第13話 束の間の休息

佐賀との試合を終え、ジェット機で帰宅した一城たちはその日と次の日を特別休暇ということにした。


一城「昨日は疲れたな・・・・・・結局帰ってすぐに寝たしな。」


一城はスマホを開いた。


一城「暇だな・・・・・・でも今日は何かしないと。せっかくの休日が無駄になる・・・・・・」


その時、電話がかかってきた。電話の相手は恵だった。


一城「もしもし、恵か?」


恵「あっ、知事出てくれた。今日暇ですか?」


一城「特にないけど」


恵「だったら、一緒に遊びに行きませんか?」


一城「構わないけど。」


恵「じゃあ決まりですね。今日の12時に水戸駅前に集合で」


恵は電話を切った。


一城「ふぅ・・・・・・って、ついOK出したけどこれってデートじゃあ!?」


12時に水戸駅前に着いた一城。


恵「知事、遅れてしまい申し訳ありません!」


恵は白色のワンピース姿で登場した。


一城「大丈夫、俺も今来たところだから。」


恵「では、行きましょう。」


一城「ちょっと待て!」


恵「どうしました、知事?」


一城「今は仕事じゃないから知事って呼ばないでくれ。その、周りの目も気になるし。」


恵「じゃあ・・・・・・一城さんですね?」


一城「うん、そう言ってもらえればうれしい。」


恵「そうだ、一城さん。私欲しかったぬいぐるみがあるんです!行ってもいいですか?」


一城「分かった。」


一城と恵はゲームセンターに向かった。


恵「これです、今かわいいと大注目の「ラブットちゃん」です!」


一城「このウサギのぬいぐるみが今流行りなのか?」


恵「茨城県内で今流行りのマスコットキャラクターです!{実際にはございません。}全部でピンクとブルーとイエローとパープルで4色あるんです。あ!シークレットの白黒と赤黒のラブットちゃんもいる!」


