66話 『歌謡ショー』とクエスト
自身の寝室で、
海に入っているので、十分塩気を取るためなのだが、俺が一生
「くすぐったいw」
だの、
「テンタ君……エッチ!」
って嫌がるものだから、なかなか洗えなく苦労した。
その後、俺もシャワーを浴び、水着も洗って部屋に干してから、
ブレザー(学校の制服)に着替えて寝室を
出る。
何故、ブレザー(学校の制服)に着替えたかと言うと、この後の
『歌謡ショー』を観覧するためなんだけど、寝室から出てきた他の
みんなも、それぞれ正装をしている。
トムさんは、白のタキシード、ミリーさんは白のドレスで、ガイ
ゼルさんは、黒のタキシード、アナさんはピンクのドレスで、シェ
リーさん、タミーさんは、それぞれ、紫と黄色のドレスだし、ヴィ
クセンさんも黒のドレスに身を包んでいる。
ただ、ケンタウロスのレツさん、ダイさんだけは、いつもの服装。
それは、この2人は、『歌謡ショー』を観覧するのではなく、別
の会場にある『カジノ』に行くって事らしい。
レツさん、ダイさん以外が正装で身を包む中、この部屋の担当の
リンリンさん、ランランさん、リーリーさんに加え、数人の食事係の
人達が食事を運んできた。
「お食事の準備をさせていただきます」
とメイドのリンリンさんが俺達に声を掛け、お辞儀をすると、次々に
食事が運ばれてくる。
トムさん以下俺達は、席について食事の準備を待った。
まずは前菜、
・くらげの和え物
・よだれどり
料理を目の前に、みんなで手を合わせ合唱して、
「いただきます」×11
くらげの和え物の触感を楽しみ、ジューシーなよだれどりを頂いた。
(うーん、美味)
次に「湯」が運ばれてくる。
「湯」って要はスープなんだが……。
運ばれてきたスープは、何と『フカひれスープ』。
それに目を見張る俺と
(こんな高級なものを食べれるとは……)
味は、初めて食べたので、「おいしい」としか表現ができない。
次に運ばれてきたのは『主菜』なのだが、3種類あった。
【肉の主催】
・北京ダック
・酢豚
これも初めて食べる北京ダック、”パリ”とした皮が香ばしい。
酢豚も、普段食べる酢豚とは数段味が違うような気がする。
そして、
【魚の主催】
・エビチリ
・白身魚の甘酢あんかけ
エビチリなんて、エビが”プリップリ”。
最後の主催は、
【野菜の主催】
・青梗菜のオイスターソース炒め
青菜がシャキシャキでおいしかった。
そして、ご飯もと言えば、”チャーハン”
まぁ、これはおいしいとは言えチャーハンって感じだな。
次いで点心。
・小籠包
・蒸し餃子
これも、食べた瞬間、肉汁が口の中に広がりおいしかった。
最後は、デザート
・杏仁豆腐
・胡麻団子
これら料理を食べながら、大人組は、【紹興酒】のような色の
着いたお酒を飲んでいた。
「ごちそうさまでした」×11
最後、みんなで手を合わせ合唱する。
◇
夕食後、みんなで部屋を出て、例のエレベーターホールのような転移
魔法円へと向かう。
先に、レツさん、ダイさんが地下の『カジノ』に転移してもらい、
次いで残りのメンバーは、同じ地下だが別の所にある『歌謡ショー』
の会場へと転送してもらった。
地下にある会場のある地下フロアに着くとさっそくみんなで会場に
入った。
中は100人程度が収容できる小さな映画館のような会場だった。
俺達は、その一番前の真ん中の特等席と言える場所へと座る。
『歌謡ショー』の会場には、俺たち以外にも続々と『歌謡ショー』を
見ようと言うお客が、それぞれの正装で集まって来た。
あっという間に席は埋まる。
しばらくすると、司会者のような人が現れ、この『歌謡ショー』の
始まりを宣言すると、前の舞台の緞帳が上がると同時に、俺達の席の
前にあるオーケストラボックスから、大音量の伴奏が流れ、それに
俺も
この『歌謡ショー』の内容はと言うと、昭和のころの歌手である、
『美空はる美』さん、昭和の男性アイドルの『南条秀樹』さんに、
同じく、昭和の女性アイドル2人組の『ピンクギャル』の「ミュー」
さん、「ケイトリン」さんの3組による『演歌』や『Jポップ』の
歌謡ショーだ。
当然だが、これは本人がこちらに転生してきたのではなく、その
ファンの転生者によるブランチ(アバター)の姿。
『美空はる美』さんは、転生前は、「井坂和枝」で、現在は、
ジュディ・カーペンターさんと言う30歳の女性だし、『南条秀樹』
さんに至っては、転生前は、「藤田 恵」と言う女性で、現在もカレ
