43話 鍛冶屋 ガウ
ワクワクと緊張の面持ちで、ガイゼルさんに続き、プレハブ
の建物の中に入ると、入り口近くには、木製の事務机が4つ、
向かい合わせに組まれており、ガイゼルさんに似たピンクの
髪と髭のドワーフが3人座っていた。
「おう、お越しになられたか」
そのうちの1人のドワーフが立ち上がり、ガイゼルさんの
後ろをついてきた俺を見つけ、立ち上がり言う。
立ち上がったドワーフにガイゼルさんが、
「この子が今回の依頼主テンタだ」
と俺を立ち上がったドワーフに紹介する。
紹介されたドワーフが、俺に握手を求め言う。
「私はここの現店主のオンケル・ミュラーです、これの伯父
になります」
とガイゼルさんを見て言う。
それを聞き俺は、
「初めまして、日向天太と申します、今回はお世話になります」
と言って握手を交わした。
そして続いて、オンケルさんは、他の2人を紹介する。
「これは私の父、先代の店主エルターン・ミュラーで、こっちが
私の息子副店主のブルーダ・ミュラーです」
オンケルさんの紹介を受け、2人が俺に
「初めまして、エルターン・ミュラーです」
「ブルーダ・ミュラーです」
と自己紹介され、それを受けて、それぞれと握手を交わす。
(えーと、ってことは、エルターンさんがガイゼルさんの伯父さん
で、ブルーダさんはガイゼルさんの従弟って事かな?)
すると、奥にある応接セットのソファーに黒服の男達と座っていた
2人のドワーフがこちらに出向てくる。
それを見て、エルターンさんが、再び俺に紹介する。
「紹介しますこちらがガイゼルの父、私の叔父で、バンデ・
ミュラーです。で、こっちが、ガイゼルの息子のゾーン・
ミュラーです」
オンケルさんの紹介を受け、2人が俺に
「初めまして、バンデ・ミュラーーです、この近くで工房クルー
フの店主をやっています」
「ここガウで、見習として働かせてもらってるブルーダ・
ミュラーです」
と自己紹介され、それを受けて、それぞれと握手を交わす。
今回オトアの紹介は省く、って言うかオトアがしゃべると
いろいろと説明が増えるので紹介しない……
分かっていて何もしゃべらないでいてくれている。
そして、俺との紹介を済ませたガイゼルさんは、シェリーさんと
タミーさんも紹介する。
「ここ子たちは、トム……いや冒険者バルバンの娘で、姉の
シェリー、妹のタミーだ」
そのガイゼルさんの紹介を受け、シェリーさんとタミーさん
が、
「今回は向学のためテンタ君にくっついてきました
シェリーです」
「タミーです」
と自己紹介した。
それが終わると、オンケルさんが、
「では、皆さんこちらへ」
と俺達を奥の応接セットへと案内してくれるのだった。
俺達が応接セットんの方に向かうと、先ほどバンデさん、
ゾーンさんと一緒に座っていた黒服の
がり、俺達に席を譲り、ソファーの後ろに立った。
(この人達は、いったい……)
と俺が思っていたら、それを察したのかオンケルさんが、
「この人達は銀行の方々です」
と紹介された。
紹介された人達は俺にお辞儀をするので、俺も思わず、
「どうも」
と言って頭を下げた。
3人掛けのソファーが2つ向かい合わせになっていて、その
両端には2人掛けのソファーが、対面で置いてあった。
向かって、右側のソファーに俺と、ガイゼルさんが座り、
その対面の3人掛けのソファーに、店主のオンケルさん、
副店主のブルーダさん、先代店主のエルターンさんが座り、
俺の右隣りの2人掛けのソファーにシェリーさん、タミー
さんが座る。
その対面に、ガイゼルさんの父親のバンデさん、息子の
ゾーンさんが座った。
と同時に、どこからかやって来た、オレンジの髪の小学生
……。
(ああ、そうだったドワーフの女性ってロリロリだったな)
が、ソファーに座る全員に、アイスミルクテーを置いていく。
「どうぞ」
「ああ、どうも」
俺の前に会釈をしてアイスミルクティーを置く、ドワーフの
女性に俺も軽く頭を下げた。
「では、早速……」
とオンケルさんが俺に促してくるので、
「あっ、はい」
そう言って、小槌から設計図3枚とチップと、布に包んだ例の魔法の
ナイフを出す。
「これが、コンバットスーツの設計図で、そのコンバットスーツの
ヘルメットにこれを内蔵してほしいのです」
と説明しながら、設計図と共にチップをオンケルさんに渡す。
オンケルさんは、チップを手で持ち、設計図をテーブルに広げると、
副店主のブルーダさん、先代店主のエルターンさんが食い入るように
設計図を見、俺の右側に座っていたガイゼルさんの父親のバンデさん
とガイゼルさんの息子のゾーンも思わずソファーから立ち上がり、
オンケルさん達の後ろに立つ銀行の人達を押しのけ、オンケルさん
の後ろから、設計図を食い入るように見ていた。
「なるほど……思ったよりも作りは複雑ではないですねぇ」
と言うオンケルさん。
「で、このチップを
と手に持ったチップをちらっと見ていい、
「で……」
とテーブルに置いてある布で包まれた魔法のナイフをちらっと見て、
「それを、左のガントレット部分に……なるほどなるほど」
設計図を見ながら、1人なるほどなるほどを繰り返すオンケルさん
だった。
◇
コンバットスーツ並びに俺専用エアーバイクの設計図を見て
”なるほどなるほど”を繰り返していたオンケルさんが3枚の
設計図を見終わったころ。
「では、お支払いしますね」
と言って、俺が小槌を出すと、オンケルさん達の後ろに立って
いた黒服(スーツ姿)の銀行員たちが、さーっとテーブルの上に、
宝箱を1つ置く。
大きさにして、中くらいの宝箱。
そこに俺がお金を流し込む。
この国、カザード国の通貨チルでお支払いをする。
この国の通貨チルは、すべて魔鋼で出来たコインと言うか四角
い硬貨で、種類は下記の通り。
【チル】魔鋼硬貨
1万チル (約20万円)魔鋼4×4Cm
千チル (約2万円) 魔鋼3.5×3.5Cm
500チル(約1万円) 魔鋼3×3Cm
100チル(約2千円) 魔鋼2.5×2.5Cm
1チル (約20円) 魔鋼2×2Cm
総額 1千500万チル(約3億円)の支払い。
一番高価な硬貨1万チル硬貨で1500枚分の硬貨での支払
いになる。
だから、宝箱が必要なんだが……。
\\ジャラジャラジャラ//
大量の硬貨を小槌から出し、宝箱に流し込む。
宝箱にすべて硬貨を流し込むと、黒服の銀行員達が総出で必死に
数え……。
「確かに、1千500万チルございます」
銀行員の1人がそう言うと、オンケルさんが、
「では、よろしくお願いします」
と軽く頭を下げ、黒服の銀行員の1人に言うと、その人が、
「お預かりしました」
と言って、何やら薄い小さな金属板をオンケルさんに渡した。
後でガイゼルさんに聞いたら、所謂、入金票らしい。
そして、黒服軍団(銀行員)の人達は、お金が入った宝箱を
2人がかりで持ち、この場から去るのだった。
黒服軍団(銀行員)が立ち去ると、オンケルさんが俺に言う。
「よろしかったのですか、全額前金でいただいて」
と聞いてくるので、俺は笑顔で、
「はいw」
と答える。
本来、こういう取引では、半金を先に納め、出来上がってから
残りを支払うと言うのが通例らしいが、お世話になっているガイゼ
ルさんの身内だから……ってのは、表向きで、本音を言えば1度に
済ませておきたかったのだ。
◇
鍛冶屋『ガウ』を出たところで、ガイゼルさんが、くるりと後ろ
の俺達の方を振り向き言う。
「明日は、お前達だけで鉱山に入ってもらう」
と言うのだ。
その言葉に俺は、
「鉱山に……ですか?」
と聞くと、察しがいいのかタミーさんがガイゼルさんに言う。
「ひょっとして、アダマイト鉱山に魔物がでて、今、採掘が
止まってるとか?」
その言葉を聞いて、ガイゼルさんが頷き言う。
「そうだ、タミー」
そして、
「俺がここに来た時、すでに魔物の出現により、採掘が中断されて
いたので、マネージャーのヴィクセンに言って、クエストをうちの
チームで受託してある」
と言うガイゼルさん。
「ヤリー」
それを聞いて張り切るタミーさん。
その横でシェリーさんがガイゼルさんに聞く、
「私達だけでって、ガイゼルおじさんは一緒に来ないの?」
その言葉に、ガイゼルさんは言う。
「ああ、行ってやりたいのは山々だが、俺はこっち(ガウ)
の方を手伝う約束になっているからな」
その言葉にシェリーさんが不安になるのかと思いきや、
「まぁ、悪魔を倒した私達だから楽勝だと思うけどw」
と強気の発言をするシェリーさんにガイゼルさんは、釘を
刺す。
「あのな、エードラム様が人についてるからと言って、油断は
するなよ、ダンジョンと違い魔物の数は少ないとはいえ、
中には、手ごわいのもいるからな!」
「「はーいw」」
心配して釘を刺すガイゼルさんの言葉を真剣に受け止めているのか
どうか……かなり2人の返事は軽めだった。
そんな2人だからか、ガイゼルさんは俺と
「くれぐれも油断はするなよ」
と念押しで言ってきた。
「「はい」」
シェリーさんとタミーさんと違い真剣に返事をする俺と
を聞いて納得してくれたようだった。
◇
ガイゼルさんの言葉を受けて、明日の鉱山入坑に向けて、俺達は
食料などの必要なものを買い出しに行く。
ここ、カザード国(ドワーフ)の鉱山は、地下12階~36階
の階層に分かれていて、各フロアーが時計のように12の方向に
放射状に水平に掘って行く形で、金、銀、銅はもとより、魔鋼や
オリハルコン、ミスリル、アダマイト、それに宝石類の多種多様
な鉱物が豊富に取れる鉱山なのだが、一つ欠点があって、それら
地下の坑道は、豊富な鉱物と共に、魔粒子が濃く溜まっていて、
そのため、時折魔物が自然発生する。
その頻度は、2か月ぐらい採掘していると起こるようで、その
度に安全のため、採掘を中止せざる負えないらしく、昔はその
度にカザード国(ドワーフ)の軍隊を派遣していたらしいが、
今は、それを冒険者が代わりに請け負っている。
本来であれば、カザード国の近くにある北支部がその管轄で
、そこに鉱山関係者がクエストを発注し、北支部在籍の冒険者
チームが請け負うのが通常の流れなのだが、今北支部登録の
冒険者チームは、定数96チーム対し、実際は60チーム
しか登録しておらず、またその60チームのうち2チーム
(シロッコ、アネッロ両チーム)が、行方不明なので実質
58チームと人手不足状態。
そこで、本国、聖クリスタル国の冒険者ギルド本部にもクエ
ストが上がっており、さっきガイゼルさんが言っていた通り
、それをうちのマネージャーのヴィクセンが、ガイゼルさん
の指示によりクエストを受託したと言う訳だ。
鍛冶屋ガウのある地下10階から、商業施設のある地下5階に
転移魔法円で移動する。
地下5階に到着すると、そこには、よく小説や、ゲームで見る
異世界の建物……俺と
建物と言った方がいいかもしれないが、そんな街並みが続い
ていた。
それを見た俺の肩に載る
「なんか、やっと異世界に来た感じだねw」
と言うので、
「そうだな」
と返事をしながら歩き、食料や備品の買い出しをシェリーさん
タミーさん達と半分楽しみながらする。
ただ、シェリーさん、タミーさんは、先日、魔物+悪魔を
倒し報奨金と魔物の素材料は、まだ、受け取っていない。
報奨金&魔物の素材料は、聖クリスタル国の冒険者ギルド本部
又は支部でないと受け取らない仕組みなので、現在は全くの
無一文だと言うので、必要な買い物の代金とお昼代は、俺持ち
ってことになった。
(まぁ、俺のためにアダマイト鉱山に行くようなものだから、
仕方ないかな)
お昼は、ヴルストゼンメル(ソーセージロール)をみんなで
食べる。
ヴルストゼンメル(ソーセーロール)と言うのは、ソーセージ
をパイ生地で包み焼き上げたもの……らしい。
サクサクとしたパイ生地の中から、暖かいソーセージが出て
きて、なかなかおいしかった。
ただ、
ここで、明日の買い物をすることになったんだが、特に食料
と言うか食事について、俺達には問題があった。
それは、
いって事だ。
それに、唯一、料理経験がある
考えても、猫の手で、料理が作れるとは誰も思わない。
そこで、タミーさんから提案があった。
「料理を買えばいいんじゃない?」
「出来立ての料理を小槌に保存しておけば、いつでもできたてだ
よw」
と……。
その発言に、みんなが”確かに”ってことになり、レストランを
周り、食料と言うより、料理を集めることになったが……その前
に、買い出しせねばならないものがある。
それは、料理を入れて持って帰る(小槌に収納する)ための器が
必要だってことになった。
この世界には、テイクアウト専用の簡易な器と言うのは存在
しない、まぁ、多少包み紙代わりの木の皮や、葉っぱなどを
使うことはある。
しかし、例えば、
容器など存在しないのである。
お金持ちは、料理人に家で作ってもらうし、庶民の場合は自宅
から、鍋.などを容器を持参してそこに入れてもらうようだ。
そこで、入れ物を買いにダイニング用品店に行き、そこで
鍋や、ステンレス製の大皿、中皿などを買う。
そして、それらの容器を持って、各レストランに向かい料理を
買いあさった。
予備を考え5日分(坑内には3日の予定)5人分の朝昼晩の
食事分を買う。
大体、1人、朝食代は50チル(千円)、昼食代は100チル
(2千円)、そして夕食は150チル(3千円)の予算。
結局、この日の買い物と昼食代合わせて1万2500チル
(25万円)もかかってしまった。
(結構、冒険って、お金かかるのねぇ~)
買い物が終わったのは、もう夕方だったので、そのまま
宿泊のホテルに戻り、夕食を部屋で食べ早めに就寝すること
になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます