142話 『来々軒』と調査2と『バリバリー』
------(テンタ視点)------☆
馬車に揺られること数分。
今俺達が向かっているのは、教会やギルドがあるこの国のメイン通り
の2本ほど細い通りを東側に行った南北に通る道。
冒険者学院から南に延びる通りなのだが、裏通りと言ってもメイン通り
同様の道幅はある。
ただ、メイン通りに暮れべれば人通りは少ない。
この道には、前に行った『ミクドナルド』や『キンタッキー』
(フライドチキン)に吉田屋(牛丼店)などの異世界の料理のお店が
多い。
これは、冒険者の多くが転生者で占めているのも原因があるのかもし
れないが……。
でも、今から行く店はそんなファーストフード店ではなく、異世界
の料理には違いないが、マヤ(デーモンレディー)さんをはじめ、
エディー(ザマタン)さん、ジェシー(イマタン)さん、チャド
(ガマタン)さんにマカナ(マリーナ)さん、それにナイア(トリン)
さん達が冒険者になるため、冒険者学院に通っているころによく行った
なじみの店、その名も『来々軒』。
所謂、昭和の街中華って感じのお店だそうだ。
「着きやしたよ、兄い」
馬車の正面の覗き窓からレツさんの声が聞えた。
「はい」
俺はそうレツさんに返事をし、馬車後部の扉を開けながら馬車を降りた。
それに続いてマヤ(デーモンレディー)さん達も降りた。
それを確認した俺は、レツさん達に
「じゃぁ、学院の馬車の待機場でw」
と言い、それを聞いたレツさんとダイさんが馬車を発進しようとした
時だった。
「ちょっと待ってぇ」
とレツさん、ダイさんに声を掛けるマヤ(デーモンレディー)さん。
そして、声を掛けるといきなり”ガラガラガラ”と店の戸を開け店
に入って行ったのだが、ものの数秒で、手に紙袋を2つ持って店から
出てきて、その持っていた紙袋をレツさん、ダイさんに、
「はいw」
と渡した。
渡されたレツさんダイさんは”キョトン”とした顔のままそれを
受取るが……。
「姉さんこれは……」
とレツさんが恐る恐るマヤ(デーモンレディー)さんに聞くと、
マヤ(デーモンレディー)さんはにニッコリ笑いながら、
「あなた達のお昼の代わりよw」
返す横でナイア(トリン)さんがレツさんに
「ここの唐揚げは絶品だから、おいしいよw」
と付け加えた。
どうやら袋から香ばしい匂いがしていたのは袋いっぱいに入った
唐揚げのようだ。
そして、マヤ(デーモンレディー)さんはさらに
「あと、こっちの袋には肉まんが入ってるからねぇ、待機場で
2人で食べてちょうだいw」
と言うと、レツさんダイさんが、
「えっ、はい」
「ありがたく頂戴します」
と恐縮気味にお礼を言うのだった。
レツさんダイさんが引く馬車を見送った後、
「さー私達も中に入って早く食べよう~」
とナイア(トリン)さんが急かすので、俺達も早速、『来々軒』
の中に入るのだった。
◇
-----(第三者視点)------☆
ルーク(アロム)達が洋館の一階の奥の部屋の床にある
転移魔法円を使い地下の部屋へと降りる。
そこにあった地下室は、高さ50m、幅30mで、奥行き
40mの何かの大きな工場の中のような場所だった。
「うーんこれはひょっとして……」
地下室に入るなり、ゲルト(ダンバ)がそう口にすると、
