第9話 佐賀の葛藤

埼玉との初戦を白星で飾った一城たち茨城は借金+利子を含めた120万を徳島県庁に振り込んだ。現在電話で出水と一城で話している。


一城「どうですか、120万ちゃんと届いていますか?」


出水「届いているよ~ということは無事に勝つことができたんだね。よかったよかった。」


一城「最後の楠知事の青ざめた顔。今思い出しただけでも・・・・・・ぷぷぷっ。」


出水「あなたも性格悪いわね~おじいちゃんにはもっと優しくしないと。」


一城「そんなことより阿波美知事たち、栃木戦はどうなったのですか?」


出水「私たちの完勝よ。今回の勝利で徳島は45位に上がったわ。」


一城「ウチはまだ最下位のままですね。いつか最下位を打破しないと。」


出水「次は46位の佐賀県よ。頑張ってね。」


一城「本来なら徳島の仕事でしたよね。」


出水「さ~て何のことかしら~」


一城「・・・・・・まあいいですよ。」


出水「そうだ、一つだけアドバイス。」


一城「はい。」


出水「佐賀も今茨城と同じく連敗地獄にはまっているはず。あなたたちの手で救ってあげてほしいの。」


一城「救うって、資産戦でわざと負けろってことですか?」


出水「逆よ、次の試合絶対に勝ちなさい。」


一城「つまり、佐賀にも同盟を結ぶようにすると?」

出水「あら、頭の回転が速いわね。佐賀の県知事も20代後半の男性だから話が合うかもしれないしね。」


一城「確かに、話が合えばいいですよね。」


出水は電話中に誰かと話していた。


出水「・・・・・・分かったよ。 あ、ごめんね~今仕事が入ったみたいだから。じゃあ私はこれで」


電話が切れた。


一城「よし、次の試合に向けてミーティングだ!」


一城はギャンブル課のメンバーを集め、次の試合に向けてのミーティングを行った。


一城「じゃあ、来週の佐賀戦に向けて作戦を練ろう。ゲームは「ブラックジャック」に決まった。」


綾乃「ブラックジャックですか。私はパスですね・・・・・・」


一城「ちなみに今回は全員参加のバトルだ。」


恵「全員ですか!?」


一城「デスサイズゲームのルールは1対1のマッチゲームで4ターンずつ戦い。5人だから合計20ターンで行い、より多い資産を得たチームの勝ちというルールだ。」


葵「本来のブラックジャックとは違いディーラーとの勝負ではなく1対1の試合。個人戦として考えてもいいかも」


静流「でも、このゲーム。最初の手が見えてしまうの。」


恵「そうか、ディーラーがいないから最初のカードを明かさないといけないのか」


来週に備えてブラックジャックの特訓を行った。


静流「まあ特訓って言ってもブラックジャックなんてただの運ゲーだしね。」


一城「し~、マジレス禁止。」


そのころ、九州地方の序列45位から46位とランクが下がってしまった。佐賀県庁では・・・・・・


?「はあ・・・・・・終わりだ・・・・・・」


絶望しているこの男は、佐賀県知事の「唐津 大輔(からつ だいすけ)」。年齢は28歳。2年前から前知事の娘と結婚を機に佐賀県知事になったのである。


大輔「もう終わりだ・・・・・・前回の群馬戦もボロボロに負けてしまったし・・・・・・僕、県知事向いてないかも・・・・・・」


?「落ち着いて、まだ経って2年じゃない。これからよ、これから!」


この女性はギャンブル課で前知事の娘で大輔の奥さんの「唐津 白姫(からつ しらひめ)」年齢は27歳。


大輔「まだ2年じゃなくてもう2年だよ!どげんすればいいとよ!」


白姫「そうだ、来週資金戦あるよね。相手は最下位の茨城県だよ。この試合勝って前回のマイナスを取り戻そうよ。」


大輔「姫、知らないのか?茨城ってあの埼玉相手に勝ったんだぞ。その破竹の勢いで向かってきたら勝てるわけなかろうもん!」


白姫「もう、さっきからネガティブなことばっかり!もっとポジティブにいかないと!このままだと最下位に落ちるわよ!」


大輔「そんなこと言われても現実は厳しいんだから。言っただけ無駄やけん。」


白姫「・・・・・・分かった。もう何も言わないよ。」


白姫は知事室を出て行った。


大輔「・・・・・・なんで、御父さんは僕を知事に選んでくれたのだろうか・・・・・・?」


大輔は知事室で一人悩んでいた。


そして資産戦当日を迎えた。茨城メンバーたちはジェット機を使い佐賀県に向かった。(ちなみにこのジェット機は出水が初勝利ということで昔使っていたジェット機をカスタムしてプレゼントしてくれた。)


