2年生編第1話(第26話)「新たな生徒たち」

4月8日、双子沢学園の入学式を迎えた。主人公の勉はいつも通り通学路を歩いていると同級生の寝待が声を掛けてきた。


寝待「おはよう、真面野!」


勉「おはよう。朝から元気だな・・・・・・」


寝待「当たり前だろ、だって・・・・・・」


勉「朝から百合根さんにあったからだろ?」


寝待「お前、エスパーかよ・・・・・・まあそれもあるけど俺たちこれから2年生になるんだろ。見ろよ、ネクタイも緑から赤になるし、先輩って言われるんだぞ!」


勉「別に、興味ないし。」


寝待「相変わらず冷めてんなお前は・・・・・・いいもんな、今年こそ彼女ゲットしてやるぜ!」


勉「頑張れよ。」


寝待「真面野、お前もだろ!いいから早く彼女作れよ。」


そんな話をしていると後ろから練磨が話しかけてきた。


練磨「うっす、勉と果報。」


勉「ああ、練磨おはよう。」


寝待「でた、リア充野郎!」


練磨「何だよリア充野郎って・・・・・・」


寝待「うるさい!いつの間にか桃垣さんと付き合っちゃってさ!」


練磨「別に、俺だって自分の力だけでやったわけじゃないからな。」


寝待「何!?まさか、そのキューピット・・・・・・急蒲!そのキューピットが誰か教えろ!」


練磨「言えないよ!言うなって本人に言われているんだから!」


寝待「なあ、真面野からも何とか言ってくれよ・・・・・・あれ?いない。」


勉は先に学校に向かった。


勉「これ以上果報の文句に付き合えないよな・・・・・・あれ?」


1人の男子生徒が校舎で悩んでいた。真新しい制服を見るからに今年から入ってきた新入生のようだ。


勉「(誰だ?ネクタイが緑ってことは1年生?)」


勉はその困っている1年生に声を掛けた。


勉「ちょっと、そこの君。」


?「はい、僕のことですか?」


その少年は茶髪のボブカットで見た目はごくふつうの子であった。


勉「何か困っているような感じだけどどうしたんだ?」


?「実は、生徒会室を探していまして。でも、この学校教室多くて。」


勉「その、僕でよければ案内するけど。」


?「本当ですか!?」


勉「きみ、生徒会室に何か用かい?」


?「はい、成績優秀者に選ばれまして。」


勉「ということは君が今年選ばれた成績優秀者!?」


大和「はい、今年からこの学校に入学した塵積大和(ちりつも やまと)です。」


勉「真面野勉です。2年生です。」


大和「そんな、先輩なんですから敬語はやめてください。」


勉「そうか、先輩じゃないからな。」


大和「面白い先輩ですね。そうだ、先輩2年生ですよね。先輩の代の成績優秀者ってだれかご存知ですか?挨拶しておきたくて。」


勉「あ~それは・・・・・・」


勉は恥ずかしそうに自分を指差した。


大和「え!?真面野先輩がですか?」


勉「うん、幻滅した?」


大和「いえいえ、むしろ安心しました。先輩みたいな優しくて頼りがいのある先輩はなかなかいませんから!」


勉「・・・・・・・・・・・・。」


大和「あ、すいません。何か気に障ることを仰ったでしょうか?」


勉「いや・・・・・・そんなこと言われたことがあまりなかったから嬉しくてさ。」


