第19話 宣戦布告

広島との遠征試合を終えて次週、一城は恵たちに謝った。


一城「ほんとうに申し訳なかった!許せとは言わない!」


恵「いえいえ、私こそイライラしているときに火に油を注ぐことをしてしまいました。申し訳ございません。」


葵「恵は謝らなくてもいいと思いますよ。幸い火傷はなかったとはいえ、なっていたから跡は一生残りますから。」


静流「跡・・・・・・そういえば泊まった時に阿波美知事と一緒に温泉に入ったのよ。」


一城「どうした、藪から棒に?」


静流「阿波美知事、体中に痣ができていたのよ。」


綾乃「痣?もしかして虐待とかされていたのですか?」


静流「いや、聞いても教えてくれなかったのよ。」


一城「こっちから聞きに来てもまた命令で内緒とか言いそうだな。いい加減そろそろ向こうの命令を聞くばかりも向こうの思い通りみたいでムカつくからな。」


葵「あの時知事たちが勝っていればこんな事は無かったのに。」


一城「・・・・・・悪かったって。でもそろそろこの命令も終わりにしよう。赤奈さん。今から徳島に向かうので操縦お願いできますか?」


赤奈「承知しました。」


綾乃「県知事って暇なんですね。」


一城「暇じゃないって!こっちだっていろいろと予定があるんだよ!」


恵「でも、徳島ですか・・・・・・私あまり他県に行ったことがないのでちょっと気になります。」


一城「なら恵も行くか?」


恵「いいんですか?」


一城「静流、そこの問題児2人を頼む。」


静流「りょ~かい、こっちは私に任せて」


葵「問題児扱いは酷過ぎやしませんか?」


綾乃「そうですよ、こんな口の悪い毒舌女と一緒にしないでくださいよ!」


静流は喧嘩になるのを見越して


静流「さっ、2人とも仕事に戻るわよ。早めに資料作り終わらせましょう。」


静流は葵と綾乃の背中を押しながら席に戻らせた。


一城「よし、俺たちも行くか。」


恵「はい!」


赤奈「では、ジェット機の準備を致しますので少々お待ちください。」


その後、ジェット機に乗った一城と恵は数時間後に徳島県の県庁に到着した。


徳島県庁ではギャンブル課の岳士・亜樹・海斗が知事室にいる出水を呼んだ。


海斗「阿波美知事、突然ジェット機がこちらに向かってきています。」


出水が窓を覗くと


出水「あのジェット機って茨城ね。アポなしで来るなんてまたまたおもっしょいこと考えてるのかな?」


岳士「感心している場合ですか!」


亜樹「このワクワクさんに何言っても無駄よ。」


海斗「初めて聞きましたよワクワクさんなんて・・・・・・」


亜樹「あの人いつもワクワクそうにしているじゃない。」


すると後ろから


八坂「ワクワクさん・・・・・・フフフ・・・・・・面白い・・・・・・」


岳士・亜樹・海斗「ぎゃ~~!!」


出水「私は真正面だから気づいたけど3人からは見えてないんだから遅れてきたときはいきなり声を出さないでね。」


八坂「フフフ・・・・・・怒られた・・・・・・」


海斗「いつも思いますけど内妻さん怖いですよ雰囲気が!」


岳士「やめておけ、内妻はなに言っても喜ぶ変態だから。」


出水「そだね、さて、これで全員揃ったところだし迎えに行きますか。」


出水たち徳島県ギャンブル課メンバーは屋上のヘリポートに向かった。ジェット機から一城たち3人が降りてきた。


出水「一條知事。連絡なしでいきなり来るなんて社会人のルールがなっていないのじゃない?」


一城「それは失礼しました。後、先週はありがとうございました。」


出水「別に、私はただきっかけを作っただけに過ぎないわ。」


一城「それともう一つ。俺たち茨城県ギャンブル課は次の冬の資金戦であなたたち徳島に挑戦状を申し込みます。」


一城の手元には資金戦で相手に出す挑戦状の紙があった。実は移動中に筆ペンで紙に文章を書いていたのであった。


一城「1月の資金戦で徳島に勝負を申し込む。ゲームも前回と同じ「テキサスホールデム」だ。俺たちが勝ったら命令制度を解除してもらう。」


出水「命令解除が条件ね。それは受けられないわね。」


一城「何だと。」


出水「だってせっかくの駒を捨てるために勝負するなんて私たちに何もメリットがないじゃない。それに今、交友関係を結んでいるのに争うのはどうかと思うな。」


一城「(これじゃあ押しが足りないか・・・・・・何か阿波美知事を動かせる材料があればいいけど・・・・・・)」


恵「一條知事、私に名案が。」


一城「名案?」


恵「阿波美知事、あなたは命令できる駒を手放すのが嫌ってことですよね。」


出水「そうね。で、どうするの?挑発でもする?」


恵「私、葵さんみたいに挑発うまくないですけど・・・・・・」


恵「この試合に負けたら、一生あなた方の命令に従います。」


一城「!?」


岳士「じゃあ俺たちの指示に一生従うってことか?」


恵「その通りです。分かりやすくて簡単ですよね。」


出水「そうね、ならこちらもこの試合負けたらあなたたちの命令に一生従うことにするわ。」


海斗「え、そんな自分で自分の首を絞める条件を出してどうすんですか!?」


出水「海斗くん、向こうも覚悟があってこの条件を出したのよ。こっちも同等の条件を出さないと釣り合わないでしょう。」


一城「さすが、同じ県知事として尊敬します。」


出水「同情はどうでもいいわ。じゃあ1月の資金戦楽しみにしているわ。」


一城「それだけです。では俺たちはこれで、あと、こちらお土産です。」


赤奈はとある包みを出水に渡した。


