40話 アロムさんにもう一つお願い



 次の日の朝、トムさんは東支部に出発する。


で、その次の日の午前10時ごろ、銀髪のハイエルフのアノル


博士が、喫茶ゴンを訪ねてきた。


 喫茶店は営業中なので、2階にあるチームリーダートムさん


の執務室にあるソファーで話を聞いた。


俺と同席をしたのは、三毛猫オトアトガイゼルさん。


俺と俺の肩に三毛猫オトアが載り、俺の隣にガイゼルさんが


座る。


 俺の向かい側にアノル博士が座った。


”コンコン”


とノックの後に


「失礼します」


”ガチャ”


扉を開け、マネージャーのヴィクセンさんが、コーヒーを持って


来てくれた。


 事前にアノル博士に飲み物を聞いたら、コーヒーがいいと言


われたので、コーヒーになったのだが……。


コーヒーってこのイデア世界の人は苦手な人が多いのに…。


どうやら、アノル博士は転生者の様だ。


「これ、お借りしていたものです」


と布に包まれたものをテーブルにそっと置いた。


俺は、サッと包みを解き、中身を確かめる。


「はい、確かに」


俺の確認を待ってアノル博士は言う。


「調べさせてもらいましたが……」


と言いながら、コーヒーを一口”ゴクリ”と飲み、


「古いものではありませんが、大変面白い性質を持って


ました」


と言う。


俺の隣のガイゼルさんが、コーヒーを一口飲んでから、


「ほう~どう言う?」


と聞くと、


「これは手にした人の魔力をかなり吸うんですが、それ


だけでなく、持った人のイメージ通りの武器に変わるん


ですよ」


答える。


それを聞いて、まじまじとステーキナイフ状のそれを見る


ガイゼルさん。


それを見て、アノル博士が手に取り、


「やってみますね」


と言いながら、ステーキナイフ状のそれを握ると、


\シュパ/


と剣に変わった。


「ほぉ~」


と感心するガイゼルさん。


「でね、例えば~」


と言うとまた、


\シュパ/


と変わって弓に変わった。


「へぇ~」


それを見たガイゼルさんは感心する。


「確かに今の素のテンタ君だと、このナイフに魔力を根こそぎ


持っていかれますし、例えコンバットスーツを着た状態でも


……魔力は持って3分かなぁ~」


その言葉に俺と三毛猫オトア


「「えっ……」」


と言葉を漏らし固まったが、それを見たアノル博士は、


「しかし、精霊様の力があり、それを制御できるのだあれば


~すごくテンタ君、オトアちゃんにとっては便利な武器になる


と思いますよ~」


と、にこやかに言う。


(んっ?何でこの人精霊様の事知ってるんだろう?)


と俺が心にそう思った瞬間、残りのコーヒーをぐっと、飲み


干して、


「じゃ、私はこれで」


と言って立ち去ってしまった。












 アノル博士がガンブレイブのチームハウスを訪れた次の日。


 今度は、現在西支部のギルドマスターを務める『バンダム』


チームのチームリーダーのアロムさんが尋ねてきた。


 アノル博士の時と同様、2階にあるチームリーダートムさん


の執務室にあるソファーで話を聞いた。


 前回と同様に俺と俺の肩に三毛猫オトアが載り、俺の隣に


ガイゼルさんが座る。


 そして、俺の向かい側にアロムさんが座った。


 アロムさんは、金髪で少し髪がウエーブしている細身の青年


って感じで、俺は気が付かなかったが、着ている服は、例の


『機動戦記バンダム』で、主人公アロムが来ていた連合軍の


青年用軍服らしい。


 因みにアロムは冒険者名で、本名はルーク・スカイラーク


さんだ。


\コンコン/


とノックの後に


「失礼します」


\ガチャ/


扉を開け、マネージャーのヴィクセンさんが、コーヒーを持って


来てくれた。


 ここまでは前回のアノル博士と全く一緒。


俺は心の中で、


(デジャブかよ)


