第25話 二人の北海道旅行(後編)

北海道旅行2日目の朝8時・・・・・・勉は目を覚ました。


勉「ん・・・・・・いつの間に寝ちゃったのか・・・・・・」


勉の目の前には寝息を立てて気持ちよさそうに眠っている華の顔が。


勉「うわっ!!」


勉は思わず大声を上げてしまい起こしてしまった。華は目をこすりながら


華「何、いきなり大声出して・・・・・・」


勉「ごめん、びっくりしちゃって・・・・・・」


華は大きなあくびをした。


華「ふわ~~~よく寝た。」


勉は急いで目を逸らした。


華「ちょっと、なんで目を逸らすのよ。」


勉「華・・・・・・浴衣整えて・・・・・・」


華「浴衣・・・・・・?」


華の格好は寝返りしていたせいか浴衣がかなりはだけていた。ブラを付けていないため小さいが谷間が少し見えていた。華は顔を真っ赤にしながら浴衣を整えた。


華「ゴメンね、御見苦しいところを見せちゃって・・・・・・」


勉は雰囲気を変えるため話題を変えた。


勉「そうだ、今日は東部方面に行くんだよな!僕は何か所かピックアップしたけど華は見に行きたいところ無いかな?」


華「そうだね、せっかく2日あるんだから今日は勉の行きたいところに行って明日は私の行きたいところに行こうよ。」


勉「明日は昼で帰るけど大丈夫なのか?」


華「うん、昨日もそうだったけどこうして2人で旅行するのが楽しいの。だからどこへ行っても私にとってはいい思い出なの。」


勉「(ええ子や・・・・・・)」


なぜ関西弁が出てきたかは不明として今日の目的は北海道の東部方面に行くことに。まず、網走市の「博物館 網走監獄」に向かった。


華「この牢獄、私教科書で見たことあるかも。」


勉「昔最果ての牢獄として恐れられていた網走監獄って場所なんだよ。」


華「こんなところに閉じ込められたら逃げられないのはなんとなくだけどわかるわ・・・・・・」


勉は上を指さした。


勉「見てみてよ。脱獄しようとしている人の人形があるよ。」


華「こうやって逃げるんだ・・・・・・でもすぐに捕まりそうね・・・・・・」


ある程度博物館の中を堪能した2人は遅めの朝食をとるために監獄食堂に向かった。


華「どんなご飯が出てくるんだろう。」


勉「・・・・・・華、ここは元監獄だぞ。ここで出るご飯といえば・・・・・・」


店員さんが運んできたのは定食セットだった。ご飯に味噌汁、野菜のおひたしなどのごく普通の定食だった。唯一違うのは魚の種類。勉はホッケ、華はサンマだった。


華「美味しそうな定食なのにテンションが上がらない・・・・・・」


勉「そう言うなって、まあ分からなくもないけどな。この定食は実際の収容者が食べていたのを再現したそうだからな。」


華は手を合わせた後、サンマを一口食べた。


華「ん、サンマ美味しい・・・・・・」


勉「さすがは海の幸の王国北海道。いい魚使っているな~」


華「誰目線よ・・・・・・ねえねえ、そのホッケ一口ちょうだい。」


勉「どうぞ。」


勉はホッケを差し出した。しかし華は口を開けて


華「あーん」


と食べさせてもらうのを待っていた。


勉「何やってんだ・・・・・・」


華「一度やってみたかったんだ。彼氏にご飯を食べさせてもらうってシチュエーション。」


勉「ドラマの見過ぎだろ・・・・・・」


華「ウチにテレビは無いよ?」


勉「そんなことはどうでもいいんだよ!恥ずかしくてできるか!」


とても牢獄の中でやるシチュエーションではない。


勉「それにあーんは僕が風邪を引いたときにしてもらっただろ。」


華「でも勉からはやったことないよね。これでおあいこってことで。」


勉「・・・・・・・・・・・・。」


