63話 感謝状贈呈式
いよいよ感謝状贈呈式が始まる。
俺は、部屋の入り口を入ると、左右の机に広くスペースを取った
所の中央にポツンと置かれた椅子に座って、しばらく待っていると、
俺が入って来た入り口から、数人の人達が入って来た。
入って来た人の中の4人は司祭服のようなものをまとっている。
(これは教会関係者だろう)
司祭服をまとった5人はそのまま、左側の長机に座る。
(にしても、かなり1人ひとりの間が空いてるんだな~)
と思いながら、見ていると、服装もまちまちの4人は右側の長机
に座った。
(1人略礼服姿の人が居るけど、この人は恐らく転生者……
って事は、この人が冒険者ギルドのグランドマスターの山・武尊
さんかな?)
って思っていたら、全員が着席したのを確認した左側の長机に座
る1番入り口側の司祭服のが、席を立ち言う。
「それでは、柱の入場です!」
の掛け声とともに、会場の全員が起立する。
右の舞台袖から2人、左の舞台袖から3人と別れて柱達が入場し、
舞台上のそれぞれの席に着くんだが……その時の柱の出で立ち を見
た俺は、一瞬、笑いそうになったのを必死にこらえた。
「ウップッ……」
古代ギリシャの男性が着る白い服に、赤いマント……それは、いいん
だけど、何とそれぞれの柱はのブランチであるクリスタルマン等を模
したお面を着けているのだが……、それが、どう見ても縁日で売って
いるお面にしか見えない。
大の大人が、子供用のお面をつけてるのが、この厳粛な感じの場に
似合わないと思うのだが、ここで笑ってしまうと会場全員から、睨ま
れそうなので、笑いをグッとかみしめ堪えた。
柱全員が着席したのち、
「ご着席ください」
の言葉で、俺を含む会場全員が自身の席に座る。
続けて、
「それでは、開会に際し、セイリオス大司教からの御挨拶です」
と紹介された、左側の長机の一番部隊近くの席のセイリオス大司教
と呼ばれた人がその場で立ち、
「えーっ、大司教のスリ・セイリオスです、本日はお日柄も良く
……」
と延々と挨拶をするセイリオス大司教。
(いるんだよな~こう言うおじさん)
100年の悪魔との大戦での
2年後にこの国、つまり聖クリスタル国が建国し、その後
の国の発展についてとか、本当に延々としゃべるセイリオス
大司教。
(んったく、早く終わらないかな……)
興味のない話を延々と聞かされ、俺はかなりだれてきた。
そこで、舞台の上で、仮面をつけ座っている柱達のことを見な
がら頭の中で、この前、遺跡調査の時、ニム・アノル博士や、料
理人のルフーン・アノルさんから聞いた、現、クリスタルマン達
の話を思い出していた。
ニム・アノル博士達の5人の柱(各クリスタルマン)はアルセ
ダイン王国の現国王の息子達である。
と言っても、現国王には、正妻に3人の息子さんがいて、ニム・
アノル博士達は、第2夫人~第6夫人の間に生まれたため、殆ど
王位継承の可能性はほとんどないらしい。
因みに、この王族のみがハイエルフと言われる種族で、他のエ
ルフとは、少し違うらしい……。
その辺、ルフーン・アノルさんの言葉を借りると、『ハイエルフ
は、2次元的美男美女で、エルフは3次元的美男美女』ってこと
らしいが、俺にはよくわからない。
また、王族のハイエルフのみ、光の精霊エードラム様の加護を
受けれるとか、他のエルフは、光の精霊以外、それぞれの信じる
精霊の加護を受けると言うことだった。
で、次に各柱達のことだが、舞台に向かって一番左の席に座る
ニム・アノル博士(クリスタルマン)は、第2夫人のとの子供
だったそうで、元々転生前は、『黒田 進』と言う名前で、
昭和のころ起きた『ビル爆破事件』に巻き込まれ、20歳と言
う若さで亡くなってから、こちらに転生してきたらしい。
現在は、アルセダイン王国の王族の籍を抜け、聖クリスタル
国の柱(神)としてと、古代文明研究所所長としての両方の顔
を持っている。
次のガレン・アノルさん(クリスタルマンエメラルド)は、
正直、俺は会ったことがないが、トムさんやガイゼルさんは、
悪魔オクトーの人質事件で、あったことがあるらしい。
で、彼は、第3夫人のとの子供だったそうで、元々転生前は、
『森 浩司』と言う名前で、これも昭和のころ起きた『炭鉱
生き埋め事故』により、19歳と言う若さで亡くなってから、
こちらに転生してきたらしい。
現在は、アルセダイン王国の王族の籍を抜け、聖クリスタル
国の柱(神)としてと、表向き『風来坊』として、各地を周り
各地の情報を収集すると言う両方の顔を持っている。
真ん中の籍のグロル・アノルさん(クリスタルマントパーズ)
は、第4夫人のとの子供だったそうで、元々転生前は『村田 秀
樹』と言う名前で、これも昭和のころ起きた『デパート火災』
により、16歳と言う若さで亡くなってから、こちらに転生して
きたらしい。
現在は、アルセダイン王国の王族の籍を抜け、聖クリスタル