一城「これで九州だろうと楽々移動できるな。」


葵「それにしても飛行機の操縦免許を持っているって黒瀬さん何者なのですか?」


赤奈「私はただの秘書です。」


恵「ただの秘書が操縦免許なんて持っています?」


静流「まあ黒瀬さんハイスペックだし。」


一城「本当、赤奈さんが知事になれば変われたのじゃないかな・・・・・・」


赤奈「それはあり得ません。私はただの秘書ですから・・・・・・」


赤奈は操縦席で静かに呟いた。


一城「ゴメンね、暗くなること言っちゃって。これから頑張らないといけないしね。」


綾乃は顔を真っ青にしていた。


恵「三葉さん?顔真っ青ですけど・・・・・・」


静流「もしかして高いところ苦手?」


綾乃は首を縦に振った。


葵「やれやれ、運も悪い上に高いところも苦手なんてそんな苦手ばかりではこの先生きていけませんよ。」


綾乃「あなただって、ブラックコーヒー飲めないくせに・・・・・・」


葵「それは言うな!」


一城「(やれやれ、前回のポーカーで少しは仲良くなったのかなと思ったのに・・・・・・)」


数時間後。佐賀県庁に到着した。


一城「あ~~やっと着いたか。・・・・・・おい、三葉着いたぞ。」


綾乃「あ・・・・・・足がつく・・・・・・ここが陸上か・・・・・・フフフ・・・・・・アハハ・・・・・・」


一城「ダメだ、コイツ精神的に参っている・・・・・・」


県庁で相手を待っていると。白姫が県庁から出てきた。


白姫「一條知事。申し訳ございません、唐津知事がまだ来ていなくて。」


一城「初めまして・・・・・・一條一城です」


白姫「ギャンブル課の唐津白姫です。」


恵「唐津!?名前が一緒なんですね?」


白姫「知事の唐津大輔は私の主人です。」


静流「たしかに、佐賀県は2年前に前知事から推薦を受けて知事になったって聞いたけど。」


白姫「前知事は私の父です。今は定年を迎えて家でのんびり過ごしていますけどね」


静流「そう、のんきなものね。」


一城「静流、言葉に棘があるぞ。」


静流「あら、申し訳ありません。」


白姫「それではカジノルームにご案内いたします。」


白姫に連れられ一城たちは佐賀県庁内にあるカジノルームに向かった。


一城「いったいどんな人なんだろう・・・・・・佐賀県の知事は・・・・・・」


白姫「いい人なのですが、ここのところ負け続けていて自信喪失しているのです。」


一城「自信喪失・・・・・・大変ですね。」


白姫「そういえば一條さんはいったい何歳なのですか?」


一城「22です。」


白姫「え~!若いですね。最年少県知事ですね。」


カジノルームに入ろうとしたとき、後ろから来た男性が声を荒げた。


?「誰だ!ここは関係者以外立ち入り禁止だぞ!」


白姫「祥太(しょうた)くん。今日の対戦相手の茨城県知事の一條知事ですよ。」


祥太「ああ、最下位県か。」


女子4人は祥太の方を睨んでいた。


祥太「ひっ!(女子の視線が怖い・・・・・・)」


カジノルームに入った。中には2人の女性がいた。


真帆{まほ}「こんにちは、茨城の皆さん。」


紗季{さき}「よろしくですわ。」


恵「このチームも女子が多いチームなんだね。」


静流「ウチが異常なだけよ。」


白姫「それでは知事を呼んでまいります。」


祥太「姫、俺も一緒に。」


白姫「こらっ、姫って言うなって言ったじゃない。」


祥太「申し訳ございません。」


白姫と祥太は知事を呼びにカジノルームを後にした。それから10分経ったが2人が帰って来ることがなかった。


真帆「姫さんたち遅いですね。どこで油を売っているのでしょうか?」


紗季「電話にも出ないですわ・・・・・・」


紗季の電話から着信が入った。着信先は白姫だった。


紗季「姫さん今どこに・・・・・・え、知事がいない!?集合時間から30分遅れたら私たちの不戦敗になりますわ!」


紗季はスマホを切った。


紗季「申し訳ございませんわ。知事が現在行方を晦ましていまして・・・・・・入口の監視カメラには映っていないので県庁を出てはいないとのことですが。」


一城「分かりました。俺たちも一緒に探します。」


真帆「でも、そのまま知事が見つからなかったらあなた方は勝負もせずに勝つことができるのですよ。」


一城「別に、俺たちは勝負するためにここにきているんだ。不戦勝は敗北よりも屈辱的だからね。」


静流「(・・・・・・とか言って本当はそんなこと一ミリも思っていないよね。お人よしなんだから・・・・・・)」


一城「真帆さん、紗季さん。県庁内の道案内お願いできますか?」


真帆・紗季「承知しました。」


一城と恵は真帆と、葵と静流は紗季と共に大輔を探しに行くことに。綾乃はまだ体調がよくないので赤奈とともにカジノルームで待機をすることに。

知事部屋、トイレ、ごみ箱{漫画あるあるです・・・・・・}、会議室など色々見たが大輔の姿はいなかった。


真帆「・・・・・・一通り見たのですが。」


恵「知事がよくいる場所って知らないのですか?」


真帆「それが分かれば苦労しないですよ・・・・・・」


真帆のスマホから着信が。


真帆「姫さん、今どこに?・・・・・・知事が見つかった!?承知しました。すぐに向かいます!」


一城「どこで見つかりましたって?」


真帆「屋上の階段前で見つけたらしいです。紗季たちはすでに向かっているらしいです。」


一城「一度見たときは誰もいなかったですけどね。」


恵「すれ違ったみたいですね。」


一城たちは屋上に向かった。着いたときは佐賀メンバーと葵と静流がいた。


白姫「知事、早く向かいましょう。このままだと私たちが負けてしまいます。」


屋上の隅で体育座りしていた大輔に白姫が話していた。


大輔「いいよ。君たちだけで試合をしてよ。」


白姫「今回は全員参加なのです!」


大輔「なら、伊万里{いまり}さんに頼めばいいじゃないか。」


白姫「伊万里さんは今回ディーラーです!それに秘書は参加できないルールですし。」


一城「あの、どうしてそこまで対戦を拒むのですか?」


大輔「あなたは?」


一城「申し遅れました。私は茨城県知事の一條一城と申します。」


大輔「ああ、君が噂の最年少知事か・・・・・・埼玉との資金戦に勝ったみたいだね。拒む理由は簡単なことさ、こんな見える試合をいちいちやっても無駄だということさ。」


一城「そんな、勝負はやってみなくては分からないじゃないですか!何勝手に勝つ気でいるのですか!」


大輔「逆さ、今の僕の実力では君たちには勝てない。我々佐賀県は今9連敗中なんだ。」


白姫「それは、知事だけのせいでは・・・・・・」


大輔「姫は黙っていろ!」


白姫「はい・・・・・・」


大輔「やっぱり、僕には知事に向いていないんだ・・・・・・負け続けて県民に迷惑かけて今や46位と順位を落としてしまった・・・・・・もう、嫌なんだ・・・・・・」


一城「・・・・・・・・・・・・。」


大輔「一條知事。この試合は君たちの勝ちでいいよ。何も勝負せずに1千万貰えるんだからこれ程楽なことはないよ。」


一城「・・・・・・がっかりだよ。」


大輔「え?」


一城「がっかりだよ。阿波美知事からスカウトするようにと言われていたからどんなすごい人かと思ったのに。口を開けばネガティブなことばかり。よくそんなことで佐賀県の知事になれたものですね。」


大輔はその場で立ち上がった。


大輔「僕だって好きで知事になったわけではない!御父さんからの推薦で入ったんだ!」


一城「つまり、唐津前知事はあなたに何かしらの素質があって推薦されたのではないのですか?」


大輔「そんなことはない!本当は誰でもよかったんだ。早く定年退職したいがために僕に知事の仕事を押し付けたん・・・・・・」


大輔はビンタを食らわされた。ビンタしたのは、白姫だった。


大輔「姫・・・・・・」


白姫「パパは、あなたに知事の仕事を押し付けたわけないばい!大輔さんなら佐賀の未来を変えてくれると信じて知事に推薦したけんね!」


大輔「そんなこと言われても・・・・・・」


白姫「最初、知事に選ばれたときアナタ言ったよね。佐賀の未来を変えるって!日本一の資産県にするって。それなのに2年経ってあなたは愚痴ばかりで何も行動しない。昔のやる気はどこ行ったのよ!」


大輔「今更遅いだろ!もう、後戻りなんて・・・・・・」


静流「いいえ、まだ間に合いますよ。」


大輔「あなたに何が分かるのですか!」


静流「実は、私の父は一條知事の前の知事で、数カ月前に自殺しました。」


大輔「じ、自殺・・・・・・」


静流「父も同じことを言っていました。未来を変えると言っておきながら何もできないと・・・・・・なので、よくわかりますよ。唐津知事の思っていることが。」


一城「唐津知事、まだやり直しはききますよ。私たちと一緒にゼロからリスタートしましょう。」


一城は手を差し伸べた。


大輔「僕は・・・・・・何を忘れていたんだ。いっつも自分のことを攻めて周りのことを全然考えてなかった。」


大輔は両頬を強くたたいた。


大輔「そうだ、僕は今、佐賀県の知事なんだ。知事としての使命は、ギャンブルで勝って、県民にいい暮らしをさせること!」


大輔は気持ちを取り返した。一城の手を握った。


大輔「一條知事ありがとう!僕、おかげて目が覚めたよ。今からギャンブルを始めよう。今回の資金戦、絶対に負けないからな!」


一城「ええ、お互い悔いの残らない試合をしましょう!」


次回、茨城VS佐賀。資金戦「ブラックジャック」開幕!


第9話(完)

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