67話 海坊主
「おそらくその1つ目の巨人って言うのは、海坊主でしょうけ
ど……」
とシェリーさんが呟く。
(俺もそう思う)
「でもさ、お姉ちゃん、そもそも海坊主ってさ、デンスアーラ
共和国(獣人の国)とネシア王国(南の海に浮かぶ島)の間の
海域の魔物でしょ?なんで、ここの海に出るんだろうね」
とタミーさんがシェリーさんに聞くが、聞かれたシェリーさん
は、少し困った顔で、
「んっ……って出るんだものしょうがないでしょタミー」
と切り返した。
(確かに、出るんだもんねぇ~仕方ないよねぇ)
そこで、俺が
「あの~、どなたかその、海坊主が出る場所まで、案内し
ていただきたいのですが……」
と言う俺の言葉に、急に村人達は俯くのだった。
俺は、村人達の方を向きさらに言う。
「ああ、海からは行きません、空から行きますし、場所を
見るだけですから……見たらすぐ引き返しますし」
と言ったが、村人達は、俺と目を合わそうとしなかった。
そこで、俺が
「仕方ない……儂が参りますじゃ」
その言葉に、村人の中の1人の青年が異議を申す。
「
の出る場所がわかるわけねーだべさ」
と言う青年の言葉に、
「なぁ~にを言っとるが、こう見えても儂は、昔この村
一の漁師だったべ、まだまだ、若けーもんには引けは取
らんて、それに、大体の見当はついちょるでぇ」
と言い返すが、その青年はさらに言う。
「
どうする、この村を誰が束ねるんだべ」
その言葉に、
「儂に万が一のことがあったら、孫娘の婿のおめーが、村
を納めれば、いーだべさ」
と言う言葉に、青年は一瞬たじろぐが……少し考えて、
決心したように、すくっと立ち上がり、
「じっちゃまが、行くと言うなら、俺が代わりに行く!」
と言い放った。
すると、その青年の横に居た女性がその青年に縋り付き、
「いやよ、あんたにもしものことがあったら私……」
と言う女性に青年が、優しく微笑み諭すように言う。
「なぁ~に、この冒険者の旦那がついていなさるんだ、
めったなことにはならない……そうですよね旦那」
と言うので、俺は黙って頷く。
だが、心の中で俺は、
(旦那!?って……いや~俺の方があなたより年下で
すけど)
と心に思うのだった。
そこに、シェリーさんが、その女性に近寄り言う。
「大丈夫ですよ、このバルバンさんにはなんせ、
光の精霊様が付いていますから」
と……。
(いえいえ、光の精霊様はオトアに宿ってるんですけどね)
そう思いながらも、俺は黙って頷くのだった。
◇
俺達は、浜辺に移動する。
「スカイバリアン!」
と俺は叫び、俺は小槌からスカイバリアンを出す。
\ドン/
\おーお!/
と村人のどよめきが起こる。
次いで、
「赤着!」
そして、
「フェードイン!」
と叫びながら俺のベルトバックル部分に吸い込まれる。
「宇宙シェリフバルバン!」
とキメのポーズをとるが……。
あたりはシーンとしていた。
(あれ?)
すると、俺の側に居た
ながら言う。
「ね・猫がしゃ、しゃべった!」
驚き言うその青年に俺が言う。
「えっ、あっ、そっち!」
◇
俺は、近くにあった漁に使う仕掛け網用のブイを見て、
「これ一つ借りますね」
と言って、左太腿の装甲版を開け、小槌を出すと、そのブイを
小槌に収納すると、その小槌も左太腿の装甲版内に収納し、すぐさま
スカイバリアンに跨り、スカイバリアンの後ろを指さし言う。
「乗って」
俺の言葉に、青年は驚きながらも”はっ”として、慌ててスカイバ
リアンの俺の後ろの席に跨った。
「では、出発します」
と言うなり、俺はスカイバリアンを上昇させた。
「ひぇ~っ!!」
俺の後ろに乗る青年はそう叫ぶと、気を失った。
(ありゃりゃりゃ)
青年の名前は、蘇
この村の村長(むらおさ)の孫娘の婿。
因みに、彼に縋り付いたのは、この村の
さんの孫娘でありコンサンさんのお嫁さん、年齢は20歳。
村一番の器量好し。
◇
「コンサンさん、コンサンさん」
スカイバリアンの俺の後ろに乗る青年に、大きな声で青年の名前
を呼ぶと。
「……んっ、うーん、」
「目が覚めましたか、コンサンさん」
と目覚めかけた青年コンサンさんに声を再度掛けると、
「あっ、あ……旦那か、ここはどこだい」
って聞いてくるので、
「ここは空の上ですよ」
って言うと、
「んっ、空の……」
と言いながら下を見る。
ここは上空300m。
「んっ、げっ!たっけー!!」