大和「そうですか、よかった・・・・・・よく言われるんですよ。人を傷つけることを言うって。」


勉「あ、そうだ。生徒会室だったよな。案内するよ。」


大和「あ、ありが・・・・・・」


?「お兄ちゃ~ん!どこにいるのですか!?」


勉「ん?遠くから女性の声が。」


大和「{顔が青ざめる}先輩、早く行きましょう。」


勉「あぁ・・・・・・。」


?「あ!お兄ちゃん!こんなところに!」


勉「え、もしかして塵積くんの妹さん?」


大和「あぁ・・・・・・見られた・・・・・・」


?「あなた様は?」


勉「2年生の真面野勉です。」


成留「まあ、先輩でいらっしゃいましたか!私、「塵積成留(ちりつも なる)」と申します!」


勉「(確かに・・・・・・顔というか雰囲気が似ている。)」


大和「成留・・・・・・一緒にいるなって約束しただろ・・・・・・」


成留「さあ、何のことでしょう?」


大和「はあ・・・・・・」


勉「何でそんなに成留ちゃんのとこを嫌がっているんだ?」


成留「先輩、聞いてくださいよ~お兄ちゃんってばこんなに成留が、好きをアピールしているのに全然分かってくれないんですよ~」


勉「へ~(なるほど、これが俗に言うブラコンと言う奴だな・・・・・・)」


大和「だってどこに行こうとしても成留がくっ付いてくるし、離そうとしたらすぐに泣くし、周りからシスコンって誤解されるし、こっちから見ればいい迷惑ですよ。」


成留「ヒドイ・・・・・・お兄ちゃん。成留のことを除け者にするなんて・・・・・・{泣く}」


勉「あ~あ、泣かした。」


大和「あ~もう泣くな!分かった、俺が悪かった!」


成留「本当に?」


大和「本当だ。」


成留「成留のこと愛している?」


大和「それは・・・・・・」


成留「やっぱり成留のこと嫌いなんだ~!」


大和「好きだよ!大好きだよ!」


成留「もっと言って?」


大和「もういいだろ・・・・・・」


成留が泣く素振りを見せる。


大和「好き好き好き好き大~好きだよ!」


そう大声で叫ぶと成留は泣くのをやめた。


成留「じゃあ許してあげる!」


大和「はあ・・・・・・(なんでこんなことに・・・・・・)」


勉「でも二人とも同じ一年生なんだな。」


成留「はい!成留が3月生まれでお兄ちゃんが4月生まれなので。」


予冷が鳴った。


勉「マズイ!早くいかないと遅刻だぞ!」


大和「結局生徒会室に行けなかった・・・・・・」


勉「なら放課後、僕の教室に来なよ。」


大和「本当ですか!?」


勉「ああ、その時に案内するよ。」


大和「僕、真面野先輩の後輩で本当に良かったです!」


勉「じゃあね、2人とも遅刻しないようにな。」


勉は自分の教室に向かった。


成留「何であの先輩にはあんなに懐いているの?」


大和「俺は犬か。別に・・・・・・それに男子と女子の教室棟が違うんだから早くいけよ。」


成留は頬を膨らませる。


入学式・・・・・・


一声「全校生徒の諸君おはよう!私が双子沢学園学長の鶴乃一声だ。新入生の諸君今日から私立双子沢学園の生徒として3年間、勉強に部活、それに恋愛に頑張ってくれたまえ。」


