第5話 友好関係
静流がギャンブル課に入った次の日。県庁に入ろうとした一城に業務用携帯から電話がかかってきた。
一城「だれだ、この番号? はい、一條です。」
?「あなたが一條一城さんですか?」
一城「はい、そうですがあなたは?」
?「茨城県庁の屋上にあるヘリポートにて待っています。」
一城「ちょっとお名前を・・・・・・切られた。」
静流「おはよう。 一城、どうかした?」
一城「静流か、いやなんか女性から連絡が来て、でも名前も聞かれずに切られたから誰かわからなくて。」
静流「誰よ、そんな無礼者。」
一城「でも、まず他のメンバーに合っていないよな。自己紹介してから屋上に向かおう。」
静流「屋上!?」
一城と静流はギャンブル課の部屋に入っていった。そこには恵と葵と綾乃のギャンブル課のメンバーが集まっていた。
葵「一條知事、おはようございます。」
恵「知事、おはようございま~す!」
綾乃「おはようございます。ところで隣の女性はいったい?」
静流は軽く会釈をした。
静流「今日からあなたたちと同じギャンブル課に配属となった剣城静流よ。18からこの課に入っているからあなた方よりは大先輩よ。」
恵「大人の女性だ~かっこいい!!」
{同時に言う}
葵「あなたが噂の前の知事の娘さんですね。親の七光りだからって調子に乗らないでほしいですね。」
{同時に言う}
綾乃「ねえ、今までどんな人と勝負したの?」
静流「落ち着いて、私聖徳太子じゃないから全員分聞き取れない・・・・・・」
一城「はい、自己紹介はここまで!みんな、屋上へ行くぞ。」
恵「屋上!?なんでそんなところに?」
一城「知らない人にヘリポートに待っていろと言われてな。」
葵「知事、子供の時言われませんでしたか?知らない人の言うことを聞かないようにって。」
一城「馬鹿にするな!それに俺、一応菱川より1つ年上だけど!!」
一城たちギャンブル課メンバーは言われた通り屋上のヘリポートに到着した。
一城「でも、本当に来るのかな?もしかして何もありませんでした~的な。」
綾乃「そうよ、そうに決まっていますよ!」
帰ろうとし始めたメンバーだが、静流が大声を出した。
静流「あれ!ジェット機じゃない!?」
全員が静流の指す指の方向へ目を向けると。青色のジェット機がヘリポートに着地しようとしていた。
静流「このジェット機・・・・・・まさか!?」
一城「知っているのか?」
静流「おそらく、徳島県の知事だと思う。青色のジェット機を持っている県なんてなかなかいないじゃない。」
ジェット機が着陸を完了して、中から30代程の女性が出てきた。
?「ご機嫌よう、お会いできて嬉しいわ。」
一城「どうも、あなたが徳島県の県知事ですね。」
出水「ええ、初めまして徳島知事の「阿波美 出水(あわび いずみ)」です。」
一城「ちなみに年は?」
出水「坊や、レディーに年を聞くのは野暮ではなくって。」
一城「すいません。」
出水「今年で30になるわ。今は29歳。」
葵「(結局言ったじゃない・・・・・・)」
一城「若いですね。」
出水「お世辞でもうれしいわ。ところで、あなたにお願いがあってここに来ました。」
一城「ここではアレなので場所を変えましょう。」
一同は出水と共にギャンブル課の部屋に向かった。
一城「それで、話って何ですか?」
出水「話は簡単よ、いま私たち徳島県は序列第46位、あなたたち茨城県は序列最下位というワースト同士なの。」
一城「何ですか?もしかして俺たちを倒して権利をよこせみたいなことでも言うつもりですか?」
出水「権利をよこせなんてそんなことを頼みに来たわけではないわよ。小松、例のものを。」
呼ばれたのは徳島県庁の男性秘書小松。彼は持っていたアタッシュケースを出水に渡した。
出水「これで、私と同盟を結んでくれないかしら。」
一城「アタッシュケースが何だって言うのですか?」
