじゃないか・・・・・・」


恵「あ、来ましたよ!」


恵の指差す方向に視線を向けると黒のリムジンが茨城県庁に向かってきた。初めに車を降りたのは運転席にいた30代の男性である。


?「皆さま、お待たせいたしました。」


一城「遠いところから来ていただき感謝します。」


猿杭「栃木県知事の秘書を務めている「猿杭(さるくい)」といいます。」


一城「ところで日光(にっこう)知事は?」


猿杭「おそらく眠っているでしょう。日光知事は毎日多忙なので移動中は基本眠っているんです。」


一城「眠っているって・・・・・・そんなに忙しいものなんですか?」


猿杭「一條知事は忙しくはないのですか?」


一城「忙しいですけどそもそも仕事があまりないから。」


猿杭「・・・・・・失礼しました。この話は終わりにしましょう。」


猿杭は後部座席のドアを開けた。眠い目を擦りながら髭の濃い40代男性が出てきた。髭の濃さは埼玉の柊知事よりは薄いが年齢は柊知事より若い。


三路「ふぁ~よく寝たっぺ。」


一城「初めまして、茨城県知事の一條一城です。」


三路「お出迎え感謝です。栃木県知事の「日光 三路(にっこう さんじ)」です。今日はよろしくお願いします。」


日光知事はとても落ち着いている低いクールな声が特徴。しかし一城は前回の群馬の榛名知事みたく、このタイプは試合になると面倒くさくなることを警戒していた。


一城「(平然を装っているけどもう騙されないぞ・・・・・・)」


日光知事の後からギャンブル課のメンバーがぞろぞろと車から降りていく。

少しぽっちゃりした体形が特徴の「今宮(いまみや)」。白のロングヘアが特徴の女子「日枝(ひえ)」。眼鏡をかけている物静かな感じの「塩釜(しおがま)」。小動物系女子で名物のレモン牛乳を飲んでいる「足利(あしかが)」のメンバーだ。


綾乃「足利さん可愛い~!!」


足利「黙れなの。お前みたいなデカイ女見ているだけでいじやける(イライラする)のよ。」


なぜか視線は身長ではなく胸にいっているような気がするが・・・・・・それは置いておいて。栃木のメンバーをカジノルームに案内し、資金戦を始めることに。


赤奈「では僭越ながらディーラーは私が務めます。ゲーム内容は「ブラックジャック」。1枚目はお互いに公開しますが2枚目からは非公開となります。所持金は両チーム10万円ずつ。ルールは1対1で4本勝負。それを5ゲーム続けていき、ゲーム終了後、予算の多いチームの勝ちです。」