と言って、”ガタガタ”震えるコンサンさん。
(仕方ないな)
俺は、下を見て震えるコンサンさんのために少し高度下げる。
高度80m。
「このくらいだったら、大丈夫ですか?」
と聞くと、
「だ・だい丈夫じゃねぇけど……これくらいなら我慢できら」
と言ってくれたので、高度はこのままを維持する。
「で、どっちですか?」
と俺が聞くと、
「へぇー、えー、っとこっちでさ」
と指さし言うが、
(いやいや、後ろで指さされても)
って思ったが、俺のヘルメット内の右モニターのオトアが言う。
『北北東を指さしてるようよ』
『ああ、そうなのか、了解』
俺はそうオトアに返すと、スカイバリアンを彼の指さす、北北東に
進路を取った。
来ると、
「ここですよ旦那!」
とコンサンさんが言うので、左太腿の装甲版を開き、小槌をだして、
先ほど村で借りたブイを投下する。
「これで良し」
俺はそう言うと、スカイバリアンを旋回させ、村へと戻るのだった。
◇
村の浜辺にスカイバリアンを着陸させ、コンサンさんを下す。
コンサンさんは、スカイバリアンから降りる時、少しふらついた。
それを支える奥さんのメイリンさん。
「あんた大丈夫?」
のメイリンさん言葉に、
「ああ、俺は大丈夫だ」
と答えるコンサンさん。
その光景を見ながら、俺は小槌を出し、小槌から魔晶石を6本取り出す。
この魔晶石1本5千クリスタル(10万円)もするんだけど、それを
スカイバリアンの後方のカバーを外し、6本すべてをセットする。
これは、スカイバリアンに備え付けられたバックアップシステム。
通常、スカイバリアンもマリンバリアンも動かすには膨大な魔力を
必要とするのだが、この6本の魔晶石をセットすることにより、例え
魔力が無くても通常の航行であれば、1時間は使用できると言うシス
テム。
これは、元々魔力の少ない俺のために考えられえたシステムで、
オトアが俺にフェードインしている状態では、魔力無限の俺も、
そうでない事態が起きた時に使えるようアロムさんがあらかじめ
組み込んでくれたシステムだ。
なので、通常の日向天太の時でも使用できる訳だが、今回は俺が
使うために魔晶石をセットする訳ではない。
今回は、シェリーさん、タミーさんに乗ってもらうために、
魔晶石をセットしている訳。
準備が出来たので、シェリーさん、タミーさんに声を掛ける。
「準備できましたよw」
俺の言葉を聞いてシェリーさんタミーさんは頷き、
「紫着(しちゃく)!」
「黄着(おうちゃく)!」
とコンバットスーツ姿にチェンジする。
今回、スカイバリアンを操縦するのは、シェリーさんのほう
みたいだ。
その間に、俺は、小槌からマリンバリアンを出し、海に浮
かべる。
そして、小槌を仕舞い、マリンバリアンに跨ると、シェ
リーさん、タミーさんに向かって聞く。
「準備良いですかw」
「OK」
「OKよ」
と俺の言葉に手でOKのサインを出しながらそう返事を
返してくれたので、俺は、
「では出発します」
と言って、マリンバリアンを発進させる。
俺の操るマリンバリアンは、見る見るスピードを上げ、
海面を滑るように進むのだった。
それを見たシェリーさん、タミーさんは、スカイバリアンを
浮上させ、俺の後を追いかけるのだった。
◇
海上にある先ほどブイを浮かべたところに着いた。
「では、お願いします」
と上空に居るシェリーさんタミーさんに俺が声を掛けるとスカイ
バリアンの後部に跨るタミーさんが、
「リバース!」
と言い、一旦コンバットスーツを解除し、着ているベストのポケット
から、小槌をだし振る。
すると、タミーさんの小槌から、大量の肉片が下の海面目掛けて、
バラまかれた。
”ドボドボドボ”
\パシャン/、\パシャン/、\パシャン/
大量の肉片を巻きながら、スカイバリアンはブイの周りを旋回しな
がら飛ぶ。
今、タミーさん達がバラまいているのは、オークの肉片。
水着を買った時、帰りにクエストを受けると同時に冒険者ギルドで
購入したもの。
約3体分の肉片である。
1体分の肉片が約1,500クリスタル(30万円)もする。
こう言った魔物の肉は、主に魔物を使役する冒険者が、使役する魔物
の餌として購入するためのものだ。
「撒き終わったよ~」
と言うタミーさんの言葉を聞き、俺が会場からOKのサインを送ると、
「
と、タミーさんが再びコンバットスーツ姿にチェンジした。