それに同意するようにフレヂー(スレンダー)が、
「『魔導騎兵』」
と呟くが、
「いや、それにしては部屋が狭すぎる」
とルーク(アロム)が2人意見に反論をすると、その反論を
補足するかのようにキャスバル(サー)が、
「そうだな、天井の高さは確かに『魔導騎兵』を制作するには
十分すぎる高さだが、幅や奥行きがこれでは……」
と言いかけると、再びルーク(アロム)が、
「そうだな、せいぜい作れて数機程度か……」
とキャスバル(サー)より先に答えると、それに同意するかの
様にキャスバル(サー)は頷いた。
その言葉にゲルト(ダンバ)とフレヂー(スレンダー)が、お
互いの顔を見合わせ、
「じゃ、何を作ってたんだ」
とゲルト(ダンバ)が言うと、ルーク(アロム)が、すかさず、
「何を作ってたか……はわからんが誰が作っていたかは明白だと
思う」
という言葉を受けて、キャスバル(サー)が言う。
「そう、元ルベル国公爵……」
その言葉に、ゲルト(ダンバ)とフレヂー(スレンダー)が声
をそろえて言う。
「ガレン・ジェラグ!!」
そして、ルーク(アロム)が冷静な態度で、
「先日、悪魔レイダーがここに反応が合ったことを考えると
……」
と言いかけると、キャスバル(サー)が、
「悪魔とジェラグが手を結んだと考えた方がいいな」
とルーク(アロム)の言葉を継ぎ言ううと、
「これは、かなりやばいことになった来たな」
とフレヂー(スレンダー)が言い、それに頷くルーク(アロム)
とキャスバル(サー)。
すると、
「どうする、今から奴らを追うか!」
とゲルト(ダンバ)が言うと、キャスバル(サー)がそれに
首を振り、
「いや、悪魔と行動を共にしているのに、レーダーに反応が
無いところを見ると、恐らく別の場所に居るのだろう」
と答えると、ゲルト(ダンバ)が、
「別の場所ってどこなんだ?」
と聞くが、キャスバル(サー)は、
「わからんよ」
とだけ答えた。
そこで、ルーク(アロム)が、
「いずれにしろ、ギルド本部や教会本部に報告するが、
ルベル国をはじめ4ヶ国にも警戒をしてもらうよう伝えねば
ならないな」
その後、一通りの調査を終えたルーク(アロム)達は、上空
で待機する、自身たちのチームハウス『ホワイトキャッスル』に
戻り、そのまま西支部へと帰って行った。
◇
------(テンタ視点)------☆
「いただきますw」×8
皆で手を合わせさっそくいただく。
俺達は店の真ん中にある4人掛けの4つのテーブルの内、
2つをつなげて座っている。
ここ『来々軒』は、言ってしまえば昭和の街中華って言う
雰囲気のお店で店の中央には4人掛けのテーブル席が4つに、
奥の厨房前に7人掛けのカウンター席があるだけのわりと
こじんまりしたお店だ。
ここのお店は先代が転生者だったらしい。
今は、その息子さんが引き継いでいるとのこと、
先代はもちろんこの世界に転生し、ブランチ能力を有していた
んだが、そのブランチ能力がこの世界ではあまり強力な能力
と言えなかったそうで、冒険者になってもせいぜいB級止まり、
なので、ある程度冒険者で稼いだお金で、転生前夢だった
この店を開いたとのことだった。
因みにこの店の先代のブランチは、『サイボーグ』だったら
しい……ただ、サイボーグと言ってもただ、口から火炎を吐く
