第4話 スペードの元エース剣城静流

一城「駄目だ、誰一人捕まらない・・・・・・・・・・・・」


一城が知事になって約1カ月が経過した。

一條達ギャンブル課は現在愛原、菱川、三葉の3人のスカウトに成功した。しかし、あと一人が見つからず困っている。


今、ギャンブル課の綾乃と一城で模擬ポーカー「ポーカーの模擬戦」を行っている。


一城「あっ、ハイカードだ・・・・・・・・・・・・」


綾乃「やった~初めて知事に勝った!!」


葵「知事、どうなされたのですか?不運の三葉さんに完敗するなんて珍しいですね。」

綾乃「ちょっと、いきなり失礼ではありませんか!」


恵「まあまあ、2人とも落ち着いてください。私、コーヒーでも入れてきますね。」


葵「私ブラックで。」


綾乃「私も同じので。」


恵はコーヒーを入れるために、給湯室に向かった。


葵「へ~三葉さんブラック派ですか、お子様はミルクや砂糖入りを飲んでもいいんですよ。」


綾乃「いえいえ、こちらこそ年上だからといって無理にブラック飲まなくてもいいんですよ。この課では年上年下関係ないので。」


葵「お酒も飲めない未成年に言われてもね。」


綾乃「お酒は今関係ないでしょう!!」


ドアが開き秘書の赤奈が入ってきた。


赤奈「失礼します。知事に相談が。」


一城「分かった、でもここは今取り込んでいるから場所を変えよう。」


赤奈「いえ、ここでも構いません。菱川様、三葉様も喧嘩なさらず話を聞いてもらえないでしょうか?」


2人は互いの頬をつねりながら


葵・綾乃「ふぁい・・・・・・・・・・・・」


赤奈「それで話についてですが、実は一人だけ連絡がつながった人がいまして。」


一城「それって元ギャンブル課の!?」


赤奈「はい、しかし電話に出たのはお母様の方ですが。」


一城「それで何て名前なのですか?


