36話 冒険者ギルド北支部




------(テンタ視点)------☆




 昨日、夜にこの北支部にトムさん達と戻って来た俺は、次の日、


北支部のギルド協会北支部の建物に向う。


 シェリーさんとタミーさんも同行してくれた。


 ギルド協会北支部の建物に向かった理由は、先日の冒険者実地


試験の結果と報酬を受け取るとともに、その後飛ばされたダンジョン


にて得た、魔物の素材や、宝物を換金するためだ。


 冒険者の試験の合否は、ここ北支部居た時にトムさんから聞いて


いたのだが、正式に冒険者ギルドからの免許状交付を受けるためで


ある。


「ずいぶん小さい建物ねぇ」


とタミーさんが言う。


 ここに来るのは、俺だけでなく、シェリーさん、タミーさんも初め


てらしい。


(だから、ついてきたのかな?)


と思いつつも、タミーさんに言われ、改めてギルド協会北支部の建物


を見てみると、木造3階建ての昔の小学校のような建物だ。


 ここは、本国(聖クリスタル国)にある本部と違い、中に入ってい


るのは、商業ギルドと、冒険者ギルドのみなので、仕方ないのかもし


れない。


 1階の正面入り口から入り、そのまま受付に進んだ。


 受付で、名前(冒険者登録名俺の場合バルバン)を名乗り、小槌を


見せると、受付右横の扉を開けてくれて、俺一人通され、通路を通り


奥の部屋に案内された。


「ここで、少々お待ちくださいw」


俺を案内してくれた受付のお姉さんにそう言われ、部屋に入る。


 部屋の中は、よくドラマで見るような社長の部屋って感じの


部屋だった。


置いてあるソファーに腰掛けしばらく待つと……俺が待っている


部屋のさらに奥の部屋に続く扉が”ガチャ”と開き中から、ピンク


の髪の猫人のミンスさんが出てきた。


 この人は俺と三毛猫オトアを助けてくれた、冒険者チーム


『シスタームーン』のリーダーで、現冒険者ギルド北支部の支部


長のシスタームーンさんだ。


俺の顔を見るなり、


「あら、オトアちゃんは?」


と聞いてくるので、俺は、


「今日は、トムさん達とオトアは教会の方へ行ってます」


と答えると、


「何で?」


と即答で聞いてくるので、


「いや、昨日光の精霊様の所に行って……」


とここまで話したところで、


「ああ、バルジャン《トム》ちゃんと約束守ってくれたんだねぇ」


と急に話を割り込ましてくるので、


「あっ、はい」


と答えると、すぐさま俺に


「で」


と言ってくる。


(この人人の話を最後まで聞かない人?)


と思いながらも、


「はい、昨日光の精霊神殿で、光の精霊様がオトアと同化され


まして……」


とまたもや言いかけた時、急にミンス《シスタームーン》さんが、


驚き叫んだ。


「ぬっわんだって!!」


(いやいや、ちゃんと説明させてよミンスさん)


と俺は心に思った。












 俺は驚く、ミンス《シスタームーン》さんを何とか落ち着かせ、


昨日あったことや光の精霊様に言われたことを全部1から説明し、


「なるほどねぇ……で、何でオトアちゃんいないの?」


って聞いてくる。


(ホント、この人人の話最後まで聞かないな~)


と思いつつ、ミンス《シスタームーン》さんに説明する。


「ですから、オトアの体に光の精霊様が入ったことによって、


オトアの体にどのような変化が出たのか今、悪特隊北支部で


調べてもらってるんです」


と説明すると、”ふ~ん”って顔で俺に言う。


「なら、それをさっさと私に説明しなさいよ!」


と逆切れ?のように文句を言われる俺だった。


 話が終わり、冒険者ギルドの支部長であるミンス《シスタームーン》


さんから、冒険者免許状を受け取り退出する。


 因みに『冒険者免許状』って小学校の卒業証書みたいな


紙切れだった。


 一度、受付に戻り、俺を待っていたシェリーさんとタミー


さんと合流し、再び受付でアイテム(素材)等の換金のお願い


すると、左の通路を通って、一番奥の右手に換金所の受付が


あると説明され、シェリーさん、タミーさん達と共に換金所


を目指した。


 換金所の受付に行き、冒険者名であるバルバンを名乗り、


小槌を見せると、受付の人は受付の右側を指で指す。


見ると壁に大きな小槌!?……と言うより大槌がそこにあった。


その横には、小槌がはめられるような窪みがある。


「あそこにはめて操作してください」


と受付の人に言われた。


俺が、


「はい」


って言ってその壁に向かうと、シェリーさんタミーさんがそっと


俺の側に来て、操作方法を教えてくれる。


「そこに、これをはめてテンタ君」


「はい」


シェリーさんの指示で、俺は小槌を壁の窪みにはめ込んだ。


小槌をはめ込むと、小槌から光が出て、壁にゲームのような


ウインドウ画面が表示される。


だが、


俺はこの世界の文字が……読めない。


ので、代わりにタミーさんが読み上げてくれた。


そこで、俺は、ガーゴイルと、ブラッド・バット、それに、


ヴァジェト(15mの白コブラ)を選択し、換金にイエス


を選んだ。


\ピッ/


するとガーゴイルと、ブラッド・バットそれにそれに、


ヴァジェト(15mの白コブラ)を表示する文字が消え、


代わりに数字らしき文字が浮かぶ。


・ガーゴイル(魔核なし)×1


 5,000クリスタル(10万円)



・ブラッド・バット   ×3


 1,500クリスタル(3万円)



・ヴァジェト      ×1


 500,000クリスタル(1千万円)


合計506,500クリスタル(1千13万円)


と表示が出た。


それもタミーさんに読み上げてもらったんだが……。


「「えっ――――!」」


数字を読み上げていたタミーさんでだけでなく、隣に居たシェリー


さんも驚く。


当然、俺も驚いてはいるが、驚きすぎて声が出なかっただけである。


 因みに、クエスト代金と違い、宝物やアイテム、それに魔物の


素材代は丸々本人のものとなる。


 次に、謎のダンジョンのラスボス部屋(ヴァジェトを倒した部屋)


にあった宝物を選択する。


 ただ、あの宝物、特に金貨銀貨は、通常であればお金だが、あそ


こにあったのはどれも現在貨幣として使われているものではない


ので、他の宝物同様鑑定が必要となる。


\ピッ/


・要鑑定……3日後。


と出た。


3日後にギルドから鑑定結果が出るらしい。













 冒険者ギルドの建物を出た俺達は、教会の建物内に居る三毛猫オトア


を迎えに行くため、シェリーさん、タミーさんと話しながら、


ギルドの建物の前にある教会へと向かおうとすると……。


 俺の前に、厳つい革鎧を着た男が行く手を阻み、


「坊や、ちょっと顔貸しな~」


って言ってきた。


「そこをどいてください」


と俺が言うと、


「やだね」


と不愛想に答える男。


俺が男を避けようとした時、


「「キャー!!」」


俺の後ろを歩く、シェリーさん、タミーさんの悲鳴が聞こえた。


俺が驚き振り返ると、シェリーさん、タミーさんの顔にナイフを


突きつける男が2人いた。


 さらに、その後ろに2人の男が居る。


「わかりました」


と俺はその男の言う通り、5人の男達と共に、ギルドの建物東側の


人気のない路地へと向かった。


路地に着くと、俺の前に立ちはだかった男が言う。


「坊や、大金が入ったんだろう~、素直にそれを出しな」


(なるほど……カツアゲ?の様ですねぇ)


以前の元の世界の俺なら、素直にお金を渡してたかもしれないが


……。


「わかりました」


といて、右手で懐から小槌を出すふりをして、左手でベルトにある


赤い☆手裏剣を握り……。


男が俺に、かざすナイフを握る右手の甲に手裏剣を持ったまま


\ブシュ/


っと、ぶっ刺し、すぐに手裏剣から手を放す。


「グァ”ァ"――――――ッ!」


俺が手を離すと同時に、男の手裏剣が刺さった手から炎が噴き出


した。


\ゴー/


 それを見た、シェリーさんとタミーさんにナイフを突きつけて


いた2人の男が驚いた瞬間、シェリーさんとタミーさんは、


\ドン/


と男達に肘鉄を喰らわせ、


男達が、


\グゥッ/


っと怯んだところで、


紫着しちゃく!」


「黄着!《おうちゃく》」


とコンバットスーツを着用する……と、同時に、タミーさん


が素早く左の太腿の装甲版を開き、中から銀色に光るデザー


トイーグルと言う44マグナム弾が撃てる銃を取り出すと、


\\バキュン//、\\バキュン//


と男達の右太ももに44マグナム弾を撃ち込んだ。


「「…っあ~!!」」


2人の男はその場に倒れこむ。


それを見た、シェリーさんとタミーさんの後ろに居た2人


の男達は驚き、


「「うわぁ~!!」」


と叫びながらその場を逃げようとするその背中に、


「パープルウイップ!」


腰の右側装甲版を開き、ビームソードのような柄を


出すと、シェリーさんの掛け声とともに、そこから


紫色のビームで出来たムチが形成される。


そして逃げようとする男2人の背中越しに鞭を振る


うシェリーさん。


\ピシッ/、\パシッ/


シェリーさんの振るう紫のビームのムチは男達の


衣服を切り裂いた。


\\バリバリ//、\\バリバリ//


逃げる男達の背中と……お尻が丸見えになる。


(あっらー、パンツまで切り裂いたのね)


 その時、すでに俺が手裏剣を撃ち込んだ男の手から


噴き出す炎は消え、男も口から泡を吹いてその場に気を


失い倒れていた。


そして、シェリーさんが言う。


「あんたら~冒険者チームガンブレイブをなめんなよ!」


その啖呵に、気を失った男以外の4人の男は、


”ひぇ~!!”


と震えあがるのだった。












 まぁ、最近では冒険者のマナーも向上したとは言え、元々


力に物を言わせての一攫千金狙いの人達が多い組織ではある


ので、なかなかこういうことは治らないようだけど……。


 何と言うか、こちらもギルドで換金した金額に驚き、


騒いでいた訳だから反省すべき点はあるよな。


(本当、お金のことは気を付けないと……)


と心に誓う俺だった。


 そんな時、ヴィクセンさんから、念話が入る。


 因みに、ヴィクセンさんは、冒険者チームガンブレイブ


の狐人のマネージャーである。


≪テンタ君、今、念話大丈夫?≫


≪はい、大丈夫です、ヴィクセンさん≫


≪あのさ、もう冒険者の北支部に寄った?≫


≪はい、さっき寄りました≫


≪あちゃ~、もうちょっと早くに連絡したらよかったか!≫


と焦るヴィクセンさんに俺は尋ねる。


≪どうしたんですか?≫


≪いや、さっき冒険者ギルド本部で言われたんだけど、


こないだの冒険者試験の……≫


とヴィクセンさんが言いかけた時、俺はてっきり免許状の


事だと早合点し、


≪ああ、さっき免許状は受け取りましたよ~≫


と言うと、


≪違う違う、あの試験場で倒したゴブリンの報酬の件よ≫


と言うので、俺は驚き、


≪えっ、あの試験って、報酬なんて出るんですか!≫


と言うと、


≪あったりまえでしょ!試験と言えども魔物倒してんだから≫


俺は、試験だからゴブリンを倒しても報酬なんかもらえない


って思っていたから、拍子抜けして、


≪そーなんですね≫


と愛想のない返事をする。


≪金額が金額だからね、ちゃんと確認しときなさい、それと、


あなた冒険者レベル一気にレベル5だからね≫


ヴィクセンさんの言葉に驚いた俺は、


≪えっ、試験に合格したらレベル1じゃないんですか!≫


と聞き直す。


≪テンタ君!普通、6人掛かりとは言え、試験でゴブリン


500体も倒さないからぇね≫


≪ああ、そうなんですか≫


となんだか訳が分からずそう答える俺だった。


 ヴィクセンさんとの念話を終えると、シェリーさんが、


「ねえ、さっきの念話誰から?」


と聞いてきて、続けてタミーさんも、


「オトアちゃん?」


と聞いてくるので、首を横に振り、


「いいえ、ヴィクセンさんからです」


と言うと、


「えっ、マネージャーから?」


「仕事の依頼?お父さん《チームリーダー》を通さずに?」


とシェリーさんとタミーさんがたて続けに聞いてくるので、


ヴィクセンさんとの念話の話の内容を話すと……。


「「えっ――――!!、私達今だにレベル2なのにぃ~」」


と大変驚かれるのだった。













 ヴィクセンさんに言われ、小槌の残高を確認する。


で、


シェリーさんが、内訳はギルドの換金所に行けば分かると言うので、


もう一度ギルドの建物に戻り、換金所の受付の人に聞いて、再度大槌


の所に行き、先ほど同様小槌を壁の窪みにはめ込み、


「振込明細書」


と言うと、その小槌をはめる窪みの下の四角い穴から”ベー”って


感じで、木の板が出てきた。


(これが明細書?)


と思いながら、読めないので代わりにシェリーさんに見せると、


先ほどの件もあるので、シェリーさんは小声で俺に説明してくれた。


【明細書】


ゴブリン      540×5,000クリスタル(10万円)


           =270万クリスタル(540万円)


ゴブリンリーダー    4×7,500クリスタル(15万円)


           = 30万クリスタル(600万円)



ゴブリンゼネラル   5×25,000クリスタル(50万円)


           12万5000クリスタル(250万円)


ゴブリンキング    1×50,000クリスタル(100万円)


           =50,000クリスタル(100万円)


レッサーデーモン  10×50,000クリスタル(100万円)


           =500万クリスタル(1千万円)


合計      1,245,000クリスタル(2,490万円)


チーム6人(随伴の教師は含まない)


  1,245,000(2,490万円)÷6


          =20万7,500クリスタル(415万円)



ギルド取り分3割 


       20万7,500クリスタル(415万円)×0.7


      =14万5,250クリスタル(290万5千円)


チーム取り分2割


  14万5,250クリスタル(290万5,000円)×0.8


      =116,200クリスタル(232万4千円)



現在までの残高

       63万2700クリスタル(1,265万4千円)



(あれれ?、残金は確かにすごい金額だけど……例のゴブリン戦での


お金って……ヴィクセンさんが、驚くほどの金額か!?)


(素材(ヴァジェト)でいきなり、500,000クリスタル(1千


万円)ってのを見てしまったからなのだろうけど……。)



 ただ、この時の俺はそう思っていたが、後でもっとすごい金額が


手に入る……とはこの時は、思いもよらない俺だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る