出水「へえ、※袖の下{今でいう賄賂のようなもの}を使うなんてあなたもなかなか卑怯なことをするじゃない。」


一城「賄賂じゃないですよ!!」


出水が中身を見ると大きなメロンの形をしたバウムクーヘンがあった。


一城「それ、俺の好物の「メロンバウム」です。ぜひみんなで食べてほしくて持ってきました。


岳士「気を付けてください!毒を盛っている可能性が・・・・・・ってもう食ってるし!!」


出水は何のためらいもなくフォークを使ってメロンバウムを頬張っていた。


出水「むっふ~おいひい~♡」


海斗「この人は・・・・・・疑うことを知らないんですよね。」


恵「一條知事はそんなことはしません!!」


岳士「どうだかね?いきなり来てそういうことをする輩は沢山いるからなっ・・・・・・!」


岳士は出水に強引にバウムクーヘンを食べさせられた。


出水「ねっ、美味しいでしょ?」


岳士「は・・・・・・はひ・・・・・・」


亜樹「でっ、でた~阿波美知事のあざと攻撃~」


出水「うん、気に入ったわ。1月の試合でもこのバウムクーヘン持ってきてちょうだい!もちろん命令よ。」


一城「はい、楽しみにしていてください。」


一城と恵は軽い会釈をするとジェット機に乗り込んだ。ジェット機は茨城に帰っていった。


海斗「あんな約束して大丈夫なんですか!?もし負けたら一生アイツらの奴隷になるんですよ。」


出水「なに、勝てる自信がないのかしら?」


海斗「そんなことは・・・・・・ないですけど。」


出水「私は勝てると思ってこの勝負を受けたのよ。なにせ私たちには信じられるチームワークがあるのだから。」


岳士「もちろん。あいつらに負けないように俺たちも特訓するぜ!」


亜樹「それで阿波美知事、次の資金戦はどこを相手にしますか?」


出水たち徳島県も次の資金戦に向けて作戦を立て始めた。そう、彼女たちも次の資金戦でCランク昇格を目指しているのだ。


茨城県に到着した一城たちは、静流たちのいるギャンブル課に向かった。


一城「ただいま・・・・・・」


静流「一城、ちょうどいいところに!!」


一城「どうした静流。そんなに慌てて。」


葵「慌てるのも無理ないですよ。私たち全員開いた口が塞がらない状態なんですから。」


一城「だからどうしてそうなったんだよ?」


綾乃「こちらを見てください!」


綾乃に渡されたのは一枚の紙。それを受け取ると送り主は広島からだということが分かった。


一城「これって、小切手だよな。えっと、一十百千万十万・・・・・・」


恵「百万、千万、一億。これ、3億円の金額が書かれていますよ!」


一城「3億円の小切手!?」


葵「あと、こちら、広島の紅知事からの手紙です。」


一城は葵から手紙を受け取る。内容は、先週のことのお礼をしたいとのことだった。


一城「それでこの金額は多すぎだろ・・・・・・」


綾乃「でもよかったですね。これを資金に入れたらDランクから一気にCランク上位に昇格できますよ!」


恵「えっと・・・・・・そのことなんですけど。」


一城「今日、阿波美知事たちに挑戦状を出した。」


静流「もしかして、徳島に行った理由は挑戦状を出しに?」


一城「それもあるけど・・・・・・本当の目的は強制命令をやめてほしいって直談判しに行ったんだけどね。」


恵「でも何も交渉材料なしで行くのはよくないと思いますよ。」


一城「確かに、命令をなくすことに集中しすぎてバウムクーヘンしか持って行かないのは向こうにとって何の有利もないからな。」


静流「それで、何を交渉材料にしたの?」


一城「負けた方が、勝ったチームに一生服従。」


葵・綾乃・静流「はああああああ!?」


綾乃「じゃあ負けたら命令無視は絶対にできないってこと!?」


葵「なんてものを交渉材料にしたんですか!?頭沸いているのではないのですか?」


恵が頭を下げた。


恵「ごめんなさい!私がこの作戦を出したんです。こうでもしないと阿波美知事は首を縦に振らないと思いまして・・・・・・」


静流「頭を上げて、恵は悪くないわ。逆に自分たちの首を絞める条件を出すとは意外だったわね。」


恵「阿波美知事曰く、両者勝ったとしてももう一度同じ条件を出されも面倒くさいからとのことです。」


綾乃「確かに、次の資金戦で勝っても負けた方はまたリベンジするってことだろうしね。」


一城「それに味方同士で戦い合うのは上位に上がりにくくなる。それを嫌ってこの条件を出したのかもな。」


一城は壁にかけてあるカレンダーを見た。


一城「次の資金戦まであと5カ月か、次の資金戦に向けてこの秋はしっかり準備していこう。」


恵「はい、次も目指すは全勝ですね!」


一城「まあそれもあるけど・・・・・・せっかくの8月なのになにもしていないし、次の休みにみんなで海にでも行くか。」


綾乃「賛成です!」


葵「まあ、特に予定ないですし。私も行きますよ。」


恵「じゃあ私も!」


静流「もちろんお代は一城が払うのよね。恵ちゃんの件もあるし」


一城「くっ・・・・・・まあそれぐらいの償いなら・・・・・・」


恵「やった~!ありがとうございます。」


一城「(そうなると、しばらく節約だな・・・・・・)」


赤奈「それで、広島からいただいた3億円の使い道は?」


一城「あぁ、そのことなんだけど。赤奈さん。」


一城は赤奈を呼び、耳打ちをした。その内容に赤奈は首を傾げた。


赤奈「承知しました・・・・・・」


第19話(完)

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