赤奈「名前は「剣城 静流(つるぎ しずる)」自殺した剣城義夫氏の実の娘さんです。」


一城・葵・綾乃「!」


一城「彼女も、この条約で親の命を奪われたのか・・・・・・・・・・・・」


葵「彼女もってことは、もしかして知事も?」


一城「いや、こっちの話だ。気にしないでくれ。」


綾乃「でも、その静流さんって人かわいそうですね。仕事に行きたくない理由は分かります。」


恵がコーヒーを持って戻ってきた。


恵「コーヒーお持ちしました。あ、黒瀬さんも来たのですか?」


一城「あ、愛原。俺にはシュガースティック2本な。ブラックが飲めなくてな。」


葵・綾乃「私も!」


恵「あれ、2人ともさっきブラックって言ってませんでしたか?」


葵「コホン・・・・・・・・・・・・私はブラックで構いませんよ。三葉さんは砂糖入れた方がいいのでは?」


綾乃「私だって飲めますよ!」


2人は急いでコーヒーを飲んだ。


葵・綾乃「あっつ!苦っ!」


赤奈と一城の二人は静流のいる「剣城邸」に向かった。


一城「でかい!!ここに住んでいるのか?」


赤奈「静流様だけでなくメイドや執事などもいらっしゃるそうです。」


一城「緊張してきたな・・・・・・・・・・・・」


赤奈はチャイムを押した。


静流母「はい、黒瀬さんですね。どうぞ中へ。」


一城「さすが元剣城知事の秘書、やり慣れている感がすごい。」


赤奈「それでは、中に入りましょう。」


剣城邸に入った一城は衝撃の光景を目にした。


お手伝いさんたち「いらっしゃいませ、お客様。」


お手伝いさんが左右一列に並んで一城たちを迎えてくれた。


一城「この光景、漫画の中でしか見たことがないぞ・・・・・・・・・・・・」


奥から静流の母親が現れた。


静流母「黒瀬さん、お久しぶりです。」

{互いにお辞儀する}

赤奈「奥様、ご無沙汰しております。」


静流母「そして、そこにおられるのが新しい知事の・・・・・・・・・・・・」


一城「一條一城です。今年で23になります。」


静流母「随分若い知事さんですね。」


静流母は一城に一礼した。


静流母「一條さん、主人に変わりお礼を申し上げます。」


一城「いえいえ、私も就活に失敗して高等遊民生活していたものなので。」


静流母「高等・・・・・・・・・・・・遊民?」


一城「そ、そんなことより静流さんはどちらに?」


静流母「静流なら2階の自分の部屋にいます。鍵が掛かっているので開けることはできませんが。」


一城「まさか、ずっと部屋に閉じこもっているのですか?」


静流母「トイレの時以外はずっと部屋ですね。」


一城「分かりました。ちょっと説得してきます。」


赤奈「ご案内します。」


3人は静流の部屋のドアに到着した。赤奈がドアをノックする。


赤奈「静流様、私です。黒瀬赤奈です。」


静流「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あぁ、黒瀬さん。久しぶりね。{ドア越しに答える}」


赤奈「静流様。どうかギャンブル課に戻ってもらえないでしょうか?今、あなたの力が必要なのです。ほかの人たちに連絡をしたのですが全員つながらないのでございます。」


静流「・・・・・・・・・・・・なんだそんなことか。答えは、「ノー」よ。悪いけど私はもうギャンブル課には戻らない。」


赤奈「静流様・・・・・・・・・・・・」


静流「父がいなくなった今、ギャンブル課で何をすればいいの? 私は父の指示でないと動かないって決めているのよ。」


一城「じゃあ、あんたは親父さんの操り人形ってわけかい?」


静流「その声、いったい誰よ?」


一城「義夫さんの次にこの県の知事を受け持つことになった一條一城だ。年齢は君と同じ22歳だ。」


静流「は?あなたみたいな人が新しい知事?黒瀬さん。あなたこんな人に父の後を継がせたの?」


赤奈「はい、一條知事ならいずれこの県を・・・・・・・・・・・・いえ、日本を変えてくれる人だと睨んだからです。」


静流「父でも成し遂げられなかったワースト1脱却ができなかったのよ。それを私と同い年の子ができるって・・・・・・・・・・・・黒瀬さんの目も曇ったわね。」


一城がドアを思い切り殴った。


静流「何よ、びっくりしたじゃない。いきなり叩くなんて。」


一城「剣城、俺のことはどう言っても構わない。でもな、赤奈さんのことを悪く言うのは俺が許せない!!」


静流「何?あなたは黒瀬さんの旦那か何か?」


一城「そんなんじゃねえよ。でも、こっちにも時間がないからな。一勝負しないか?」


静流「バカバカしい。何であんたと勝負しなくちゃならないのかしら。」


一城「へ~元ギャンブル課の人が勝負から逃げるんだ。随分と腰抜けだな。」


静流「そんなみえみえの挑発をしてきても無駄よ。私たちギャンブル課は感情をコントロールすることが大切なのよ。感情を乱したら相手の思うつぼだからね。」


一城「(さすがは元ギャンブル課だけあって挑発はダメか。) 分かった、じゃあ義夫さんとの約束は破ることになるか・・・・・・・・・・・・」


静流「!?」


一城「ごめんなさい、僕たちはもう帰ります。赤奈さん今日はこの辺で・・・・・・・・・・・・」


静流「待ちなさい!」


静流はドアを開けて姿を現した。スタイルが良く、見た目は大人っぽいが紫色の髪の毛がボサボサでまだ幼い感じが残っていた。


静流「父の約束ってどういうこと?」


一城「・・・・・・・・・・・・ごめん、赤奈さん捕らえて。」


赤奈は静流の腕を掴んだ。


静流「どういう事!?離しなさい!」


一城「今の話、全部嘘だから」


静流「嘘!?」


一城「君を部屋から出すために利用してもらったわけさ。」


静流「騙したのね!」


一城「本当はこんな手は使いたくはなかったけどね。」


静流「離してよ!こんな嘘つきとは話なんてしたくない!」


一城「お前は父親の無念を晴らしたくないのか!!


静流 !?


一城「俺もな、父親がこの条例によって殺されたんだ。元々埼玉県の大企業に働いていたがランク制度が始まってランキング最下位の茨城出身の父がリストラされたんだ。会社の借金も父に押し付けられて追い詰められた父は自殺したんだ。会社のビルから飛び降りてな。」


静流「そんな、過去が・・・・・・・・・・・・」


一城「俺は思ったよ。このくそったれな条約、すぐに変えてやりたいってな!でも県内でしか就職できないし、就職先でも失敗してもうどうすることもできなくてな。でも、新知事に選ばれたときは義夫さんに変わって日本に立ち向かってやるとな!」


静流「父を亡くしたのは嘘、じゃないよね?」


一城「嘘・・・・・・・・・・・・って言いたいけどな。これは本当の話なんだ。 さて、長話もこれまで、勝負受けてくれるか?」


静流「・・・・・・・・・・・・イヤ!」


一城「は!?」


静流「そんな感動的な話で私を釣ろうって戦法でしょ!」


一城「いやいや、そこは話的に受けるパターンでしょう!?」


静流「何よ話的って!」


静流はため息をついた。


静流「まあ、1ゲームだけならやってあげてもいいわよ。」


一城「え、本当か!?」


静流「ほらトランプ用意して。」


赤奈に腕を放してもらった静流は。


静流「ゲーム内容はポーカーで1勝負。勝てばギャンブル課に入ることを考えるわ。」


一城「そこは入るって断言してくれよ・・・・・・・・・・・・」


静流「いいから、早くカード配って。」


一城は静流の部屋に入り机の上に知事専用の黒トランプをシャッフルし、配った。


一城「(何、このカード・・・・・・・・・・・・){手札:♣Q・♦K・♣6・♠5・♣7}」


一城は静流の顔を見た。静流は何の表情も変えずに自分のカードを見ていた。


静流「何?こっちをじーっ見て。」


一城「別に・・・・・・・・・・・・(表情は変えないか・・・・・・・・・・・・これを見たら大体の人の考えていることが分かるのに)」


静流「じゃあ私1枚チェンジで。」


一城「(1枚チェンジ!?ということは強い役職が揃っていることか?フラッシュ狙いかストレート狙い・・・・・・・・・・・・もしくはキングだけを残して大勝負をするか?)」


静流の口元が少し緩んだ。


一城「(笑った・・・・・・・・・・・・これはいいペアが揃ったということか? でもここで逃げ腰でも仕方ない。ここは勝負に出るか。)」


一城はフラッシュを狙うため♦Kと♠5をチェンジした。チェンジしたカードは♣9と♣Aだった。


一城「じゃあ始めようか。そっちからどうぞ。」


静流「私はノーペアよ{手札:♠4・❤3・❤8・❤2・❤Q}」


一城「え・・・・・・・・・・・・揃ってないの?」


静流「一條さんは?」


一城「・・・・・・・・・・・・フラッシュ。{手札:♣Q・♣9・♣6・♣A・♣7}」


静流「ふっ・・・・・・・・・・・・あなたの勝ちね。」


静流は立ち上がった。


静流「まあ、私が勝ってもあなた方のチームに入る予定だったけどね。」


一城「は~!?じゃあ意味なかったじゃないか!」


静流「フフッ、じゃあ改めて、剣城静流よ。静流で構わないわ。これからよろしくね。一條知事。」


一城「ああ、俺のことも一城で構わないぞ。」


静流「じゃあ、一城知事で。」


一城「よろしくな、ウチのエース。」


こうして最後の1人、剣城静流のスカウトに成功した。茨城県新生ギャンブル課の快進撃はここから始まることを願いたい・・・・・・・・・・・・


一方そのころ、四国の徳島県庁では・・・・・・・・・・・・


?「小松(こまつ)くんジェット機の準備をお願い。」


小松秘書「はい、しかし知事。どちらに行かれるのですか?」


?「決まっているじゃない。・・・・・・・・・・・・ワースト1の茨城に用があるのよ。」


第4話(完)

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