2年生編第5話(第30話)「血潮のヒミツ」
生徒会室では勉と大和がとある人物についての話をしていた。
勉「あのさ、洗井ってやつを知っているか。」
大和「確かF組の1年ですね。」
勉「大和くんとは違うクラスなのか。じゃあ詳しいことはわからないわけだ。」
大和「でも悪い噂はかなりありますよ。授業はすぐにさぼりますし、テストは0点ばかり、しかもこの双子沢学園には裏口入学しているとのことも。」
勉「ありえそうな話だな。まあ証拠がないから決めつけるのはよくないと思うけど。」
大和「でも真面野先輩が何で洗井の情報を知りたいのかは意味不明なのですが。」
勉「実は・・・・・・」
勉は大和に洗井と華が中学時代同じ学生だったことを話した。
大和「ひどい・・・・・・百合根先輩にそんないじめを・・・・・・許せませんね!」
勉「幸い向こうは華が誰なのか気づいていないみたいだからな。」
大和「名前は知っていて顔が覚えていないって記憶力が気になりますね。」
勉「よくある話だよ。いじめている方は忘れているけど、いじめられている方はずっと覚えていることは。だから大和くんには洗井のことを監視してほしい。大変かもしれないけどな。」
大和「わかりました。でも、さすがに僕だけでは不安ですから友だちと一緒に同行しても大丈夫ですか?」
勉「それは構わないけど当てはあるのか?」
大和「任せてください!新聞部にいい人がいますので。」
翌日の昼休み、大和は1人の男子生徒と廊下で話し合っていた・・・・・・
大和「ごめんな、急な頼みで。」
付彦「任せたまえ、この新聞部所属、1年B組「目処付彦(めどころ つけひこ)」にお任せありですぞ!」
大和「で、さっきも話した通りターゲットはF組の洗井血潮だ。」
付彦「任せたまえ、彼のことはよく知っている。1年F組「洗井血潮」年齢は1年浪人したため今は16歳。赤髪のツンツン頭に、鋭い釣り目。両手をズボンのポケットに入れている。シャツは必ず出している。典型的なヤンキータイプですな。」
大和「さすがだな。まだそんなに経っていないのにそんなに情報を持っているのか。」
付彦「ちなみに塵積くんの情報もあるぞ。「塵積大和」1年B組年齢は4月生まれなため、今は16歳。同じ学校に同い年の妹がいる。普段は真面目な性格だが、悪い噂などでは口が滑ることが多く、そのせいで中学時代は友達が1人もいない過去を持つ。あと、今はシスコンと教室ではガセネタが広まっている。それと・・・・・・」
大和「もういい、俺のことはもういいから!」
付彦「そうか、では話を本題に戻そう。彼は普段、昼休みはどこにいると思うか?」
大和「確かに、洗井はあまり教室にいないみたいだし普段はどこにいるなんて気にしてないな。」
付彦「な~に、簡単なことですぞ。ああいう人は普段人気のないところに行くのですぞ。」
大和「普段人気のないところ?」
付彦「そこで、見てしまったのですぞ。彼が昼休みにいる場所が。」
大和「どこだ!?」
付彦「付いてこいですぞ!」
大和と付彦は血潮のいる場所にやってきた。
付彦「ここですぞ。」
大和「ここって、プールだよな。」
付彦「この学校水泳部がないですし、夏以外は使わない。教室からまあまあ離れているので1人になる要素ありありですぞ。」
大和「そこでこの推理か、さすがだな。」
付彦「では、洗井くんはどんなことをしているのかな?」
2人はこっそり覗いていると。血潮は1人でスマホを片手に黙々とパンを食らっていた。
大和「1人でずっとここにいるのか。」
付彦「今は黙って見ていましょう。見つかったらきっと半殺しにされますよ。」
大和「今どきの子は半殺しって今日日聞かないでしょう・・・・・・関西人じゃあるまいし。でもこれで彼の住処が分かった。後は先輩に報告しないと。」
そのころ、屋上で勉と華と団子でご飯を食べているとき、勉のケータイが鳴った。
勉「来たか。」
華「誰から?」
勉「大和くんから、ちょっと外すね。」
勉が電話に出た。
勉「はい、大和くん。どう情報は・・・・・・ 分かった。」
勉は電話を切った。
団子「大和くんなんて言っていたの~?」
勉「ああ、仕事で分からないことがあったから教えてほしいって。」
