第17話 クリスマス会
今日は12月24日クリスマスイブ。学校は終業式を迎えた。
青菜先生「これでホームルームを終わらせる。みんな、冬休みだからといって羽目を外しすぎるなよ。」
先生が出て行った後。生徒たちは大騒ぎをした。
男子生徒たち「ひゃっほ~い!冬休みだ!」
男子生徒A「俺もう帰るわ!{教室を出る}」
男子生徒B「何だ?あいつ、もう帰るのかよ。」
男子生徒C「アイツ彼女出来たって、今日デートらしい。」
男子生徒B「はぁ!?いつの間に!!」
男子生徒D「いいよな、彼女持ちは。それに引き換え俺たちは・・・・・・」
遠目でその様子を見ていた勉と寝待は
勉「彼女いる組といない組でテンションが随分違うな。」
寝待「そりゃあそうだろう。ちなみに真面野。」
勉「何?」
寝待「今から俺たち部活のメンバーとか何人かで遊びに行こうと思うけどお前もどうだ?」
勉「あ~お金ないから僕はいいや。」
寝待「分かった。じゃあな、よいお年を!」
勉「ああ。」
寝待は男子生徒何人かと一緒に帰った。
勉「(今日はどうしても外せない用事があってな)」
勉は荷物を持ち、教室を出た。これから昨日のパイ投げ祭りの優勝賞品であるケーキを受け取りに行くのだ。
勉は目的地であるケーキ屋「スイーツ甘(かん)」に到着した。
勉「(ここで華と待ち合わせだっけ。華は先に団ちゃんたちと帰ったからもうついているかと思ったけど?)」
勉はケーキ屋の前で待ったが待ち合わせ時間から数十分過ぎても現れなかった。
勉「(あれ?来ないな・・・・・・) 一度電話してみるか。」
勉が連絡しようとした瞬間電話が鳴った。着信先は華だった。
華「ごめん勉!着くのもう少しかかりそう。」
勉「よかった、事故でもあったかと思った。いいよ、待っているから。」
華「ごめんね。」
それから約5分後。華が両腕に紙袋を持ってやって来た。
華「ハアハア・・・・・・ハアハア・・・・・・ごめっ・・・・・・遅れ・・・・・・」
勉「華、とりあえず息整えようか・・・・・・」
華が深呼吸して落ち着いた後。
華「もう大丈夫。じゃあ入ろう。」
勉「ああ。」
2人は店に入った。カウンターからシェフ姿の男性が現れた。
?「いらっしゃいませ。ご予約の方ですか?」
勉「はい、双子沢学園のものです。」
?「ああ、双子沢の生徒さんね。ちょっと待ってね。」
そのシェフこと「甘居吸汁」さんは、ケーキを取りに奥へ向かった。
華「あの人が店長の甘居吸汁さんね。」
勉「みたいだな。」
しばらくして店長がケーキの入った箱を2つ持ってきた。
吸汁「はい、これが予約の品だよ。」
勉「あの、確か予約をしたのは1つのはずですが・・・・・・」
吸汁「この間のパイ投げ祭り。優勝したのが2人だって聞いたから2人分作るように言われたけど。」
華「ということは私たちに1人ずつってことですか?」
吸汁「そうだよ。」
勉「すみません、ありがとうございます。」
吸汁「それと、少しお聞きしたいのだけど。確か、君の名前真面野くんだったよね。」
勉「はい、そうですが?」
吸汁「もしかして「真面野 優斗(まじの ゆうと)」さんの息子さんかな?」
勉「え!?なぜ父の名を?」
吸汁「そりゃあ有名ですよ。だって優斗さんと言えば双子沢学園の第1期の学年主席の生徒だったのだから。」
勉「ていうことは母も・・・・・・」
吸汁「「才色 兼備(さいしき けんび)」さんだね。彼女も女子学年主席の生徒だったんだよ。
華「ということは勉のお父さんお母さんは双子沢の初代OB、OGだったのですか?」
吸汁「そうなるね。いや~まさかその息子さんに会えるなんて感激だね。僕も初代卒業生だから2人のことはよく知っていたよ。」
勉「なるほど。」
華「その話詳しく教えてください!」