勉はホッケの身を箸でつまむと華の口に運んだ。


華「はむっ」


勉「!!」


華「ん~こっちも美味しい!」


勉「・・・・・・・・・・・・。」


勉は反応に困ってしまった・・・・・・食べたときに「はむっ」て聞いたことがないしその時の華の唇が妙に色っぽかった。


華「じゃあ私のサンマも一口あげる。」


華は勉に食べさせようとサンマの身を箸でつまもうとしたが勉はふと我に返り急いでサンマを自分の箸でつまんで食べた。その時・・・・・・


勉「!!!!」


勉はあまりの辛さに悶絶していた。勉が食べたサンマの上には大根おろしがのっていた。水を飲んで辛さを紛らわす勉。


勉「あ~死ぬかと思った・・・・・・」


華「ビックリした・・・・・・勉が急に大声出すから。」


勉「ゴメン、辛い物は食べられなくて・・・・・・」


華「ふふ~ん。また勉の弱点見つけちゃったな~」


こうして食事を終えると次は釧路市に向かった。まずはマリモで有名な「阿寒湖」に向かった。まずは近くの旅館で荷物を下ろした。キャリーバッグだけでなく移動の間で色々なお土産を買ったためこのまま観光するのは無理だと思ったからだ。


勉「よかった、空いてる旅館があって。」


奥では華が興奮気味に勉を呼んだ。


華「見て見て!この部屋、露天風呂があるよ!」


勉「何だと!!初めて見た!露天風呂付き客室。」


勉は後で一人で入るか、と思いながら近くのマリモが展示されている観察センターに向かった。


華「マリモだ~!」


勉「阿寒湖と言ったらだよな。マリモは普通岩とかに張り付いていることが多いけど阿寒湖は綺麗な集合球体となるんだよな。」


華「そうなの?」


勉「うん、緑藻類の一種でね。」


華「りょくそう・・・・・・ゴメン分からない。」


勉「・・・・・・そうだな、難しく考えるのはやめよう。次はこの周りを周る無料巡回バスに乗ろうか。」


華「無料巡回バス?そんなのがあるの?」


勉「お、来たみたいだな。」


勉の眼先に視線を向けると、緑色のバスがこちらのバス停に向かってきた。


華「マリモデザインのバス!?」


勉「これが無料巡回バス「まりむ号」だ!」


こうして来たまりむ号に乗った2人は巡回先のいろいろな観光スポットを巡りまわった。


巡回を終え、最終バスに乗った2人は元の場所に戻ってきた。


華「到着~いや~いっぱい観光できたし写真もたくさん撮れて満足した~」


勉「本当だな。僕が好きなところを今日周ったけど華も満足してくれてよかったよ。」


華「お腹も満たされたし後は、露天風呂でのんびりだね。」


勉「だな。」


巡回先で晩御飯を済ませた2人は旅館の個室で腰を下ろした。


勉「(・・・・・・母さんには感謝しないとな。)」


思わぬ露天風呂付き客室になったためさすがに裸じゃマズイだろと思った勉だが、母の用意してくれた水着がここで役にたったのであった。勉は華を上の階にある大浴場に行かすために呼んだ。


勉「華、お風呂先に行っていいよ。」


しかし、華は首を横に振る。


華「いいよ、私は後から入るから。」


勉「そうか・・・・・・なら先に入るよ。」


華「ごゆっくり~」


勉はお風呂セットと水着を持って露天風呂前の洗面所に向かった。そして、勉は黒の水着を穿いて体を洗い始めた。


勉「なんか、水着姿で風呂にいるの違和感があるな・・・・・・」


頭と体を洗い終えた勉は露天風呂に入った。


勉「(あ~生き返る~)」


勉はまるで銭湯に入ったおじいさんのような言葉を頭の中で叫んだ。


勉「(それにしても華も災難だな・・・・・・水着持ってないからこの部屋の露天風呂に入れないからな・・・・・・)」


勉はお湯で顔を洗った。(これも銭湯のおじいさんみたいだな・・・・・・)


