42話  カザード国入国




 本来、カザード国に夕方に着く予定が、突然の戦闘で予定を


オーバーし、着いたのは夜7時を少し回ったところだった。


 心配したガイゼルさんが、カザード国の北門前で待ってい


てくれた。


「遅かったな~」


俺達を見つけるなり、近寄って来て言うガイゼルさん。


 途中、念話で詳細は話をしているが、それだからこその


心配かも。


「ご心配かけました」


「かけました」


俺と、三毛猫オトアはそう言って頭を下げるが……。


シェリーさん、タミーさん、それにレツさんダイさんは、


頭を下げるどころか……。


「ねぇ―聞いて、ガイゼルおじさん、デーモンゴリズ


リーを私しとめたのよ~すごいでしょうw」


と自慢するタミーさんに、それを聞いてシェリーさんが、


「違う違う、その前に私がパープルウイップで……」


と言い出しすわ、レツさんダイさんも、


「ガイゼルの旦那、聞いてくださいよ、あっしが、


デーモンガルムをこの弓で、バッタバッタと倒し


たんす」


とダイさんが弓を見せながらガイゼルさんに自慢する。


それを聞いてレツさんが、ガイゼルさんに言う。


「何言ってやんだい、その半分はこの剣で……」


と自身の剣をガイゼルさんに見せ言い出す始末。


(うーん、カオスだわ)


俺がそう思っていると、


”ポツ、ポツ”と雨が降り出してきた。


それを見たガイゼルさんは、興奮し今だ自慢をする


シェリーさんタミーさん、それにレツさんダイさんに、


「わーった、わーった、後でゆっくり聞かせてもらう


からな、とにかく雨だ中央の建物まで急げレツ、


ダイ」


と言って、俺達が乗る馬車へと乗り込んできた。


「「ヘーイ」」


ガイゼルさんに言われ、渋々馬車を動かすレツさんと


ダイさん。


ガイゼルさんの言う中央の建物に俺達が乗った馬車


が着くころには、かなりの本降りの雨になる。


\\ザー//


 ここ、カザード国はぐるりを自然の擁壁に囲まれた


国である。


 この国を囲む自然の擁壁よ言うのは、所謂カルデラ、


大規模な噴火で、火山灰、火砕流、軽石、溶岩などの、


「火山噴出物」が大量に噴出したり、マグマが地下を


移動して空洞化した地下のマグマだまりに、落ち込む


形で地表が陥没したもの正式には陥没カルデラと言う


らしい。


そして、そこにドワーフ達が自分たちの国を作った


と言う訳。


丸く環状に岩で囲まれ、その中の平地には農作物が


植えられ、一大農業地帯となっており、東西南北


に道が整備されていて、その中心部にある建物は、


この下にある地下都市へとつながっている。


構造はこうだ。


地表       農業地域

 

地下1階   兵舎


地下2階~4階   住宅区画



地下5階~7階   商業地域、製造業、観光



地下8階~10階  鍛冶区画



地下11階   王城



地下12階~36階 鉱山


※この鉱山は各階ごとに時計のように12本の放射


状になった坑道がある。


中心部建物には、それぞれの階に適応した転移魔法円


があり、俺達は沢山の転移魔法円うち地下7階の魔法


円を選び、そこに載った。


 ほどなくして、俺達が乗った馬車が7階のフロアー


に着くと、ガイゼルさんが馬車から降りて、レツさん


ダイさんを誘導しながら、この7階の観光施設内に


ある宿へと案内してくれた。


 馬車の中なので、街並みは見えないので、後で馬車


を降りたら、ゆっくり街並みを見学しようと思ってい


る。













 馬車が止まる。


「兄い~着いたみたいですぜ」


と馬車の前方の窓からレツさんが教えてくれた。


皆で、馬車を降りると、そこにはレンガ造りの古風な


4階建ての建物が立っていた。


『ホテルエーデル』


(明治時代のホテル……って感じかな)


 ガイゼルさんの指示で、レツさん、ダイさんはこの


建物の裏にある馬車置き場に馬車を置きに向かった。


馬車と、レツさん達をつなぐ金具は、そこに居る


ホテル係が外してくれるらしいし、また、その側に


ケンタウロス専用の宿舎があると言う。


 ガイゼルさんの後を着いて、俺達はホテルの中に入る。


受付で、ガイゼルさんが、何やらサインして、鍵を2つ


もらっていた。


そして、


「407がシェリーとタミーな」


と言って、シェリーさんとタミーさんにカギを渡す。


そして、俺と三毛猫(オトア)にも


「お前達は408な」


と言ってカギを渡されるが、


「シェリーとタミーも聞いてくれ」


と俺と三毛猫だけでなく、シェリーさんとタミーさんに


も声を掛け


「ここは、食事を部屋に持ってきてくれるが、お前達、


時間も時間だからすぐに食事をするよな~」


そう聞いてくるので、みんなで、


「「「「はいw」」」」


と返事をした。


それを聞いたガイゼルさんは、カウンターの人に目配せを


送る。


目配せを受けたカウンターのホテルの従業員は、それに軽く


頷くと、ガイゼルさんは再び俺と三毛猫オトア


「明日朝、また迎えに来るから、今日はゆっくり寝ろよ」


と言って、手を振りながら、去って行くのだった。


去っていくガイゼルさんをその場で見送り、シェリーさん


とタミーさんと4階に共に階段で上がり、それぞれの部屋


に入る。


\ガチャ/


 部屋に入ると、落ち着いた雰囲気で、白を基調とする


壁や家具類がが置いてあった。


 部屋の中央には、大きなテーブルがあり、


(おそらくここで食事をするのかな?)


そう思い眺めていると、三毛猫オトアが言う。


「中々いい部屋だね、テンタ君」


「そうだな」


そう2人で会話しながら、シャワールーム、トイレを


確認した。


 シャワーは、魔結晶で作動させるタイプ。


そして、トイレは、うちのチームハウスのトイレと


同じで、俺達の世界で言う、昭和のころの汲み取り式


トイレ風だが、うちのチームハウス同様、この便器の


底には転移魔法円があり、汚物をみんな処理施設に


転送するようになっていた。


 ベッドは、ダブルベッド。


(広く使えそうだ)


俺がそう思った時、\コンコン/と部屋の扉をノック


する音が聞こえる。


「失礼いたします、お食事をお持ちしました」


とホテルの人の声がしたので、


「はい」


\ガチャ/


と扉を開ける。


するとドアから料理を乗せたワゴンを運び入れる2人


のボーイ風の人達が入って来た。


そして、俺達に一礼してから、


「お食事は、こちらのテーブルでよろしいでしょうか」


と聞いてくるので、


「「はい」」


と俺と三毛猫オトアが、同時に返事をすると、一瞬


ホテルの人が固まった。


(しまった、普通猫がしゃべらんよなぁ)


俺も三毛猫オトアも一瞬”しまった”とは思ったが、その後、


ホテルの人達は、何事もなかったようにワゴンから、


テーブルへと料理を並べだした。


そして、料理を並べ終わると、静かに一例をして、部屋


を出た行った。


「ふぅ~」


俺がため息をつき、三毛猫オトアと顔を見合わせ、


「危なかったなぁ~」


「危なかったねぇ」


とお互い言葉を掛けた。











俺は、中央のテーブルの席に着くが、三毛猫オトアは、テーブル


の上に載ったまま食事をとった。


 まず、スープに、サラダ、メインは、分厚いラム肉の


ステーキにマッシュポテトが添えてあり、それに、丸い


ハードロール系のパンが2つ付いていた。


「「いただきますw」」


2人で手を合わせ食事をする……前にまず、三毛猫オトアのステ


ーキを一口サイズに俺がナイフで切り分け、パンも


一口サイズに千切る。


三毛猫オトアは冷めないと食べれないので、俺は先にいただく。


三毛猫オトアと2人きりで久しぶりに取る食事。


会話と、料理を十分に堪能する俺と三毛猫オトアだった。












 

「「ごちそうさまでしたw」」


と2人で手を合わしたタイミングで、\コンコン/と


部屋の扉をノックする音が聞こえる。


「失礼いたします、お食事はお済でしょうか」


とホテルの人の声がしたのには驚いた。


「えっはい」


\ガチャ/


と扉を開けると先ほど料理を運んでくれたボーイさん


らしき2人が入って来て、俺達に一礼し、


「では、片付けさけていただいてよろしでしょうか」


と聞いてくるので、今度は俺だげが、


「はいw」


と返事をする。


2人のボーイさんらしき人達は手際よく食事の後片付け


をして、また俺達に一礼をして、


「失礼しました」


と言って、部屋を出て行った。


俺と三毛猫オトアは、またもや2人して、顔を見合わせ、


「驚いたなぁ~」


「驚いたねぇ」


とお互いと言葉を掛けた。


 その後、俺はシャワーを浴びた後、濡れタオルで三毛猫オトアの体


を拭いてやり、後はすることがないのと、


疲れがたまっていたのかすぐに寝た。












 朝6時に目が覚める。


今回は、三毛猫オトアに起こされる前に起きることができた。


 顔を洗い、歯を磨き朝の準備をしていると、\コンコン/と


部屋の扉をノックする音が聞こえる。


「失礼いたします、朝食をお持ちしました」


とホテルの人の声がしたので、


「はい」


\ガチャ/


と扉を開ける。


するとドアから料理を乗せたワゴンを運び入れる……今日は1人


のボーイ風の人達が入って来た。


そして、俺達に一礼してから、


「朝食は、こちらのテーブルでよろしいでしょうか」


と聞いてくるので、


「はい」


今日は、俺1人返事をする。


それを見たボーイ風のホテルの人は、手早く運んできたワゴンから、


テーブルに朝食を並べる。


そして、料理を並べ終わると、静かに一例をして、部屋


を出た行った。


昨日と同じく、俺は、中央のテーブルの席に着くが、三毛猫オトア


は、テーブルの上に載ったまま食事をとる。


 テーブルに並んでいたものは……。


数本の焼いたフランクフルトに目玉焼き、それにベーグルそして、


暖かいミルクティー。


 まず、三毛猫オトアの焼いたフランクフルトとベーグルを一口


サイズにしてから、


「「いただきますw」」


2人で手を合わせ、朝食をいただいた。


(んっ?)


と思ったのは、目玉焼きの味付け、うちはソースだが、三毛猫オトア


は、マヨネーズ、所によっては醤油をかけて食べる所があると


聞くが、ここの目玉焼は塩コショウの味付けだったんで俺は、


少し驚いたってだけだけどね。













「「ごちそうさまでしたw」」


と2人で手を合わしせタイミングで、\コンコン/と


部屋の扉をノックする音が聞こえる。


「失礼いたします、お食事はお済でしょうか」


とホテルの人の声がしたのには驚いた。


「えっはい」


\ガチャ/


と扉を開けると先ほど料理を運んでくれたホテルの


ボーイさん風の人が先ほど同様1人で入って来て、


俺達に一礼し、


「では、片付けさけていただいてよろしでしょうか」


と聞いてくるので、今度は俺だげが、


「はいw」


と返事をする。


そのホテルのボーイさん風人は手際よく食事の


後片付けをして、また俺達に一礼をして、


「失礼しました」


と言って、部屋を出て行った。


(いったいなんなん!?)


 この後、出かける用意をして、三毛猫オトアを肩に


載せて、1階のロビーに向かうと、すでにガイゼルさん


……だけじゃなくて、シェリーさんとタミーさんも一緒


に居た。


「あれ、シェリーさん、タミーさんどうしたんですか?」


と俺が尋ねると、”へへーん”て感じでタミーさんが


言う。


「いや、私達も一緒に行こうかと思ってw」


その言葉に俺は驚き、タミーさんに聞く、


「えっ、一緒に行くって、ガイゼルさんの工房に?」


「うんw」


俺の問いに嬉しそうに言うタミーさん。


(何で一緒に来るんだろう?)


と単純にそう思ったので、


「シェリーさんとタミーさんのコンバットスーツって


エードラム様が精霊の力で、直してくれたから修理は


しなくていいのでは?」


と聞くと、シェリーさんが俺に言う。


「向学のためよw、駄目かな……テンタ君」


って聞いてくるので、


「いや、別に俺は構いませんけど……」


とチラっとガイゼルさんを見ると、


「ああ、大丈夫だよ」


と言うので、


「ガイゼルさん側がいいのであれば、俺に異論はない


ですよ」


と言うと、シェリーさんの横のタミーさんが、


「やった~」


って飛び上がって喜んだ。


と言う訳で、シェリーさん、タミーさんも連れだって、


皆で、ガイゼルさんのお父さんの実家であり、現在


伯父さんが経営する鍛冶屋「ガウ」に向かった。












 宿泊してるホテルのある地下7階から鍛冶屋「ガウ」が


ある地下10階へは転送魔法円で降りて行く。


そして地下10階に到着すると……。


 昨日、この国に到着した時は、夜だったので、


気づかなかったが、ホテルのある地下7階もそうだが、


ここ地下10階も思ったよりも明るい。


 これは、各地下のフロアーの天井に太陽石と言う


石を大量に埋め込んでいる。


 この太陽石と言うのは、太陽が地上を照らすと、


自動的に石が光りだすそうで、そのため、昼間は


この地下にある都市を照らすそうだ。


 先ほど俺は思ったより明るいと言ったが、今は


雨が降っているので、普段の晴れ間よりは暗いそうだ。


 石造りの建物が並ぶ街、その一角にそれはあった。


高さは2階建てくらいの建物だろうか、鍛冶屋と言う


には大きい建物。


 木製の大きな扉を開けると、いきなり、大型の機械が


いくつも並んでいた。


旋盤機やプレス機、まるで、昭和の下請け工場のような


雰囲気だった。


 当然だが、ここにある大型の機械は、俺達の世界の


機械とは違い、どれも魔動機と呼ばれる魔法エネルギー


で動く機械類だ。


 この立ち並ぶ機械類とそこで作業をする人達ドワーフを俺達


は通り過ぎ、この建物の一番奥に事務所らしきところに出る。


 そこには、工場の中にあるプレハブのような建物があり、


その建物の扉を、黙って開け中に入って行くガイゼルさん。


俺達もガイゼルさんの後に続き、その建物の中に入った。


(さーて、いよいよだな)


 俺の心にワクワクと緊張感が沸いてくるのだった。

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