吸汁「う~ん、話したいのはやまやまだけど僕も仕事があるからね。詳しい話は真面野くんの両親に直接聞いてみたらどうだい?」
勉「ありがとうございます。では僕たちはこれで。」
吸汁「2人ともありがとね。」
勉たちは店を出た。
華「いや~いろいろとハプニングがってびっくりしたね。ケーキは1つずつ貰えるし、勉の両親は双子沢の卒業生だって。」
勉「僕も初めて知ったよ。だって2人とも自分のこと全然話さないからさ。」
華「そうなんだ。じゃあさ。ケーキ置いていくから一度うちげ帰ってもいい?」
勉「分かった。じゃあ一緒に行こうか。」
華「うん、ありがとう。」
華のアパートに到着するとケーキを冷蔵庫に入れた。
華「これで大丈夫と。よし、じゃあ行こうか。」
勉「でもいいのか?せっかくのクリスマスイブなのに僕の家で。」
華「いいって。私、彼氏の家でクリスマスを過ごすのに憧れていたんだ。」
勉「そんなものか?」
勉たちは華の家を出発し、勉の家に到着した。
勉「ただいま。」
華「お邪魔します。」
兼備「勉お帰り・・・・・・あら、百合根さんいらっしゃ~い」
華「こんにちは。」
勉「ちょっと母さん。話があるんだけど。」
兼備「あら、どうしたのかな?」
勉たちはリビングで話を聞くことに。
勉「母さん。その話のことなんだけど」
兼備「はい、ココア。温まるわよ。」
華「あったかい~」
勉「うん、うまいな・・・・・・じゃなくて!母さんたちが双子沢の卒業生って本当?」
兼備「え~何のことかしら。」
勉「悪いね、甘居さんに全部聞いちゃってね。」
兼備「あの子口軽いわね。知ってる?パイ投げ祭りが始まったきっかけは初代のクリスマスイベントがきっかけなのよ。」
勉・華「初代のクリスマスイベント?」
兼備「お母さんたちが高校1年生の時、彼女がいない一人の生徒が、彼女持ちの1人に切ったケーキをぶつけたのよ。」
勉「え、でその後は・・・・・・」
兼備「ぶつけられた人もその生徒に向かってケーキを投げたのよ。でもコントロールが悪くて隣にたまたまいた女子生徒に当たったの。そして、そこからフードファイトが始まってイベントはメチャクチャ。で、その最初に投げた人が甘居くんだったの。」
華「え!あの甘居店長が!」
兼備「投げたきっかけが、彼女がいない腹いせってことなの。困った話よね。学校は退学処分を出したけど、お父さんが無くしてくれたのよ。」
勉「すごいな・・・・・・」
兼備「そこで今の学長でもある鶴野校長が、また被害を増やさない為にクリスマスイベントをやめてパイ投げ祭りを始めたってこと。そして、景品は甘居くんの実家がケーキ屋という事で、そこの高級ケーキを渡すという事になったのよ。」
華「そういう過去があったのですね・・・・・・」
勉「話を元に戻すけど、母さんが女子の特待生って聞いたけど。」
兼備「確かに私が特待生だったわね。」
勉「やっぱり二人が会ったのは生徒会で?」
兼備「いや、その時生徒会は希望者が入ることになっていたの。」
華「では、御二人が会ったのは?」
兼備「実は優秀生徒として会う機会があったの。でもね、正直その時のお父さんは私のタイプじゃなかったのよ。」
勉「え!?」
兼備「私が好きだった人は別にいてね。お母さんはその時その人と付き合っていたのだけど、ある日、その彼氏に浮気が発覚してね。それが理由で別れてしまったのよ。」
華「かわいそう・・・・・・」
兼備「{ココアを一口飲む}ショックだったわ。そしてそのショックが原因で精神病になってしまったのよ。しばらく家で寝込んでいたけどその時にうちに来てくれたのがお父さんなのよ。」
勉「母さんの家に行って父さんは何をしたの?」
兼備「たわいもない話をしただけよ。でもその時から少しずつ、お父さんに惹かれていって思い切って告白したのよ。向こうは最初、戸惑っていたのだけど。付き合うことになったのよ。それから今まで、浮気もなく私のことを愛してくれたわ。それが本当に嬉しかった。」