だけの能力だったそうで、魔法が使えるこの世界で飛び切り
強い能力とは言えなかったみたいだ。
で、俺達は各々注文をする。
俺が、『肉団子の甘酢掛け』と『チャーハン』にマヤ(デ
ーモンレディー)さんお勧めの『唐揚げ』を2つ。
じく『唐揚げ』を2つ頼んだ。
それに、猫舌の
もらい、そこに八宝菜を俺が小分けして冷まして食べるように
している。
因みに、各人の頼んだメニューは下記の通り。
・マヤ(デーモンレディー)さん
『唐揚げ』1人前(6個)に『チャーハン』。
・エディー(ザマタン)さん
『麻婆豆腐』と『チャーハン』に『餃子』1人前。
・ジェシー(イマタン)さん
『酢豚』と『チャーハン』に『唐揚げ』を2つ。
・チャド(ガマタン)さん
『エビチリ』と『チャーハン』に『唐揚げ』を6つ
と『ラーメン』に『餃子』1人前。
(かなりの大食漢)
・マカナ(マリーナ)さん
『天津飯』に『餃子』1人前。
・ナイア(トリン)さん
『皿うどん』と『半チャーハン』。
どれも1人前50クリスタル(約千円)で、
半チャーハンは、25クリスタル(約500円)
小飯は10クリスタル(約200円)
唐揚げ2個セットは15クリスタル(約300円)
となっており、確かに元の世界と比べれば少々お高め
とは言え、このイディアの世界の『ミクドナルド』の
ダブルチーズバーガーが、175クリスタル(約3,
400円)と考えるとまだ安い方だと言える。
「ごちそうさまでしたw」×8
ご飯をお腹いっぱい食べた後、皆で手を合わせて合掌
する。
「じゃ、次はテンタ君の服を見にいきましょうw」
とマヤ(デーモンレディー)さんの言葉に店を出て、
レツさんダイさんが待つ冒険者学院の馬車の待機場
までみんなで戻り、そこから馬車に乗り、俺の服を
買うため商業施設街へと向かうのだった。
◇
メインのクリスタル通りから通りを2つ西に行った所
にそれはあった。
『オーダー服のバリバリー』
2階建てのそんなに大きくはないが、こぎれいなお店。
ここで、マヤ(デーモンレディー)さんやマカナ(マリー
ナ)さん達女性陣のオーダードレスだけでなく、男性陣
のエディー(ザマタン)さん達も礼服を新調したらしい。
馬車を降りた俺達はそのまま店に入った。
因みに、店の隣が馬車置き場になっているので、レツさん
ダイさんは、馬車と共にそこで待機してもらった。
「いらっしゃいませ」×2
店に入ると、銀髪の執事風の中年の紳士と金髪のメイド風の
30歳くらいの女性が出迎えてくれた。
「ジョンさん久しぶり~」
と銀髪の紳士にエディー(ザマタン)さんが声を掛けると、
その紳士は笑顔で、
「これはこれは、お久しぶりでございます、エディー様、
ジェシー様、チャド様」
と軽く会釈する横で、マヤ(デーモンレディー)さんが
金髪の女性に、エディー(ザマタン)さん同様、
「お久しぶり~エリザベスさんw」
と声を掛けると、その女性も笑顔で、
「まぁ~お久しぶりですw、マヤ様、マカナ様、ナイア
様w」
と同じように会釈を返す。
銀髪の紳士がここの店主でジョン・テーラーさんで、金髪
の女性がその奥さんのエリザベスさん。
店主が男性の服を仕立て、奥さんがドレスを仕立てる
職人でもあるらしい。
(お久ぶり~ってみんなそんなにここに通ってたのか?)
