第14話 寅之助の根性勉強会

11月も後半に差し掛かり、学生たちは期末試験に向けて勉強していた。しかし、ある生徒はピンチを迎えていた。


職員室にて


青菜先生「脛梶、お前このままだと進級できないぞ。」


寅之助「え!?」


青菜先生「え!?じゃないだろう。中間試験のテスト、9教科中5つ赤点だったじゃないか。」


寅之助「それは、この問題が難しすぎるだけで・・・・・・」


青菜先生「ほかの生徒は多くても赤点は2つだったぞ。お前がB組で最下位だ。次の期末テストは、最低でも全教科60点以上取らないとダメだぞ。」


寅之助「60点未満を取ると・・・・・・」


青菜先生「留年はほぼ決定だな。」


寅之助「(まずい・・・・・・これは何とかしないと・・・・・・)」


1年B組の教室では


勉「果報、期末テストは大丈夫か?」


寝待「大丈夫だよ。真面野のおかげでここまでできたんだ。次こそは学年トップを狙ってやるぜ。」


勉「僕だって負けないぜ。」


寝待「じゃあな。俺これから部活だから。」


勉「テニス部だっけ、頑張れよ。」


寝待が去った時にすれ違いに寅之助が教室に入ってきた。


寅之助「真面野、ぼくちゃんを助けてくれ!」


勉「脛梶!?」


寅之助「ぼくちゃん、次の期末試験で60点以上取らないと留年になってしまうんだ。」


勉「留年!?初めて聞いたかも留年という言葉。」


寅之助「中学までは義務教育だからな・・・・・・じゃなくて!」


勉「焦っているところを見ると本当のことなんだな。」


寅之助「だからさ、成績優秀の真面野に教えてもらえば鬼に金棒だろ。だからさ、お願い!」


勉「なら、お前の舎弟に教えてもらえればいいだろ?」


寅之助「点睛はダメだ! あいつに教えてもらうなんて死んでも嫌だね!」


勉「そんなプライド捨てればいいのに・・・・・・」


寅之助「たのむよ、お前しかいないんだよ!」


勉「しょうがないな・・・・・・」


勉の携帯が鳴った。


勉「はい、あぁ団ちゃんか。 え、今から勉強会をするって?」


勉はチラッと寅之助を見た。


勉「僕はいいけど、1人追加していいか? 実は同じクラスの子が勉強を教えてほしいって言って来たからさ。 うん、ありがとう。」


勉は通話を切った。


勉「よし、行くか。」


寅之助「どこに?」


勉「今生徒会の子から連絡が来て、みんなでファミレスで勉強をしようと言ってきてさ。脛梶も来いよ。」


寅之助「生徒会って・・・・・・」


勉「華・・・・・・じゃなかった。百合根さんもいるぞ。」


寅之助「な!百合根嬢もいるのか?」


勉「その代わり、勉強を教える代わりに今日のドリンクバーの料金払ってもらうよ。」


寅之助「お安い御用だ!むしろドリンクバーの料金だけじゃ安すぎるくらいだ!」


2人はファミレスに向かった。


団子「お~い、こっちこっち。」


勉「団ちゃんお待たせ。」


寅之助「こんにちは・・・・・・」


団子「あ、あなたは臨海学校の盗撮魔。」


寅之助「ギクッ!」


三八「本当だ。」


寅之助「その件につきましては本当に申し訳ありませんでした・・・・・・」


華「いいって、早く座って勉強を始めよう。」


勉「そうだな、脛梶。奥に詰めてくれ。」


寅之助「(百合根嬢、優しい・・・・・・)」


勉「あ、すいません。ドリンクバー2つで。」


団子「私デラックスストロベリーパフェで~」


店員「はい、ありがとうございます。」


勉「今日はストロベリーか。」


三八「いつも思うんだけど団ちゃんなんでそんなに食べても太らないの?」


団子「私太らない体質だからかな~」


華「胸に全部栄養が行くからじゃないの?」


勉「(華の表情が怖い・・・・・・)」


寅之助「普段からこんな話をしているのか?」


勉「まあね。生徒会室では真面目に仕事しているけど普段はこんな感じ。」


寅之助「ぼくちゃんも生徒会に入ればよかった・・・・・・」


勉「でも確か優秀者以外は面接するんだよな?」


三八「そうそう、そこで校長に認められれば晴れて生徒会役員になるってわけ。」


寅之助「じゃあ無理だな・・・・・・」


勉「脛梶、そろそろ勉強しないと。」