勉「(しょうがない。華には朝風呂でここを使わせるか。その間トイレとか行けないけどまあ長寝できるしいいか。)」


勉がそんなことを考えていたその時・・・・・・ガラガラガラと戸が開く音がした。


勉「(ん?旅館のスタッフさんか?)」


?「失礼しま~す。」


勉「!?この声って・・・・・・」


勉が振り返ると女性のシルエット姿が、眼鏡を取っているし湯気もすごいため視界がよく見えない。


勉「華!?」


華だった。バスタオルを巻いているため裸ではなかったが


勉「華、おま!大浴場に行ったんじゃ!?」


華「私は最初から客室露天風呂に入ると決めてたよ。」


勉「いや、でもそれだとはだ・・・・・・」


華「さて、体を洗いますか。」


華はバスタオルを脱いだ。


勉「ばっ!なにし・・・・・・え?」


華がバスタオルを脱いだ後の姿は臨海学校の時に着ていたフリルのついたビキニの水着だった。


華「どうしたの?」


勉「何でもないよ!!」


勉は一瞬スケベな考えをしてしまった自分を恥じ、思い切り潜った。


華はお風呂用の椅子に座るとタオルで体を洗い始めた。


華「ん~なんか水着でお風呂入るの違和感があるな。」


勉「(同じこと考えている・・・・・・)」


華は体と頭を洗い終えると風呂に入った。


華「おとなり失礼」


勉「おっおう・・・・・・」


華は勉の隣に入った。なぜか体育座りをしている・・・・・・


勉「何やってんだ?」


華「あっ、家の時の癖が・・・・・・」


勉「・・・・・・癖?」


華は体を伸ばした。


華「ウチの湯舟、体育座りしないとは入れないの。」


勉「そんなに小さいの!?」


華「そう、だから勉の家の湯舟見たとき広いな~って思ったの。」


勉「恵まれているんだな~僕。」


華「そうよこのお坊ちゃま!」


勉「両親に感謝だな。」


華「そうだね。」


華は少し間を開け、口を開けた。


華「勉、初めて会った日のこと覚えてる?」


勉「忘れられるわけないだろ。ハンカチを拾ったあの時のことだろ。」


華「あのハンカチ、お父さんの最後のプレゼントなの。」


勉「たしか、お父さんからもらった大事なものって言ってたよな。」


華「明後日、お父さんの命日なの。」


勉「え!?」


突然の爆弾発言に勉は思わず風呂から立ち上がった。そして


華「あのハンカチは私が小学校に上がった時に買ってもらったモノなの。」


勉「10年も使った大事なハンカチか・・・・・・」


華「うん、あのハンカチのおかげで私たちは出会えたわけだし本当に感謝してるよ。」


勉「何言ってんだよ。感謝しているのは僕の方だよ。」


華「え?」


勉「あそこで華に会わなかったらこうやって付き合う事なんてできなかったし、勉強しか能のない僕を好きって言ってくれた華の気持ちに答えてあげられているかどうか・・・・・・」


華「それは違うよ!」


勉「あっ・・・・・・すまん。」


華「小中学校は容姿のせいでいじめられていた。だから決死の覚悟で整形もした。でも今度は容姿しか見てくれない人ばかり・・・・・・このままだと本当に彼氏なんて・・・・・・できないと思っていたの・・・・・・」


華は目から涙を浮かべている。


勉「ストップストップ!露天風呂で泣くな!」


華はお湯で顔を洗った。


華「ぷはっ、気持ち切り替えた。」


勉「もうこの話終わりにしないか。せっかくの露天風呂なんだからゆったりしないか。そうだ、上がったらいちご牛乳でも飲まないか。」


華「そうね、いちご牛乳飲むの初めてだから楽しみ!」


こうしてのんびりゆったり温泉につかりながら学校の話や2人で2年になったらどんなことをしてみたいなどプラスの話をした。数十分後、勉が先に華は後に洗面台で浴衣に着替え、いちご牛乳を買いに売店に向かっていた。


華「いいお湯だったね~」


勉「だな、でも華も一緒に来なくてもよかったのに。」


華「いいじゃない、一緒に買いに行っても。」


勉「別にいいけど・・・・・・」


向かう途中、華が卓球台を見つけた。


華「ねえ、卓球やってみない?」


勉「は?今から牛乳買いに行く途中じゃなかったのか?」


華「そうだ、この卓球勝負負けた方が全額自腹でどう?」


勉「昨日それ言って負けたのはどこの誰だったっけ?」


華「昨日は昨日よ!今回は負けないからね!」


勉「(まあ、軽い運動と思えばいいか。)」


こうして2人は卓球をすることに。まずは軽いラリーからすることに。


勉「(あれ、結構上手い・・・・・・)」


華「今、意外に上手いって思っているでしょう。」


勉「ギクッ・・・・・・」


華「こう見えても卓球は何回かやったことがあるのよね。」


勉「(忖度してわざと負けようと思ったけど、本気でやるしかないよな・・・・・・)」


ラリーが終わった。


華「1ゲーム取った方の勝ちね。」


勉「ということは11点取ればいいのか。」


華「普通にやっても面白くないし、しりとりしながらラリーしましょ。」


勉「なるほど、言葉に詰まるかミスで1点か。」


華「テーマは「食べ物」りんご!」


華がいきなりテーマを出した後サーブをした。


勉「(くっ、卑劣な・・・・・・)ゴマ団子!」


勉は何とかワードを出し球も打ち返した。


華「あ、同じ禁止!!ごぼう・・・・・・」


華は焦って球を返したためチャンスボールとなった。


勉「うな重!{と言いながらスマッシュをする}」


勉の打ったスマッシュは見事に決まり勉が1点取った。


華「さっきから同じ言葉繰り返していない?」


勉「これがしりとりの基本だろ。もし返せていたらなんて言った?」


華「うどん・・・・・・あ・・・・・・「ん」がついて負けだ・・・・・・ じゃあ次勉がテーマを決めて」


勉「そうだな・・・・・・じゃあ世界の国旗!き・・・・・・キリバス!」


華「え・・・・・・す・・・・・・す{スペイン・・・・・・いやスウェーデン・・・・・・全部最後に「ん」がつく・・・・・・}スリランカ!」


華は球を相手コートに返した。


勉「カナダ!」


勉は球をロブで返したが相手コートの外に返してしまった。」


華「(ラッキー!アウトで1点いただきっ!)」


しかし、球はコートの淵に当たりはじいて外に転がった。


華「ええええ!それってオリンピックの選手が使う技じゃん!」


勉「よかった、当たるかどうか不安だったけど・・・・・・」


華「しかも「ダ」から始まる国知らないし!」


勉「いや、「大韓民国」があるだろう。」


華「韓国じゃん!(ダメだ・・・・・・相手は成績優秀者・・・・・・知識勝負では勝ち目がない・・・・・・)」


意識を逸らそうとしてしりとりを取り入れたのが逆に華の首を絞めてしまった・・・・・・この後、花の名前、学校にある道具などいろいろなお題を出したが言葉に詰まり、焦ってミスをするなど、あっという間に10対3と勉がマッチポイントを迎えてしまった。


華「後・・・・・・1点取らないと私の負け・・・・・・」


勉「別にやめてもいいけど・・・・・・」


華「まだだ!9点連続で点を取れば勝てる!」


勉「じゃあこれ取った方が勝ちにするか?」


華「そんな情けはいらないわ!」


勉「・・・・・・じゃあしりとり無しで普通に卓球するぞ。」


勉が軽くサーブをした。


華「このっ!{サーブを返す}」


勉「ほっ{球を打ち返す}」


この後数十回のラリーが続いた。果たして結果は・・・・・・


勉・華「{ゴクゴクゴクゴク・・・・・・}」


2人は部屋に戻るとさっそく買ったいちご牛乳を飲んだ。


華「ぷは~!おいしい~」


勉「ごくん・・・・・・最後のラリー、僕がネットに引っ掛けて「はい、引っ掛かった!私の勝ち!」て・・・・・・情けはいらないって言ってなかったっけ?」


華「え、そんなこと言ってたっけ?」


華は不思議そうな顔をして首を傾げた。


勉「・・・・・・・・・・・・。(まあいいか、華に余計な出費を出さずに済んだしな。)」


勉は空になったビンを机に置いた。


勉「でもなんか眠くなってきたな・・・・・・」


勉は準備された布団へ倒れこんだ。


華「勉!」


勉は寝息をたてて寝ていた。どうやらよほど疲れていたのであろう。


華「もう・・・・・・びっくりさせないでよ。」


華は勉を起こさないようにそっと掛け布団を掛けた。


華「{小声で}お疲れ様」


華は勉の頬にキスをした。


勉「んっ?」


3日目、最終日・・・・・・


勉は重いまぶたをこすりながらゆっくり起きた。


勉「あ~よく寝た~」


勉は辺りを見回してみたが華の姿が見えない。


勉「トイレか・・・・・・」


その時、ふすまの開く音が聞こえ、奥からタオルを首にかけた、見るからに風呂上りの華が現れた。服装はそのまま出かけてもいいように白のワンピースにピンクのカーディガンを羽織っていた。


華「おはよう、よく眠れたかい?」


勉「華、朝風呂に入ってたのか?」


華「うん、普段は夜しか入らないから朝風呂も新鮮で気持ちよかったよ。」


勉「(女性って朝も風呂入るイメージだったけど違うんだ・・・・・・)」


勉は急いで洗面所で着替えて2人は旅館を後にした。


今回は華が一番行きたがっていた日本最北端の「宗谷岬」に行くことになった。旅館から宗谷岬周辺までバスで移動した。


華「この長い北海道旅行も最後になったね。」


勉「そうだな、なんだかんだもう3日経ったのか。」


華「私はとても充実した旅行になったわ。誘ってくれてありがとう。」


勉「うん、どういたしまして・・・・・・(まあほんとうはくじ引きで当てたから一緒に行ける人が華かなって思っただけど、言うとまた団ちゃんに余計なこと言うなって言われそうだな・・・・・・)」