国の柱(神)としてと、晋国の海岸に立てた『リゾートホテル』
のオーナーとしての両方の顔を持っている。
俺はまだ会ったことがない。
その隣の、ルフーン・アノルさん(クリスタルマンサファイア)
は、この前遺跡調査で一緒に行動した料理人。
彼は第5夫人のとの子供だったそうで、元々転生前は、『高田
圭二』と言う名前で、これも昭和のころ起きた『交通事故』で、
12歳と言う若さで亡くなってから、こちらに転生してきたら
しい。
現在は、アルセダイン王国の王族の籍を抜け、聖クリスタル
国の柱(神)としてと、古代文明研究所所長専属料理人とし
て、ニム・アノル博士と同伴し、各地の遺跡調査に同行して
いる。
で、最後は、カラン・アノルさん(クリスタルマンルビー)
は、第6夫人のとの子供だったそうで、元々転生前は『篠田
光太郎』と言う名前で、これも昭和のころ起きた『飛行機墜
落事故』により、18歳と言う若さで亡くなってから、こち
らに転生してきたらしい。
現在は、アルセダイン王国の王族の籍を抜け、聖クリスタ
ル国の柱(神)としてと、デンスアーラ共和国(獣人国)と
その南にあるネシア王国との間で、海運業を営んでいるらし
い。
とまぁ、そんなことを考えている間に、セイリオス大司教
のお話も終わり、感謝状贈呈式が始まる。
◇
大司教が、自身の席を出て、左右の机の間に出る。
それを見て、俺がゆっくり前に進み、まず、正面の
柱達と国旗にお辞儀をする。
次いで、左側の席の司教達と、右側のギルドマスター達に
お辞儀する。
そして、体を左に向け、大司教と向かい合わせになる。
その間に、大司教は横に付いているシスターが持つ表彰盆
から、賞状と白い封筒を一緒に受け取り、一旦、封筒を外
し、感謝状を持つと読み上げる。
「感謝状、冒険者名
として卓越した技能で、アークデーモンを倒し、聖クリスタル
国並びにこのイデア世界の秩序と平和を守ることに貢献され
ました。よってその功績と栄誉を讃えここに感謝の意を表し
ますと共に今後益々の活躍を期待致します。クリスタル歴
98年7月15日 聖クリスタル国 国主 クリスタル神、
エメラルド神、トパーズ神、サファイア神、ルビー神」
そして、感謝状の向きを変え、先ほどの封筒を添えて俺に渡
す。
俺は、1歩前に進み、それを恭しく受け取りる。
\パチパチパチ/
会場全員が拍手をする。
そして、俺は少し後ろに下がって、先ほどと同じように正面
の柱達と国旗にお辞儀、次いで、左側の席の司教達と、右側
のギルドマスター達にお辞儀し、クルリと入り口の方に向か
い歩いて行く。
再び、
\パチパチパチ/
と会場全員からの拍手に見送られ、俺は会場を後にした。
\バタン/
俺が出ると同時に、会場の扉が閉められる。
「ふぅ~」
と一息つく俺に、後ろから、
「お疲れ様でしたw」
声を掛けられ、驚き”ハッ”と後ろを振り向くと、そこに
は、笑顔で立つCG
が居た。
「あっ、はい」
と俺も笑顔で返し、そのまま、そそくさと、自身の控室に
帰るのだった。
◇
\バタン/
控室に入り扉を閉め、
「ふぅ~」
とため息をつく俺に、ソファーに座るトムさんの膝の上で寛い
でいた
「おかえり~テンタ君w」
と声を掛ける。
トムさんも、
「どうだった?」
と聞いてくるので、
「あっ、はい、緊張しました」
と答えると、トムさんは、テーブルの上に置いてあった筒を取り、
「そーだな、緊張するよな~」
と言いながら、その筒を俺に渡そうとするので、俺がその筒を見
て、キョトンとすると、
「んっ、その感謝状をこれに入れる……ってこれ見たことないか
?」
って聞いてくるので、俺が、
「いいえ、見たことないです」
って答えると、俺の持つ感謝状を”こっちに”って感じで手招きす
るので、感謝状をトムさんに渡すと、トムさんは筒の蓋を、
\ポン/
と開けて、俺から受け取った感謝状を(((((くるくる)))))っと巻、
筒の中に入れ、蓋を閉めながら言う。
「テンタ、卒業式とかで、賞状もらった時に、使わなかったか?」
と言われたので、少し考えてから、
「……んっーと卒業証書は、ブック型だったんで……」
と返すと、トムさんは、一瞬固まり、
「……んっ、ああ、ブック型、ブック型な」
と言いながら俺に感謝状入りの筒を手渡す。
(んーって、トムさんその反応って、ブック型を知りませんねw)
と思いながら黙って筒を受け取った。
すると、話を変えたいのかトムさんは、
「ところで、その封筒って副賞なんじゃないのか?」
俺が手に持つ封筒を指さし言う。
「えっ、ああ」
って言うと、トムさんが俺に、
「開けてみろよ」
って言うんで、封筒を開けてみると、中に日本語で書かれた手紙
と、1枚のチケットが入っていた。
手紙を読んでみると、『この度の功績を称え、副賞として、
チームガンブレイブ全員を【
と書いてあった。
「えっ?