ン・ソマーズと言う24歳の女性だと言うことだ。
もう一組の『ピンクギャル』の「ミュー」さん、「ケイトリン」さ
んも、それぞれ転生前は、「杉田直美」さん、「筒井美智代」で、現
在はそれぞれ、メラニー・バトンさん、エマ・ブラウンさんだそうだ。
トムさんガイゼルさんは、転生前にこれらの歌手の歌を聞いていた
らしく、かなりノリノリだったが、俺と
微妙……って感じだな、まぁ。2・3曲くらいは来た事ある曲だなぁ
~って感じだった。
異世界組のミリーさん、アナさん、シェリーさん、タミーさんに
ヴィクセンさんは、初めて聞く楽曲に圧倒されていたって感じかな。
まぁ、それなりには楽しかったけどね。
◇
次の日、朝6時30分ごろ、いつもより少し遅めに起床する。
シャワーを浴び、パジャマ代わりに使っている黒のスエットから、
いつもの赤の皮ジャケット姿に着替え、
寝室の部屋を出る。
「おはようございます」
「おはようございます」
俺と、
をする。
「おう、おはよう」
「おはよう」
トムさんとミリーさんが挨拶を返してくれた。
「テンタ、オトア、おはよう」
「おはようさん」
ガイゼルさんとアナさんも軽快にあいさつを返してくれる。
トムさん夫婦とガイゼルさん夫婦は、今日朝食後、昨日の『歌謡
ショー』があった地下の会場で、ミュージカルの『ドッグ』を観覧する
予定なので、昨日同様、正装で”ビシ”っとキメている。
「テンタ君、オトアちゃんおはよう~」
「うわぁ~あ、おはよう~」
シェリーさんに、まだ少し眠いようで、あくびをしながら挨拶を返してる
タミーさん。
この2人は、俺と同じくいつもの、シェリーさんが紫のチャイナドレス
に、タミーさんが、黄色のウエスタン調の服だ。
この後、俺と共にクエストに向かうためだ。
そして、
「おはようございます、テンタ君、オトアちゃん」
と、しかり挨拶を交わしてくれるヴィクセンさん。
この人も、いつもの普段着だった。
ってことは、ミュージカルを鑑賞する訳ではないのがわかる。
ここまでは、よかったのだが……。
「おはょぅす……」×2
約2名だけ元気がない。
元気のないのは、ケンタウロスのレツさんとダイさん。
どうやら昨日、『カジノ』で、持ち金をすべてすってしまったようだ。
かなり元気がない。
そこで、そんな2人に俺から提案する。
「今日、ある村までクエストに向かうんですが、よかったら日当1人
1,000クリスタル(2万円)で、クエストの村まで馬車を引いて
いただけませんか?」
って聞くと、レツさんは一瞬固まったが、
「えっ!……」
急に元気になり、
「いきやす、いきやす、行かせてください兄ぃ!」
と言い出し、横のダイさんも、頷きながら、
「そりゃー、兄ぃーのためなら地の底まででも行きやすよ!」
と調子がいい答えだったので、
「では、朝食を食べたら、お願いしますね」
とお願いした。
(どうせ、そのお金で、また『カジノ』に行くんだろうけど)
◇
朝食を食べ終え、みんな部屋を出る……って、ヴィクセンさんだけ
は、部屋に残るらしいが。
例のエレベーターホールみたいなところの転移魔法円で、トムさん
達は地下の地下の会場へ直接向かい、俺と
タミーさんにケンタウロスのレツさん、ダイさんは、1階のロビー
に転送してもらう。
転送前、シェリーさん、タミーさんに、トムさんとミリーさんが、
「気をつけてな、テンタの足引っ張るなよ」
「危なくなったら、念話するのよ」
と声を掛けられたシェリーさんは、素直に
「わかった」
と返したが、タミーさんは、
「大丈夫よ、これがうまくいったらまたレベルアップよ!」
と胸を叩いて強気な発言。
それに、苦笑を浮かべるトムさんとミリーさんだった。
最後に、俺と
「無理はするなよ」
と声を掛けられ、俺と
「はいw」×2
と笑顔で答えるのだった。
◇
『天堂(ティエンタン)』の建物を出て、入り口付近に居た
俺達の馬車を出してもらう。
そして、ケンタウロスのレツさん、ダイさんに馬車を繋いで、レツさん
に前もって冒険者ギルドでもらったクエストの村の地図を渡し、馬車
に乗り込んだ。
今から向かうのは、ここ『
何故、リゾートに来てまで、わざわざクエストを受るには訳がある。
俺個人で言うと、『マリンバリアン』の武器テストをしたいって言うこと。
そして、チームとしては、シェリーさんとタミーさんのレベルを早く上げたい。
の2つの理由なんだ。
この前の悪魔との戦いで、『スカイバリアン』の武器のテストができ、
