37話 フェードイン




 ギルド協会の南側に建っている、クリスタル教会北支部の建物


へ向かった。


 協会の正面玄関で、悪特隊北支部女性隊員のリラ隊員から、


三毛猫オトアを受け取る際、聞いてみた。


「オトアはどうでした?」


俺の質問にリラ隊員は、


「そーですねぇ~、人の言葉がしゃべれるようになったって


ことと、不明だった運動性などの数値が明らかになった……


ってぐらいで、精霊様の能力が特別何か付与されたと、言う


訳ではないようですよw」


と答えてくれた。


「そーですか」


俺は、リラ隊員から三毛猫オトアを抱きかかえるように


受け取りそう返事を返した。


俺が、三毛猫オトアを受け取ったのを見て、タミーさんが


「じゃ、みんなでお昼食べに行こうよ~」


と言ってくるので、


「じゃ、失礼します」


とリラ隊員に頭を下げて、その場を後にする。


「何か以前と変わった感じはないのか?オトア」


と、歩きながら聞く俺に、俺の胸元に抱かれている三毛猫オトア


は、


「うーん、こうやってテンタ君と普通に話ができると


言うくらいで……後は体が軽くなったくらいかな?」


と言うので、


「軽くなったって?」


と聞き返すと、


「なんか……軽くなったとしか言いようがないけど」


と言うので、先ほどリラ隊員が言っていた数値について


聞いてみた。


するとこんな感じ、


【以前のオトの数値】


HP     35


MP     60


運動性   不明


攻撃力    不明


防御力    不明


命中      不明


回避  不明


ブランチスキル

      テンタへの愛


で、


 エードラム(光の精霊)様と一体化した後の


三毛猫(オトア)の数値。


【オトア+光の精霊】


HP     200


MP     100


運動性     80


攻撃力     98


防御力     60


命中      65


回避      89


ブランチスキル

      テンタへの愛


【ロック】


アルティメットスキル


      精霊力解放


「んっ、ん?アルティメットスキルって何?それが


ロックって?」


とオトアの数値を聞いて俺が三毛猫オトア


聞き返すと……。


≪それはね、私の力よw≫


三毛猫オトアではない声が俺の頭の中でした。


「え、えっ!」


とあたりを見回す俺に、シェリーさんとタミーさんが


心配し、


「どうしたのテンタ君?」


「何かあったの?」


と言うが、混乱した俺がそれでもあたりをキョロキョロ


するのを見て、シェリーさんとタミーさんもあたりを


キョロキョロし始める。


≪ちがう、テンタ君、私エードラムよw、オトアちゃんの


中に居る≫


と言われ、抱いていた三毛猫オトアを自分の顔まで


、持ち上げて見てみる。


≪そーよ、私はここよテンタ君≫


「ああ、エードラム様!」


その俺の言葉に驚いたはシェリーさんとタミーさんが、


俺に近づき、俺と三毛猫オトアを見比べながら、


「えっ、何?」


「えっ、どういうこと?」


と言ってくるので、


「ああ、今オトアの中に居るエードラム様の俺に対する


念話の様です」


と答えると、2人とも、


「「ああ~……」」


と言って俺から少し離れた。


≪えーと、テンタ君にお願いがあります≫


「んっ、お願い……はい、何でしょう」


エードラム様にそう答えると、


≪お昼ご飯食べてからでいいから、一つ実験をしたいんだけど≫


と言うので、俺はあまり深く考えずに、


「はい、いいですよw」


とエードラム様に答えるのだった。













 協会から西に少し行ったところにあるレストラン『ダーラナ』


に到着する。


「着いたけど……エードラム様からの用事って後でいいの?」


とシェリーさんが俺に言うが、


「ええ、お昼食べてからでいいと」


と俺が答えると、


「そうw」


とシェリーさんが言うなり、タミーさんが、


「お腹減ったよ~、早く食べようよ」


とお腹をさすりながら言う。


「そうですね」


と少し笑いながら俺がタミーさんに言い返すと、


「支払いはテンタ君ねw」


とおごってもらう気満々で俺に言うタミーさん。


「タミーあんたねぇ!」


とタミーさんをたしなめようとするシェリーさんだったが、


「はいw、当然です」


三毛猫オトアまで言い出した。


(まぁ、オトアの言う通り、この二人にはお世話になってるし、


……それに、俺のあの残金を目にしたら当然かなw)


