2年生編第3話(第28話)「華のトラウマ」

「鳥取私立双子沢学園高等学校」この学校は男性の合格対象は偏差値が67以上に対し、女性の合格対象は偏差値50以上と性格によって決まる。そのため、男子は1、2年浪人してはいる生徒も珍しくない。そう、この生徒も・・・・・・


?「・・・・・・・・・・・・。」


男子生徒A「{小声}うわっ、何だアイツ。顔怖っ」


男子生徒B「{小声}同じクラスの奴だろ。噂によれば中学時代はいじめっ子の総長のリーダーだって噂だぜ。」


男は舌打ちした後、噂をした生徒を睨む


男子生徒A「(! 知らんふりしておこう・・・・・・)」


この顔が怖い、赤髪の不良っぽい男子生徒は1年F組の「洗井血潮(あらい ちしお)」である。彼は勉たちと同じ16歳だが、去年の入試に落ちてしまい、1年浪人してこの学校に入学した生徒である。血潮は学園でもかなりの問題児であり、授業はサボり、テストもほとんど0点。入学してまだ1ヶ月も経たないうちに退学の危険性がある。


血潮「(どいつもこいつも俺のことを噂しやがって! ウザいんだよ!)」


血潮が廊下を歩いていると、急に目の前に現れたノートの山に激突した。


血潮「痛ってぇな!なんだよこの山は!」


華「あ、ごめんなさい。」


血潮「てめえか!」


華「! は・・・・・・い・・・・・・」


華は血潮を見た瞬間恐怖で震えてしまった。


血潮「ほら、立てるか?」


血潮は手を差し出した。


華「あ・・・・・・ごめんなさい・・・・・・」


血潮「(コイツ、俺を見てビビッているのか?よくあるんだよな。)」


血潮が強引に腕を掴もうとしたら


華「やめて!」


華はその手をはらった。


血潮「!」


その時、偶然1年棟に用があった勉がやってきた。


勉「おい、そこのキミ。何をしているんだ?」


血潮「別に、俺はこの子を助けただけだ。」


勉「そうか、ありがとう。」


血潮「じゃあ、俺はこれで。おっ。お前2年か?」


勉「ああ、僕は2年の真面野勉だ。」


血潮「お前の学年に「百合根華」って奴がいるだろ。どこにいるか教えてくれよ。」


勉「ああ、彼女なら・・・・・・」


勉がそこにいる女子生徒が百合根さんという事を教える直前。華は勉のズボンの裾を掴んだ。勉が華を見ると座り込んだ状態で涙目になり細かく震え、首を軽く横に振っていた。


勉「えっと・・・・・・分からないですね。何せ僕は、女の人と話したことがほとんどなくて。」


血潮「ちっ、そうか。(女の方に聞きたいが、今はダメそうだな。)」


そういうと、血潮はその場を後にした。


勉「大丈夫か、華。」


華は座り込んだまま勉のズボンに抱き着いた。


華「怖かった・・・・・・怖かったよ~!」


勉「華、その場所で抱き着くのヤメて!」


華「ん、なんか顔に硬い感触が・・・・・・」


勉「いいから離れて!」


華が落ち着いてから、さっきの学生のことについて話を聞いた。


勉「ところでさっきの人は誰なんだ?」


華「彼は「洗井血潮」くん。私と同じ中学校だったの。東京のね。」


勉「じゃあ、彼はまた華をいじめようと。」


華「洗井くんは私をいじめるグループのリーダーをやっていたの。黒幕は別の人だけどおそらくその人の手下だと思うの。」


勉「なんでそんな奴がこんな学校に!?」


華「おそらく1年浪人して学校に入ったと思うの。でも、おかしいわね。彼、あまり頭よくないはずなのに。」


勉「よかった・・・・・・なんかあったと思って心配したぞ。」


華「ところで何で勉がこんなところに?」


勉「ちょっと職員室に用があって・・・・・・今年の生徒会役員の候補者の人と話し合っていただけだよ。後、そのノートは?」


華「これは、次の授業で使うからって先生に頼まれたの。さすがに女子棟に行くまでは大変そうだけど。」


勉「そうか、だったら手伝うよ。1人じゃあ大変だろう。」


華「うん、ありがとう。」


勉と華は荷物を分担し、女子棟前まで運んだ。


勉「おっと、ここから先は行けないな。僕がここで荷物番しているから今持っているのを持って行っておいで。」