華「勉、目が泳いでいるけど大丈夫?」


勉「ね、寝不足かな~目がしょぼしょぼして・・・・・・」


勉は目薬を目に差して泳いでいる目をごまかした。それからバスに揺られて数時間後、目標の宗谷岬周辺のバス停に着いた。


華「着いた~!」


勉「ここが日本最北端記念碑がある宗谷岬。」


華「でも、まだ春なのに寒いね。」


勉「もう寒さにはこおりごおりってね。」


勉がさらっとダジャレを披露したせいか、寒波が襲ってきた。しかし1人だけ寒さとは真逆に笑いをこらえている人がいた。


華「クックックッ・・・・・・こおりごおりって・・・・・・勉からそんな言葉が出てくるなんて・・・・・・」


勉「ハハハ・・・・・・作戦大成功?」


華「今回勉はいろいろと楽しませてくれるから本当にありがとう。」


勉「まあこの話は終わりにして・・・・・・ここで何をするつもりなんだ?」


華「ここで観光も一つだけど、ツーショット自撮りしようかなと思って。」


勉「そんな鶏料理あったか?」


華は思わず勉にツッコんだ。


華「地鶏じゃなくて自・撮・り!私たちでツーショット写真を撮るの!」


勉「あ、写真か。でもどうやって撮るのか?」


華「実はこのガラケー、画面部分が180度周るんです!」


華は自分のガラケーを取り出すと画面側を回転させた。


勉「それでシャッターボタンはどこだ?」


華「ちょっと待ってね、確かこのボタン・・・・・・」


カシャッとシャッター音が鳴った。写真を確認してみると目をつぶっている2人の画像が


華「・・・・・・ごめん、こうやって撮るの初めてだからやりにくくて。」


勉「だったら他の人に頼んで撮ってもらえばいいじゃないか。」


勉は近くにいる男性に声を掛け、写真を撮るようお願いした。男性は快くOKしてくれた。


男性「はい、笑って笑って~撮りますよ。」


男性は華のガラケーを渡されると2人に笑うようにと言われた。


男性「彼氏さん、表情硬いですよ。」


勉「え、硬い?」


華「無理に笑顔作らなくてもいいよ。ほら、自然に」


華が隣で自然にスマイルしている。勉は深く深呼吸をした。そして口角を上げた。


男性「お、いい笑顔ですね。はい、チーズ!」


その写真は2人の自然な笑顔が宗谷岬の前で映えていた。


男性「じゃあ私はこれで・・・・・・」


勉「すみません、もう一枚お願いします。これで・・・・・・」


勉は自分のスマホを男性に渡した。


男性「分かりました。もう一枚いきますよ。」


こうして写真を撮り終えた2人の北海道旅行は終わった。


稚内空港から東京に向けて飛行機に乗り、東京駅に着いた。


華「私、このまま残るから。」


勉「そうか、お父さんのお墓参りに行くのか。」


華「うん、お母さんはもうおばあちゃんの家にいるから。」


勉「わかった。じゃあここでお別れだね。」


勉は鳥取空港行きの飛行機に乗り行こうとしたとき。


華「勉!」


勉は声の迫力に思わず振り返った。


華「新学期にまた会おう!」


と親指を突き上げグッドをした。


勉「おう!」


と勉もグッドし返した。


勉は飛行機で鳥取まで戻った。家に着くなり母兼備は


兼備「あんた!旅行中に華ちゃんに手を出していないでしょうね!?」


勉「帰ってきて第一声がそれかい!」


次の日、華は母たちと共に東京の父のお墓参り行った。華は北海道土産の白い恋人をお供えした。合掌しながら華は父に学校でのことを心の中で話した。


華「(お父さん、元気にしてる?私は高校に入学してからたくさんの友達に恵まれて今とても楽しいです。後、お父さんにはまだ言っていなかったけど彼氏もできました。私にはもったいないくらいのとても素敵な人。もし生きている時にこのことを報告したら「お前にウチの娘はやらん!」とか言うのかな(笑)でも、お父さんからもらったあのハンカチのおかげで会うことができたの。ありがとう。あと5日ほどで2年生になるけどこれからも頑張っていくから天国で見守っていてね。)」


それから日が経ち・・・・・・勉たちは2年生になる。


がり勉くんと百合根の華さん(完)

・次回から2年生編が始まります。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る