14話 テンタの武装とデケムの暗躍



 朝、地下室に朝食を届けてくれたアナさんに、昨日の夜の


出来事を聞いて、俺と三毛猫オトアは驚いた。


 朝食を済ませて、昨日の続きを始める。


ガイゼルさんが、作業の手を止め、銃を出してくれた。


 今日は、357マグナム弾を撃つ練習。


 ただ、昨日のように、ガイゼルさんは銃と弾を出すだけ


出して、また作業に戻るので、1人で射撃練習をした。


 昨日の訓練で、ほぼ、射撃ホームが固まっているので、


そんなに苦労はしない……と、思っていたら、マグナム弾


の反動は俺の予想を上回っていた。


 命中率は50パーセントを下回る。


(どうしたらいいんだろう?)











 1時間後、ガイゼルさんが、工房から射撃場に顔を出す。


「テンタこれ投げてみろ」


と、渡されたのは……☆型の手裏剣。


「はぁ?」


木の的をセットし、前回のように人差し指と中指で手裏剣を挟み、


手首のスナップを生かし投げる。


 ”シュッ”\ストン/


 ”シュッ”\ストン/


的に面白いように当たる。


それを見た、ガイゼルさんが、


「よし!」


と頷き、また工房へと戻って行った。


(なんなんだろう?)












 お昼、お昼ご飯を持ってきたアナさんと共に、トムさんが


現れる。


「テンタ、これ着てみろ」


とトムさんから服を渡された。


 赤の皮ジャンに、黒のTシャツ、黒のパンツに赤のブーツ。


(これ、少しサイズが……大きい)


と俺は思うが、とりあえず、トムさんの言う通りに着てみる。


「あれ!?」


ダブダブだった服が、着ると俺の体にぴったり合った。


「それ魔法付与の服だから」


と、驚く俺にニヤリと笑って言った。


(へー)


 で、


 ステータス計で、測った今の俺の数値をトムさんが、


見せてくれた。



【ヒムカイテンタ】



HP     80

 

MP      3


運動性    30


攻撃力     30


防御力   30+300(魔革)


命中      56 


回避 40



「おー!」


防御力が上がってる。













 お昼からトムさんの訓練が始まる。


「銀着!」


トムさんは、宇宙シェリフ バルシャンへと変わる。


「SSフィールド!」


と言って、射撃場にSSフィールドを張る。


SSフィールドってのは、宇宙シェリフが使う特殊能力


だそうで、劇中、バルシャンを始め宇宙シェリフ達が、


街中での 怪人との戦闘で、街の人や建物の被害を出さ


ないため、自身と怪人を、異次元空間に閉じ込める能力


だそうだ。


「では、始めはこれからだな」


とトム(バルジャン)さん示されたのは、トランポリン


だった。


(何で、トランポリン)


と疑問に思いながらも、トランポリンを跳ぶ。


始めは、ただ跳ぶだけだったが、それから徐々にレベルを


上げていくそうだ、最終、空中回転やバク転、捻りを加え


た技に挑戦してもらうと言われた。


(俺、できるのかな?)


 次いで、殺陣(たて)。


宇宙シェリフ バルシャンを始めとする特撮ドラマの


アクションの訓練をする。


(えーと、俺スーツアクター目指してる訳ではないんだけど)


と思いながら、トム(バルジャン)の訓練は続く。


 夕方、この日の訓練を終え、夕食にありつく。


 その日の夕食が終わったころに、ガイゼルさんにあるものを


渡された。


それは、ベルト。


ガンベルトのような、ベルトを渡され装着する。


ベルトのバックル部分の左右に赤い☆の手裏剣が2つ。


次いで左右の真横に黄色い☆の手裏剣が2つ。


そして、後ろの左右にも白い☆の手裏剣が2つ。


 合計6つの☆型手裏剣が着いたベルトだった。


「赤い☆が炎、黄い☆が電撃、そして白い☆が、氷結だ」


とガイゼルさんに言われた。


 これは、単にそれぞれの☆型手裏剣が、炎、電撃、氷結


を発生させて、敵をしとめるもの……ではないらしい。


 ガイゼルさんに詳しい説明を聞くと、俺の魔力は極端に


低い……低すぎるので、この星型手裏剣に単に刻印魔法を


施しても、魔法が発生できない。


そこで、本来なら”魔晶石"をこの☆型手裏剣に埋み使用


することを考えるが、それだと重すぎたり大きすぎたり


して、実用的ではないらしい。


そこで、ガイゼルさんは”魔力吸収”の刻印と、各発生する


炎、電撃、氷結の刻印をこの☆型に組み込んだそうだ。


 つまり、これを俺が、敵に投げ、相手にこの☆型手裏剣


が刺さると、相手の魔力を吸収し、炎、電撃、氷結を発生


させる。


 相手は自分の魔力が尽きるまで、炎、電撃、氷結が発生


し続けるという代物らしい。


(なるほど、魔力のない俺にぴったりの武器だね)











------(第三者視点)------☆




 聖クリスタル国南区の使われていない倉庫に


執事風の男が1人いた。


「彼らを少々舐めていましたねぇ」


「レッサーデーモンの微量な悪魔波動を感知できる


とは……」


\パチン/


指を鳴らし、レッサーデーモンを3体召喚する。


 自身の目の前で膝まづく、レッサーデーモン


を手のひらサイズに縮め、それを1体ずつ飴玉


サイズに丸め、それをポケットにしまった。


「まぁ、それなら別の手で行くまでです。


と執事風の男が呟く。


そして、背中の蝙蝠の羽で、自身の体を包みこむ


と、\ぼわっ/とその場から消えた。


彼こそ、悪魔男爵バンバの幹部ナンバーズ10


デケムであった。











 ここは、聖クリスタル国の南区(トランスポート港と、


倉庫、工場地帯)と中央区(商業、教会関係施設)の境目


にある古い商業施設の建物の2階。


 ここでは、当局の目を盗んでは、時折、違法賭博が行わ


れていた。


 本来、聖クリスタル国では、北区にある冒険者区域で、


国が正式に認める”カジノ”が存在するが、その利用は


冒険者や、商業、生産などの、いずれかのギルド協会


会員に限られている。


 そのため、それに加盟できない日雇い人足(一時的に


肉体労働で稼ぐ人)などが、ここに来て賭博を楽しんで、


いる。


それを取り仕切るのが『シルバースター』と言う組織。


『シルバースター』は、反社会的組織で、賭博以外にも


ブースター(一時的にステータスを上げる薬)や、表向き


娼婦館を営んでいるが、実質各国からの出稼ぎにきた女性


などを人身売買をしている組織。

 