手紙を読んで俺が、トムさんに聞くと、
「んっ?、貸してみろ!」
と俺から手紙と封筒を受け取り、手紙を読み、そして、封筒の
中のチケットのようなものを封筒から出してまじまじと見。
「テンタお前!、でかした」
とお手の背中を叩きながら言う。
「うっぷっ」
俺は背中を急に叩かれ、息が詰まる。
その様子に、
に聞く。
「何が、でかしたんですか?」
と何気に聞く
トムさんが言う。
「あの
くれるってw」
1人はしゃぐトムさんに俺と
「「だから、
その言葉に、トムさんが、少し落ち着きを取りもどして、
「ああ、悪い悪い、
の晋国にある、一大高級リーゾート施設だ!」
と嬉しそうに俺と
は、この時は”ピン”と来てはいなかった。
◇
\ガチャ/
”カランコロンカラン”
「今帰った」
「「ただいまです」」
喫茶ゴンの扉を開け、トムさんと俺と俺の肩に載る
そう声を掛けながら店に入ると、カウンターを拭いていたヴィクセンさ
んと、カウンターの裏で洗い物しているアナさんが、
「おかえりなさい」
「おっかえり~」
とこちらを見て言い、奥の厨房から、
「おかえり~w」
と声だけのミリーさん。
開いてるテーブル席にトムさんがどっかと座ると、俺と
きし呼ぶので、俺と三毛猫(オトア)もトムさんの向かいに座る。
「どうでしたボス」
とヴィクセンさんがトムさんに聞くと、
「ん――っ、それは後で話す、取り合えず、アイスコーヒーを」
とヴィクセンさんに答えるトムさん。
「え――っ、何でですか~、なんかいいことあったんでしょ」
と不満そうに言うヴィクセンさんに、トムさんは少しにやけて、
「まぁ~そう言うな、お前にもいいことだからw」
っと言い返すと、アナさんも俺達のテーブルにやって来て、
「なんだねぇ、いい話ならもったいぶらないで、さっさと話し
なぁ~よ」
とトムさんにせっつくように言うが、トムさんはただ、笑いな
がら、まぁまぁって感じで2人をなだめるのだった。
◇
夕方、店を閉めてから、全員で店に集まる。
店内で、今日はミリーさんのコラクル国の料理をみんなで食べ
ながら、朝の感謝状同定式の副賞の発表をトムさんがした。
因みに、ミリーさんのコラクル国の料理って、パスタに
ピザに似たものと、殆ど元の世界のイタリア料理っぽいのが
並んでいたが、中には『パエージャ』と言う料理があったの
だが、これって要はパエリアなんだけど、パエリアは、イタ
リアでなくスペイン料理では……と思う俺と
って、そんなことより、感謝状同定式の副賞の話だ。
「えーっ、今日テンタ君が聖クリスタル国より感謝状をいた
だきました」
\パチ/、\パチ/、\パチ/、\パチ/、\パチ/
とトムさんが言うと、みんなが拍手してくれた。
「で、これには、シェリー、タミーが言っていた通り、副賞
がありましたw」
と言うと、
「っっしゃ!」
「ヤリー」
とシェリーさんとタミーさんがガッツポーズをとる。
それを見たミリーさんが2人に、
「あらあら、副賞がでると言ってもテンタ君にでしょ、何も
あなた達がそんなに喜ぶことはないんじゃない」
とあきれ顔で言うと、トムさんが、ミリーさんの顔を見て、
ニヤリとして、
「それが、シェリーやタミーにも関係があるんだな」
と言うと、”あら”って顔をするミリーさんに、再びガッツ
ポーズをとるシェリーさんとタミーさん。
それを見て頷き、再びトムさんが、
「シェリーとタミーだけじゃない、ミリーやアナ、それに
ヴィクセンお前にもだ」
とトムさんの話も聞かず、『パエージャ』(パエリア)を必
死に食べていたヴィクセンを指さし言う。
指をさされたヴィクセンさんは、狐耳を”ピクピク”させて
自身を指さすトムさんの方を見て固まった。
「それはどういうことだ」
とアナさんがトムさんに聞く。
すると、”よくぞ聞いてくれました”って顔でトムさんが言う。
「テンタがもらった副賞は、あの晋国にある高級リーゾート施設
の『
ガンブレイブメンバー全員がこれに招待されてますw!!」
俺と
「「「「「えぇ―――――!!!!!」」」」」
「……」
「一度は行ってみたかったべぇ」
「すごい、すごいよテンタ君!」
「ヤッター!」
「えっ、マネージャーの私も?」
全員驚くと同時に、ミリーさんは固まり、アナさん、
シェリーさんタミーさんそしてヴィクセンが、口々に喜びを
口にする……中、2人取り残される、俺と
(そんなに『
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます