30話 謎のダンジョン




 今だに耳鳴り……銃の発射音の反響が、頭に残る。


 俺と三毛猫オトアだが、俺は小槌を出し振る。


 小槌から、ランタンを出して、ガーゴイルが倒れた位置まで近づ


いてみた。


 ガーゴイルの体は、石が砕けたように砕けていた……。


「んっ?」


 ガーゴイルの砕けた体付近に、3つ何かが落ちている。


 ランタンをかざし、よく見てみると……。


「ブラッド・バット!?」


 所謂、吸血蝙蝠が3体落ちていた。


 ブラッド・バットは、まだ息があるようなので、小槌からサバイバ


ルナイフを出して、ブラッド・バットの胸にサバイバルナイフを突


き刺し、3体とも始末する。


そして、ガーゴイルの砕けた体と共に小槌に収納した。


 ガーゴイルの体は、解毒や水の浄化の効果があり、大体5千クリ


スタル(約10万円)ほどで、ギルドが引き取ってくれる。


 また、ブラッド・バットは、乾燥させすり潰して粉状にすると、


精力剤になるそうで、1体大体500クリスタル(約1万円)で、


ギルドが引き取ってくれる。


 念のため、注意深くあたりをランタンで、照らして確認したが、


魔物等俺達の危険につながるものはなかった。


で、


ここで、コンバットスーツのエネルギー補充をする。


 小槌から、コンバットスーツのエネルギー用の魔晶石クリスタル


を取り出す。


この、コンバットスーツのエネルギー用の魔晶石って言うのは、


油性の中字用ペンぐらいの大きさ長さの物なんだけど、これを3本


補充する。


赤着せきちゃく!」


変身ポーズをとり、べルトバックルに取りつけた、楕円の金属板が


光る。


と同時に俺の体が赤い光に包まれ、俺は、赤いコンバットスーツ


姿になるとすぐに、


「宇宙シェリフバルバン!」


と再びポーズは決めない……。


コンバットスーツの重さがズシリ、それに何も見えない……


ながら、手探りで胸の装甲版を力づくで開ける。


「っふん……」


\ギィ~イ/


 本来なら、完全にエネルギー切れを起こす前に魔晶石を補充する


ので、自動で胸の装甲が開くんだけどね。

 

俺は見えないので、床に置いた魔晶石を、三毛猫オトアが、1本ずつ


銜え俺の右手に渡してくれる。


それを左手も使って、胸の挿入部を手探りで当て、挿入して行く。


 約20分ほどかけて魔晶石3本入れ終わると……。


”ニュニュニュニュニュー”


って電子音だか、モーター音のような起動音が聞えたかと思うと、


\パ/っと見えるようになった。


(一先ずこれで良し)














 コンバットスーツのエネルギー補充が終わって、一息ついたころ。


≪テンタ、テンタ≫


と念話が入る。


≪あっ、トムさん≫


トムさんの念話に俺が返事すると、


≪シェリーから、大方話は聞いた≫


≪だがな、ジャスタンの付近には洞窟はないんだ≫


とトムさんの言葉に、


(って言われてもなぁ~)


