21話 冒険者育成用の砦『ジャスタン』




------(第三者視点)------☆





 深夜2時 、テンタ達が向かう聖クリスタル国南西


にある冒険者育成用の砦『ジャスタン』


から、おおよそ南に2Km離れた荒野の中にぽつぽつ


サボテンが生える場所に


左目 眼帯をした紳士風の男が立っていた。


 男の名はノウェム、悪魔男爵バンバ配下の1人。


ノウェムの足元には、10体のゴブリンが横たわっていた。


 ノウェムの足元に横たわるゴブリン10体は死んだ訳では


なく、ただ、ノウェムによって動けなくなっていた。


 ノウェムはおもむろに指を鳴らす。


\パチン/


すると、ノウェムの前に配下の10体のレッサーデーモン


が現れた。


 ノウェムは、自身の周りにレッサーデーモンが現れたの


を確認すると徐に頷き、


「では始めるか」


と言うと、自身の左目の眼帯を外す。


眼帯を外した左目には目がなく、ただ、黒く大きな穴が


開いていた。


「サクション!」


とノウェムが叫ぶと、ノウェムの足元に横たわる10体の


ゴブリンが、その左目の穴に吸い込まれて行く。


\スポン/、\スポン/、\スポン/


10体のゴブリンをその左目の穴に吸い終わると、今度は、


自身の前に並ぶレッサーデーモン10体をその左目の穴に


吸い込んで行き、


「フュージョン」


と叫ぶと、一瞬左目の穴が光る。


 次の瞬間、\スポン/、\スポン/、\スポン/と穴から


吐き出す。


出てきたのは……。


 身長が1.7m通常のゴブリン(1.4m)より背が高く、


体はゴブリンだが頭は山羊のデーモンゴブリンジェネラル10


体である。


そのデーモンゴブリンジェネラル10体のうち5体を再び、


「サクション!」


と左目の穴に吸いこみ


「インテグレーション」


と叫ぶと一瞬左目の穴が光り、\スポン/と今度は、身長2m


でかなり太った体はゴブリンだが頭は羊のデーモンゴブリンキ


ング1体を出した。


「これで、準備は整った」


ノウェムはそう言うと、魔法で王笏おうしゃくを出すと、


「これを使え」


と言ってデーモンゴブリンキングに渡し、続いて5体のデーモン


ゴブリンジェネラルには、悪魔子爵ゴースンから預かった冒険者


達が使っていた魔法付与の武器を与える。


「私はこれよりもう1手打つこととするゆえ、お前達はゴブリン


を集めて、


小僧を襲え」


と言葉を掛けると、そのまま\ボワ/っと黒煙と共に姿を消すの


だった。













------(テンタ視点)------☆




 買い物の日から2日後、朝5時に冒険者学院の正門に


向かう。


 昨日、俺がシェリーさん達と買い物をしている間、三毛猫オトア


は、ウエン・ディア教授に例の俺を守るために彼女が張った


バリアーとオトアのブランチスキル『テンタへの愛』の関連


を調べてもらうために三毛猫オトアを一旦、悪特隊


(悪魔特捜隊)本部で調べてもらっていたんだが、ウエン


・ディア教授の見解ではやはり、俺を守ったバリアーは


ブランチスキル『テンタへの愛』だと分かったらしい。


で、この能力は、俺のピンチの時のみ発動する能力だと


言うことだ。


それと、以前より三毛猫オトアのステータスが僅か


ながら上がってるらしい。


≪オトア ステイタス≫


HP     35


MP     60


運動性   不明


攻撃力   不明


防御力   不明


命中    不明


回避     不明


ブランチレベル1


ブランチスキル


【テンタへの愛】(防御バリア)


若干だが、HPが30→35へ、MPが10→60


へと上がっているだけだけどね。



 実は、俺も若干だがステータスが上がっている。



≪テンタ ステイタス≫



HP     85

 

MP     30


運動性     35


攻撃力    35


防御力     35+300(魔革)


命中     70


回避      40


以前よりHPが5、MPが27、運動力、攻撃力、防御力が


それぞれ5上がり、命中率が14も上がった。


(これもトムさんガイゼルさんの訓練のおかげかな?)