それを見た俺は、オークの肉をばら撒かれたブイの周りをマリンバリ
アンで、ぐるぐる回りだした。
\ズズズズズッ/
と海底から地響きのような音がして、急にブイが浮いてるあたりが盛
り上がる。
\\\バッシャーン///
大きな黒い頭が出てきたと思ったら、黒い一つ目の大きな巨人の
半身が現れる。
(やはり、海坊主だったか)
\ウォー/
低い声で雄たけびを上げる海坊主。
\ピキピキ/
【海坊主】
HP 8,500
MP 600
運動性 150
攻撃力 3,500
防御力 2,000
命中 70
回避 65
≪攻撃≫
腕力、噛みつき、口から海水を吸ったり
吐いたりして、海流を起こす。
俺はすかさず、
「レッドバスター!」
とビームガンを撃つ。
”ビシューン”
\ズキュン/
奴の左胸をビームが貫く。
\\\ウォー///
低い声で雄たけびを上げる海坊主。
その間に、シェリーさんが、スカイバリアンの前方の
装甲を開き、
「発射!」
”キュイーンキュルキュルキュル”
\\バリバリバリバリ//
とミニガンを発砲し、ミニガンから放たれる無数の弾丸は、
奴の目を捉え潰した。
\\\ウォー///
顔を押さえながら低い声で雄たけびを上げ、苦しむ海坊主。
そして、海坊主は、海中に逃げる。
\\\バッシャーン///
「逃がすか!」
俺はすぐさまマリンバリアンを潜航させて、奴を追った。
海坊主は、上半身は人型だが、下半身は人魚のように魚の
形をしていて、黒い上半身に反し下半身は銀色の鱗で覆われ
ている。
海坊主は、必死に尾びれを使って泳ぐ、それをマリンバリアン
で追いかける俺。
「けっ、結構早いな!」
逃げながら、海坊主は海水を吸い込んだらしく、追いかける
俺に対し、急に体を振り向かせ、口から海水を吐き出した。
”ビユー彡”
「うわぁ~!」
ものすごい水流が俺を襲う。
俺は、必死にマリンバリアンの水流ジェットエンジンパワーを
最大にし、流されないよう踏ん張ろうとするが、ジリジリと
後退して行く。
少しずつ、海坊主から引き離されて行く……。
「うっ……クッソー」
焦る俺。
しかし、その時だった。
奴が吐く海流が少しずつ弱まって行った。
が、その次の瞬間、今度は奴が俺の方を向いて、海水を吸い
込みだした。
”ビユー彡”
「うわぁ~!」
俺は慌てて、マリンバリアンの水流ジェットエンジンを逆噴射
に切り替えるが、
『テンタ君今よ!』
と不意にヘルメット内右モニターのオトアが言う。
『えっ!?』
急にオトアに言われ少し混乱する俺に、ヘルメット内左モニター
のエードラム様が言う。
『あれ、使うんじゃないの?』
と……。
『ああ、そうでした』
エードラム様に言われ、本来の目的を思い出した俺は、マリン
バリアンの前方の装甲版を開くスイッチを押す。
マリンバリアンの前方の装甲版が左右に開くと中から魚雷発射管
が現れる。
「発射!」
と同時に魚雷の発射ボタンを押す。
\ボッシュ/
”シュルシュルシュル”
発射されたミニ魚雷は一直線に海坊主の口へ向かい……。
\ズボッ/
\んがっ・グックン/
見事魚雷は海坊主の口の中に、そして、突然口に飛び込んだ魚雷
をそのまま飲み込む海坊主。
海水を飲み込めなくなったので、海流が止まり……。
\ボフッ/
一瞬、海坊主の体が膨れ上がったと思ったら、口から大量の血を
吐いて、そのまま海底に沈んで行った。
◇
海底に沈んだ、海坊主の死骸を回収するために俺は海底を目指す。
\ピッ/
【海坊主】
HP 0/8,500
MP 0 /600
運動性 0/150
攻撃力 0 /3,500
防御力 0/2,000
命中 0 / 70
回避 0 / 65
≪状態≫
死亡
海坊主の死亡を確認した俺は、念話でシェリーさんに伝える。
≪今、海坊主の死亡を確認しました、これより回収して、
戻ります≫
≪了解したわ≫
シェリーさんの返事に俺は、
≪シェリーさん、タミーさんは、先に村に帰ってて下さい≫
と伝えると、
≪了解、じゃ先に帰るわねテンタ君≫
と言ってくれたので、
≪はい≫
と俺は念話で答え、念話を終了した。
海底に横たわる海坊主。
「でかいな」
改めて、海坊主を見て思う。
(んなことより)
俺は小槌を振って、海坊主を収納する。
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