第4話 桜葉の家
聞き損ねたまま、下校時間を迎えた。
まあ、帰るときに聞こう。
廊下を軽く見渡してから、桜葉の教室に向かう。
急かさないように桜葉の席から見えない位置で周りの邪魔にならない端のところで待つ。
二、三分したら桜葉が来た。
「お待たせ」
周りの騒がしさの中で糸のようにか細い声を聞いて、昇降口に向かう。
桜葉の声を聞き分けるのは九年も居るからさすがに慣れた。
それに小学生の頃はもっと声は小さかった。
俺の耳は悪いわけではないけどたまに聞き返していた。
そうだ、数学のことを忘れていた。
桜葉の方に顔を向けて話しかける
「今日って、予定ある?」
桜葉は顔を横に小さく振ってないことを伝える
「数学で聞きたいことあるんだけど、いい?」
「良いよ」
「俺の家でいい?」
「あっ、私の家でもいいよ」
「いいの?」
「うん。私の家の方が近いし、お菓子もなんかあったと思うから」
「じゃあ、お邪魔します」
「ただいま」
「お邪魔します」
桜葉のあとに家に入る。
上がる前に玄関のドアに鍵をかけ、靴を揃えてすみっこに置く。
ダイニングにある机の椅子に座る。
小学校低学年の頃は桜葉の部屋に入っていたが、中学生のときに久しぶりに家に入ると
「恥ずかしい」
と言われて、今はダイニングにお邪魔させてもらってる。
桜葉は鞄を二階に置いて、必要なものだけ持って降りてきた。
俺はその間に勉強用具を机に出す。
桜葉は持ってきた筆箱などを机に置いて、キッチンに移動した。
「飲み物は何がいい?」
「紅茶、コーヒー、お水、牛乳、麦茶があるけど」
「じゃあ、コーヒーでいい?」
「分かった」
「砂糖とミルクはどうする?」
「ああ、何も入れなくていいよ」
「分かった」
「ありがとう」
桜葉がコーヒーとカントリーマアムのバニラとチョコを二枚ずつをお皿に乗っけてだしてくれた。
出されたコーヒーを一口飲む。
桜葉は自分のコーヒーを持ってきて、対面する目の前の席に座る。
桜葉がコーヒーしか持ってきてなかったので、バニラとチョコを一個ずつお皿に乗っけて差し出す。
桜葉が小さく驚く。
「別にいいんだよ」
「私は大丈夫」
「さすがに用意してもらってるのに自分だけ食べようとするのは気が引けて」
「いや、私はほんとに大丈夫」
お菓子を返しながら言う。
「食べなくてもいいから持っていて」
「……分かった」
お菓子を差し出しながら言って、しぶしぶ了承してもらった。
十分ほどゆっくりしたあとに勉強を始めた。
「今日はありがとう」
「桜葉のおかげで理解ができた」
「ううん、こっちもいい復習になった」
「ありがとう」
「じゃあ、また明日」
「うん、明日」
桜葉に玄関で送ってもらって、自分の家に向かう。
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