次に順番決めのため、カードをくる。順番は恵、一城、葵、静流、綾乃の順番になった。栃木は塩釜、今宮、日枝、足利、日光知事の順番となった。


赤奈「それではブラックジャックを開始致します。第1試合は愛原さま対塩釜さまです。」


一城「恵、この試合は極力1万越えで賭けてくれ。このターンでなるべく有利を取ろう。」


綾乃「どういうことです!?」


一城「最初のターンで勝負をして万が一綾乃がミスしても被害を減らせるように蓄えておこうということだ。あくまでも作戦Aだ。」


恵「分かりました。」


恵はメインテーブルに向かった。


葵「本当に大丈夫ですか?万が一の作戦が失敗する可能性があるかもしれませんよ?」


一城「だから作戦Aだよ。Bは今回の作戦を使う。」


静流「なんか私は恵の強運におんぶにだっこな気がするけど。」


一城「それは・・・・・・」


赤奈「それでは、ゲームスタートです。」


塩釜「よろしくお願いします。」


塩釜は眼鏡を整えた。無表情で何を考えているのか分からない。


恵「はい。」


恵は一城の指示通り10,000円。塩釜は2,000円をチップに出した。


赤奈はそれぞれにカードを公開した。恵は♡9。塩釜は♠Q。


恵は2枚目のカードを受け取るとスタンドをした。


塩釜はダブルを宣言し、3枚目のカードを受け取った。


塩釜「では参ります。」


塩釜は顔色変えずにカードをオープンした。


塩釜の手札は♠Q{10}・♡3・♣8の合計21。


恵「!!」


赤奈「愛原さま、手札を。」


一城「恵の負けだ。」


恵の手札は♡9・♠A(11)の合計20であった。


一城「簡単な話。一番デカイ数字はAの11.9は公開しているから一番でかくて20。まさか僅差で負けるとはな・・・・・・」


静流「しかもダブルをしたから賭け金が倍の4,000円。勝ったからさらに倍で8,000円。さらに10,000円。合計18,000円の負けってわけ。」


スコア 茨城:8万2000円,栃木:11万8000円


一城「まだ一回負けただけだ。」


次のターン恵は同じく10,000円を賭けた。塩釜は少し上げ5,000円を賭けた。


カードは塩釜は♡A。恵は♦2。塩釜がAのためインシュランスが選べる。


恵「(インシュランスを使えば相手がブラックジャックでもプラスはこちらになる。でも違ったらその分5千円が無駄になる。手札は2だからダブルはできない。)」


恵はインシュランスを使用しなかった。塩釜はそのままスタンドを利用した。ブラックジャックではない事が分かった。


恵「2枚目は3。合計で5。」


恵はヒットして、もう一枚カードを取った。♦Qなので10になる。合計で15になった。もう一枚ヒットしてカードを取った。


一城「なあ、綾乃なら今の手札で勝負するか?」


恵の手札は一城たちの席のモニターに映し出されている。これで手札を把握している。


綾乃「さっきのカードは♡の4。合計は19。相手はブラックジャックじゃないから最大20なはず。でも彼女の強運ならもう一枚カードを出してもいいかな。」


一城「なら、ここでスタンドかな?」


静流「え?」


恵「(合計は19。相手はブラックジャックじゃないから最大20なはず。でももう一枚カードを出してもいいかな。)」


恵はもう一度ヒットをした。手札を見た瞬間。スタンドを宣言した。


恵「私は合計28。バーストです・・・・・・」


一城「やっぱり。」


静流「え!?」


赤奈「塩釜さま。手札を公開してください。」


塩坪「合計19です。」


もう一枚は♦8だった。


スコア 茨城:7万2000円,栃木:12万8000円


こうして恵は2連敗となった。


静流「珍しいわね。負けることはあるけど2連敗なんて今までなかったわよね。」


一城「でも、まだ3ターンもある。負けたわけではない。」


3ターン目、恵はまたも10,000円を賭けた。塩釜は1,000円と最少額を賭けた。塩釜は残り3ターンは流すつもりだ。手札は恵は♠K。塩釜は♠4となった。2枚目のカードを受け取る。


静流「ブラックジャックではなかったわね・・・・・・」


恵「スタンドします。」


塩釜「コールで」


塩釜は2枚目、3枚目、4枚目もカードを取りスタンドした。


恵は♠K・♦Jで合計は20点。


赤奈「塩釜さまは。」


塩釜「私は合計21です。」


塩釜は♡4・♠10・♣4・♠3の合計21であった。


葵「これで3連敗。さすがにまずいのではないですか?」


一城「ぐっ・・・・・・」


一城は歯ぎしりしていた。このままではマズいと思っていた。


スコア 茨城:6万2000円,栃木:13万8000円


恵は4回連続賭け金を10,000円にした。塩釜は3回連続で1,000円を賭けた。


恵の手札は♠A。塩釜は♦10だった。


恵の2枚目は♣K。ブラックジャックだ。


塩釜「インシュランスを使用します。」


と塩釜は1000円の保険チップを出した。


恵は思わず「なっ!?」と声が漏れてしまった。


赤奈「愛原さま、手札は?」


恵「・・・・・・ブラックジャックです。」


こうしてインシュランスが適用され、15,000円を栃木に支払うことに。


スコア 茨城:4万7000円,栃木:15万3000円


何と頼みの綱であるエースの恵が1勝もできずに終わってしまった。


第21話(完)

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