143話 トム・グランドマスターに呼び出される



------(テンタ視点)------☆




「ありがとうございました」×2


ジョンさんと奥さんのエリザベスさんが深々と頭を


下げ言う。


 俺達は、『オーダー服のバリバリー』での支払いを


済ませ店を出た。


支払金額は……全部で15万クリスタル(約300万円)


フロックコートと黒のパンツの生地代と仕立て料で10万


クリスタル(約200万円)で、ブーツの方が5万クリ


スタル(約100万円)、シャツとスカーフはサービス


(無料)だと言うことだった。


 ”たっけ~”(高い)とは思うが、なんせオーダーなので、


仕方ないのかもしれなが、これでもまだリーズナブルな方ら


しい。


なんせ王族や貴族の着る礼服に使われる生地だと、生地だけで


なんと!50万クリスタル(約1千万円)はするそうだ。


恐らく、あの時ジョンさんが並べた生地の中にそれがあった


と思うと、顔が引きつる俺だった。


とは言え、”高い”と思いつつもそれが払えてしまう今の


自分が居る。


つい半年前まで普通の高校生。


故に、数千円の買い物でも、何日も悩んだ末に買うような


俺が、今や何百万もする服を即決で買えてしまう。


(ホント、不思議だわ)














 さて、『オーダー服のバリバリー』を出た俺達は、マヤ


(デーモンレディー)さん達をホテルへと送り届ける。


『キングダムホテル』この聖クリスタル国一の高級ホテル。


そこの最上階のスイートルームにマヤ(デーモンレディー)


さん達は泊っているのだ。


もちろん、それは今回の感謝状の副賞で、ここに1ヶ月


の滞在費及び、食事代、それにこのホテル内にある劇場で


の観劇やコンサートの費用も含まれているそうだ。


(結構豪華な景品だね)



 ホテルの前に馬車が着き……。


「じゃぁ、またね」


「またな」×3


とマヤ(デーモンレディー)さんに続いて手をあげ言う。


エディー(ザマタン)さん、ジェシー(イマタン)さん、チャド


(ガマタン)さん達。


そして俺の肩に載る三毛猫オトアの頭を撫でながら、


「またね、オトアちゃん」


「またお昼食べに行くわねぇ」


とマカナ(マリーナ)さん、それにナイア(トリン)さん。


そんな皆に


「はい、お待ちしていますw」


「あ、水曜まではこっちに居ますからね」


三毛猫オトアと俺が皆に手を振りながら言い、皆と


別れた。


「で、兄い~今晩の晩飯どうします」


と皆が『キングダムホテル』の中に入るのを確認すると、


レツ(ケンタウロス)さんが俺に尋ねてくる。


 (まだ、夕食には早いが……。)


「この辺りだと、色々テイクアウトのお店もありますから、


久しぶりになんか買って帰りますかw」


と俺が返すと、レツ(ケンタウロス)さんの隣に居たダイ


(ケンタウロス)さんが、


「久しぶりに肉がいいです肉w」


と興奮気味に言って来る。


 実は、ミリー(トム妻)さん達の留守中、残されたメンバーで


誰一人料理が出来る者が居ない。


 なので、お昼は喫茶ゴンのオムライスやカレーなどのメニュ


ーから、余ったものを皆のお昼ご飯とし、夕食は取引先のパン屋


さんで買ったいろいろなパンを夕食に食べたいたのだが……。


色々な菓子パンや総菜パンがあると言うものの、7日も食べると


皆少々飽きてきたって言う感じだった。


「じゃぁ、吉田屋(牛丼店)なんかどうですw」


と俺の肩に載る三毛猫オトアがダイ(ケンタウロス)さん


に言うと、


「やったー!さすがねーさん話が分かりやすねぇw」


とダイ(ケンタウロス)さんが万歳しながら喜ぶが、


その隣のレツ(ケンタウロス)さんが喜ぶダイ(ケンタウロス)


さんに、


「おい、異世界の食べ物は高いんだぞ、そんなもん買ったら


ミリーの姉御にどやしつけられるぞ!」


と血相変えて言うが、


「いや、ミリーさんから預かったお金で買ったらびっくりされる


でしょうけど、今回はレツさんダイ(ケンタウロス)さんが、私


達のわがままに付き合ってくれたんですから、今夜の夕食は私と


テンタ君のお金から払いますよ……テンタ君いいでしょw」


と俺の肩に載る三毛猫オトアが言うので、俺は


「そーだな、オトアが言う通りだ、2人共今日一日頑張てくれ


たんだから、今晩の夕食は俺達が持つよw」


と答えると、


「ヤッターぜ、肉が食えるぅ~」


と猛烈に喜ぶダイ(ケンタウロス)さんの横で、


「しかし……」


と少し困惑気味に考え込むレツ(ケンタウロス)さんに


三毛猫オトアが意地悪そうな顔で、


「じゃぁ、レツさんだけパンでいいの?」


と問いかけると、”えっ”って驚き、


「……いやそりゃあ、あっしも牛丼の方が食べたいです」


と小声で言うのを聞いて、三毛猫オトアが、


「じゃぁ、そうしましょw、あっ、でえもヴィクセン(狐人)


さんはどうなんだろう?」


とマネージャーのヴィクセン(狐人)さんの名前を口にすると、


ダイ(ケンタウロス)さんがすかさず、


「そりゃ~あいつも大喜びするはずですぜぇ」


と言うが、俺は三毛猫オトアに、


「念のため、念話で聞いてみろよ」


と言うと、早速、三毛猫オトアは念話でヴィクセン(狐人)


さんに連絡を取ったら……大喜びだったそうだ。


 まぁ、レツ(ケンタウロス)さんが遠慮するのはわかるんだけど


ね。


なんせ、ミクドナルドもそうであったように、俺達の世界の食べ物は


兎に角高い、今回の吉田屋(牛丼店)の牛丼でも元の世界の約10倍


の値段がするんだから。


 でも、そんな値段を簡単に払えてしまう自分が居た。


(元の世界に戻ってもこんな金銭感覚のままだと怖い)


と思う俺だった。












-----(第三者視点)------☆





 テンタ達の式典が終わった3日後、聖クリスタル国の冒険


者ギルド本部には、トム(バルジャン)や妻のミリーに娘の


シャリーやタミーそれに、ガイゼルの妻アナの姿があった。


トムのリハビリがてら 冒険者育成用の砦『ジャスタン』で、


妻のミリー達とゴブリン狩りを終え、今もどて来たところ


だった。


 帰って来たトム(バルジャン)達は上機嫌だった。


それは、たまたま逃げるゴブリン達を追っていたら奴らの


巣を見つけ、その何千のゴブリンや、数体のゴブリンジェ


ネラルやゴブリンキングを倒し、その巣にあった金銀財宝


を手にしていたからだった。


 普通、何千のゴブリンに加え、その上位体のゴブリンジェ


ネラルやゴブリンキングをトム(バルジャン)率いる数人の


メンバーで、殲滅するなどあり得ないのだが、本来のブランチ


能力を取り戻したトム(バルジャン)には、造作もなかった


ようだ。


 時刻はお昼前、


「パパお腹減った~w」


とトムの娘の一人のタミーが言うと、


「おっ、そろそろお昼か」


とトム(バルジャン)が答えると、妻のミリーが、


「じゃ、ここの食堂で軽く食べてから帰りましょうかw」


とタミーに言うと、もう一人の娘のシャリーも、


「うん、そうしよう~」


と言うと、トム(バルジャン)が、


「おう、先に行っててくれ、俺はこのお宝を換金してから


行くから」


と軽く答えると、妻のミリーとガイゼルの妻アナが、


「じゃぁ、先に行ってるわねwあなた」


「先に行ってるだべ」


と答え、トムの娘のシャリーとタミーと共に冒険者ギルド


本部にある食堂へと向かうのだった。


そんな妻達を目で見送ったトム(バルジャン)は、独り


換金所に向かう。


「これを換金してくれw」


\\ジャラジャラジャラ//


とトム(バルジャン)は、換金所のカウンターに自身の小槌を


振るい、ゴブリンの巣から持ち帰った宝物を出す。


「金貨に、銀貨、魔晶石に……短剣etcと」


カウンターに居た冒険者の職員はトムが出した宝物を手分けして


種類別に区分けしていると、換金所の職員ではない別の職員が


トム(バルジャン)に近づき声を掛ける。


「バルジャン様ですか」


その問いにトム(バルジャン)が、


「ああ、」


と答えると、その職員は言う。


「あのー本部長(グランドマスター)が、お呼びです」


その言葉に、


「んっ?なんの様だろう」


と職員に尋ねると、聞かれた職員は首を傾げ、


「さぁ?」


と答えるので、この換金と昼めし食ったら行くからと


伝えといてくれ」


と答えると、その職員は


「かしこまりました」


と頭を下げトムの前から去って行くのだった。














 トム(バルジャン)は、換金の後、妻のミリー達と冒険者ギルド


本部にある食堂で合流し、昼食をとると、妻のミリー達に言う。


「もう少ししたらレツ(ケンタウロス)達が迎えに来るだろうから、


悪いが、お前ら先に帰っといてくれ」


と告げる。


その言葉に妻のミリーが、


「何かトラブルでも?」


と聞くと、トム(バルジャン)は、首を傾げ、


「わからん、わからんが……本部長(グランドマスター)から呼び出


しがあってな」


と言うと、


「まぁ、グラマスの呼び出しじゃぁ~断れないもんね」


ミリー(トム妻)がさらっと返すと、


「ああ」


とミリー(トム妻)の言葉を肯定する。


「わかった、レツ達がこっちに来たら先に私達帰るわね」


とのミリー(トム妻)の言葉にトム(バルジャン)が、


「悪いな」


