15話 テンタ、オトア拉致事件
地下室生活も、かれこれ1週間が経とうとしていた。
この1週間の俺の生活は、朝5時に起床。
(この世界の朝が早いのに、最近やっと慣れてきた)
朝6時に朝ごはんを、
7時から、トムさんもしくは、ガイゼルさんによる座学。
これは、トムさん、ガイゼルさんの知り合いの冒険者
学院の先生で、転生者(特に日本人)に2人がお願いして、
冒険者学院で使われている教科書を日本語に訳してもらい
作った教材を使っての勉強。
主に、この
戦術学などを学んでいる。
因みに、冒険者学院と言うのは、とかく粗暴になりがち
な冒険者を、社会に適応させるために生まれた学校らしく、
授業の中には、道徳学、倫理学もあるそうだ。
この座学が、1時間につき10分の休憩を取りながら
2時間。
その後、ガイゼルさん指導の下射撃訓練及び手裏剣の訓練。
これが、約1時間ぐらいかな。
また、10分休憩ののち、トムさんによるSSフィールド
を使ってのトランポリンの訓練が、90分。
で、昼食。
午後は、1時よりトムさんによるSSフィールドを使っ
ての
で、おやつタイムを挟み。
午後3時30分から5時まで、またもや座学。
これは90分連続で行われ、そして夕食。
夕食の後は、シャワーを浴びて自室で
と一緒に、その日習ったことの復習を2時間。
そして就寝。
成果は……って言うと、トランポリンでは、空中回転や
バク宙が何とか出来うようになったかな?
ただ、座学(学科)の方は、どうせ試験なんてないだろうと、
思って、少し手を抜いていたんだが、今から冒険者学院に行っ
てテストを受ける羽目になった……。
(大丈夫かな……)
◇
「初めまして、「
「初めまして、CG隊のリス・アンヌです」
「初めまして、CG隊のエトワール・バルです」
アンヌ隊員とバル隊員と握手を交わす俺。
CG隊(クリスタル警備隊)は、警備隊と言うだけ
あって、本当、警備員って感じの服、薄いブルーの
シャツに紺のパンツで、胸に五芒星のワッペンに
CGと刺繍された文字があり腰に警棒ではなく、サー
ベルを装備しいて、左腕には、テニスボール台の丸い
水晶が付いたブレスレットをはめていた。
これは、後で聞いたんだが、CG隊の連絡用クリス
タル・レシーバーと言って、音声だけでなく、映像も
……っ、ビデを通話のような通信機らしい。
アンヌ隊員は猫人、顔は人と同じだが、黒髪に猫耳
で、猫の尻尾が生え……それに少々お胸が、発達して
らっしゃる。
(おそらく、黒猫がベースだと思う)
バル隊員は、犬人で、アンヌ隊員同様、人の顔だが、
頭には、青い髪に犬の耳と……、鼻のてっぺんが、犬の
鼻で、同じく犬の尻尾が生えている。
因みに、アンヌ隊員が20歳で、バル隊員が26歳。
「これが、オトアです」
と2人に
「わぁ~かわいいw」
と
横で、バル隊員が、
「オトアちゃんよろしく」
と軽めの挨拶をする。
それを聞いて、アンヌ隊員も
右前足を掴み、軽く振りながら、
「よろしくねwオトアちゃん」
と挨拶をする2人に、
”ニャー”
と挨拶する
挨拶を終え、CG隊(クリスタル警備隊)が用意した
専用車両ポインター号に乗る。
CG隊専用車両ポインター号ってね、元の世界で東南
アジアのタイで、よく使われている 『トゥクトゥク』
に似た乗り物(3輪バイク)。
ただ、バイクではなく、3輪自転車だけどね。
本来は、クリスタル教会関係者の馬車の護衛用車両
と言うことだけど、銀色の車体が”ピカピカ”光ってて、
少々眩しいけどね。
◇
ポインター号(トゥクトゥク)で、冒険者ギルド本部の東側
にある、冒険者学院へと向かった。
”ギーコギーコ”
(よく変速ギアのない自転車で漕げるよね)
数分後、冒険者学院へ到着する。