なんて考えていたら、学校の正門に着く。



「おお、来たか」


と俺に声を掛けるのは、リャン先生。


「あっ、おはようございます」


≪おはようございますw≫


と挨拶をする俺と俺の肩の上に乗る三毛猫オトア


その声に(オトアの声は聞こえてないと思う)先生の


前に集まった新人冒険者達が振り向く。


まず、俺に向かって1番右に立ってるのがマヤさん。


 身長159CmのDカップ。


(カップ数はオトアの見解による)


 ハワイ系のネシア王国出身の17歳。


転生前の名前は、『古田 奈緒子』で、昭和のころの


『デパート火災』で15歳と言う若さで、亡くなった


そうだ。


ブランチ(変身できるキャラ)は、【デーモンレディー】


昭和のころのアニメのヒロインだそうだ。


 その隣は、ソマーズ・ワグナーさん。


 身長168CmのBカップ


(カップ数はオトアの見解による)


 西欧系のドウブ国出身の17歳。


転生前の名前は、『ルーシー・マッケンジー』元アメリカ


人で、『飛行機事故』により14歳と言う若さで、亡く


なったそうだ。


ブランチ(変身できるキャラ)は、【サイバティック・


ジェイミー】アメリカのSFドラマの主人公で、日本でも


昭和のころに放送されたそうだ。


 その隣が、マイケル・バウアーさん。


 身長170Cmの普通体系。


 西欧系バーン王国出身の17歳。


転生前の名前は、『木崎 和也』で、昭和のころの過激派


による、『連続ビル爆破事件』により13歳と言う若さで、


亡くなったそうだ。


ブランチ(変身できるキャラ)は、【メカイダー】昭和の


ころの特撮ヒーローだそうだ。


そのマイケルさんの隣がルーク・ジョーダンさん。


 身長180Cmの普通体系。


 マイケルさん同様、西欧系バーン王国出身の17歳。


転生前の名前は、『佐藤 一彦』で、昭和のころの


『列車事故』により14歳と言う若さで、亡くなった


そうだ。


ブランチ(変身できるキャラ)は、【メカイダー00


《ダブルオー》】昭和のころの特撮ヒーローで、【メ


カイダー】の続編の番組で、マイケルさん同様、ブラ


ンチも兄弟の設定いらしい。



 最後は、アルウェン・メルさん。


 身長180CmのDカップ(細身なだけに、かなり出てる


感じかな?)


(カップ数はオトアの見解による)


 エルフの国、アルセダイン王国出身の17歳。


転生前の名前は、『キャロライン・ベス』で、ワグナーさん


同様、元アメリカ人で、『交通事故(車に引かれ)』により


17歳と言う若さで、亡くなったそうだ。


ブランチ(変身できるキャラ)は、【サイキックレディー】で、


アメリカンヒロインだそうだ。


「「よろしくねw」」


「「よろしく」」


「よろしく~w」


「「「「「こちらこそよろしくです」」」」」


5人全員と俺は握手を交わし握手をした。


「あ~っ、この子がオトアちゃんねぇ~、かわいいw」


とハワイ系のネシア王国出身マヤさん。


「抱かせて抱かせて~w」


と半ば強引に俺の肩から、三毛猫オトアをはがし、抱く


マヤさん。


”ニャー”


その様子を見た、エルフの国、アルセダイン王国出身のメルさん


が言う。


「嫌がってるじゃないの、テンタ君に返してあげなさいよ」


その言葉を聞いても、


「良いからいいからw」


と放そうとしないマヤさん。


「よくないって!」


語気を強め言うメルさんに、ワグナーさんが


「まぁまぁ」


と宥め、マヤさんに向かい言う。


「今から出発よ、砦に着いてから抱かせてもらいましょうよ」


「えぇ~」


と嫌がるマヤさんだが、


「向こうに行ったら、しばらくは一緒に居るんだからねぇ」


と説得され、


「ふぁ~い」


と少しすねたように返事をし、渋々俺に三毛猫オトアを返して


くれた。


(やれやれ……)














 みんな揃って、冒険者学院正門から、ギルド協会本部北に


ある冒険者用転移魔法円と向かった。


「じゃ、みんなそろったな」


「「「「「「は~いw」」」」」」


リャン先生の問いかけにみんなで元気よく返事をする


俺を含む新人冒険者達。


「よぉ~し、行くぞ!」


先生の言葉と共に俺を含む新人冒険者達だった。


”スー”と、下から、やわらかい風が吹いたと思ったら、


急に体が軽くなり、その後、ズシンと自分の体重を感じた。


(着いたみたいだ)


 ここは、聖クリスタル国南西にある冒険者育成用の砦


『ジャスタン』。


 高さ約19m(6階建てのビル)の高さのテーブルマウンテン。


 面積は学校の体育館程度の広さがあり、内部は6階層に分かれ


ている。


 今俺達が居る転移魔法円があるのは6階で、そのすぐ下5階に


砦職員用の住居スペースがあり、ここの職員は1か月ごとに交代


で勤務するんだとか。


 次いで、4階部分に砦の事務室及び倉庫があり、その下の3


階部分が、俺達新人の冒険者宿泊スペースとミーティング


ルームになっていて、2階が厨房と食堂それに食糧庫になって


いる。


 最後、1階部分はこの砦から外に出る入り口兼、武道練習場


になっていると言う訳だ。











「まずは、各自3階の自分の部屋を確認してこい」


「次いで20分後に同階ミーティングルームにて、チュート


リアル並びに、このメンバーでの陣形の話し合いを行う」


梁(リャン)先生の指示を聞いて俺達6人は、


「「「「「「は~いw」」」」」」


返事をし、新人冒険者の宿泊施設がある3階のへと向かうの


だった。


3階へ向かうには階段しかなかった。


それを見て、


「えっ階段しかないの~」


と文句を言うマヤさんに、メルさんが嫌味っぽく言う。


「あら、変身して飛べばいいじゃなぁ~い、確かあなたの


ブランチ空飛べるよねぇ」


その言葉を聞いて少しムッとするマヤさん。


(あらら、もう喧嘩……先が思いやられるな)