出水「たしか、茨城は47都道府県の中で唯一借金をしていますね?」
一城「え、そうだっけ?」
赤奈「・・・・・・はい、茨城は現在1億円ほど借金をしています。毎月払っているのですがなかなか完済できていないのです。」
一城「い、一億!?」
赤奈「「デスサイズゲーム」のルールとしては借金のある県は参加できないルールとなっています。」
一城「つまり、今のままだと対戦どころか勝負もさせてもらいえないと・・・・・・」
出水「そこで、このアタッシュケースの中に1億円が入っています。これで借金返済して私たちと共に戦ってもらいたいの。」
出水がアタッシュケースの中身を空けると中には渋沢栄一の肖像画が描かれている一万円札が一億円分入っていた。
恵「すごい!こんなにたくさんの一万円札見たことない!」
葵「たしかに、これだけの金額があれば、借金を返せる。嫌でも首を縦に振りたくなりますね。」
綾乃「早速交渉に応じましょう!」
しかし、一城と静流は難しい表情をしている。
一城「いや・・・・・・」
静流「これは危険よ・・・・・・」
恵「危険?」
一城「あぁ、仮に俺が交渉に応じたら死ぬまで徳島の奴らに命令させられるんだぞ。ここで借りを作ってもウチにメリットはない!」
綾乃「そ、そうですね・・・・・・」
出水「あらあら、そんなに構えなくてもいいのですよ。決してそんな真似はしないので。」
一城「いえ、借金は自分たちの手で必ず返します。なので、申し訳ございません。」
出水は「ハア・・・・・・」とため息をつくと。低めのトーンで
出水「無理ですよ、今のあなたたちには勝つ可能性はありません。」
静流「はあ?断られたからって勝手なこと言わないでよ!」
出水「では断言します。このままの状態ですと茨城は崩壊します。」
静流「ぐっ・・・・・・」
出水「だって、県の代表は借金を背負って東京からの予算も県民に払う事で精一杯。その状態からどうやって返済するのですか?」
静流「それは・・・・・・県民からお金を少しずづ・・・・・・」
出水「ではその家族の生活はどうなるのですか?1年間減給ともなると生活も苦しくなりますし最悪デモを起こすこともあります。そうなると責任はすべて一條知事にかかるのですよ! 剣城さん。あなたは前の知事の娘だと聞きましたが、今まで何を学んだのですか?」
一城「もういいでしょう!」
一城はしびれを切らしたのか、大声を出した。
一城「それに、話はまだ終わっていませんよ。俺は自分の手で返すといいましたよね。」
出水「ええ、間違いなくそう言ったわね。」
一城「なら、今ここで勝負しませんか?勝った方がこの1億円を好きにしていいってことで。」
出水「そうくるか・・・・・・おもっしょい{徳島弁で面白い、楽しいこと}こと言いよるな。」
小松「知事、どうなるおつもりですか?」
出水「いいわ、やりましょう。今回は「テキサスホールデム」で3回勝負。知事と代表互いに1人ずつ出して合計持ち金の多い方の勝ちでどう?」
一城「いいでしょう。その勝負乗ります。こっちは俺と静流で行きます。」
静流「絶対に負けない!」
出水「じゃあウチのエースを・・・・・・というところだけどウチも新人を出そうかね。鳴門くん、一緒に戦ってくれないかい?」
海斗「はい、阿波美知事。」
出水「彼は、「鳴門 海斗(なると かいと)」くん。あなたたちと同じ22歳よ。
静流「同い年にこんな人が・・・・・・」
恵「ところで「テキサスホールデム」ってどういうゲームです?」
葵「ルールはポーカーと同じだけど、手札2枚とオープンになっている5枚。手札の1枚以上を必ず入れての計5枚で役職を作るゲームのことよ。ポーカーよりもハイカードになる可能性は少ないけど。オープン5枚は全員共通で使えるカードだから、手札のカードが勝敗のカギを握るのには変わりないわね。」
一城「あの・・・・・・チップってこれだけですか?」