大きな陸上競技場とその横に3階建ての木造の建物が
3つ並んでいる。
大きなな陸上競技場に見えるのは、闘技場って言って、
実践の訓練を行う場所らしい。
その横の3つある建物のうち、真ん中が教室だと、
アンヌ隊員に教えられた。
正門付近にある、馬車の停車場にポインター号
(トゥクトゥク)を止め、バル隊員はここでお留守番。
アンヌ隊員と共に、その真ん中の建物に向かう。
建物に向かう途中、身長約175Cmの細身の男性が、
声を掛けてきた。
「君が、日向君か?」
「はい」
男性の問いに俺が返事をすると、横からアンヌ隊員が、
「ああ、梁(りゃん)先生ですか?」
と男性に聞く。
「ああ、私がここの教師をしている
「私は、CG隊(クリスタル警備隊)のリス・アンヌ
です、
言われて、参りました」
「わかりました、では、ご案内しましょう」
向かった。
因みに、
南晋国出身24歳で、S級冒険者をへて、この冒険者
学院の教師となった。
転生前は、神戸で会社員をしていたらしいが、大地震
に巻き込まれ、26歳と言う若さで亡くなったらしい。
転生者の能力(ブランチ)は、アニメ”北星の拳”の
主人公ケンジロウだそうだ。
(多分武闘家?だったと思う……俺はあまり知らない
キャラ)
建物に入ると、
「試験は、テンタ君1人で、行いますので、アンヌ隊員
はこちらで、お待ちください」
と試験が行われる教室の隣の教室に入るよう指示する
「ああ、はい」
アンヌ隊員が、控えの教室に入ろうとした時、再び
「このこも一緒に連れて行ってください」
と俺の肩にとまる、
アンヌ隊員に言った。
「ああ、はい」
”ニャー”
アンヌ隊員が慌てて、俺の肩から
がし、自身で抱きかかえながら、控えの教室に入った。
「では」
と
と入った。
俺達の元の世界の教室くらいの部屋に20人ほどの席。
(かなり、教室をゆったり使ってる)
当然、今日は俺1人なので、教室のど真ん中で、
一番前の教壇のまん前席に座らせられた。
「はじめ!」
プリントが渡され、問題を見て、少々驚いた。
俺用に日本語で書かれているのは、わかって
いたが……。
全部4択の問題で、筆記問題はない。
(こりゃ~何とかなりそうだ)
◇
試験が無事終わり、アンヌ隊員と
合流し、同じ冒険者学院内にある、オープンカフェで、
お茶をしてる所。
俺、アンヌ隊員は、紅茶で、
にミルクを入れてもらい、それらを飲みながら、試験結
果が出るのをここで待っているって訳。
「どうだったw試験?」
とアンヌ隊員が聞くので、
「まぁ、まぁ、できたと思います」
と返しておく。
≪ガイゼルさんが、言ってたみたいだった?≫
と
≪うん、まんま4択だったよ≫
と返す。
試験を受ける前、ガイゼルさんが、
「運転免許よりも楽勝の試験だよ」
と俺に言っていたのだが、俺は運転免許を持たない
ので、ガイゼルさんの言う意味が、その時は分から
なかったのだ。
試験結果は、約1時間ほどで出るそうだ。
◇
------(第三者視点)------☆
ランドウの手下のモヒカン頭の男と小柄な男2人
が、物陰に隠れ、しかも、『隠遁』の魔法で気配を
消し、オープンカフェで、お茶をしてるテンタ達の
様子を伺っていた。
「あにき~猫人が居ますぜ、どうしやす?」
と小柄な男に聞かれたモヒカン男が、
「そうだな、猫人は気配に敏感だからな、いくら
隠遁魔法をかけていても、これ以上は近づけねぇ」
訝し気に(いぶかしげ)に言う。
と、
「ああ、そうだ、あれを出せ」
とモヒカンの男が、小柄な男に言う。
「あれ?でやすか?……」
何を言ってるのか?っという顔でモヒカンに聞き返す
小柄な男。
「あれだよ、あれ……」
少しイラつき気味に小柄な男に言うモヒカン男に、
「ああ、あれでげすか!」
と何かをひらめいたような顔で、懐からあるものを