華「うん、じゃあお願いね。」


華は女子棟に入った。


勉「こういう時は大変だな・・・・・・この制度。{男子が女子棟に入れるのが昼休みと放課後のみ}」


華は団子と共に戻ってきた。


団子「勉くんお疲れ~」


勉「おお、団ちゃん手伝いに来てくれたのか。」


団子「もちろん、他ならぬ親友の華ちゃんの頼みだからね~」


勉「じゃあ僕は教室戻るからあとは頼むね。」


華・団子「は~い。」


勉が教室に戻るまでの間、さっきの学生「洗井血潮」のことを考えていた。


勉「(あの洗井という生徒、要注意だな。華があんなに震えていたし、よほどひどいことをしていたのだろうな)」


放課後・・・・・・生徒会室は少しざわついていた。


三八「今日は新しい生徒会役員が来るみたいですね。」


卯円「ああ、2人ともいい子だぞ。学長も好印象だったみたいだしね。」


団子「どんな人だろう?楽しみだな~」


哀羅「私と同じ学年ですよね?」


白羽「そうだ、今、真面野が呼びに行っているけど。」


大和「(同い年か・・・・・・仲良くなれるかな?)」


勉「失礼します。連れてきました。」


1人目の生徒会役員は・・・・・・


大和「な、成留!?」


成留「やっほ~お兄ちゃん!」


大和「どういうことだ!ここは生徒会役員以外立ち入り禁止だぞ!」


成留「何言っているの?成留も生徒会役員なのよ?」


大和「お前が生徒会役員だと!?」


?「はい、僕たちが新しい役員です。よろしくお願いします。お兄さん。」


もう一人は青髪のロングヘアのボーイッシュな感じの女子が入ってきた。


大和「誰だ!? 後なんでお兄さん?」


勉「じゃあ改めて、2人とも自己紹介お願いしていいかな?」


成留「初めまして!1年A組の塵積成留です!お兄ちゃんと同じ生徒会役員に入りました! 」


青志「1年A組の「東雲 青志(しののめ はるゆき)」です。中学生の時は生徒会長を務めていました。男みたいな名前と見た目ですが女です。」


白羽「生徒会長の矢立白羽だ。よろしくね、2人とも。」


成留「よろしくお願いします!」

{同時に言う}

青志「よろしくお願いします。」


白羽「じゃあ東雲さんが会計、塵積さんは書記の仕事をやってもらおうかな。」


こうして2人の生徒会役員が入部してきた。


勉「・・・・・・こうしてみると生徒会、女子率高くないか・・・・・・」


三八「確かに、でもあまり気にしないでいいんじゃない?」


青志「あの、先輩方?」


勉・三八「ん?」


青志「これからよろしくお願いします。」


勉「よろしく、会計課長の2年真面野だ。」


三八「同じく会計の桃垣です。」


青志「後は、お兄さんも会計ですよね。」


大和「うん、でも俺は東雲さんのお兄さんではないからな。」


青志「分かっていますよ、お兄さん。」


大和「うわ、面倒くさ・・・・・・」


勉は大和の口を塞いだ。


大和「もごもご!」


勉「(全く、油断も隙もないな・・・・・・)」


書記班は


華「書記課長の百合根華です。えっと、塵積くんと苗字被るからなんて呼べばいいかな?」


成留「成留でいいですよ、百合根先輩!」


団子「私は花寄団子だよ、よろしくね~」


成留「よろしくです、花寄先輩!」


団子「団ちゃんでいいわよ~」


華「(この2人、なんか似ているわね。)」


成留「後は、パンツちゃんかな?」


哀羅「もう、それは言わないでよ・・・・・・」


白羽「これで、また騒がしくなるな。」


卯円「それより、次の会議の資料どうなってるんだ?」


白羽「え・・・・・・そんなの言われていたっけ?」


卯円「はあ・・・・・・大丈夫かよ。」


白羽「マズイ!みんな、早速仕事に取り組んでくれ!」


生徒会役員たち「はい!」


生徒会役員たちはそれぞれの仕事を協力して取り組んだ。


白羽「よし、これで何とかなりそうだな・・・・・・みんなお疲れさん。」


夜7時までかかった仕事を終え、全員が帰り支度をはじめたとき、雨音が・・・・・・