と返すと、ミリー(トム妻)は、ニッコリ笑って、


「いいのよw」


と返すと、その横に居たアナ(ガイゼル妻)が、


「帰ったら、お宝を得た祝杯を皆であげるべぇから、


なるべく早くに帰って来るだよ」


とトム(バルジャン)に声をかけ、その言葉にトム


(バルジャン)は、にっこり笑って、


「ああ、そのつもりだw」


と答えるのだった。













 本部長(グランドマスター)の山武尊(エレメンタリーマン)の部屋にて、グランドマスターの部屋のソファーに


向かい合わせで座るトム(バルジャン)と山武尊(エレメンタリーマン)。


「で、要件とは?」


とトム(バルジャン)がグランドマスターの山武尊(エレメンタリーマン)に尋ねると、


「うん、その前に、お前達が出かけてる間に、テンタに教会


から感謝状が出た」


と切り出すとトム(バルジャン)は、


「ほう~、こないだの悪魔殲滅の褒賞でか?」


と聞き返すと、山武尊(エレメンタリーマン)は頷き、


「ああ、」


と答える。


「って事はまた何か副賞でもあるのか?」


と再度、山武尊(エレメンタリーマン)に尋ねると、


「ああ、今度の副賞は西方4ヶ国一周旅行だ」


と答えた。


「エ―っ、西方4ヶ国一周旅行!?そんなもんが


褒賞と言えるのか?」


とトム(バルジャン)が驚き聞き返すと、


「なんでも、光の精霊エードラム様の話によると、2人は


2人っきりでの旅行がお望みのようだ」


と山武尊(エレメンタリーマン)が答えると、


「ほう~エードラム様がねぇ~」


と納得したような言葉を言うが……。


急に前のめりになって山武尊(エレメンタリーマン)に言う。


「どうせ、悪魔がらみの事件があるんだろう?大丈夫か2人


で」


その問いに、山武尊(エレメンタリーマン)も少し前のめり


なって、トム(バルジャン)に、


「大丈夫かどうかは俺としては何とも言えない、ただ、


教会として悪特隊西支部のメンバーを護衛に付けるし、冒険者


ギルドとしては、支部長のアロム達に加え、チーム『アメヒロ』


やチーム『ガシャーン』を西支部に滞在させようと思っている。


それに、万が一の時はエードラム様が柱(はしら)達を召喚で


きるので、大丈夫だと言うことだが……」


と言う説明にトム(バルジャン)は、


「なら、テンタは俺のチームの一員だから俺達も行っても


いいんじゃねーか」


と聞き返すが、”それは”って顔をした山武尊(エレメンタリーマン)が、


「いや、お前やガイゼルは転生者でブランチも持っているから


問題ない、それにお前の奥さんのミリーやガイゼルの奥さんである


アナもイデア人ではあるがA級だから心配はしないが、問題は


お前の娘であるシェリーとタミーだよ」


と言い切ると、


「んっ?、あいつらだってB級の冒険者だし、今までも悪魔とも


戦った経験はあるんだぜ、なぜ2人を問題視するんだ」


と聞き返すと、”だから”って顔で山武尊(エレメンタリーマン)


が、


「いや、確かに悪魔との戦闘経験があるのはわかるが今度、


出張ってきそうな悪魔は恐らく公爵級だ。せめて2人がA級なら


許可が出せるんだがな……」


と言うと、トム(バルジャン)は、”ふー”と息を吐き黙ってしまう。


そこで山武尊(エレメンタリーマン)が、


「そこで、これからのことも考えて、彼女らを早くA級にしてもら


いたいてことで、北支部に行って2人を鍛えてもらいたいのんだよ」


と言うと、トムが”おいおい”って顔で、


「鍛えるんなら別に北支部でなくてもいいんじゃないか?あそこは


強い魔物と言えば死霊系の魔物ばかりだぞ、行くだけ赤字だと


言うのにか?」


と言い返すと、山武尊(エレメンタリーマン)は”確かに”って


顔で、


「まぁ、正直北支部でなくてもいいんだが、北支部では今冒険者不足


でな……なのに悪魔が活動してから何故か死霊の魔物達も急に活発化


しだしてなギルマスの『シスタームーン』からも応援要請が来ている


んだよ。」


と言うが、トム(バルジャン)は”ふぅ~”と息を吐くだけで何も


返事をしない。


そこで、山武尊(エレメンタリーマン)がにこやかに言う。


「ギルドからクエストの報奨金……5百万クリスタル(約1億円)


出すからさ~頼むよトム」


その報奨金の額を聞いてトム(バルジャン)は目の色を変え、


「えっ、あっ・やるやる」


と言うのであった。

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