第16話 決戦パイ投げまつり(後編)

前回のあらすじ、双子沢学園高校名物「パイ投げ祭り」が開始された。勉たちは優勝を目指し頑張るものの、やられっぱなしの華と共に優勝を目指し協力することに。


華「よし!」


華はクリームでぐしゃぐしゃになった緑ジャージを腰に巻いた。後、顔バレを防ぐため勉から借りたタオルを頭に巻いた。


勉「傍から見るとペンキ職人みたいだな。」


華「ペンキ職人って・・・・・・何その例え?」


勉「白で汚れているから・・・・・・」


華「あっ、納得。」


勉「それはともかく今から作戦を伝えるぞ。」


華「はい、コーチ!」


勉「僕が前衛で華は後衛で攻撃しよう。パイは極力よけてくれ。もし避けられなかったら腕でガード。分かったな。」


華「はい、コーチ!」


勉「それとな、華。」


華「はい、コーチ!」


勉「そのコーチっていったい何だ?」


華「てへっ、言ってみたかっただけ❤{舌を出す}」


勉「・・・・・・・・・・・・。」


勉はその場を去った。


華「ちょっと~無視しないでよ~!」


勉と華は階段を降り、他の生徒がいないか確認した。


勉「誰もいなさそうだな。」


華「ちょっと待って、男の人の声が聞こえるけど。」


寅之助「全く、せっかくのパイ投げ祭りって言うのに人が全然いないじゃないか。」


点睛「きっと見つかりますよ、寅之助様。」


華「{小声}向こうに脛梶くんたちがいるね。」


勉「{小声}ゆっくり近づこう。」


2人が寅之助たちの後ろをゆっくり近づこうとしたが、華が床のクリームを踏んで転んでしまった。


華「きゃあ!」


寅之助「あっ!百合根嬢!」


勉は2人が華に集中している間、近くの壁に隠れた。


勉「(最悪だ、よりによって華が見つかるなんて!)」


華「(どうしよう、見つかっちゃった!それにタオルも取れた。)」


点睛「寅之助様今がチャンスです!」


寅之助「バカ野郎!百合根嬢の美しい顔を汚してたまるか!」


点睛「そんなこと言われましてもこれはそういうゲームですし・・・・・・」


華「あの~」


寅之助「は~い」


華は振り向いた2人の顔にパイをぶつけた。


華「ごめんね、じゃあね。」


華は急いでその場を去った。


点睛「やられた! 寅之助様早く行きましょう!」


寅之助「あはは・・・・・・けっこう悪くないかも。」


点睛「寅之助様!」


華「ハアハア、何とかまいた・・・・・・」


勉「よかった、一時はどうなるかと思ったけど。」


勉は次の標的を探した。


華「あそこにいるの矢立会長じゃない?一人か・・・・・・」


壁に隠れて様子を見た。


勉「待て、会長ミサンガ付けているぞ。点数を稼げるチャンスだ。」


華「そうだね・・・・・・ 勉危ない!」


華が勉をかばった。パイが華の胴体に当たった。


勉「華!」


卯円「ちぇっ、せっかくポイントが増えると思っていたのに。」


勉「塞翁副会長!」


華「ジャージ脱いだのに体操服すぐ汚れちゃった・・・・・・」


勉「もしかして、これも先輩たちの作戦ですか!?」


卯円「そうよ。さすが真面野くんね。」


勉「(会長で誘い出して副会長が当てる。このコンビネーションは厄介だね・・・・・・)」


華がパイを投げつけた。しかし、卯円はその攻撃をよけた。


華「外れた!」


卯円「外れたんじゃなくてよけただけよ!悪いな!」


華「{ニヤリ}」


卯円「なぜ笑う?」


卯円の背中に冷たい感触が


卯円「冷たっ!誰!?」


勉「僕ですよ。」


卯円「真面野くん、あなたにしてはずいぶん先走ったわね。男性は女性に当てたら5秒間動けなくなるのよ。」


勉「そうですね。たしかに僕は副会長に当てました。5秒間ここを動けません。」


華「でも、私はもう先輩に当てられました。私が壁になれば勉くんには当てられない!」


卯円「そうか、あの時真面野くんが当てたのはこういう事だったのね。」


勉「5秒たちました。」


卯円「つまり私は2人の策にはまったという事ね。」


華「勉、そのまま私の後ろに隠れて。」


勉「すまない、助かる。」


卯円がパイを投げようとすると華が勉をかばうため、当てることができない。


卯円「(くっ!華さんが邪魔をして当てることができない!)」


卯円が足元のクリームに足を滑らせた。


卯円「痛っ!」


華 副会長、すいません!