寅之助「そうだ、大事なことを忘れていた。」


勉「(本当に大丈夫なのか?なんかこっちが心配になってきたな・・・・・・)」


寅之助は自分の勉強を始めた。が、その数分後。


寅之助「ぐ~{眠る}」


勉「{寅之助の頬をつねりながら}起きろ。」


寅之助「イデデデデ!」


勉「なに寝ているんだよ。 起きないと勉強にならないだろ。」


寅之助「いや~数字見ていると眠くなっちゃうんだよね。」


勉「もしかして、数学苦手か?」


寅之助「おうよ!ぼくちゃん生まれながらの文系男子よ!」


勉「まあ文系か理系かは置いておいて苦手は克服しておかないとまずいだろ。将来苦労しても知らないぞ。」


寅之助「いいもんね。ぼくちゃん父上の会社を継ぐからさ。」


勉「たしか、脛梶コーポレーションだったっけ?不動産会社だったはず。」


寅之助「よく知っているな。」


勉「最低でも高校卒業はした方がいいんじゃないか?」


寅之助「たしかに・・・・・・社長が中卒はきついな。」


団子「ゲップ、そんな会社やっていける人はほんの一握りしかいないからね~」


いつの間にか団子の前にあるパフェグラスが空になっていた。


勉「(あいかわらず食べるの速い・・・・・・)」


寅之助「真面野はどうなんだよ。何か目標でもあるのか?」


勉「僕は・・・・・・東京の医大に入って父親の後を継ぐのが今の目標だよ。」


寅之助「恋愛方面は何かあるのか?」


勉「正直・・・・・・あまり考えていないかな。」


寅之助「やれやれ、それじゃあいくら経っても卒業なんてできないだろ。」


勉「まあ、卒業までには頑張って彼女を見つけるけどさ。で、勉強はどうなんだ。」


寅之助「あ!」


勉「無駄話に花を咲かせている場合か!時間がないから今からスパルタで行く!」


寅之助「ひえ~!」


勉と寅之助はファミレスの閉店時間までご飯を食べずに勉強した。夜からシフトに入った寝待が勉たちに声をかけた。


寝待「お客さんたち、そろそろ閉店ですぜ。後、脛梶大丈夫か?」


勉「ちょっと厳しくしたらこうなった。」


寅之助「燃えた、ぼくちゃん燃え尽きたよ・・・・・・」


寅之助は真っ白になっていた。


次の日の放課後。寝待を含めた3人で学校内の図書室で勉強をしていた。


勉「脛梶!また間違えている!」


寅之助「はぁ・・・・・・」


寝待「真面野、この答え合っている?」


寅之助「まさか、違うだろ・・・・・・」


勉「うん、合っている。よく解ったな。」


寅之助「そんな!」


勉「僕も解けるまで時間がかかったのに・・・・・・」


寅之助「トップの考えていることはよく分からないな・・・・・・ぼくちゃんは今留年になる可能性と戦っているのに・・・・・・」


寝待「大変だな・・・・・・」


勉「やっぱり脛梶は理数系が苦手だな。このままじゃあ留年になるかもしれない。」


寅之助「・・・・・・もういいや。素直に留年を認めよう。2人とも教えてくれてありが・・・・・・」


勉はノートを出した。


寅之助「何だこれは?」


勉「脛梶の苦手なところをまとめたノートだ。解説も書いているから分からないところがあっても大丈夫だ。」


寅之助「真面野、どうしてそこまでぼくちゃんのことを・・・・・・」


勉「一度頼まれたことは目標を達成するまでやめないからな。脛梶も諦めるなよ。彼女を見つけて卒業したいんだろ。」


寅之助「真面野・・・・・・ありがとう!今までただのがり勉野郎と思っていたけど訂正するぞ!」


勉「まあどう思われていたのはどうでもいいけど・・・・・・とにかく今日はこの問題集を全部解けるまで帰らせないからな。」


寅之助「鬼だ!」


寝待「俺、バイトあるからお先に。」


結局図書室の閉館時間になっても終わることはできなかった。


寅之助「すまない、せっかく教えてもらったのに。」


勉「しょうがないな・・・・・・」


勉はノートを寅之助に渡した。


寅之助「これは?」


勉「僕の自主勉教用のノートだ。脛梶の苦手分野も書いているから参考にしてくれ。」


寅之助「お~心の友よ~!」


勉「お前はジャ〇アンか。でも勉強はちゃんとして、赤点取らないようにしろよ。」


寅之助「おうよ!」