勉「知らなかった。そんな過去があったなんて。」
兼備「だから、勉も百合根さんを泣かせることしちゃだめだからね。」
勉「はい!絶対にしません!」
華「あの・・・・・・勉くんのお母様。」
兼備「あら、私のことは御母さんと呼んでいいのよ。」
華「実は、私整形手術をしていまして。この顔は偽りなんです。」
兼備「そうなの?」
華「付き合う上でこのことは言わなくてはいけないと思いましたので。」
兼備「でも、そのことを学校は知っているの?」
華「はい、面接のときに先生にはすべて伝えました。」
勉「え、そうだったのか?」
華「言わないと一生後悔すると思ってね。でも、勉には言えなかった。もしばれたら嫌われると思いまして。」
兼備「もしかして夏休みの間勉の機嫌が悪かったのって」
華「はい、私が原因で・・・・・・」
兼備は勉を激しく睨み付けた。
兼備「つ・と・む・・・・・・」
勉「はい!申し訳ありません!」
兼備「あんた女の子を泣かせちゃいけないって言ったでしょ!」
勉「あの時の僕はいろいろありまして・・・・・・」
兼備「言い訳無用!」
勉「すいません!」
兼備「まあいいわ。でも私は気にしないわ。顔も大事だけど一番大事なのはその人の中身なんだから。」
華「御母さん・・・・・・」
兼備「そうだ、今からご飯でしょう?勉の部屋に料理持っていくから今夜は2人で過ごしなさい。」
勉「母さん!?」
兼備「もうそろそろお父さんも仕事が終わる頃でしょうし。」
華「ありがとうございます。」
勉「大丈夫かな・・・・・・」
華「何が?」
勉「いや、今更ながら緊張してきた・・・・・・」
兼備「男ならしゃんとなさい!」
兼備は勉の背中を思い切り叩いた。
勉「痛!」
兼備「ほら、早く行きなさい。百合根さん待っているわよ。」
勉「分かったよ・・・・・・じゃあ、行こうか。」
華「うん、お願いします。」
勉の部屋にて
華「勉の部屋に来るのって2回目だよね。」
勉「そうか、僕が風邪で寝込んだ時か。」
華「どうだった?私の看病は?」
勉「あっ・・・・・・あの時は、自分で食べられるのに華が無理やり食べさせたがっていただろうが!」
華「・・・・・・イヤだった?」
勉「・・・・・・嬉しかったよ。」
勉と華はしばらく黙り込んでいた。その沈黙を破り華が話題をケーキに変えた。
華「そ、そんなことよりケーキ食べようか!」
勉「ああそうか!」
「よし、出すぞ。」
勉は箱からケーキを出した。中から白の生クリームとイチゴの乗ったホールケーキが出てきた。
華「おいしそう・・・・・・」
勉「確かにおいしそうだな。さすが人気シェフ、数カ月待ちは仕方ないな。」
華「ナイフ貸してくれる?切り分けるから。」
勉「ああ。ありがとう。それと華。」
華「何?」
勉「いつまでコート着ているんだ?」
華「{ナイフを置く}えっと、これは・・・・・・」
勉「暖房入っているから脱いだら?」
華「はあ・・・・・・しょうがないな・・・・・・」
華はコートを脱いだ。
勉「え・・・・・・華、その衣装って・・・・・・」
華の格好は赤白のミニスカートサンタコスチュームだった。
華「じゃ~ん!いいでしょ、着てみたかったのよ。サンタコスチューム。」
勉「ふ~ん(かわいい!可愛すぎるだろ!)」
華「反応ないな・・・・・・じゃあ勉もこれ着てみて」
華は男性用のサンタコスチュームを勉に渡した。
勉「これ、僕が着るのか・・・・・・というか何でこの衣装を持っているんだ?」
華「セットで買うと安くなるから思い切って買っちゃった。」
勉「まあ、しょうがないか・・・・・・分かった。着替えるからちょっと待ってくれ。」
勉は着替えるために隣の部屋に行った。
華「さてと、今のうちにケーキ切り分けておこう。」