出す小柄の男。
男が懐から出したものは、”ドルミル”の実をすり
潰して、粉上にしたものだった。
小柄な男から、ドルミルの粉の入った袋を受けとった
モヒカンの男は、そっと袋を広げ、空いている左手で鼻と
口を押さえ、呪文を唱えた。
「空と大地を渡りしものよ 永久を吹き過ぎ行く風よ
我が手にあるものをそっと運びたまえ”ブリサ”」
すると、そよ風が吹き、モヒカン男の右手に広げられた
ドルミルの粉が、そよ風に乗り、テンタ達の所に飛んで
行く。
”ヒュ~”
「んっ……あれ?」
\バタン/
とアンヌ隊員が真っ先に倒れる。
それを見たテンタがアンヌ隊員に
「どうしたんですか!アンヌさん……あん……」
と体を揺さぶり起こそうとするが、テンタもまた、
ドルミルの粉を吸い込みその場に倒れる。
\バタン/
”ニャー”
異変に気付き、
も眠ってしまった。
「よし、行くぞ!」
その様子にモヒカン男が、小柄な男に声を掛け、急いで、
を抱え、テンタを人目に付き
にくい場所へと引きずって行き、あらかじめ用意した樽にテンタ
を放り込みそこへ、
者学院の正門付近にある馬車の停車場へ向かった。
冒険者学院の馬車の停車場には、バル隊員がポインター号の側で本
を読んでいるいたが、
「あと、もう少しで試験結果が出るころだな」
と一瞬顔を上げ言うが、2人には目も止めない様子だった。
ランドウの手下の2人は急いで、バル隊員の側をすり抜け、自分達の
荷馬車に、テンタ達を入れた樽を乗せると、足早にそこを立ち去るの
だった。
◇
ここは、聖クリスタル国の南区の倉庫街の外れにある、今は
使われていない倉庫。
そこに、テンタ達を載せた荷馬車が付いた。
「頭(かしら)!」
とモヒカン男が、レンガ造りの倉庫の大きな金属の扉の前で
叫ぶ。
\ガラガラガラ/
その声を聴いたランドウが大きな金属扉を開け、
「首尾は……」
と聞くと、馬車に乗っていたモヒカン男が積んでいた樽を
”ポンポン”と叩き言う。
「上々でさぁ~」
と笑顔で答える。
するとランドウが首をクイっと曲げ、中に入れと催促する。
それを見た、モヒカン男が静かに馬車を倉庫の中へと進め
た。
ランドウは荷馬車が倉庫の中に入ったのを確認すると、
\ガラガラガラ/と大きな倉庫の扉を閉めるのだった。
◇
\ゴロゴロゴロ/
モヒカン男と小柄な男が、荷馬車から、テンタ達が入った
樽を下し、ランドウの前まで転がす。
\コンコン/
樽の蓋を開け、中を覗くランドウ。
「これがテンタっちゅうガキか?」
と側に居たモヒカン男に聞く。
「へい、証拠に……猫が」
とテンタと一緒に入れた
それを見たランドウが言う。
「三毛猫か……確かにこの世界にはいない猫だな」
と呟くと、モヒカン男に目で樽から出せと合図する。
その合図に、モヒカン男はまず、眠る
を抱きかかえて出し、次いでテンタを樽から引きずり
出した。
そして、テンタの頬を軽く”ペチペチ”叩き、
「おい、起きろ小僧!」
とテンタを起こした。
「うん~っ、あん?ここはどこ?」
テンタが起きると、手下2人にテンタの両脇から支え
させ、
\ドゴッ/
と腹を殴りつけた。
「ゲホッ……」
腹を殴られ、蹲りそうになるテンタを両脇の手下
2人が、テンタを立たせる。
その時、”ニャー”
目覚めた、
支える小柄な男に飛びつき、顔を引っかく。
”シュッ”
「うわぁ!」
引っかかれた小柄な男は、思わずテンタの腕を離し、
両手で引っかかれた顔を覆った。
と同時にテンタが、モヒカン男の手を振り切り、ランドウ
達と距離を取る。
テンタの前には、
”シャー!”とランドウ達を威嚇するのだった。
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