第16話 Dランク最強の男

群馬戦が終わり、夏の資金戦がすべて終了した。そして・・・・・・


赤奈「今回の試合の勝利により、茨城は45位に順位が上がりました。」


一城・恵・葵・綾乃・静流「お~!」


恵は涙を流しながら


恵「ついに・・・・・・最下位から抜け出したんですね。」


静流「初めて最下位を抜け出せた。私はそれだけでも信じられないわよ。」


綾乃「それはやっぱり資金戦で全勝できたからですよ。一回でも負けたらまだ最下位だったかもしれないですよ。」


葵「大して役に立たなかった人が何を言っているのですかね?」


綾乃「それは言わないでください!」


葵「まあ、冗談はさておき。」


一城「でも、喜ぶのはまだ早い。これはあくまでスタート地点だ。俺たちの目標は1位になることだ。」


恵「そういえば、いつか聞こうと思っていたのですが1位になれば何かいいことがあるのですか?」


静流「そうね、まだ詳しくは言っていないし、ここですべてを話した方がいいわね。」


静流たちは自分の席に座った。一城と赤奈はお客様が座るソファに腰を掛けた。


静流「デスサイズゲームが始まったのは今から10年前の令和元年。消費税が10%になり、47都道府県に資金を公平に払うことができなくなってしまった。そこで国は各県の都道府県知事にギャンブルで資金の分け前を決めることとなった。」


一城「それがデスサイズゲームの始まりだったよな。テレビで最初見たときびっくりしたよ。」


静流「まあそれは表向きの話。知ってる?デスサイズゲームを命名したとは、今の序列1位「北海道」の須王(すおう)知事が死神の鎌を見つけたらしいの。その鎌には1年に1回。1年の間に有効な願いを叶えることができるのよ。」


一城「1年の間に有効な願いを叶えることができる鎌!?」


静流「そこで、北海道知事は序列1位の県には死神の鎌の願いを叶えることができるように仕向けた。これが死神の鎌を奪い合う「デスサイズゲーム」の名前の由来よ。」


恵「では、その北海道知事はどんな願いを?」


静流「知事は・・・・・・「1年間デスサイズゲームを続ける。」と。10年間その願いは変わっていないわ。」


一城「は?ということは、このおかしなゲームを続けているのは北海道知事の仕業なのか!?」


葵「でも、そこまでしてなぜギャンブルを続けるのでしょうか?」


静流「簡単なことよ。あの知事はギャンブルに取り憑かれているのよ。」


恵「ギャンブル恐すぎる・・・・・・」


綾乃「そんな、じゃあどうすればいいのですか?」


一城「・・・・・・・・・・・・。」


一城はひらめいた。


一城「そうか、デスサイズゲームを廃止すればいいんだ。」


恵「でもそれではなんも解決に・・・・・・」


一城「1年の間デスサイズゲームを続ける。そして死神の鎌の願いを来年に持ち越す。また1位になってデスサイズゲームを続ける。そしてまた死神の鎌の願いを来年に持ち越す。この負のスパイラルを外すには別の願いを言うこと。何でもいい、例えば茨城を県庁所在地するとかでも」


葵「それはいい考えですけどおそらく他県からは敵対視されると思いますよ。」


一城「だからデスサイズゲームの廃止が一番効率いいだろう。やめれば次のデスサイズゲームは無くなる。最悪鎌をぶっ壊せばいいけどね。」


恵「力技で解決はできないと思うけど・・・・・・最悪の場合ですよね・・・・・・」


静流「だから、私たちの目標は序列1位の北海道を倒してデスサイズゲームを廃止する。」


葵「それは、かなり難しいですよね。たしか、うちの合計資産は4千万円ほどで、北海道は資産500億ほどですよ。2位の京都ともかなり差があるからしばらくゲームは続きそうですね。」


全員「・・・・・・・・・・・・。」


先は長そうだなと思った瞬間であった。


一城「だったら北海道に直接交渉すれば!」


葵「ギャンブル恐に話が通じる訳ないじゃないですか・・・・・・」


一城「確かに・・・・・・だったら2位の京都に!」


静流「やめた方がいいと思うよ。京都の鳳(おおとり)知事は傲慢で下の順位の都道府県を見下すことで有名だから。」


一城「だめか・・・・・・やっぱり地道に順位を上げるしか方法ないか。」


静流「そうね。それに、今は徳島や佐賀の人たちとも協力できるし。目標達成に少しずつ前進していると思うよ。」


綾乃「次は冬の資金戦に向けての準備ですか?」


静流「それも必要だけど、「遠征」に行こうと考えているの。」


葵「遠征って?どこか遠いところに行って合宿でもするのですか?」


赤奈「遠征は「デスサイズゲーム」では個人で他県に赴きギャンブルをすることを言います。資金戦以外ではこれで資金を稼いでいるのです。」


一城「でも今までウチに遠征来てないよね。」


静流「あのね・・・・・・数カ月前まで私たち借金まみれだったのよ。」


一城「そうだよな・・・・・・お金のない県に遠征してもしょうがないよな。」


静流「なにも分からないし、阿波美知事に聞いてみましょうか。」


一城「そうだな。後で電話してみるか。」


一城は話し合いが終わった後。出水に連絡をした。しかし、この連絡が後に一城たちに大きな試練が迫ることにこの時はまだ気づかなかった。


出水「もしも~し。出水さんですよ~」


一城「あ、どうも・・・・・・(もうすぐ30代になる人が変なテンションだな・・・・・・)」


出水「何か用かしら?」


一城「実は遠征先をどこにしようか決めているところなのですか。」


出水「だったら鳥取にすればいいじゃない?」


一城「そうですね。Dランク最強のチームでどこまで行けるか試してみたいですし。」


出水「だったら今から聞けばいいじゃない。」


一城「今から?」


出水「私、今。鳥取県庁にいるの。知事に代わるわね。」


一城「え・・・・・・今、どこにいるって!」


電話に出た人はクールなボイスのおじさんであった。


?「君が、茨城県知事の一條知事ですね。」


一城「あなたが・・・・・・鳥取県知事の・・・・・・」


勇作「佐原勇作(さはらゆうさく)だ。君の活躍は阿波美知事などから話を聞いた。資金戦で3連勝と負けなしと快進撃を続けているみたいですね。」


一城「ありがとうございます。」


勇作「ですが・・・・・・今の君たちの実力ではDランク止まりなのは目に見えています。」


一城「なに!?」


勇作「口で言うより実力で見た方が早いですね。明日時間ありますか?」


一城「特に予定はございませんが。」


勇作「では、私が茨城に向かいますのでそこで1ON1の試合をしませんか。」


一城「・・・・・・いいですよ。明日、楽しみにしています。」


佐原知事は阿波美知事に電話を戻した。


出水「もしもし、一條知事。佐原知事と遠征試合するみたいだけど大丈夫?」


一城「ええ、自分の実力がどれほどのものか確かめたいですし。」


出水「ふ~ん。じゃあ一つだけ助言するけど。」


阿波美知事は真面目な口調でこう答えた。


出水「彼の実力は、Bランクレベルの実力を持っているわ。私も佐原知事が勝つと思うわ。」


一城「あなたも・・・・・・向こうが勝つと予想しているのですね。」


一城は電話をブチっと切った。


出水「切れちゃいましたね。」


勇作「いくら期待の新人と言えどまだ若い。このような挑発に簡単に乗ってしまうようではやはりDランク止まりなのは目に見えています。」


勇作は知事室にある椅子に座った。


勇作「明日は彼に痛い目にあってもらいましょう。これも、年上として、そして県のトップとしての自覚を持ってもらわないとね。」


次の日、茨城県では一城一人で県庁前に勇作を待っていた。静流たちには特別休暇を取らせた。1台の黒のリムジンが茨城県庁の前で止まった。中から出てきたのは50代ほどのおじさん。埼玉県知事の楠知事みたいに派手な髭ではないが、少し伸ばした黒ひげが特徴のこの人こそ鳥取県知事の「佐原勇作知事」である。


勇作「一條知事、お出迎え感謝致します。」


佐原知事は一城に一礼をした。


一城は挨拶を返した。が、その表情はまるで鬼の形相を浮かべていた。


勇作「そんな怖い顔しなさんなよ。」


一城「すいません。でも、前に言われたこと忘れたわけではありませんよ。」


一城はカジノルームに案内した。


一城「勝負はポーカー3本先取。それでいいですね。」


勇作「へー、ほんとうにまだまだひよっこですね。」


一城「何が言いたい・・・・・・」


勇作「いいですよ。5本先取で行きましょう。」


こうして一城対佐原知事のポーカーが始まった。


第1ラウンド


一城「(・・・・・・このカードでは相手に勝てない。)3枚チェンジ。」


勇作「2枚チェンジで・・・・・・」


互いに山札からカードを引いた。


勇作「私はキングのワンペアです。」


一城「・・・・・・ジャックのワンペア。」


勇作「1戦目は私の勝ちです。」


一城「くっ・・・・・・」


第2ラウンド


勇作「ノーチェンジで」


一城「は!?(ノーチェンジするほどいい手なのか!)」


一城は4枚チェンジをした。


勇作「ジョーカー入りエースのワンペア。」


一城「ウソだろ!ワンペアで勝負だと。」


一城はストレート狙いのハイカードで終わった。


勇作「(本気を出すまでもないね・・・・・・)」


第3ラウンド目は


勇作「1枚チェンジで」


一城「(すでにツーペアそろっているのか?それにフラッシュか?)」


一城の手札にはすでに4のスリーカードが揃っていた。


一城「(このままフォーカードを目指して)2枚チェンジで!」


交換したカードは4とKがでた。


一城「この勝負俺の勝ちだ!フォーカード!」


勇作「いや、私の勝ちだよ。」


勇作の手札は{♠5・♠6・♠7・♠8・🃏}ストレートフラッシュだった。


勇作「まさかフラッシュを狙っていたのにストレートフラッシュが来るとは思わなかったですね。」


一城「勝てない・・・・・・」


勇作「もう終わりにしますか?」


一城「まだや・・・」


一城がまだやりますと言い切る前に佐原知事から


勇作「ハッキリと申し上げますが今の君の実力では私には勝てない。」


一城「そんなこと、やってみなくちゃ・・・・・・」


勇作「ちなみにこの3ターン、本気でやっていないのですよ。」


一城「本気でやっていない・・・・・・だと・・・・・・」


勇作「今のあなたに本気でやる資格がないのです。」


一城「は!?」


勇作「そもそも、この試合自体無意味だったのです。」


一城「どういうことだ・・・・・・」


勇作「そこは自分で考えることですね。答えにたどり着かないかぎりあなたは一生Dクラス止まりですよ。」


佐原知事はそう言い残して、佐原知事はカジノルームを後にした。去り際に一言を残して


勇作「1人ではどうすることもできないのだから・・・・・・」


一城は左手こぶしを握りしめた。


一城「俺では・・・・・・リーダー失格なのか・・・・・・」


一城は佐原知事の去り際のセリフを聞き逃していた。それ以前に自分に実力がないことに怒りを覚えたのだった。


第16話(完)

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