と心に思う俺だった。


 因みに後でリャン先生に聞いたら、みんなまだ


ブランチレベルが1なので、ブランチの姿に変身して、解除


すると、翌日までブランチに変身できないんだってさ。


 最もある程度のブランチレベルが上がれば2回以上最大


5回は変身できるんだってさ。












 3階の新人の冒険者宿泊スペースとミーティングルーム


のフロアに着くとそこには、最大6チーム36人分の宿泊


用の部屋と、バスケット1面分もあるミーティングルーム


があった。


部屋には各自の名前が書いてあるんだけど……当然こちらの


世界の文字なので本来なら読めない俺だが、自分の名前の


文字だけは昨日覚えたので、部屋を間違うことなく、自分


の部屋へと入っることができた。


”ガチャ”


部屋に入ると、すぐに簡単なキッチン(ワンルームのような


小さなコンロと小さな流し台)が右に、その反対側左には


シャワー室とトイレがあった。


≪狭いね≫


三毛猫オトアが言うので、


「確かに」


と俺が答え、奥の部屋を見ようと扉を開けたが……暗い。


なので入ってすぐの壁の明かりのスイッチ\パチリ/


とつけてみる。


7畳くらいの部屋にベットと小さな机と椅子がある殺風景


な部屋、当然窓はない。


≪窓ないんだね≫


三毛猫オトアがポツリと言うので、


「多分、ここ砦だから、敵から攻撃されないように窓がないん


だと思うよ」


三毛猫オトアに答えると、


≪ふぅ~ん≫


三毛猫オトアが、納得したようなしてないような返事をした。


 部屋の状態を確認すると、俺と俺の肩に乗った三毛猫オトア


は、部屋をすぐに出た。


 だって、別に部屋に置く荷物ない……てか、荷物は


すべて小槌収納してあるんだもん。










 少し、チュートリアルまでには、少し時間はあったんだけど、


別にすることがない……ので、ミーティングルームへと向かった。


 他のメンバーの人達も同じようだったみたいで、すでに全員


席に着いていた。


 今回6人だけなので、広いミーティングルーム(大体バスケット


ボールコート1面分)の真ん中に6人掛けのテーブルがポツンと


あった。


 俺が自分の席に着くと、リャン先生がミーティングルー


ムへ入って来て、


「えーまだ、時間は少し早いが、みんなそろったんなら、始めて


もいいか?」


と聞くので、全員頷いた。


それを確かめたリャン先生が説明を始めた。











 そもそも、魔物の種類には大きく分けて2つの系統があり、


魔力粒子の濃い場所で出来た魔核(黒曜石)が、周りの物質


を引きつけ体を構成する無生物系と、通常の生物が、長年濃い


魔力粒子の影響を受け、突然、変異を起こした生物系の魔物が


居るらしい。


 で、ゴブリン場合は無生物系らしい。


次いで、魔物との戦いにおいて、チームで戦う場合は陣形を組


むのが、セオリーだと説明してくれた。


「で、今からお前達には、チーム戦の基本となる陣形を考えても


らう」


 ここで、ジョーダンさんが、リャン先生に質問をする。


「先生、でも今回1人ゴブリン10体倒せばいいんなら、俺の必殺


技使えば、ゴブリン10体と言わず、30や40あっという間に倒


せるけどな」


その言葉にリャン先生が、


「確かにな、でもお前の必殺技ソーラーブラスターって撃った後、


数分動けなくなるんじゃなかったか?全部倒せなかったらどうす


るんだ」


と言い返すと、


「いや、あれは広範囲攻撃だから大丈夫だと……」


とさらに言うジョーダンさんに、リャン先生が少し呆れた


ように言う。


「お前のソーラーブラスターは直線攻撃、軸線に乗らない敵には当


たらん」


ときっぱり言われ、


「……」


黙ってしまうジョーダンさん。


「それにな、現実問題として、ゲームのように1つの戦闘が終わって


終わりって訳じゃないんだ、現実は伏兵が隠れて居たり、新手が現れ


たらどうする、そこでThe ENDだぞ」


と黙ったジョーダンさんにさらに言うリャン先生だった。


 まぁ、俺と違って、転生者のみんなは、ブランチと言うアバターで


戦うんだし、それが倒されても本体は、無傷なんだしゲーム感覚にな


るのは、わからなくもないかな……って思う俺だった。








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