とその時俺はそう思ったのだが……後から聞いたら、
ここの店主のジョンさんと、エリザベスさんは、ここで
服を1度でも仕立てたお客様のことはすべて記憶している
ってことらしい。
「今日はどのようなご用件でしょうw」
と店主のジョンさんが尋ねると、マヤ(デーモンレディー)
さんが、俺の肩に手を置いて、
「今日は、このこの礼服をお願いしようかと」
と答えると、ジョンさんは、俺の方を1度見てから、
マヤ(デーモンレディー)さんにニッコリ笑って、
「畏まりましたw」
と頭を下げると、俺に対して、採寸をいたしますのでこちらへ
と店の奥へといざなおうとする。
「あっ、はい」
俺はジョンさんと店の奥に行きかけて、
「ああ!」
と肩に載った三毛猫(オトア)をマヤ(デーモンレディー)さん
に預けると、そのマヤ(デーモンレディー)達に奥さんのエリザベス
さんが、
「さあさ、皆様採寸が終わるまでお茶を入れますのでそこで
お待ちくくださいまし」
と声を掛け、皆を店の右端にあるテーブルへと案内していた。
◇
店の奥で、採寸並びにブーツも作るので足形を取ってもらう。
「では、生地の方はどういたしましょw」
と店主のジョンさんが俺に聞く。
「……」
(うーん、どうしましょと言われても)
って俺が無言で考えていると、それを察したのか、店主のジョン
さんが、採寸した場所の横にあるテーブルに生地を10種類くらい
並べてから、再び俺に問う。
「では、こちらからお選びくださいませ」
俺はテーブルに並べられた生地を順番に見て行くが……。
「……」
(どれもおんなじ黒い生地にしか見えない)
俺は返事のしようがなく黙って考える。
しばし、沈黙の時が流れ……。
俺が口を開く。
「あの~エディー(ザマタン)さん達はどのような生地にされた
のでしょうか?」
と聞くと、店主のジョンさんは、10種類並ぶ生地の中から、
さーと一つの生地を手に取り俺に見せながら、
「こちらの生地を選ばれたかと」
と言うので、
「じゃぁ、それでお願いします」
と答えると、店主のジョンさんが、
「ではブーツの方は?」
と続けて尋ねてくるので、
「じゃぁ、それもエディー(ザマタン)さん達と同じでw」
って答えた。
「かしこまりました」
と言って、頭を下げその場を一旦離れるのだった。
しばらくして大きな鏡を持ってきて、シャツとスカーフの
見本を何本か持ってくる。
そして、見本のコートから俺のサイズのコートを持ってきて、
「これを着ていただけますか」
と手渡されたので、コートを羽織ると、そこにシャツの色見本
とスカーフの色見本を当て、俺に聞いてくる。
「こういうのはどうでしょう」
「……」
と聞かれたても俺にはよくわからない。
ので、
「あの~、僕こう言うのよくわからないので、皆の意見を聞き
たいんですけど……」
と伝えると、店主のジョンさんニッコリ笑って、
「かしこまりました」
と答え、頭を下げその場を去っていった。
◇
皆が俺のいる採寸室に入って来て、俺の胸元に店主のジョン
さんが色見本を当てながら、皆が意見を言ってくれる。
「オーソドックスなら、白シャツに黒スカーフだろう」
とエディー(ザマタン)さん。
「いや、前の世界ではいざ知らず、この世界に白に黒の
合わせでなくてもいいはずだぜ」
とジェシー(イマタン)さん。
「いや、シャツは白だろう~で、テンタは赤のコンバット
スーツ姿だから、スカーフを赤にすればいい」
とチャド(ガマタン)さん。
それを聞いていたマヤ(デーモンレディー)さんが、
「それじゃぁ、チャドとおんなじになってしまうわよ」
と言い、その言葉にチャド(ガマタン)さんが、
「ああ、そーか」
と固まった。
で、マカナ(マリーナ)さんが、店主のジョンに聞く。
「男性の正装でシャツは絶対白じゃないとダメなんですか?」
その問いに店主のジョンさんは、笑顔で首を横に振り、
「いえいえ、シャツの色は人それぞれですよ」
と答えると、それを聞いたマヤ(デーモンレディー)さん
が、
「それなら、赤いシャツにシルバーのスカーフってどう?」
と言うと、
「いいんじゃんw」
「いい、バッチグーじゃん」
とマカナ(マリーナ)さんとナイア(トリン)さんがこぞって
賛同する。
(えー……バッチグーって何?)
と言う訳で、俺の礼服が決まった。
出来上がりは1週間後だそうだ。
所で、後で、ナイア(トリン)さんが言った『バッチグー』
の意味をマヤ(デーモンレディー)さんに聞いたら、昔の
はやり言葉で、『大変良い』ってことらしい。
(なぁ~る)
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