次の日 勉たちが生徒会室にて仕事をしていると。


笑福「よ~みんな元気に頑張っているかい?」


勉「会長、お疲れ様です。」


笑福「おいおい、もう俺は生徒会長じゃないぞ。」


勉「失礼いたしました。」


笑福「まあまあそんな固いこと言いっこなしだぜ。新会計課長。」


団子「ところで門松先輩はこんなところで何をしているのですか~」


笑福「いや、矢立に資料を渡しに来ただけだけどな。」


勉「なら僕たちで代わりに渡してきますよ。今、矢立会長は先生に呼ばれて席を外していますので。」

笑福「ヤッタテ(やったね)☆じゃあ後は任せたね~」


笑福は冷たい空間を作り出しながら去っていった。


華「門松先輩は相変わらずだね。」


卯円「でも門松先輩、昔はここまで明るい人ではなかったらしいわよ。あまりしゃべらなかったらしいしね。」


勉「副会長、それってどういうことですか?」


卯円「昔、門松先輩にとても明るい友人がいたらしい。でも中学3年生の時に持っていた病に侵されて亡くなったのよ。先輩は病気に気づけなかったことをすごく悔やんでいたわ。でも、その友人が最後に書いた手紙に「笑福、笑うことは素晴らしいことだぞ。周りだけではなく自分も明るくなれるんだ。」と書かれていたらしい。病気で苦しいのにそんなことを書くのかって最初はびっくりしていたけど、その友人は先輩に自分が亡くなっても笑ってこれからを生きてくれよって手紙に記したかったということが分かったらしくて。その時から先輩は変わり明るくなったの。その友人が毎日のように言っていたダジャレを先輩が言うようになったということ。」


三八「{涙を流しながら}いい話ですね。」


勉「そうなんですね・・・・・・」


団子「勉くん。感銘受けているの?」


勉「そうじゃないけどさ。やっぱり笑うことも大事なのかと思ってさ。」


華「そうだよ。 ほら、スマイルスマイル。」


華は指で勉の口角を上げた。


勉「む。」


華・団子・三八・卯円「{笑いをこらえる}」


勉「笑うなよ・・・・・・」


団子「いや、勉くんに笑顔は似合わないなと思ってさ。」


勉「不愛想で悪かったな。」


勉は華に口角を上げるのをやめさせた。


勉「じゃあ僕は約束があるのでこれで失礼します。三八さん。悪いけど門松先輩に頼まれた資料渡してくれないかな。」


三八「うん、分かった。」


勉は生徒会室を後にした。


三八「ところでこの資料一体何ですか?」


卯円「あぁ、これな。おそらく12月のあのイベントの企画書だろう・・・・・・」


団子「そのイベントって何ですか~?」


卯円「それは・・・・・・」


勉は学校内の図書室に向かった。そこには必死に勉強している寅之助の姿が。


寅之助「おお来たな。」


勉は笑みを浮かべながら


勉「じゃあ、始めようか。」


寅之助はペンを落とした。


勉「どうした?」


寅之助「お前、急にそんな笑みを浮かべて。今からどんなスパルタ授業をするのか・・・・・・」


勉は真顔に戻って


勉「今日は今までの3倍厳しくする。」


寅之助「やっぱり~!」


そして、テスト本番を迎える。


青菜先生「では、テストはじめ!」


さらさらとペンを滑らせる音が教室内に響く。


寅之助「あれ、この問題・・・・・・分かるぞ。苦手な数学のはずなのに。」


寅之助はテストを一心不乱に解いた。


そして、テスト返却日。寅之助は先生に呼ばれた。


青菜先生「脛梶、やればできるじゃないか。全て60点以上だ。」


寅之助「ありがとうございます!」


青菜先生「まあとりあえず第一関門突破ってところかな。次の学年末も頑張ること。いいな?」


寅之助「お任せください!」


こうして寅之助は無事に赤点を免れることはできた。そして勉は・・・・・・


寝待「お前、テスト何点だった?」


勉「はあ・・・・・・」


寝待「もしかして・・・・・・点数悪かったのか?」


勉「数学、この公式使えばもう数十分早く解けていたのに・・・・・・」


勉は国立大レベルのテストで全教科90点以上の高得点を取り、数学は満点だった。


第14話(完)

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