華はケーキを切り分けた。
華「後は待つだけ・・・・・・あれ、あそこに小学校の卒業アルバムが・・・・・・」
華が卒業アルバムを手に取った瞬間ドアが開いた。勉がサンタ服を着て戻ってきたのであった。
勉「お待たせ、着替えてきたぞ・・・・・・」
華「あっ!勉、これは!」
勉「僕の小学校の卒業アルバムか。確かこれ母さんが見つけたんだよな。」
2人は卒業アルバムを見た。
華「昔は眼鏡かけてないんだね。」
勉「かけ初めたのは中学に入ってからだな。」
華「やっぱり眼鏡をかけていないと雰囲気が違うわね。」
華「あ、このショートカットの女の人かわいい。誰なの?」
勉「僕が人間嫌いになるきっかけを作った人・・・・・・」
華「ごめん・・・・・・」
勉「別にいいよ。そいつは転校したし。もうそれ以来会っていないからな。」
華「(でも・・・・・・この人、どこかで見たことが)」
華がその女性の名前を調べようとページを捲ろうとすると、勉が静かにアルバムを閉じた。
勉「はい、この話は終わり。ケーキ食べるか。」
華「・・・・・・うん。」
華は切り分けたケーキをお皿に置いた。
勉・華「いただきます。」
2人はケーキを食べ始めた。
勉「うまい!」
華「私、こんなにおいしいケーキ食べたの、初めて・・・・・・{涙を流す}」
勉「涙を流すほど!?」
ドアが勢いよく開いた。
兼備「2人とも、ご飯できたわよ!」
勉「あ、母さん・・・・・・」
兼備「勉!アンタあれほど女の子を泣かすなって!」
勉「誤解だ!」
兼備「かばち言うな!!」(※鳥取弁で「屁理屈言うな」という。)
勉「ぎゃ~!」
その後、華から話を聞き誤解は解けた。2人は兼備の持ってきたフライドチキンやオードブルなどの料理を食べていた。
勉「ご飯、おいしいな・・・・・・」
華「うん、とてもおいしい・・・・・・大丈夫?」
勉は叩かれた左頬をさすった。
勉「母さんに叩かれたの何年ぶりだろうか。」
華は勉の頬をさすった。
勉「!」
華「これで少しは治まったかな?」
勉「うん・・・・・・ありがとう・・・・・・{顔を赤らめる}」
勉たちはご飯を食べ終わった後。勉は引き出しからプレゼントを取り出した。
勉「そうだ、これ、クリスマスプレゼント。」
華「あっ、ありがとう。何だろう?」
華がプレゼントを開けてみると。
華「これって、ネックレス?」
勉「店でいいものを見つけてな。」
華「しかもクローバー・・・・・・色的にアクアマリンだね。もしかしてお揃いにしようとして・・・・・・」
勉「えっと、ちょっと違うんだよな。そのクローバー葉が5枚あるから。」
華「本当だレアだ!でも5つ葉のクローバーってどういう意味なの?」
勉「きっと更なる幸運を意味していると思う。と言ったが。実は意味は分からない。」
勉はスマホで調べた。
勉「・・・・・・・・・・・・。」
華「どうしたの?」
勉「華、怒らない?」
華「怒らないよ。」
勉「五つ葉になると財運、金運の上昇らしい・・・・・・」
華「お~私にぴったりだね! ありがとう!」
勉「よかった・・・・・・」
その時、窓がガタガタ震えている。
華「風強いね。」
勉「そう言えば夜から吹雪が吹くって。華、そろそろ帰ったらどうだ?風が本格的に強くなる前に」
華「そうだね。」
華の携帯が鳴った。
華「はい、お母さん? 帰れないの?うん、今真面野くんの家だけど。 えっ!」
電話を切った。
勉「御母さんからか?」
華「うん、どうやらこの吹雪で電車が止まったみたいから帰れないって。」
勉「そうか、それは大変だな。」
華「それと、このまま強くなるみたいだから。勉の家の人に言って泊めてもらいなさいって。」
勉「え・・・・・・。」
第17話(完)
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