って突っ込みながらも、アロムさんとお話をする。


 まず、大まかな使用について、エードラム様の考えを三毛猫オトア


が代弁する。


それを聞いて、アロムさんが言う。


「なるほど……なら、増幅装置も、魔晶石による魔力補助もいらな


いってことですねぇ」


それに、三毛猫オトアが答える。


「はい、です、ただ……」


「ただ?」


三毛猫オトアの言葉にアロムさんが聞く。


「えーと、はい……」


三毛猫オトアは誰かと会話しているようで……。


「例えば、緊急事態に、私やエードラム様がスーツの制御が


できるようにはならないかと……」


その言葉にアロムさんは、”ああ”って感じで言う。


「なら、スーツ内に三毛猫オトアさんとエードラム様の


依り代をつけましょうw」


と言い続けて、


「あっ、そーだ、三毛猫オトアさんとエードラム様は、


念話やテレパシーでテンタ君とお話しできますが、何なら


ヘルメット内に2人の画像が出るようにすると言うのは


どうでしょう~、テンタ君のピンチの時、お互い顔が


見えた方がテンタ君の励みになりませんか?」


と言うと、三毛猫オトアが”パー”と顔が明るくなり


「良いですねw」


と言うので、アロムさんが、


「エードラム様もそれでよろしいか?」


三毛猫オトアに聞くと、


「ん、はい、ああはい、分かりました……大変良いとの


ことですw」


それを聞いたアロムさんがニッコリ笑って、


「あとは武装だね、テンタ君w」


「あっ、はい」


 この後、宇宙シェリフバルバンの基本武双に加え、今まで戦って


きた俺の経験から、例の魔法のナイフと、俺のアイディアを盛り


込んだ武器をアロムさん提案したんだが、アロムさんは、


「それは面白いね」


って言ってくれて、設計に盛り込んでくれた。


スーツの方は済んだんだが、ここでもう一つアロムさんにお願い


する。


「なにかな、テンタ君?」


「実は……トムさんが使う、万能バイクってこの世界では作れな


いでしょうか?」


(正直、無理だろうと思ったが、あまりの金額を稼いでしまった


んで、俺の中の中二病がうずいたんだよな)


俺が恐る恐る聞いたんだが、アロムさんが少し考えて、


「んっ……ああ、バーバリアンねぇ~……無理!」


その言葉に、俺はガックリして、


「やっぱり……」


と言うと、アロムさんが、俺に”違い違う”て手を振りながら


言う。


「無理でもあるが無理でもない」


「えっ!?」


俺が驚き聞き返すと、


「トムのバーバリアンは、陸海空宇どこでも使えるけど、あれは


あくまでブランチ能力で作ってるからなんだけど、あれを実際


この世界の技術で作ろうとすると……」


とアロムさんは前置きをして、


「まぁ、宇宙ってのは論外だとして、空と海……しかも海中となる


と、1つのバイクでは無理かな……って感じだ」


と言い、さらに付け加える。


「飛行能力については、バイク底面に”浮遊石”……これは魔力を


込めると浮く、別名無重力石って言われれうんだけどね、それと


推進用に、風魔法を起こせる装置と組み合わせれば、意外と簡単


なんだ、また、海中航行も、バイク底面に”沈殿石”……これは


浮遊石の反対で魔力を込めると沈むんだけど、だからそれを一つ


のバイク底面に着けて魔力をうまくそれぞれの石に送るのは難し


いし、やったとしても莫大な費用が掛かるし……出来もあまり


いいものにはならないと思うよ、だったら2台に分けて作った


方が費用も安いし、恐らく1台にまとめるより性能もいいと


思うよテンタ君」


と言われた。


「なるほどです」


俺はアロムさんに言われ納得の上万能バイク2台分の設計も


お願した。


 最後に、アロムさんが帰り際に人間の時のオトアの写真が


ないか聞いてきたので、スマホを出して写真を見せると、


何やら昭和のころのラジカセのような大きさ機械を出して


来て、スマホとつなぐと、その機械が”ピコピコ”光、


数秒後、


「これで画像のコピーはもらったんで、そーだな3日後ぐらい


には、スーツとバイクの両方の設計図渡せると思うから、出来


たら持ってくるね」


と言う言葉を残し帰って行かれた。











 アロムさんが訪れた次の日、ガイゼルさんは、ケンタウロスの


レツさん、ダイさんを伴いカザード国へ向け出発した。


 実は、俺と三毛猫オトア、それにシェリーさん、タミーさんの


4人は、トムさんが言っていたように、俺と三毛猫オトア、ガイゼル


さんが、アノル博士やアロムさんと当てない時間帯で、


しかも冒険者学院の生徒が闘技場を使わない時間帯を使って、


ガイゼルさんが居る間は、ガイゼルさんに相手をしてもらって、


4人でのフォーメーション攻撃の訓練を続けていた。


 ガイゼルさんがカザード国へと向かってからは、4人で、


ガイゼルさんの指摘する項目を1づつ、改善できるように


訓練していたのだった。


 い~やしかし、ガイゼルさんのブランチ『ガンボー』って、


かなりやばいブランチだった。


4人がかりで、攻撃が当てられないのは当然かもしれないが


、特に『ガンボー』さんのブランチスキル『激怒』はやばか


った。


『ガンボー』さん自身の周り360度全方位に半球状に並べ


られる武器の一斉掃射ってヤバイ、やばすぎる……何度死に


そうになったことやら……。


 んな、こんなで、アロムさんが設計図を完済させるまでの間、


俺と三毛猫オトア、それにシェリーさん、タミーさんの4人は、


訓練を続けるのだった。













------(第三者視点)------☆






「バンバ様只今戻りました」


とテンタ達が居る大陸とは別の大陸の地下深く岩でできた、


地下城に居る悪魔男爵バンバ(坊主頭に、青白い顔つきの男)