不具合を調整できたが、まだ、『マリンバリアン』の武器テストができないで
いた。
いざと言う時に使えないでは、シャレにならないので、一刻も早く俺としては
、テストしておきたかったってこと。
また、前回の悪魔との戦いで俺が一気にA級になったことで、現在、トムさん
とガイゼルさんがA級相当扱いなので、チームのバランスとして、シェリーさん
タミーさんにも、せめてB級に上がってもらわないと、クエストを受ける時に、
受けれないものが出てくる可能性がある。
今回のクエストは、A級が1人で受けてもいいクエストなので、2人はA級
である俺の
冒険者4人以上必須のクエストだと、我がチームは受けれないことになる。
因みに、対悪魔に関しては、レベルの規定はない。
また、突然出くわした場合もそれに当たるって事らしい。
(俺の場合は、殆ど突発的だったけどね)
◇
村に着いた。
俺達は、馬車を降りてあたりを見回すと、村の浜辺には、小さな小舟
が十数隻ほど浜辺に並べられている。
その前には、大きな東屋と小屋が併設した建物を見つけが……。
海岸から少し内陸に向かって、数十件の家が並んでいるようだ。
「えーと、
と俺が、あたりをキョロキョロ見ていると、タミーさんが近くに居た
老人を見つけ尋ねる。
「あの~、
はどこでしょうか?」
と聞くと、その老人は、
「蘇
と聞き返すので、タミーさんが、
「私達は……」
と言いながら自身の胸に手を当て、さらに振り返り俺達の方を見て、
「冒険者のチームガンブレイブですw」
と答えると、
「あっ、あ・あんたさん達がかい!?」
と聞くので、俺達全員で、
「はいw」×6
と答えると、側に居たタミーさんの肩を掴んで、子供のように
はしゃぎながら、
「よう来てくださったw、ありがたいありがたい」
と言いながら今度はタミーさんを拝みだした。
(いや~俺達神様じゃないんだから)
◇
浜辺に並ぶ小舟の前に立つ大きな東屋と小屋が併設した建物に
俺達は案内された。
東屋と併設して立っている小屋は村の集会場で、東屋の方は
取れた魚を売りさばくための市場だと言うことだ。
この市場と併設した小屋に、話を聞きつけた村人がたくさん集
まって来る。
その村人の前で、俺は自身の紹介とメンバーの紹介をする。
「えー初めまして、チームガンブレイブ所属のバルバンです、
こちらが同じくメンバーのシェリーとタミーです、そして
こちらが、チームで馬車を引いてくれているレツとダイで、
このこがオトアです」
と三毛猫のオトアまで紹介すると……。
何故か村人全員が、
「おお!」×約20名
と声をあげた。
(意味わかってんのかな?)
「で、魔物のことなんですが……」
と引き続き俺が
話をしてくれた。
今から1ヶ月ほど前、村人みんなで漁をしていた時のことだった。
その日は、網に大量の魚が入り、みんなで、その網を船に引き上
げている、まさにその時に、突然現れた1つ目の巨人。
1つ目の巨人は、網にかかった大量の魚だけでなく、それを船に
引き上げようとしている村人までを襲い……食ったそうだ。
その後も、網に大量の魚がかかるたびにその1つ目の巨人は、
現れ、魚もろとも漁をする村人襲うようになったそうだった。
魚が大量に網にかかった時に限って、その1つ目の巨人が
現れ人々を襲う事態に、村では漁に出れなくなっていった。
この村では、村の収入を半農半漁で生活を支えている。
その収入の半分に当たる漁に出れなくなった村人の収入は、
激減し、生活が困窮するものが出るようになった。
そこで、村人が集まり《むらおさ》である
の巨人を倒してもらおうと、みんなでお金を出し合い
冒険者協会に
2か月が立とうとしているにも関わらず、今だ
してくれる冒険者が現れず、困っていたそうだ。
そこに、ようやく俺達が現れたって事なんだけど。
話を聞いて、恐らく村人が言っている1つ目の巨人って
言うのは、『海坊主』のことだろうと思われる。
この『海坊主』はA級冒険者でなければ引き受けられない
魔物なのだが、この村が依頼を出して、2か月も
ないのには訳がある。
A級冒険者の
(300万円)。
ここの村人が冒険者ギルドに納めた
のお金で4
(100万円)だ。
つまり、あまりに報酬が少ないのだ。
(ここの村人達にしたら4
まぁ、今回俺が引き受けたのはお金のためではない。
あくまで、『マリンバリアン』の武器テストだから……。
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