華は卯円の顔にパイをぶつけた。


勉「よし、次は会長だ!」


華「行こう!」


白羽「げ!真面野と百合根さん!?」


華「副会長は倒しました!次は会長です!」


白羽「てかお前らいつの間に協力していたのか!? もしかしてお前ら付き合っているのか?」


勉・華「なっ!」


白羽「図星だろ!動きが止まっているじゃないか。」


勉・華「・・・・・・・・・・・・。」


白羽「(ラッキー適当に言ったことに動揺している今がチャンス!)」


白羽がパイを構えた瞬間。


勉・華「好きなわけないでしょうが!!」


白羽「え!?」


2人が投げたパイが白羽の顔面に直撃した。


白羽「ぶっ!(好きじゃないって・・・・・・2人とも息ピッタリじゃないか・・・・・・)」


こうしてミサンガ持ちの会長副会長を攻略した2人は・・・・・・その後ほかの生徒から集中砲火を受けていた。


男子生徒A「おい、ミサンガ持ちがいたぞ!」


華「こい!」


男子生徒B「あそこに真面野がいるぞ!」


勉「悪いがすぐに終わらせてやる!」


そんな中パイをぶつけ続け大量得点を獲得したが・・・・・・


勉「あ、こいつらはもう当てた!」


華「あっちの人も・・・・・・」


2人はぶつける相手がいなく、悩んでいた。


放送(笑福)「残り、20秒で~す。」


勉「このままでは・・・・・・」


華「もう、だめなの・・・・・・?」


勉「(正直今のままだと優勝は厳しい・・・・・・あと10点ほどほしいがもう人がいない・・・・・・)」


華「(せっかく勉とここまで頑張ってきたのに・・・・・・)」


しかし、2人の頭にあることがひらめいた。


勉「(そういえば、まだ当てていない人がいたな・・・・・・)」


華「(まだ当てていない人・・・・・・あっ、1人いた。)」


放送(笑福)「残り、10秒。」


勉「(まだ、華にあててないよな・・・・・・)」


華「(勉に当ててないよね。)」


勉・華「(今、顔に当てたら大量得点はもらえるけど、こんなことして本当にいいのかな? でも、時間が無い!)」


放送(笑福)「残り、5秒・4・・・・・・」


勉・華「(しょうがない、当てたら終わった後謝ろう。きっとゆるしてくれるよね。)」


勉と華はそれぞれの顔面めがけてパイを投げつけようとしたが


勉・華「ゴメン! え!?」


時すでに遅し、2人の投げたパイがそれぞれの顔に当たり、2人の顔にべっとりとクリームが付いた。その瞬間終わりのチャイムが鳴った。


放送(笑福)「終了!」


勉と華はあまりの衝撃にそのまま固まっていた。顔についた紙皿が落ちて、真っ白になった2人の顔が露わになった。


勉・華「・・・・・・・・・・・・。」


しばらく沈黙が続いた。


勉・華「・・・・・・・・・・・・ぷっ。 アッハハハハハ!」


勉と華は思いっきり笑った。


勉「{笑いながら}もしかして華も同じこと思ったのか!」


華「{笑いながら}思った思った!でも勉もやろうとは思わなかったよ!」


勉「{笑いながら}僕も同じだよ!後で謝ろうとしたけどこれだと謝る気もなくなったな!」


華「{笑いながら}私も!あ~おかしいお腹よじれる!」


勉・華「あ~あ!」


勉「華、顔真っ白だぞ」。


華「勉だって。 後・・・・・・勉の笑った顔見るの、初めて見た。」


勉「そうだな、僕もここまで笑ったの何年ぶりだろう・・・・・・」


青菜先生「おいお前ら!いつまでそこにいるんだ!早く洗って来い!」


華「すいません!」


勉「すぐ行きます!」


こうして全員の汚れを落とした後、制服に着替えて体育館に集合した。


寝待「結果はどうなるんだろう。俺あまりあてられなかったからな。」


勉「結果は別にどうでもいいだろう。」


寝待「結局お前どこに行ってたんだ?」


勉「まあ、色々と・・・・・・」


一声「それでは、結果発表を行う。 優勝者は・・・・・・・・・・・・」


生徒たち「{ゴクリ・・・・・・}」


一声「1年B組、真面野勉!」


生徒たち「え~!!」


勉「え、僕が優勝?」


寝待「おめでとう真面野!」


一声「今回の1位は・・・・・・なんと2人いる!」


生徒たち「え~!!」


一声「もう一人の優勝者は・・・・・・・・・・・・1年A組、百合根華!」


華「私が・・・・・・」


団子「優勝おめでとう!」


一声「じゃあ2人ともステージに上がってくれたまえ。」


勉と華はステージに上がった。


寅之助「(真面野の奴、羨ましすぎるぞ~!)」


一声「2人とも優勝おめでとう。」


勉・華「ありがとうございます。」


一声「しかし困ったな・・・・・・1人だけなのに2人優勝するなんて初めてだから。」


勉「なら、僕はいいので百合根さんに景品を渡してください。」


華「そんな、悪いですよ。真面野くんにお願いします。」


一声「まあまあ、そこで争わないで。では、半分分けにするという事でいいかな?」


勉・華「分かりました。」


こうして、パイ投げ祭りは勉と華の同時優勝で幕を閉じた。勉と華は人目のつかない体育倉庫に集まった。


勉「あのさ、明日のクリスマスイブ・・・・・・暇かな?」


華「え・・・・・・」


勉「あ、もしかして何か予定があった?」


華「いや・・・・・・勉から誘われるなんて思わなかったから。」


勉「いつも華からだったからさ、僕も変わろうと思ってね。」


華「やっぱり、変わったわね。 最初に比べて丸くなった。」


勉「{焦る}いや・・・・・・だからさ・・・・・・」


華「明日は特に予定ないからいいよ。」


勉「そうか、よかった。」


華「だったらさ、明日は勉の家にお邪魔してもいいかな?」


勉「ああ・・・・・・ ふぁ!?」


第16話(完)

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