そう思い笑顔で俺は、みんなに言う。


「いいですよw」


「やったーw」


と俺の言葉に喜ぶタミーさんだった。













 白い漆喰の壁、赤い屋根で、入り口右手にサイロ(筒状)のような


建物がくっ付いている建物。


 建物に入ると、中も白い漆喰の壁で、店内は明るく、4人掛けの


テーブルが、5つと、こじんまりしたお店。


 テーブルに着き、注文をして待つこと10分。


 料理が運ばれてくる。


 注文した料理は……『フリテーラ』と言う揚げパンと、


『スゥイル』と言うスープ。


「「「「「いただきます」」」」」


5人で手を合わせ、料理をいただく。


 三毛猫オトアは、当然俺の膝の上。


 俺は、三毛猫オトア用の『フリテーラ』(揚げパン)を


三毛猫オトアが食べやすいよう千切ろうとするが、


「あっち、あちち!」


パンが熱いだけでなく、中の具も熱くなかなかちぎれない。


 何とか細かくしてから、自身のパンに口をつける。


「んっ?……ああ!」


『フリテーラ』を一口食べて気づく。


(なぁ~んだ、これピロシキじゃないか)


 ただ、俺が知るピロシキより、約2倍の大きさだが……。


 今度は、『スゥイル』と言うスープを飲んでみる。


(うーん、これは 飲んだことないぞ)


 スープに溶けかけのチーズの塊が入っていて……後、


ジャガイモかな?それと何の野菜かわからんが、入っていた。


(まぁ、なかなかイケルよね)


って思っていたら、シェリーさんが俺に聞いてくる。


「で、精霊様の実験って?」


「いや、その……」


(いや、実験しか聞いてないし)


シェリーさんの質問に俺が困っていると、


≪テンタ君って言うか、赤着した状態のテンタ君と私……


と言うより、私が憑依したオトアちゃんとの合体!……


みたいなw≫


とエードラム(光の精霊)様のお言葉。


「合体!?」


聞き返すが、”ウフフ”と笑うでだけで、それ以上は答えない


エードラム(光の精霊)様。


仕方ないので、そのままエードラム(光の精霊)様のお言葉を


シェリーさんに言うと、


「ん――っ、よくわからないけど……なら、昼からギルド地下


の練習場を借りた方がいいかもw」


と返された。


 さらに、タミーさんが俺に言う。


「それがいいんじゃない、あそこなら万が一の事故でも他の人に


被害が出ないしw」


とにこやかに、さらっと物騒なことをおっしゃった。


(おいおい、なんかその言い方だと、俺が爆発するみたいだな)


と思うい俺だった。












「「「「「ごちそうさまでしたw」」」」」


皆で手を合わせ、ごちそうさまをしてから店を出た。


 当然、お会計は俺であるが……。


「や・やすいw」


4人分で140クリスタル(2,800円)。


1人35クリスタル(700円)だ。


 んまぁ、安いと言うより普通かもしれないが、ミクドナルド


に比べ、桁違いに安いので、思わず声に出してしまった。


いかに異世界料理(この世界の人にとって)が高いか思い知る


俺だった。













 お昼ご飯を食べた後、俺は肩に三毛猫オトアを乗せ、シェリーさんと


タミーさんと共にもう一度ギルドの建物に戻って、受付で、地下の訓練所の


借りる手続きをする。


「えー、1時間500クリスタルです」


(約1万円か……)


「それを過ぎると、10分ごとに50クリスタルになります」


「あっ、はい、ではそれでお願いします」


と俺がお願するし、取り合えず、小槌から100クリスタル


(トパーズの硬貨)5枚を受付のお姉さんに渡すと、


「では、少々お待ちください」


と言って、受付を離れた。


 しばらくしてお姉さんが、男の人を連れて戻って来て、


「こちらの方です」


と男の……中年のおじさんに俺を紹介すると、その中年の男の


人は俺に、鍵がたくさん付いているリングを”カシャカシャ”


言わせながら、


「着いてきなされ」


と言うので、俺を先頭にシェリーさんとタミーさんと共に、


その中年のおじさんに着いて行くと……。


 ギルドの建物の西側にある……そう、まるで地下鉄の入り口


のような地下に通じる階段を下りて行った。


 階段を降りきると、そこには重たそうな鉄の扉があり、その


扉に、持っていたたくさんの鍵が付いたリングを取り出し、その


中からこの扉の鍵を見つけた出したその中年の男の人は、”ガチャ”


とカギを開け、”ギー”扉を開け俺達に言う。


「どうぞ……あっ、終わったら受付に言うて下されや~」


「あっ、はい」


俺の返事を聞いてか聞かずか、中年の男の人はそのまま黙って行っ


てしまった。


(不愛想だな……まぁいいけど)


俺はそう思いながら、シェリーさんとタミーさんと共に部屋の中に


入る。


「な~んか、本部より小さいなぁ~」


と部屋に入るなり言うタミーさんに、


「だって、本部のは闘技場だもの……比べる方が間違ってるわよ」


とシェリーさんが言う。


(そうなのか?)


俺がそう思っていると、俺の肩から三毛猫オトアが”ひょい”


っと飛び降りる。


(確かに……身軽になったるなオトア)


俺はそう思いながらあたりを見回す。


大きさは、学校の体育館程度。


床は一枚岩で出来ていて、壁は黒い金属っぽいもので覆われている


が、地下で窓もないのにやたら明るい。


 その理由は、天井には、光石と言う魔力で光る石が敷き詰められ


ているようだ。


「で、どうすればいいんですか?エードラム(光の精霊)様」


三毛猫オトアに向かい俺が言うと、


≪そうね、取り合えず赤着してテンタ君≫


三毛猫オトアではなく念話で答えるエードラム(光の精霊)


様。


そこで、俺は赤着する前に、


「シェリーさんとタミーさん少し離れていてください」


と2人にお願いすると、シェリーさんとタミーさんは、


「わかった」


「うん」


とそれぞれ俺に返事を返して、俺と三毛猫オトアが居る


場所から少し離れた。


それを見てから俺は、


「赤着(せきちゃく)!」


変身ポーズをとり、べルトバックルに取りつけた、楕円の金属板が光る。


と同時に俺の体が赤い光に包まれ、俺は、赤いコンバットスーツ姿になる


とすぐに、


「宇宙シェリフバルバン!」


と再びポーズを決めるのだった。


すると、急に三毛猫オトアが俺に向かい走り出した。


そして、俺の手前でジャンプし、


「フェードイン!」


と叫ぶと、三毛猫オトアの体が光に包まれ、赤着した俺のベルトの


楕円形のバックル部分に突進する。


(えっ、あっ、オトアお前何す……)


って俺が思うや否や、光に包まれた三毛猫オトアの体が俺のベルト


バックル部分に吸い込まれていった。


「「えっ、えっ、?」」


それを見ていたシェリーさんとタミーさんも驚く。


 俺の体の中ではなく、膨大なエネルギーが俺の体を包むように感じる。


 しかし、その直後、\\バキバキバキ//っと、俺のコンバットスーツに


ヒビが入りだした。


≪やっぱ、駄目かぁ~≫


と、俺の頭にエードラム(光の精霊)様の声が聞えたのだった。










 

 一応、エードラム(光の精霊)様の精霊の力で、俺のコンバット


スーツのひび割れは修復できたのだが……。


≪あーん、このスーツがもう少し強度が出せればねぇ~≫


と悔しがるエードラム様。


「どうすればいいですか?」


と俺が質問すると、


≪そーねぇ、アダマイト鋼が一本あれば、それを金属粒子レベルで


私が分解して、このスーツに吹き付ければ……≫


「アダマイト鋼1本……ですか?」


俺がエードラム(光の精霊)様に聞き返す言葉を聞いて、シェリー


さんが口を挟む。


「アダマイト1本って?」


「ああ、はい、今説明します」


とシェリーさんに対し、エードラム(光の精霊)様の言葉を説明


すると、


「ん――って、アダマイトは、カザード国(ドワーフの国)でしか


取れないのよ……それに1本って恐らくアダマイト塊のラージ


バーだと思うけど、12kgはあるから……50万クリスタルも


するわよ」


※50万クリスタル(約1千万円)



それを聞いて、俺と三毛猫オトアが驚き声をあげる。


「「えー―――っ、」」


 しかし、驚く俺と三毛猫オトアにタミーさんが、


にこやかに言う。


「あるじゃない、50万クリスタル(約1千万円)w」


(んっ?……ああ、そうだ俺持ってるわ)


タミーさんに言われ気づく俺だった。













 地下の訓練所から出た俺達は、受付に戻り終了の報告し、


受付を立ち去ろうとすると、


「あっ、テンタさんちょっとお待ちを」


と受付のお姉さんに言われる。


「えっ、はい、何ですか?」


って聞くと、


「ギルマスがお待ちなので……」


と言われ、


「えっ、ギルマス?、何の用でしょう」


と聞き返すが、受付のお姉さんは、


「さぁ?」


とだけ言う。


 受付の人に案内され、俺は、肩に三毛猫オトアを乗せたまま、


午前中に通った受付右横の扉を通り、さらに通路奥のギルマスの


部屋に案内された。


\コンコン/


ノックしてから部屋に入る。


「あっ、来た来た」


部屋に入るなり、ピンクの髪の猫人のミンスさん《ギルマス》


がそう言うと、座っていたソファーから立ち上がり、


「まぁ、入って」


と声を掛けられ、


「ここに座ってテンタ君」


とミンスさんとその向かいに座る見慣れない20代と思われる


男性が座るソファーへ座るよう言われる。


 俺は、ミンスさんの隣に座り、肩に載っている三毛猫オトアを俺の


膝の上に移し、向かい側に座る男の人を見る。


「あっ」


膝の上に乗せた三毛猫オトアが、男の人を見て何か言いかけたが、


「どうしたオトア?」


と俺が聞くと、


「何でもない」


と口ごもった。


(知り合い?、オトア)


俺はそう思いながらも、その男性をじっと見る。


銀髪のハイエルフらしい人物で、この世界には珍しい、紺色のスーツに身を


包んでいる。


「ああ、こちら、アルセダイン王国の古代文明研究所所長


のアノル博士」


と俺達にミンスさんが紹介する。


そして、


「で、こちらが日向 天太君で、この猫ちゃんがオトアちゃん


です博士」


と俺達をアノル博士にも紹介した。


すると、アノル博士の方から立ち上がり俺に握手を求め、


「初めまして、テンタ君、オトアちゃん、私はアルセダイン


王国の古代文明研究所所長のニム・アノル」


と俺達に握手を求めるアノル博士。


 俺は軽く博士と握手し、博士は、三毛猫オトアの右前足を


軽く握り握手する。


で、唐突に博士が言い出した。


「テンタ君が、ダンジョンで取得した宝物についてですが……」


と前置きの後、


「ズバリ、5千万クリスタルでどうでしょw」


と言ってきた。


(んっ?5千万クリスタル……)


とちょっと考えたが、


「え――――っ10億円!」


と驚き、思わず立ち上がり叫ぶ俺だった。

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