出水「あら、分からないのですか?チップは千円、五千円、一万円の3種類が主に使われるのですよ。今回は全員10万円分用意しているわ。」
静流「トップクラスの戦いとなると百万、千万。一億の領域になるよ。」
一城「一億・・・・・・」
一城がフラフラになった。
静流「もう、しっかりしてよ!」
出水「でも下のクラスになると千円をチマチマ賭けるくらいになるからね。」
出水がカードを配り終えた。オープンしているカードは{♦2・♠8・♠4・}
出水「ゲームは千チップ1枚ね。」
一城「1ゲーム千円は高いな・・・・・・」
出水「私はベット、千円チップ1枚。」
一城「(今の手札は♦5と♦Jフラッシュは難しいしいきなり勝負することもないだろう。)フォールド{勝負を降りる}で。」
静流「コール{同じ額で勝負すること}。」
海斗「コールで。」
フィールドの4枚目のカードをオープンした。カードは♥Kだった。
出水「チェック{いったんパスして様子を伺うこと}」
静流「ベット。千円チップ一枚。」
海斗「私はフォールドで。」
出水「ふ~ん。じゃあレイズ{ベットした数より上乗せして勝負すること}。万チップ1枚。」
静流「(何!?ここで万勝負?嘘をついているのか・・・・・・それともいい役職をそろえたのか?でも、ストレートもフラッシュの可能性も低い。だとしたら2ペアが揃ったか・・・・・・)」
静流はそのレイズに乗った。
5枚目のカードをオープンした。カードは♥5だった。
出水「ベット、一万チップ1枚。」
静流「コールします。」
赤奈「それでは手札を出してください。」
出水「私はツーペアです。{手札:♣K・♠2・(場)♠8・❤K・♦2}」
静流「ワンペア・・・・・・負けた。{手札:♦K・(場)❤K・♠8・❤5・♠4}
赤奈「阿波美知事、合計4万8000円勝ちです。」
一城「一回の勝負で約5万動くのか・・・・・・」
出水「これくらいデスサイズゲームでは日常茶飯事です。まさか1回負けただけで怖気づきましたか?」
一城は震えていた。しかし、この震えは恐怖から来ているわけでなく
一城「いいですね。こういう勝負を望んでいたんですよ。次の試合と行きましょう。」
出水「ふふっ、そうこなくっちゃ。」
第2ラウンドが始まった。
一城「(・・・・・・この手札なら、勝てる!)」
フィールドに置かれたカードは、♠7・♣A・♣2だった。
一城「俺からですね。ベット、5千円チップ1枚。」
出水「もしかして強い手でも来ました?」
一城「さあ、どうでしょう?」
海斗「僕はコールします。」
静流「同じくコール」
出水「私はフォールドするわ。」
一城「ここで降りるのですか?以外に根性なしなのですね。」
出水「挑発のつもりかしら。でもね、これも戦術なの。」
一城「でも、阿波美知事が降りたことによって残るは鳴門くんだけになったということだ。」
海斗「任せてください。」
4枚目のカードは♦Aだ。
一城「ベット、1万円チップ1枚。」
海斗「コールです。」
静流「これ以上1万出したらチップ無くなりそうだから5千円チップ2枚。」
5枚目。♣10だった。
一城「ベット。千円チップ3枚。」
海斗「レイズ、5千円チップ1枚。」
静流「・・・・・・フォールド。これ以上かける度胸がないわ。」
一城「(強気で出たけど大丈夫だろう。)コールします。」
赤奈「それでは互いに手札を出してください。」
一城「ツーペア{手札:♠5・♦5(場)♣A・♦A・♣10}」
海斗「僕はフォーカードです。{手札:❤A・♠A(場)♣A・♦A・♣10}」
一城「!!」
赤奈「鳴門様、5万6000円勝ちです。」
出水「さすが、運持っているわね❤」
海斗「ありがたいお言葉です。」
一城「っ!Aのフォーカードとか勝ち目無いじゃねえか!」
静流「よかった、私もツーペアだったけど勝負しなくて」
出水「どうする、もう1回勝負する?今の金差じゃオールベットしないとダメかもしれないけどね。」
一城「やりましょう。次はオールベットで。」
オールベットとは自分の場にあるチップをすべてかけることである。勝てば大逆転。負ければ大破綻の一か八かの大博打なのでやる人はめったにいない。
出水「へ~自信あるわね。勝てる保証はあるのかしら?」
一城「阿波美知事、ギャンブルに保証なんて言葉は似合いませんよ。」
一城はトランプをシャッフルした。
一城「ギャンブルは勝利がすべて、10回中9回負けても全てをかけた1回の大勝負に勝てばその1回で勝った奴が勝利となる。この1戦に、俺の全資産をかける!」
静流「完全にギャンブル恐のセリフね・・・・・・」
静流は微笑んだ。
静流「(黒瀬さんが一城を知事に選んだ理由は・・・・・・このギャンブル恐に惹かれたのかしら・・・・・・)」
フィールドに置かれたカードは❤Q・♠J・♠Kだった。
一城の手札は♣Q・♠8だった。
一城「(もう一枚クイーンが出たら勝てる可能性がある。)」
出水はカードを見ながら渋い顔をしていた。
一城「(もしかして・・・・・・いい手札が来なかったか?)」
一城は頭を横に振った。
一城「(いやいや、相手の表情ですぐに信じるな!)」
4枚目は♣4だった。
一城「(まだだ・・・・・・5枚目ですべてが決まる!)」
5枚目は・・・・・・
♦Qだった。
一城の表情は真顔でポーカーフェイスを保っているが心の中では小躍りしながら喜んでいる。
一城「(やった~クイーンのスリーカード!フ~!!!)」
赤奈「それでは、全員カードをオープンにしてください。」
海斗「僕はツーペアです。{手札:♠K(場)❤Q・♠J・♠K・♦Q}」
静流「私はワンペア{手札:❤5・♦A(場)❤Q・♦Q・♠K}」
一城「クイーンのスリーカードです!{手札:♣Q(場)❤Q・♦Q・♠K・♠J}」
出水「アララ・・・・・・スリーカードが出てしまいましたか・・・・・・」
一城「さあ、阿波美知事の手札は?」
出水は手札を机に置いた。
一城「手札が♣9と♠10・・・・・・」
静流「つまり、ストレート!?」
ストレートとは数字がA・2・3・・・・・・というように5枚続けて出た役のことを言う。今回の手札では「♣9・♠10・♠J・❤Q・♠K」と数字が続いている。
一城「・・・・・・・・・・・・。」
一城は顔を真っ赤にしながら黙ってうつむいた。
静流「一城?」
赤奈「ストレートの方が強いため、この勝負阿波美知事の勝利です。勝者、徳島県。」
出水「一條知事、もしかして・・・・・・勝てると思っていた?」
一城はうつむいたまま、ぽそりと呟いた。
一城「・・・・・・俺たちの、完敗です。」
出水「まあ落ち込まなくてもいいわよ。私たちの方が強かったってことが分かったことだしね。じゃあこの1億円の使い道は・・・・・・」
出水は1億円の入ったアタッシュケースを一城に差し出した。
出水「あなたたちの返済に充ててちょうだい。」
一城「好き勝手って・・・・・・自分のことで好き勝手しろってことだけですけど・・・・・・」
出水「いいの、そのために用意した資金なんだから。」
一城「では、ありがたく頂戴します。」
静流「即決するな!」
恵「数時間前言ったこと忘れていませんか!?」
葵「さっき「仮に俺が交渉に応じたら死ぬまで徳島の奴らに命令させられるんだぞ。ここで借りを作ってもウチにメリットはない!」って言っていた人があっさり手のひら返しするなんて、ひねりすぎてねじ切れますよ!」
綾乃「葵さん。何そのたとえ・・・・・・」
出水「でも、条件はあるわ。」
一城「はい、どんな指示でも!」
出水「茨城と徳島で友好関係を築いてもらえるかしら?」
一城「ふぇ?」
第5話(完)
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