団「大変だね~会計課の人って。三八ちゃんもそうだけど。」
勉「次に継ぐためにも大和くんには仕事を覚えてもらわないとね。」
華「そうか、勉が次、生徒会長になるんだよね。」
勉「門松さんや矢立会長みたいにみんなをまとめられるか心配だよな。」
華「大丈夫だって、私たちもサポートするから。」
勉「(僕的に華が今危ない状況になっているからね・・・・・・)」
それから1週間経った放課後。
勉「(さて、今日は生徒会活動ないから帰って勉強するか。)」
勉が校門を出ると
血潮「お、真面野・・・・・・だよな。」
勉「えっと・・・・・・確か洗井だっけ(ゲッ、なんでこんなところに・・・・・・)」
血潮「いや、別に用はないけど同級生に知り合いいないしこのまま帰ろうと思ったけど。お前、用あるか?」
勉「ああ、僕は(帰って勉強したいけど・・・・・・情報を取るには絶好のチャンスかも)いいよ。近くのファミレスでいいか。」
血潮「ああ、いいぜ。」
勉と血潮の二人は近くのファミレスでご飯を食べることに。
寝待「いらっしゃ・・・・・・い・・・・・・」
勉「よっ。」
寝待「2人ですね。どうぞこちらに。」
血潮「どうも・・・・・・」
寝待「(怖っ、あれで同じ学校の学生か?)あれ、百合根さんは一緒・・・・・・」
勉「わ~!」
寝待「なっ!?」
勉「洗井、悪いけど先に行ってくれないか?」
血潮「分かった。」
血潮は指定された席に向かった。
寝待「何だ何だ、いきなり大声出して!?」
勉「いいか、あいつの前で華の名前を出さないでくれ。」
寝待「なんで?」
勉「話せば長くなるけど・・・・・・」
勉は寝待に華と血潮について話した。
寝待「そんな悪いやつなの!?まあ確かに悪そうな感じするけど。」
勉「いいか、僕たちに何もするなよ。今情報を集めているところだから。」
寝待「了解だ。」
勉は話を終えると血潮の座っているテーブルに着いた。勉は血潮の向かいの席に座った。
血潮「さっきのやつとは何の話をしていたんだ?」
勉「別に、あの店員が余計な事言ったからちょっと注意していた。」
血潮「あっそ。」
勉「ところでさ、洗井さんはなんでこの学校に来たの?」
血潮「あのさ、あまり「さん」付けされんの嫌いなんだよ。」
と勉を睨み付ける血潮。
勉「(怖っ)じゃあ洗井は、なんでこの学校に来たの?」
血潮「別に、お前には関係ないだろう。」
勉「いやいや、同じ学生だからそういうのを確認したくて。」
血潮「うるせぇなぁ・・・・・・ 俺は学校が嫌いなんだよ。勉強ばっかで何も楽しくねえ。」
勉「だからサボりをしていると。」
血潮「別に勉強が嫌いってわけじゃあないけどさ。規律正しい生活を送れって先校がうざいんだよ。」
勉「僕たちも言われていたな・・・・・・」
血潮「だから授業にも出ていないしテストも受けていない。」
勉「(早くこの時間終わらないかな・・・・・・)」
と届いたアイスコーヒーをストローで飲みながら聞いていた。
血潮「まあ、この学校に来た理由はあるやつに会うのが目的なんだよ。」
勉「もしかして・・・・・・百合根さん?」
血潮「そうだよ、あいつに会って今までのことを返してやろうと思ってな。百合根が双子沢受けるって先校が言ってたから俺も受けようと思ってな。だけど難しすぎて落ちてしまった。だから1年間塾に通って必死に勉強して何とかギリギリ合格したわけだよ。でもほかの人らは裏口入学だの教師脅して入っただの好き勝手言いやがって!」
勉「(そうか、こいつも努力してこの学校に入ったんだな。でも・・・・・・返すってなんだ?華に何するつもりなんだ・・・・・・・・・・・・)」
血潮は顔をしかめた。
血潮「お前は確か・・・・・・」
勉「え、僕の顔に何かついている?」
血潮「バカ、お前じゃねえよ。」
勉が後ろを向くとそこにはコップを持った華の姿が。
勉「(なっ、なんでこんなところに華が!?)」
血潮「お前ってもしかして俺と当たって震えていたやつじゃないか。」
華「あ、どうも・・・・・・{震える}」
血潮「なんだ、俺のこと怖がっているのか?」
勉「洗井、この子人見知りで初対面の人と話すのが苦手なんだよ。」
何とかしてこの場から華を帰そうとしたが、次の瞬間。
団子「華ちゃ~ん、そんなところで何しているの?」
勉「団ちゃん!?」
血潮「華ちゃん?」
勉「・・・・・・・・・・・・あ、彼女、花田美咲さんて言うんだ。だからあだ名は花ちゃんってわけ。」
団子「何言っているの勉くん? 華ちゃんは・・・・・・」
勉「団ちゃんは黙っていて!」
団子「はい・・・・・・(初めて勉くんに怒られた・・・・・・)」
血潮が華の近くに寄った。
血潮「・・・・・・・・・・・・ふ~ん、そうか。お前、百合根だな。」
勉・華「!!」
血潮「確かに聞き覚えのある声だと思ったよ。そうか、お前、整形手術したんだな。」
華「あ、その・・・・・・」
血潮「でもその怯えた表情は整形前から変わっていないな。」
華「ひ、久しぶりだね・・・・・・洗井くん・・・・・・」
血潮「なんであの時自分が百合根だって言わなかったんだ。まさか俺のことを怖がっていたのか。」
勉「おい、もうその辺で。ここだとほかの人たちに迷惑だ。話は外で話そう。」
血潮「いいぜ。」
勉「団ちゃん、悪いけど先に帰っていてくれないかな。華は僕が責任をもって家まで送るから。」
団子「うん・・・・・・分かった。」
勉と華と血潮の3人は会計を済ませ、すぐそこの人気のない路地に向かった。
血潮「で、真面野だったっけ。お前、百合根とはどういう関係なんだ?」
勉「華は、同じ生徒会役員だ。」
血潮「整形のことは聞いたのか?」
勉「ああ、後から本人に・・・・・・」
血潮「そうか、だが、整形のことはまだ誰も知っていないだろうし、このことを学校に知れ渡ったら百合根の学校生活は終わってしまうだろうな。」
華「それは!」
血潮「残念だったな!お前は俺に見つかった時点で終わりなんだよ!」
華はポロポロと涙を流した。
血潮「おいおい、泣いても俺は許してやらないぞ。」
勉「おい。」
勉は低い声で血潮を呼んだ。
血潮「なんだ、俺に文句でもあるのか。」
勉「洗井、僕と決闘をしないか。」
血潮「決闘?バカバカしい、そんなこといちいち受ける訳ないじゃねえか。」
勉「なるほど、僕に負けるのが怖いんだ。」
血潮「あ!? 誰が怖いって!」
勉「だって勝負しないんだろ。じゃあ君の負けってことで。」
血潮「上等だ!で、内容はなんだ?」
勉「1週間後に2年に1回行われる学校のスポーツ大会が行われる。男子は野球、サッカー、バスケの3つ。女子はバレーボール、テニス、バドミントンの3つだ。種目はそちらが選んでいい。そして勝敗は、上の順位を取ったチームの勝ちだ。」
血潮「それで、俺が勝ったらどうするんだ。」
勉「そっちの好きなようにすればいい。」
血潮「分かった。だがな、ばらすだけじゃ面白くねえ。俺が勝ったら百合根を渡してもらおうか。」
勉「渡す!?」
勉はしばらく考えた。そして結論は。
勉「分かった・・・・・・そのかわり、僕が勝ったらもう華に二度と関わるな。」
血潮「ああ、1週間後が楽しみだな。」
勉「それで、競技は何にする?」
血潮「じゃあ野球だ。それでいいな?」
勉「よし、それでいこう。」
血潮はその場を去った。
華「そんな、もし勉が負けたら私・・・・・・また・・・・・・いじめられるの?」
勉「大丈夫、そんなことはさせない。それに、このことは想定内だよ。」
華「どういうこと?」
勉「実はここ1週間、大和くんたちに頼んで洗井の情報を集めていたんだ。」
華「え、いつの間に・・・・・・」
勉「黙っていてごめん。さすがにこのことを言うのは華に辛い思いをさせると思って集まるまで言うのはよそうと思っていたんだ。その情報の1つにアイツは小学生の時は野球少年だったらしい。つまり、有利なのは野球だってことだ。」
華「それって逆に不利じゃないの?」
勉「うちのクラスには野球部エースの錬磨がいるからな。」
華「そうか、それで勉、野球経験は?」
勉「無い!」
華はその場でずっこけた。はたしてスポーツ大会で血潮に勝利することができるのだろうか?
第30話(完)
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