49話 『スカイバリアン』と『マリンバリアン』




 2日後、コンバットスーツが完成した。


 俺は、肩に三毛猫オトアを乗せ、2日前同様、ガイゼルさん、シャリ


ーさんタミーさんと 工房「クルーフ」へと向かう。


 前回と同じく、宿泊してるホテルのある地下7階から工房


クルーフのある地下10階へは転送魔法円で降りて行った。


 工房に着くと、誰もいないようだが……。


そこで、ガイゼルさんが大きな声で、工房の奥に向かて


言う。


「父さん、連れてきたよ~」


その声を聴いて、工房の奥からバンデさんが出てきて、


「おお、テンタさんお待ちしていましたw」


とにこやかに言う。


「おはようございます」


「おはようございますw」


俺と、三毛猫オトアが挨拶すると、


「おはようございます」


と2日前、三毛猫オトアに驚いていたバンデさんだったが、


今は何事も無かったように普通に会話する。


そして、


「少々お待ち下され」


と言って、工房奥に引っ込み、しばらくして、例のバックルを


持ってきた。


「どうぞ~」


と俺に渡してくるので、それを受け取り、俺がベルトにはめる。


赤着せきちゃく!」


変身ポーズをとり、べルトバックルに取りつけた、楕円の金属


板が光る。


と同時に俺の体が赤い光に包まれ、俺は、コンバットスーツ姿


になる。


 装着したコンバットスーツは、元と同じ、赤いメタリック


だ。


「じゃ~テンタ君行くよ~w」


三毛猫オトアがそう言うと、三毛猫オトアの体が光り



そして、


「フェードイン~w」


と俺のベルトのバックルに飛び込んだ。


\ピカ/


と一瞬俺の体が光るが、表向き変化はない。


 しかし、俺の内部では、


『各部チェック、オトアちゃん』


『はい』


三毛猫オトアと光の精霊エードラム様が、コンバットスーツ


のチェックを行っていた。


『コンバットスーツシステム正常』


と言う三毛猫オトアの言葉に、


エードラム様が、


『なら、OKって事です、テンタ君』


と報告してくれた。


『ああ、はい』


俺は返事を返した。












 コンバットスーツのチェックを終え、


「フェードアウト」


と言って、三毛猫オトアが、ベルトバックル部分から出。


次いで、


「リバース」


俺も、元の姿に戻った。


「いかかでしたかテンタさん?」


とバンデさんが聞いてくるので、笑顔で親指を立て、


「はい、グッドです」


と答えると、バンデさんも笑顔で、


「それは、よかった」


と安心したようだった。


そして、何かを思い出したように言う。


「ああ、テンタさんそう言えば、例の乗り物ですが……」


「ああ、ハイ」


と俺が返すと、


「今日のお昼過ぎには完成するとオンケル兄貴が言っ


てましたよ」


とバンデさんが言う。


(えーと、オンケルさんは……ガイゼルさんの伯父(兄)


だたっけ)


それを聞いたガイゼルさんが、


「ならテンタ、昼食後に取りに行けばいい」


と言うので、


「ああ、はい、それで……ガウの方は大丈夫でしょうか?」


と聞くと、ガイゼルさんが、


「うん、問題ないと思うが、念のため、今から俺が行って、


伯父オンケル言っておこう」


と言ってくれた。


「しばらく、ここで待っていてくれ」


と言って、鍛冶屋「ガウ」の方へ走って行った。


それを見て、バンデさんが、


「狭い所ですが、今お茶を入れますんで」


と言ってくれたが……。


(今バンデさん1人なのに……悪いよな)


って考えている間に、


「あ、はい、せっかくなのでいただきますw」


と満面の笑みで、タミーさんが横から口を挟むのだった。













 お茶を飲みながら、工房「クルーフ」で、ガイゼルさんの


帰りを待つこと10分。


 ガイゼルさんが帰って来た。


「もう出来てるらしいぞ、テンタ」


帰るなり、そう俺に言ってくるガイゼルさん。


それを聞いたタミーさんが、


「じゃ、今から行きましょう~テンタ君」


と言ってくるので、


「ああ、はい」


と返事をしたら、タミーさんは俺の脇を抱え、座っている


俺を立たせ、背中を押しながら、


「早く、はやく~」


って、せかしてきた。


「ちょ、ちょっと待ってください」


と俺は慌てて、三毛猫オトア抱き抱え、タミーさんに押し出


されるように、工房を出るのだった。













 木製の大きな扉を開けると、いきなり、大型の機械が


いくつも並んでいる所を通り抜け、工場の中にあるプレハ


ブの建物の前にそれはあった。


 一つは俺のコンバットスーツと同じ赤いメタルカラーの


機体で、もう一つは、濃い黄色(山吹色)の機体がそれぞ


れの台座に載っていた。


その場には、元店主のエルターンさん(ガイゼル祖父)に、


現店主のオンケルさん(ガイゼル伯父)に副店主のブル


ーダさん(ガイゼル従弟)にゾーンさん(ガイゼル息子)


と全員そこにいた。


「ああ、テンタさんw」


ゾーンさん(ガイゼル息子)が俺を見つけ言うと、


他の人達が、俺達の方に向く。


「テンタさん、スーツの方はいかがでしたか?」


と現店主のオンケルさん(ガイゼル伯父)が俺に言うので、


「ええ、ありがとうございます、完璧な仕事でしたよw」


と俺が返すと、


「それは、よかったw」


と安心したように言う現店主のオンケルさん(ガイゼル伯父)。


「こっちも完成してますよw」


とにこやかに言う副店主のブルーダさん。


その言葉を受け、改めて見る。


「すごいですね~」


と俺が言うと、俺の横のシェリーさんが、


「うちのお父さんのバーバリアンよりかっこいいわねw」


と言う。


「へへ、そうでしょ~」


と何故か自慢げに言うゾーンさん(ガイゼル息子)に、


「お前は、ほんのちょっと手伝っただけだろう~」


とガイゼルさんが突っ込む。


ガイゼルさんにそう突っ込まれ、


「えへへへ」


と頭をかくゾーンさんだった。


「それはそうと、テストは昼から地上でしましょう~」


と副店主のブルーダさん(ガイゼル従弟)が言う。


「あっ、はい」


その言葉に俺が返事を返すと、元店主のエルターンさん


(ガイゼル祖父)が、


「お昼は用意いたしておりますので、どうぞ中へお入


りください」


と言われた。


(いや~まだお昼には少し早いと思うけど……)


俺がそう思っていると、ガイゼルさんが言う。


「お昼以前に、まずこいつらを小槌に収納してくれ


テンタ」


と言うので、


「はい」


と返事すると、横のタミーさんが言う。


「小槌に収納するのは良いけど、出すとき名前無いと


出しにくいよ」


その言葉にガイゼルさんも”あーそーか”って顔をする。


「じゃ~テンタ名前を付けろ」


って言われたが……。


「名前ね……名前……」


とぶつぶつ言っていたら、三毛猫オトアが急に俺に向かて、


「赤い方が、『スカイバリアン』、黄色の方が、『マリンバリ


アン』てのはどうテンタ君w」


と言ったのだが……。


ゾーンさん以外は三毛猫オトアが話せることは言ってなか


ったので、元店主のエルターンさん(ガイゼル祖父)に、現店


主のオンケルさん(ガイゼル伯父)に副店主のブルーダさん


(ガイゼル従弟)が、固まり、


「……」


「ね……」


「猫がしゃべった!」


と驚く。


(ヤバイ……)


と俺は思い、三毛猫オトアは、


(しまった)


と思ったが、ガイゼルさんが俺に代わり説明してくれた。


 最後は、『三毛猫オトアは異世界の猫だから』と言うセリ


フに、なぜか、またまた、みんな納得するのだった。













 無事、小槌の中に『スカイバリアン』、『マリンバリアン』


を収納し、工場内に建つプレハブのような建物(事務所)の中


に入る。


奥にあった応接セットのテーブルの上には、たくさんのカザード


国料理が並んでいた。


 以前アナさんが作ってくれた料理と同じで、豚肉を中心とし


た料理にソーセージ、チーズなどが並ぶ。


 皆でテーブルを囲みソファーに座る。


元店主のエルターン(ガイゼル祖父)が、音頭を取り、


「テンタさんのスーツと乗り物の完成を祝して、カンパ~イw」


皆で乾杯する。


 大人達ドワーフは、全員エール(ビール)のジョッキで


乾杯し、俺達は、事前にガイゼルさんが、鍛冶屋「ガウ」のメ


ンバーに教えていたのか、俺、三毛猫オトア、シェリーさん、タミー


さんは、”サイダー”での乾杯である。


 この国に”サイダー”があることに驚いたが、何のこと


はない、ガイゼルさんが事前に、聖クリスタル国で仕入れて


いたらしい。


 お昼ご飯……と言うより宴会である。


それが、約2時間行われたのち、『スカイバリアン』、


『マリンバリアン』テストのため、地上に上がることとな


った。













 カザード国の地上は、農業地帯。


 穀物をはじめ、野菜、果物に養豚業などが行われている。


 カザード国で消費されるだけでなく、一部は、他の国、


特に聖クリスタル国に輸出もされている。


その南には、人口の湖、ゼー湖がある。


このゼー湖は、この地上の農業地帯の水源である。


 因みに、地下都市の水源は地下水脈を使用しているとか。


 俺は、小槌から、『スカイバリアン』、『マリンバリアン』


を出す。


そして、


赤着せきちゃく!」


変身ポーズをとり、べルトバックルに取りつけた、楕円の


金属板が光る。


と同時に俺の体が赤い光に包まれ、俺は、赤いコンバット


スーツ姿になるとすぐに、


「宇宙シェリフバルバン!」


とポーズを決める。


「じゃ~テンタ君行くよ~w」


三毛猫オトアがそう言うと、三毛猫オトアの体が光りだす。


そして、


「フェードイン~w」


と俺のベルトのバックルに飛び込んだ。


\ピカ/


と一瞬俺の体が光った。


「では、まず『スカイバリアン』から」


と俺は言って、バイクにまたがる。


握った、ハンドルから俺の中に居るエードラム様のエネルギー


(精霊力)が注がれる。


「操作はイメージしてください」


と副店主のブルーダ(ガイゼル従弟)さんの言葉を聞き、俺は


イメージする。


すると、『スカイバリアン』が、ふわりと浮いた。


そして、次に上空を飛ぶイメージを浮かべると、”シューン”


て感じで、『スカイバリアン』が大空に飛び出した。


「「「「おおー」」」」


鍛冶屋「ガウ」のメンバーの歓声が上がるのが聞えた。


すると、左のモニターのエードラム様が俺に言う。


『そんな、普通に飛んでも、性能のチェックにならないわよ


テンタ君』


と言われるが……。


 正直、俺はおっかなびっくりで、操縦している。


元来、俺はジェットコースターのような絶叫マシーンが苦手で


ある。


 しかし、そのようなことを言っても、恐らくエードラム様は


納得してくれないだろう……。


(ええーい)


俺は、やけくそで、急上昇や、急降下、はたまた宙返り飛行を


行った……。


 これがもし、元の世界の絶叫マシーンなら、気絶ものではある


が、やって行くうちに、なんだか快感になって来た。


(自分で操縦してるからか?)


多分自分でコントロールしている安心感からか恐怖を感じない


のかもしれない。


『スカイバリアン』の飛行テストを終え、地上に降りてきた。


「次は、『マリンバリアン』ですな」


と期待の目で俺を見言う鍛冶屋「ガウ」店主のオンケル(ガイゼル


伯父)さんが言う。


で、『マリンバリアン』を副店主のブルーダ(ガイゼル従弟)


さんと店主のオンケル(ガイゼル伯父)さんに手伝ってもらって、


湖の湖面に浮かべる。


そして、俺はまたがり、『スカイバリアン』の時のようにイメージ


をすると、『マリンバリアン』は湖面を進みだした。


「良い感じだなガイゼル」


その様子を眺めていたエルターン(ガイゼル祖父)が、ガイゼル


さんに言う。


「そーだな、じーちゃん」


そうエルターンさんい返事をし目を細めテストを見守るガイゼル


さん。


 次に俺は、湖の中に潜航する。


『スカイバリアン』同様に水中でいろいろな動きを試し、やがて、


浮上し、みんなの所に戻って行った。


 ただ、一つ残念なのは、この『スカイバリアン』、『マリンバ


リアン』に搭載されている武器のテストがここでは行えないって


事だ。


『スカイバリアン』にはミニガンと呼ばれるチェーンガンに似た


武器が搭載され、『マリンバリアン』には、小型魚雷が搭載されて


いるが、それら武器は、ここカザード国内での戦闘を禁じられてい


るのに加え、このゼー湖は、大事な水源なので、汚せないのだ。


『スカイバリアン』、『マリンバリアン』の航行テストを終え、


俺が小槌に収納しようとしたら、シェリーさん、タミーさんが


うるうるとした目で、


「「私達も乗りた~いw」」


と言ってきた。


(んー、初めからそのつもりか?)


そこで、俺が左モニターに映るエードラム様に聞く。


『どうしましょ』


するとあっさり、


『いいんじゃない』


って言われてしまった。

 

 なので、シェリーさん、タミーさんに


「良いですよw」


って答えると、2人は


「「ヤッターw」」


と飛び上がって喜んだのだった。


 そこで、2人をシェリーさん、タミーさんの順に『スカイバリ


アン』で、俺の後ろの席に乗せる。


で、案の定、急上昇、急降下、宙返り、錐もみ飛行など一折曲


芸飛行をやらせれた。


2人とも、まるで、元の世界の”絶叫マシーン”に乗る女子高


生のように\キャー/、\キャー/騒ぎなが乗っていた。


 次に水中用の『マリンバリアン』。


これに乗せる前に、シェリーさん、タミーさんは、


紫着しちゃく!」


黄着おうちゃく!」


とコンバットスーツ姿になる。


で、


 水中航行を……。


 しかし、空とは違い、景色も単調だし、水中でのアクロバット


航行とは行かず、ただ、水中を進んでるだけなので、2人は直ぐ


飽きてしまったようだ。












 

 『スカイバリアン』、『マリンバリアン』の武器のテストは、


何処かダンジョンでした方が良いと言うことで、念話でマネー


ジャーのヴィクセンさんにテストが出来そうなクエストが無い


か尋ねようとしたら、逆に、


≪今、古代文明研究所所長ニム・アノルさんから、テンタ君


ご指名のクエストがあるんだけど……≫


と言われてしまった。


≪俺、1人ですか?≫


とヴィクセンさんに聞き返すと、


≪いや、何人でもいいって事だけど、テンタ君かオトア


ちゃんのどちらかがメンバーに入っていることが条件


らしいわよ≫


その言葉を聞いて、


(俺かオトアって……何のクエストだ?)


≪いったい何のクエストですか?≫


と再度聞くと、


≪何でも、遺跡の調査らしいわよ≫


その言葉に、


≪遺跡!?……≫


と聞き返すと、ヴィクセンさんが、


≪詳しい話はギルドの北支部で聞いてくれる?≫


と言うので、取り合えず、


≪はい≫


と答え、念話を切り、みんな(シェリーさん、


タミーさんにオトア)に相談したところ、


明日、北支部に行ってみようと言うことになった。


(『スカイバリアン』、『マリンバリアン』の武器


のテストができるクエストだといいのにな~)


と思う俺だった。






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