の前で跪く、フルプレートアーマーの騎士風の男。


「おお、クインクゥエか」


悪魔男爵バンバは跪くクインクゥエに声を掛ける。


「今200人ほど狩ってまいりました」


それを聞いたバンバは、クインクゥエに


「そーか、して今何人ほどになった」


と聞くと、クインクゥエは、


「はは、後……200ほどで千人になるかと」


と報告するが……。


「バンバ様、実は……」


と口ごもるクインクゥエに悪魔男爵バンバは不思議そうな


顔をして聞く。


「何んじゃ、どうかしたのかクインクゥエ」


その言葉にクインクゥエが言う。


「最近、例の銀の男が現れまして、何かと嗅ぎまわっておりまする」


その言葉に悪魔男爵バンバが、


「銀の男?」


と疑問を口にするとクインクゥエが答える。


「デケムを倒した転生者にございます」


その言葉に悪魔男爵バンバが、思い出したように言う。


「ああ、あの小僧たちに味方する転生者か!」


「はい、最近私の動きを読んで、先回りし邪魔をいたします」


バンバの言葉に頷き答えるクインクゥエ。


 悪魔男爵バンバは少し考え、


「セクスよ!」


と配下のセクス( 白シャツ吊りバンドの半ズボン姿の子供)


を呼ぶ。


「はい、ただいま、バンバ様」


呼ぶや否や”ボワ”と目の前に現れるセクスに、


「お前、クインクゥエの人間狩りを手伝ってやってくれ」


と言うと、セクスは、


「えっ、はい」


と返事する。


そしてクインクゥエに向かって言う。


「セクスのあの能力は、あの銀の男の例の能力を破れる


かもしれん、一緒に連れてまいれ」


その言葉にクインクゥエは頭を下げ、


「ははっ」


と言って、セクスを連れ\ボワ/っと悪魔男爵バンバの


前から消えた。


そこへ、別の悪魔が\ボワ/っと悪魔男爵バンバの前に


現れた。


「バンバ様、ゴースン様が、バンバ様のお耳にも入れる様


仰せつかりました」


自身の目の前に膝まづく悪魔を見て言う。


「どうなされたパイ殿、我の耳に入れるとは……?」


バンバにパイと呼ばれた男は、悪魔子爵ゴースン配下の


トカゲの頭に人間の体の男だ。


「はい、例の小僧を保護している転生者のうちの一人


のドワーフの男が、聖クリスタル国から離れ、今自身


の出身国であるカザード国に向かいました」


その報告に悪魔男爵バンバはふと考える。


「銀の男が晋国あたりに出没し……もう一人がカザード


国か……これであの小僧を直接守るものは今いない訳だが


……しかし、聖クリスタル国には、クリスタルマンが少な


くとも1人いるから迂闊に手は出せないが……」


と独り言をぶつぶつ言っていたが、急に”ハッ”として


何かを思いついたような顔で、自身の配下で唯一魔大陸に


残したセプテンを呼び出す。


「いでよセプテン」


するとしばらくして、\ボワ/っとゴスロリ風の女が、


悪魔男爵バンバの前に現れ跪く。


「お呼びでしょうかバンバ様」


そのセプテンに向かって悪魔男爵バンバが命じる。


「帥は、あの小僧の動向を探ってくれぬか」


その言葉に、


「はい、さっそく……」


とセプテンが言いかけた時、悪魔男爵バンバが言葉を


重ねる。


「よいか、探ると言っても聖クリスタル国には入らんで


よい、あそこにはクリスタルマンがおるでの~」


その言葉に顔を上げ言葉の意図を考えるセプテンを


見て、さらに悪魔男爵バンバが説明する。


「お前は聖クリスタル国の外に居て小僧を見張れ、


そして万が一、小僧があの国の外に出ることがあれば、


即刻襲ってあの猫を奪ってまいれ」


その言葉に納得した顔のセプテンは、


「直ちに」


と言って、悪魔男爵バンバの目の前から\ボワ/っと


消えた。


消えたセプテンを確認した悪魔男爵バンバは、今だ


自身の前に居るパイ(トカゲの頭の男)に向かって、


「ゴースン殿には、かたじけないとお伝え下され」


と声を掛けると、パイ(トカゲの頭の男)は、


「ははっ」


と言うなり”ボワ”っと悪魔男爵バンバの前から


消えた。


そして、一人になったバンバは、


「これは……この仕掛けを使うまでもないかのう~」


とほくそ笑むのだった。

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