大和「(はあ・・・・・・なんでこんなことに、せっかく家を出るチャンスで必死に勉強を頑張ったのに。)」


男子生徒A「学長の話長いな~」


女子生徒A「足が痛い・・・・・・」


大和「(おまけに教室に着いたら、あの声が聞こえていたらしく、みんなからシスコンって誤解され始めるし。終わった・・・・・・俺の高校生活・・・・・・)」


白羽「それでは、新入生のあいさつを行います。新入生総代1年A組「喜藤哀羅(きとうあいら)」さん。」


哀羅「はい!」


哀羅が元気よく声を出した。彼女は新入生総代ともあって水色のボブカットにとてもかわいい容姿をしていた。彼女はステージの階段を上ろうとしたとき階段でつまずき転んだ。


哀羅「きゃっ!」


一声「喜怒くん、大丈夫かい?」


哀羅「イタタタタ・・・・・・えへへっ大丈夫です。これぐらい慣れていますから。」


体育館内がざわついた


男子生徒C「おい、見たか?」


男子生徒D「パンツもろ見えたな。」


大和「(いやいや、大丈夫じゃないだろ・・・・・・)」


哀羅の代表のあいさつを終え。放課後、勉の教室へ向かう大和。


大和「真面野先輩はいらっしゃいますか?」


教室内に現れたのは練磨だった。


練磨「うっす、君1年か?」


大和「はい、1年の塵積大和です。」


練磨「勉なら今トイレに行っているけど。」


勉「あ、もう来ていたんだ。ごめんね。」


勉はハンカチで手を拭きながら教室に戻ってきた。


大和「真面野先輩、案内よろしくお願いします。」


勉「分かった、カバン取ってくるからちょっと待っていてくれないか?」


大和「はい、何分でも待ちます。」


勉がカバンを肩に下げ教室を出た。そこから2人は生徒会室に向かった。


大和「僕、普段から道に迷うことが多くて。」


勉「方向音痴ってことか?」


大和「はい、妹は逆で一度通った道は忘れないのですが。」


勉「ところで、成留ちゃんは?」


大和「帰ったんじゃないですか?用事があるって言いましたし。」


廊下で同じ生徒会役員で、学内では内緒だが勉の彼女である華と出会った。


華「あ、勉くんお疲れ様。」


勉「おお、華さん。今から生徒会室に向かうのか?」


華「うん、あれ?そこにいる子はもしかして1年生?」


大和「素敵なひとだ・・・・・・」


勉「おい、大和くん。」


大和「あ、すいません!あまりに美しかったので見入ってしまいました!」


華「そ、そんなことないわよ。」


大和「謙遜しないでください。あ、僕塵積大和と申します。」


華「2年A組百合根華です。勉くんと同じ生徒会役員です。」


大和「え、先輩も生徒会役員ですか?」


華「ええ、今から向かおうと思ってね。」


大和「教室で噂になっている百合根さんとは、あなたのことなのですね。」


華「え!?噂って?」


大和「1学年上にすごくかわいい生徒がいると言っていましたので。」


華「いつの間にそんな噂に・・・・・・」


勉「ほら、華さん早く行こうぜ。」


華「あ、うん・・・・・・」


生徒会室に到着したが、扉の前に女の人が。


勉「あれ、あそこにいるのって。」


華「たしか、新入生代表の喜藤さんだよね。」


哀羅「あ、初めまして。私、喜藤哀羅って言います。先生から生徒会室に行くように言われ参りました。」


勉「初めまして、2年B組の真面野勉です。」


華「2年A組の百合根華です。」


哀羅「先輩方よろしくお願いします。」


哀羅は勉と華に頭を下げた。その隣で大和が衝撃の一言を放った。


大和「あ、お前あの時の熊パンツ女。」


勉「なっ!」

{同時に言う}

華「え!?」


哀羅は顔を真っ赤にして動揺しながら


哀羅「ななななななないきなりなんです!?」


大和「だって、階段でこけてスカートがめくれてパンツ丸見えになった子だろ?」


哀羅「さ・・・・・・最低です!最悪です!いきなりそんなこと言うなんて!」


勉「や、大和くんどうしていきなりそんな事言うんだよ!」


大和「あ・・・・・・もしかしてまた変な事を・・・・・・」


華「まあ喜藤さんも落ち着いて。」


哀羅「落ち着いていられるわけないでしょうが!!」


勉は大和を、華は哀羅を落ち着かせた。勉は大和に哀羅に謝るように言った。


大和「ごめんなさい!」


哀羅「絶対に許しません!」


勉「とりあえず落ち着いて。2人の言い分はわかるけどこれから生徒会役員になるものとしてこれだけのことで取り乱してはダメだよ。もう高校生なんだからくだらない喧嘩はだめ。分かった?」


大和・哀羅「はい、申し訳ございません。」


勉「よろしい。 あ、そうだ。つい口走っちゃったけど特待生に選ばれた人は生徒会役員になる気まりなんだけど大丈夫かな?別に嫌なら断ってもいいけど。」


大和「大丈夫です。僕はそもそも入るつもりですから。」


哀羅「私も大丈夫です。中学は生徒会長もやっていたので生徒会の雰囲気には慣れています。」


勉「分かった、これからよろしくね。」


華「じゃあ、書類に名前と学年を書いてね。」


大和と哀羅は書類に名前と学年を記入した。


勉「よし、これで登録は以上だ。もう帰って大丈夫だよ。」


哀羅「では、私はこれで。」


哀羅は大和を睨みそのまま帰った。


大和「やっぱり、嫌われたよな・・・・・・どうしてこんなことを。」


華「ほんと、びっくりしたよ。急にあんなこと言っちゃって。」


大和「実は僕、思ったことを口に出してしまう悪い癖がありまして。」


勉「クセ・・・・・・」


大和「悪い噂の時だけつい言葉に出てしまうんです。そのせいで、小中学の時は友達がいなくて・・・・・・」


華「じゃあ、私喜藤さん見つけて一緒に帰るよ。いろいろ話しておきたいこともあるし。」


勉「ああ、頼むよ華さん。」


華はその場を後にした。


大和「申し訳ございません。僕のせいでこんなことになるなんて・・・・・・」


勉「大和くん。その気持ちはよく分かるよ。僕もね、学生時代友達がいなかったんだよ。」


大和「え、先輩が?」


勉「小学3年の時に信用していた人に裏切られてね。それ以来人を信用できなくなった。でもね、この学校に入ってそれが変わった。頼もしい仲間や友達もたくさんできた。たぶん、この学校に行かなかったら今までと同じ自分になっていたと思う。」


大和「何が言いたいのですか?」


勉「要するに、まだやり直しができるってことだよ。頑張れよ、未来の生徒会長さん。」


大和「はい。え、未来の生徒会長?」


一方そのころ哀羅は怒りながら学校を後にした。


哀羅「全く、何なのよあの人は!」


華「喜藤さん。」


哀羅「は・・・・・・?あ、あなたは生徒会の百合根先輩。」


華「今時間あるかな?もしよければ近くのファミレスでお茶していかない?」


哀羅「いいのですか?ありがとうございます!」


華「すごく明るいのね。」


哀羅「はい!よく人から隠し事とかできないタイプだって言われます!」


華「なるほど・・・・・・分かるかも・・・・・・」


華と哀羅はファミレスに向かう事に。


寝待「いらっしゃいませ・・・・・・百合根さん!?」


華「果報くん、こんにちは。」


寝待「(名前呼ばれた・・・・・・もう死んでも悔いはない・・・・・・)」


哀羅「どうも・・・・・・」


寝待「キミって、もしかして新入生総代のたしか・・・・・・パン・・・・・・」


華は寝待の足を蹴り上げた。


寝待「イデッ!」


華「はい、この話はこれでおしまい。空いてる席に座っていいかな?」


寝待「はい・・・・・・イデデデ。」


哀羅が席に向かうと華が寝待に耳打ちでこう答えた。


華「あのね、パンツとかは言っちゃダメ。」


寝待「でも、学校からは「パンツちゃん」って呼ばれているんだけど。」


華「いい、今彼女そのことで大分傷ついているんだからそのワードはタブーでね。」


寝待「イ、イエッサー・・・・・・」


華は話を終えると哀羅の座っている席に座った。


哀羅「先輩、あの人と知り合いなのですか?」


華「うん、同じ学年の人なの。何か頼みたいものはあるかな?」


哀羅「そうですね・・・・・・あまりお腹もすいていないのでコーヒーで」


華「じゃあ私と一緒だ。 すいません、コーヒー2つお願いします。」


店員に注文をした後。


華「ところで、さっきのことだけど。」


哀羅「あの1年生のことですよね。彼のことは絶対に許しません!」


華「あの子、あまり人に慣れていないみたいなの。それであんなことを口走っちゃって。」


哀羅「何ですか?つまり先輩も彼の味方というわけですか?」


華「いいから落ち着いて。感情は突っ走ると後戻りが利かなくなるのよ。人の見た目は第一で決まるかもしれないけどその後の行動で実はどうにでもなることなのよ。」


哀羅「つまり・・・・・・どういう事ですか?」


華「つまり、これから頑張っていく仲間同士なんだから一時の感情に流されるなってこと。まあ、そこが喜藤ちゃんのいいところでもあり悪いところでもあるけどね。」


哀羅「そう・・・・・・ですよね。私も分かっているんです。この性格のせいでドジをしたり落ち着きが無いって言われるし・・・・・・」


華「でも、その嘘偽りない性格だから特待生に選ばれたのじゃないの?私はそう思うな。」


哀羅「そう言ってくれると嬉しいです。」


華「まあ、人間には必ず弱点はあるわけだし、放っておいても問題ないと思うな。」


哀羅「分かりました。でも、これから生徒会役員になるのですから、厳しく指導をお願いします!」


華「うん。(塵積くんにしろ、喜藤さんにしろ今年の1年は真面目な人が多いわね。まるで昔の勉みたい)」


その頃学校では・・・・・・


勉「へっくしょん!」


大和「先輩、風邪ですか?」


勉「ん、たぶん花粉症だからだと思う・・・・・・」


第26話(完)

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