と思い、


≪はぁ……≫


と気の抜けた返事をする俺。


≪で、ミリーも言ってたと思うが、なんか特徴はないか?≫


と聞かれたので、


≪えーと、さっき、ガーゴイル倒しました≫


って答えたら、


≪えっ、ガーゴイル~≫


ってトムさんの声が一瞬、裏返る。


≪……ってことは、お前が居るのは少なくともジャスタン


の付近ではないってことだな≫


と言うので、俺はトムさんに聞き返す。


≪それは、どういうことですか?≫


俺の問いかけに、


≪ああ、ガーゴイルってのは聖クリスタル国北支部付近……って、


つまりアルセダイン王国(エルフの国)とカザード国(ドワーフ


の国)近くに点在する洞窟型ダンジョンそれも中規模のダンジョン


に生息する魔物だからだ≫


その答えを聞いて、俺は


≪ここ、やっぱりダンジョンなんですか!?≫


と驚き言う。


その俺にトムさんは、


≪とにかく、テンタとオトアはあまり動き回るな≫


と言い、続けて


≪今、悪特隊本部と協力して、クリスタル教の北支部


の悪特隊にも捜索を依頼し、俺とガイゼルも北支部に


向かうから、その間おとなしく待って居ろ!≫


って俺に念話で指示する。


≪はい、わかりました≫


トムさんの指示に俺はそう返事するのだった。












 トムさんとの念話の話を、一通り三毛猫オトアに説明す


ると……。


≪トムさんが、動くなって言うのはわかるけど……≫


≪ここが、ダンジョンだたら、じっとしてるのも危なくない?≫


三毛猫オトアが聞いてくるので、


≪って言ってもな……≫


って俺が言い返すと、


≪捜索って言っても、かなり広い範囲になるし、かなり時間が


掛かるんじゃないかな?≫


三毛猫オトアが言うので、俺は、


≪そうだな……掛かるだろうな……≫


と言うと、


≪その間、寝るのはテントがあるにしても……食料は?≫


三毛猫オトアに言われ、


≪……食料な……こんな事になるとは思ってなかったからな≫


≪非常食は持ってきてないな≫


と言いながら、ふと思い出す。


≪あっ、おにぎりとみそ汁があるな!≫


 冒険者の実地試験に出かける朝に、


「何があるかわからないから、せめてこれだけでも持って


いきなさい」


って、渡されたおにぎりと、ボトル型水筒に入ったお味噌汁を


思い出すが……。


≪それだけ……でしょ、それだけで何日も過ごせないと思う


のよ≫


俺の≪おにぎりとみそ汁がある≫と言う言葉(念話)に


三毛猫オトアが言う。


≪確かに……でもどうしたらいいかわからない≫


と、これまた弱音を言う俺に、


≪ここ、ダンジョンなんでしょ≫


と聞き返す三毛猫オトアに、


≪ああ、トムさんがそう言っていた≫


と返すと、


≪ダンジョンなら、階層が下に行けば行くほどモンスター


レベルが上がるんじゃない?≫


と聞いてくるので、


≪ゲームなんかではそうだな≫


と返すと、三毛猫オトアは冷静に俺に言う。


≪なら、上に上がればいいんじゃない?≫


その言葉に俺は、ハッとして、


≪そうだな、その理論だと、ここから上なら、さっき倒し


たガーゴイルより、弱いモンスターしかいないってことに


なるよなw≫


と納得し、三毛猫オトアに言う。


そして、元気よく三毛猫オトア


≪じゃ、今から上に上がろう≫


と言うのだった。












 ガーゴイルの広場から、元来た道を戻る。


 緩やかな坂を上ること約20分……。


 元居た場所を越え、さらに上に上がった……ら。


\ガーン!/


行き止まり!


岩が崩れたのか、誰かが塞いだのか……。


≪これじゃ~上がれないね≫


とポツリと三毛猫オトアが言う。


その言葉に


≪だな……≫


とだけ、俺は答えた。


 塞がれた洞窟の通路を見て、俺と三毛猫オトアは、


しばらく、茫然としていたが、ここで三毛猫オトアが、


ポツリと、


≪デーモンゴブリンキングって、どれぐらいの強さ何だろう?≫


俺に聞いてくるので、俺は


≪ん――っ、どうなんだろうね、ゴブリンは魔物中では比較的


弱い魔物だけど……っ≫


と答えると、三毛猫オトアが、


≪ドラゴンより強いってことはないよねぇ≫


と聞いてくるので、


≪そりゃ、ドラゴンに比べれば、デーモンゴブリンキングって


のは中の上くらいの強さじゃないかな≫


と答えると、


≪トムさんが言っていた、ここは中程度のダンジョンって言って


たのは、規模なのか魔物の強さなのかどっちだろう?≫


と再び聞いてくるので、


≪魔物の強さって、確か……ダンジョンの規模に比例するって


聞いたことがあるけどな≫


と再び俺が答えると、


≪なら、下に行ってみない?テンタ君≫


三毛猫オトアが言う。


その言葉に、


≪えっ、下にって!……≫


と驚き言うと、三毛猫オトアは、


≪確か、ダンジョンって、最下層……ボス部屋に転送魔法円が、


必ずあるって言ってなかった?≫


と聞いてくるので、俺は


≪ん――っ、まぁ、そんな話してたような気がするな≫


三毛猫オトアに答えると、


≪じゃ、行ってみましょうよw≫


軽く俺に言う三毛猫オトア


そして、三毛猫オトアさらに俺に言う。


≪座して死を待つ……より、やるだけやって、死ぬ方が後悔し


ないとは思わない?テンタ君≫


その言葉に、俺は、


(オトアって、どっかの戦国武将みたいな考えをする子なんだなぁ~)


と心で思い、さらに、


(オトアの中身って、意外と男前?)


とも思う俺だった。













 再び、俺と三毛猫オトアは、洞窟を下に降り始める。


自分達が気を失っていた場所を通り、先ほどガーゴイルを倒した広場を


抜け、さらに下に下る。


 ガーゴイルを倒した広場を過ぎ10分程度歩いた所で、また、大きな


広場に出る。


 天井までの高さは先ほどのガーゴイルを倒した広場と同じくらいで、


 ただ、広さは学校の体育館の2倍ほどの広さがあろうか。


「サーチャースコープ!」


広場の隅々までサーチしたが、魔物は全くいない。


≪何もいないぞ、オトア≫


と俺が言うと、


≪魔物さん、お休みしてるのかな?≫


と、本気なのかボケで言ってるのかわからない三毛猫オトア


言葉に、俺は、


≪そーかもな≫


と完全な冗談で返すが……。


≪ふーん≫


とまじな返事を返す三毛猫オトア


(いやいやいや、ここは突っ込んでよ!オトアちゃん)


と心で呟き、そのままこの広場をでた。


 先ほどの広場を出て、さらに歩くこと15分。


 また、先ほどの体育館ほどの広場に出たが……。


「サーチャースコープ!」


広場の隅々までサーチしたが、またもや魔物が全くいない。


≪ここも、いないな≫


と俺が言うと、


≪今日って、日曜日だっけ?テンタ君≫


と、とぼけたことをおっしゃる三毛猫オトア


俺は、


≪今日は、月曜日だよ≫


と真顔で返すと、三毛猫オトアが、


≪じゃ、今日は何かの祝日かな?≫


と、これまた真顔で聞いてくる三毛猫オトアに、


(オトアって、男前なのか天然なのか……どっちだろう?)


と心で思いながら、俺は普通に


≪さぁ~わからないよオトア≫


と返しておいた。


そしたら、ただ、


≪わからないよねぇw≫


と笑顔で言い返してくる三毛猫オトアだった。













 先ほどの広場から洞窟を下ること20分。


洞窟の突き当りに着く。


 洞窟の突き当りには、大きなまるでお城の門のような鉄の


扉があった。


≪行き止まりだねぇ~テンタ君≫


三毛猫オトアが聞いてきたので、


≪ああ、みたいだな≫


と軽く返事を返す俺。


≪ここが、ボス部屋?≫


と再び聞いてくるので、


≪恐らくそうだろうな≫


と答えた。


 その時だった。


”グ~~ッ”


と俺のお腹が鳴る。


続いて、


”グ~~ッ”と、三毛猫オトアのお腹も鳴る。


≪あらっ!≫


驚き顔を赤らめる三毛猫オトア


≪急にゴブリンの襲撃で、お昼半分しか食べてなかった


ものな……≫


と俺が言うと、三毛猫オトアも、


≪私もおしゃべりで夢中で、あまり食べてなかった≫


と言う。


≪じゃ、おにぎり食べようか≫


と俺が言うと、三毛猫オトアは、心配そうに言う。


≪でも、おにぎりは非常食でしょ≫


と聞いてくるので、


≪でもさ、お腹がすいた状態じゃ~まともに戦えないよ≫


と俺が言うと、三毛猫オトアは、


≪確かに……だけど……≫


と少し心配そうに言うので、


≪いや、おにぎりは10個あるから、半分の5個を2人で


今食べて、残りを置いておけばいいんじゃないか?≫


と俺が言うと、三毛猫オトアは、しばらく考えてから、


≪そうね、どっちみち、おにぎり10個じゃ、何日も持たない


し、要はボスをちゃっちゃと倒せばいいんですもんね≫


とさっきまで弱気だった三毛猫オトアが強気の三毛猫オトア


に戻る。


 俺はさっそく、小槌を振り5つずつ、竹の皮で包んであるおにぎりの


1包みとみそ汁の入ったボトル型水筒、それと、平皿を3枚にホークを


1本出す。


 平皿の1つにおにぎり2個を置き、それをホークで半分に割る。


そして、もう一つの平皿にボトル型水筒に入ったお味噌汁を半分入れる。


当然、具をホークでかき出す。


 俺がおにぎり3つで、三毛猫オトアが2つ……何もこれは俺が決めた


数ではない、三毛猫オトアが「男の子なんだから3つは食べなさい」


って、俺に強く言ったから、それに従っただけだからね。


平皿にお味噌汁を入れたのは、三毛猫オトアが食べやすいのもあるが、


冷ましやすいってこともある。


「いただきますw」


≪いただきますw≫


2人で手を合わせ言ってから、おにぎりを食べる。


 因みに、このおにぎりには具はない。


いくら転生者の妻とはいえ、この世界の生まれのミリーさんには、知識がない


と言うより、理解しにくいんだったと思う。


 代わりに、たくあん、がおにぎりに添えてあった。

 

”パク”とおにぎりをかじる。


(まだ、あったかい)


これは、小槌の効果、小槌に収納すると、そこはある種の異次元空間なので、


時間経過がないので、暖かいものは、温かいままだし、食品を何年も入れて


置いても、腐らないって優れモノだ。


 そうそう、因みにお味噌汁の具は豆腐だった。


「ご馳走様」


≪ご馳走様でしたw≫


おにぎりを食べ終わり、2人で手を合わせる。


 後片付け……って言っても、小槌に収納するだけだが……。


で、


 改めて、ボス部屋の入り口の前に立つ。


「さーて、どうやってこの扉を開けるかだな……」


と俺が言うと、


≪呪文かな?≫


三毛猫オトアが、ぽそっと言うが、


(この世界の呪文なんて知らないな)


と思い、


≪呪文……って?≫


って、三毛猫オトアに聞き返す。


≪開けゴマ……とかw≫


って、あたかも冗談のように言う三毛猫オトア


俺が呆れて笑いながら言う。


「そんな、開けゴマって、オトア……」


と口に出して言うと、


(((ギィ――――――ィ)))


\\ズズズズズゥ――/


「えっ!」


≪あっ!≫


驚く俺と三毛猫オトアに関係なく扉が開いた。


(まさか!)


 開いた扉の前で、口あんぐりの俺と三毛猫オトアだった。

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