白羽「やべ・・・・・・傘持ってきてない。」


卯円「は?夜から降るって天気予報でやってただろ。」


白羽「今日朝ギリギリだったから傘忘れていた・・・・・・」


卯円「ったくしょうがねえな。私の傘貸すから。」


白羽「悪いね。」


団子はニヤニヤしながら2人を見ながら


団子「もしかして相合傘ですか?熱いですね~」


卯円「ばっ、んなんじゃねえよ!」


白羽「全然気付かなかった・・・・・・」


卯円「そんなことないからな!」


団子「焦っちゃって~ホントは嬉しいくせに~」


卯円「そんなんじゃねえよ。おい、帰るぞ!」


白羽「速足になるなよ!」


ギャーギャー言い合いながら相合傘をして2人は帰っていった。


成留「お兄ちゃん。私と一緒に帰りましょう。もちろん相合傘で❤」


大和「いらん。俺傘持っているし。」


大和は自分の傘をさしてそそくさと下校した。


成留「も~お兄ちゃんてば照れ屋さんなんだから!」


成留は大和の後を追いかけるように下校した。


青志「私もこれで失礼します。」


団子「じゃ~ね~」


三八「また明日。」


団子たちも傘をさして帰った。


勉「よし、僕たちも帰るか。」


華「そうだね、夜遅いしね。」


華が傘をさそうとした時、勉がカバンをあさっていた。


華「あれ、傘は?」


勉「おかしいな?折り畳み傘がない・・・・・・」


華「え!?」


勉「確か入れたはずだけど・・・・・・」


華「忘れた?」


勉「うん・・・・・・」


勉はカバンを頭の上にのせて


勉「じゃあお先に」


華「ちょっと待って!?何しているの?」


勉「何って、カバンを傘代わりにして帰るんだよ。」


華「ずぶ濡れになるじゃない。絶対ダメ!!」


勉「じゃあどうやって帰ればいいんだよ。」


華「私の傘でよければ・・・・・・」


勉「それって・・・・・・相合傘ってこと?」


華「・・・・・・今生徒はいないんだし・・・・・・緊急事態だから・・・・・・」


勉「あ、お邪魔します・・・・・・」


勉は礼儀正しくお辞儀して華の傘の中に入った。


勉「(初めてだな、女性の傘の中に入るなんて)」


華「寒くない?」


勉「大丈夫だよ。」


歩いてしばらく経ったが勉にはある疑問が


勉「(おかしいな?この傘そんなに大きくないのに・・・・・・あまり濡れていない。)」


勉が華の方を見ると華の右肩はぐっしょりと濡れていた。勉が濡れないよう傘を勉の方に傾けていたのだ。


勉「(本当に優しいな。自分のことじゃなく人のことを大事にしているところが)」


華は何気なくやっていたのだが心中では・・・・・・


華「(やばいやばいやばいやばい・・・・・・すごい近いから顔見づらい・・・・・・)」


恥ずかしさのあまり自然と勉に傘を傾いていたのだった。


勉の家に到着した2人。


勉「送ってくれてありがとう。ちょっと家に上がって休憩しない?」


華「いや、私すぐに帰るから。」


勉「その右腕、タオルで拭いて。」


華「え・・・・・・わっ!びしょ濡れ!!」


華は自分の右腕を見て驚愕した。


勉「気づかなかったのか・・・・・・」


華は勉から受け取ったタオルで腕を拭いた。


華「ありがとう・・・・・・じゃあ私帰るね。」


勉「うん、こちらこそありがとう。おかげで濡れずにすんだよ。」


華「いいって、いつも助けてもらっているからそのお返しでも足りないぐらいだよ。」


華は急ぎ足で勉の家を後にした。


華「(初めて相合傘しちゃった・・・・・・恥ずかしい・・・・・・)」


華が恥ずかしそうに顔を傘で隠しながら走って帰っていった。


?「今の・・・・・・」


華とすれ違った男、あの問題児の洗井血潮であった。


血潮「あの女・・・・・・どっかで見覚えが。」


まだ正体はばれていないが、この血潮が後に2人に大変な試練を与えることになるとはこの時誰も思っていなかった・・・・・・


第28話(完)

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