一城「でもクレーンゲームか、俺下手くそだぞ。」


恵「今日は閉店時間まで粘りますよ!」


一城「一日中いるつもりか!?」


恵「一城さん、両替お願いします。」


一城「俺、5千円札しかいないけど・・・・・・」


恵「・・・・・・しょうがない、津田梅子さんには犠牲になってもらいましょう。」


一城「言い方が怖い!!たかが両替だろうが!!」


一城は5千円札を両替して100円玉を50枚に両替した。


恵「一回400円ですよ。」


一城「消費税20%になったからって1回400円は高すぎだよな。」


一城は400円を入れてレバーを右に倒した。


一城「一番取りやすそうなのは穴の近くで倒れているピンクのラブットちゃんだな。」


恵「噂によるとタグに引っ掛けると取れやすいみたいですよ。」


一城「ここかっ!」


一城はレバーを前に少し倒し、タグを引っかけることに成功。ラブットちゃんは穴に落ちて無事にゲットできた。


一城「はい、取れたぞ。」


恵「わ~やった!一城さんありがとうございます。」


一城「(取れてよかった・・・・・・)」


恵「次、私がやってもいいですか?」


一城「いいけど・・・・・・一番取りやすい奴は取れたから後のは難しいぞ。」


恵「あのブルーのラブットちゃんの上に何個か束になっているところがありますよね?」


一城「もしかしてあれを崩せば雪崩になって落ちてくると?」


恵「そうです。」


一城「そんなうまくいくか?」


恵は400円を入れた。レバーを倒し、ブルーのラブットちゃんの真上に移動させた。


恵「よし、位置はばっちり!」


ブルーのラブットちゃんは倒れて穴に落ちたものの、雪崩にはならなかった。


恵「おかしいな・・・・・・」


一城「まあしょうがないよ。」


と言ったその時。雪崩が起こり何個のラブットちゃんが落ちた。


恵「見てください!シークレットの2匹を入れて合計4体ゲットしました!」


一城「(ここでも強運発動か・・・・・・)」


恵「後は埋もれているあのイエローのラブットを狙いましょう!」


数時間後・・・・・・静流と綾乃がゲーセン近くに来ていた。


静流「ごめんね、綾乃。せっかくの休日に。」


綾乃「いいですって、私も静流さんと遊べて嬉しいですから。」


静流「そう、やっぱりいい人だね。いつも葵相手に怒ってばっかりだから」


綾乃「それはあの人が不運だからって理由でからかっているだけですよ。」


静流「そうかな?」


静流がクレーンゲームをしている2人を見つけた。


静流「ねえ、あそこにいるの一城と恵じゃない?」


綾乃「クレーンゲーム?」


一城「くっそ、こいつだけ全然取れない!」


恵「3000円分つぎ込んでも取れないですね。」


一城「葵の言葉を借りるなら、金食い虫だな。」


恵「うふふ、それ綾乃さんの前で言ったら怒られますよ~」


一城と恵の後ろで静流と綾乃がその話を聞いていた。


綾乃「へ~金食い虫ですか。その話詳しく聞かせてもらえないですかね・・・・・・」


恵「きゃ~!」


一城「あ、綾乃!?静流も!」


綾乃「人のいないところで部下の悪口ですか?」


一城「違う、そうじゃなくて!葵ならそういうかと思って・・・・・・」


綾乃「も~せっかく静流さんと遊んでストレス緩和していたのに~!」


静流「ところで、クレーンゲームで何を取って・・・・・・これってラブット!!」


恵「はい、後はイエローがそろえば全種類そろうのですがなかなか取れなくて・・・・・・」


綾乃「なるほど、これが金食い虫の原因ね。私に任せて」


静流「大丈夫?結構難しいわよ。」


綾乃「こう見えてクレーンゲーム得意なので。」


綾乃は自分の財布から400円取り出して入れた。


綾乃「ここをこうしてこうやって・・・・・・」


巧みなレバー捌きでイエローのラブットを取ることに成功した。


一城「すご!たった1回やっただけで取れるなんて。俺たちなんて柴三郎さん3枚分失ったのに!」


綾乃「ど~ですか!私だってこれくらいのことはできますよ!」


綾乃は頬を掻きながら


綾乃「な~んて。昔、ぐれていた時にゲーセンばっかり行っていたので。」


一城「ぐれていた!?意外だな。」


綾乃「この話は忘れましょう!!」


恵「(気になる~)」


静流「これで全種類そろったね。そんなに欲しかったの?」


恵「それもありますが、知っていますか?このラブットちゃん。布団の近くに置いていると運気が上がるみたいです。」


静流「そんなにたくさん置いていると枕元は大変なことになりそうね。」


恵は2体のラブットを静流と綾乃に1体ずつ渡した。


恵「これ、皆さんにプレゼントです!」


静流「え、いいの?」


綾乃「ありがとう。でもこれ取ったの私だよね・・・・・・」


恵「まあまあ細かいことは気にしないでください。」


綾乃「私のはイエローで静流さんのがパープルか。」


恵「私はピンクです!それで一城さんは・・・・・・」


恵は一城に白黒のラブットちゃんを渡した。


静流「それってシークレットの白黒!?」


一城「いいのか、俺が貰っても?」


恵「はい!色合い的に一城さんに会うと思いまして。」


一城「そうか、サンキュ。」


綾乃「後はブルーと赤黒の2種類あるけど。」


恵「それはもちろん、葵さんと赤奈さんに渡します。これで皆さんお揃いですね。」


一城「そうか、初めから全員分取るのが目的だったんだな。」


恵「さすが一城さん。理解が速いですね。」


一城「・・・・・・さて、もうそろそろ夕方になるし少し早いけどご飯にするか。どこか食べに行かないか?今日は俺のおごりだ。」


恵「え、でもお金持ってないって・・・・・・」


一城「大丈夫、カードがあるから。今はもうレストランもカードで支払う時代だしな。」


恵「じゃあ遠慮なく」


恵・綾乃・静流「ゴチになります!」


次の日・・・・・・茨城県庁では。


恵「葵さんおはようございます。」


葵「恵さんお早いですね。」


恵「実は渡したいものがありまして」


恵は葵にブルーのラブットちゃんを渡した。」


葵「これって、ラブットちゃんですよね?私何かしましたでしょうか?」


恵「実は昨日一城さんと一緒に取りに行ったんです。」


葵「・・・・・・一城さんって、知事のことですか?」


恵「あ、今日は仕事だから一條知事って呼ばないと。」


葵「(いつの間にかそんな関係に・・・・・・)」


一方知事室では・・・・・・


赤奈「知事、失礼します。本日の予定ですが・・・・・・」


一城「赤奈さん。これよかったらどうぞ。」


一城は机の上に赤色の包みを置いた。


赤奈「こちらは?」


一城「まあ、開けてみてよ。」


赤奈は包みを開けた。中には赤黒のラブットちゃんが。


赤奈「・・・・・・・・・・・・。」


一城「あれ・・・・・・お気に召さなかった?」


赤奈「・・・・・・ありがとうございます。実はこれだけ持っていなかったので。」


一城「え、もしかして赤奈さんもラブットファン?」


赤奈は頬を少し赤らめて


赤奈「以外・・・・・・ですか・・・・・・?」


一城「ぜ、全然そんなこと思っていないよ!(今の表情かわいかった・・・・・・)」


一方そのころ、埼玉県庁では・・・・・・徳島と埼玉で資金戦「ブラックジャック」が行われていた。


洋一「なぜだ・・・・・・なぜ勝てない・・・・・・たかが1ランク下のチームに負けるとは・・・・・・」


出水「あなた、何もわかっていないのですね?そういう考えを持っているから勝てる勝負も勝てないのですよ。」


洋一「30の若造が・・・・・・」


出水「わ・た・し・は、まだ29ですよ!それに、22の若造に負けたのは誰でしょうかね?イカサマもばれて、挙句の果てにはオールベットして負けてゲームチップを失った。」


洋一「その話はやめろ!」


出水「おじさま、せっかくのサンタ顔が台無しですよ。」


洋一「サンタ顔とはなんだ!!」


出水「それに、この勝負私の勝ちなので。」


洋一「何?」


出水「だって私、ブラックジャックですもの。」


出水が持っているカードは❤10・♠Aのブラックジャックだった。


洋一「・・・・・・・・・・・・。」


柊「この勝負、徳島の勝利です。」


海斗「阿波美知事・・・・・・相変わらず引きが強いですね。」


?「ところで、阿波美知事と友好関係を築いている茨城ってどんなチームなんだ?」


一人の大男が海斗に茨城のことを聞いた。


海斗「田井乃岳士(たいのがくし)さん。気になりますか?」


岳士「鳴門・・・・・・なぜ俺のことをフルネームで言う・・・・・・今まで言ったことないだろう。」


海斗「視聴者さんは田井乃さんのことを知らないですからね。それに今回唯一負け越しているからって僕に当たらないでくださいよ。」


岳士「当たってないだろ!ってか視聴者って誰に言っているんだ?」


?「エースが負けてちゃ、話になりませんわよ。」


岳士「月見亜樹(つきみあき)!」


右肩にかかった長い金髪の女性に岳士が叫んだ。


亜樹「いや、私のこともフルネームで呼ばないでくださいよ・・・・・・」


出水「みんな、無事に勝つことができたのでさっさとおさらばしましょう。」


出水たち徳島県も無事勝利を勝ち取ることができた。


出水「これで私たちの資金戦は無事終わりね。そうだ・・・・・・いいこと考えたわ♪」


出水はフッフッフッと笑い出した。その反応を見ていた女性が・・・・・・


?「阿波美知事が悪い顔をしている・・・・・・」


海斗「どこにいたのですか・・・・・・内妻 八坂(うちづま やさか)さん。」


八坂「トイレ行ってた・・・・・・」


徳島のギャンブル課の最後の1人、眼鏡黒髪おかっぱの女性。八坂が手をハンカチで拭きながらギャンブルルームに入ってきた。


出水「(ほんとうにウチのメンバーは自由な子が多いのよね~・・・・・・)」


第13話(完)

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