 最も、表向き人身売買に関して、彼らは”斡旋”だと


言い張っている。


 そんな、反社会的組織の『シルバースター』に雇われた、


1人の男がいた。


名前は、『ディーン・ランドウ』。


転生者で、元『ツォルンファオスト』と言う冒険者チーム


の元リーダーだった男だ。


 ドウブ国出身、金髪の西洋風の顔立ちだが、身長160


Cmの、かなりのおデブさんで、年齢28歳。


 元々は、転生者の能力のブランチ(アバター)の力を使い、


冒険者レベル12で、彼の居たチームもB級クラスと、そこ


そこの実力チームだったが、彼の傲慢な性格が災いし、チーム


の仲間としばしば対立、そしてついにはチームが分裂してしま


った。


 分裂と言っても、彼1人と他のメンバーなので、実質、彼


1人チームを追い出された形になった。


 そして、流れ流れて、ここ『シルバースター』で、転生者の


能力を買われ、用心棒として雇われたのだった。











 賭博が行われている建物の入り口付近に、ランドウと


その手下らしき2人の男が居た。


そこへ、”コツコツコツ”と近寄る執事風の男。


「何だテメェ!」


ランドウの手下のモヒカン頭の男が怒鳴る。


「いえいえ、怪しいものではありませんよ」


と手を軽く上げ言う執事風の男。


「怪しくないだとぅ~!」


と訝しい(いぶかしい)目つきで、小柄なもう


1人のランドウの手下が下から舐めるように執事風の


男を見て言う。


「私は賭博をしに来たわけではないのです」


と下から舐めるように見るランドウの手下に言う。


「なら、けーりな(帰り)」


とランドウが、執事風の男に言い放った。


すると、落ち着き払った態度で、ランドウの方を向き、


懐から巾着を出し言う。


「私はランドウ様……あなたに御用があってまいりました」


そう言うと、執事風の男は沈着を開き、中に入っていた


コインを見せる。


 巾着から出したコインは、透明のクリスタルで出来た1万


クリスタルコイン10枚。


 日本のお金に換算すると約200万円にもなる大金。


ランドウの手下2人は、それを見て驚く。


「ほう~大金だな」


とランドウの言葉にニッコリ笑い。


「ええ」


と答える執事風の男。


「で、それを俺にタダでくれる……訳じゃねーよな」


と皮肉っぽく言うランドウに、


「はい、少々お頼みしたいことがありましてw」


にこやかに答える執事風の男。


「何だ……頼みって」


「はい、ある少年を殺していただきたいのです」


ランドウの質問に笑みを浮かべながら答える執事風の男。


「ただ、それだけか」


「はい」


再び、ランドウの質問に笑みを浮かべながら答える


執事風の男。


「どこのガキだ」


「ヒムカイテンタ」


ランドウの質問に今度は真顔で答える執事風の男。


「ヒムカイ?誰だそれ、おらぁそんな奴しらねーぞ」


と、ぞんざいに言い返すランドウ。


「すぐにわかりますよ、肩に三毛猫と言うこの世界


にはない、珍しい猫を載せてますから」


とすぐに真顔から笑顔に変えて言う。


「ヒムカイ……三毛猫……」


と少し考えるランドウ。


 しかし、”ハッ”と顔を上げ、


「お前、それ、転生者だろ!」


と大きな声で執事風の男に言う。


そのランドウの言葉に、にこやかに首を振り、


「いえいえ、異世界人ではありますが、転生者では


ありませんよ」


と答える。


「しかし、ヒムカイってのは日本人ぽい名前だぞ」


のランドウの質問に、


「そうかもしれませんが、その少年には、転生者が


持つ”ブランチ”の能力どころか、魔法すら使えな


いですがねぇ~」


と手を広げ言う執事風の男。


 その男にランドウは、真顔で言う。


「でもよぉ~、俺達がわざわざそんなガキを探して、


ヤル(殺す)よりも、今、お前さんをヤって(殺す)、


そのお宝(コイン)を俺達がいただく……ってお前さん


おもわねぇか?」


と冗談ぽく執事風の男に言うと、執事風の男が笑顔で


「やってみますか?」


と答えた。


と同時にランドウの手下2人が、懐からナイフを取り出し、


襲う。


「「野郎ぅ~!!」」


”\バシ/”


”\\ドスン//”


執事風の男はそれに少しも動じず、まず、後ろからナイフで


襲ってくる小柄な方の手下を裏拳で倒し、左からナイフで襲


って来る、モヒカンの手下を一旦往なし、倒れそうになった


ところを、首根っこつかみ地面に打ち付けた。


「貴様ぁ!」


それを見て、驚くランドウだが、すぐさま危険を察し、


「フォルス」


と叫び、自分のブランチに変身する。



※この「フォルス」はオンラインゲーム『マジョリティーテール』


 で、自身が設定し名付けたゲームキャラクター。



身長160Cmのおデブ体形から身長2mのがっしりした筋肉


質の武闘家へと変身したランドウは、すぐさま、戦闘態勢を取る。


流星拳りゅうせいけん!」


これは、1秒間に数発のストレートパンチを繰り出す技。


通常の人では見えない速さで撃つパンチ。


”シュッ””シュッ””シュッ””シュッ””シュッ”


 だが、


そのパンチをいとも簡単に回避する執事風の男。


回避するだけでなく、そのパンチを受け止め、そして、受け止めた


右のパンチから、腕をつかみ、そのまま地面にランドウを押し付けた。


”\\ドスン//”


そして、ランドウの体に馬乗りになり右腕をキメながら言う。


「悪魔は約束を守ります、もし貴方がその少年をいたぶり殺してくれた


なら、追加でコインを20枚差し上げましょう……しかし、それが


出来ないと言うなら、あなたの魂をいただくまでです」


目が光、不気味な形相で言う執事風の男。


「わ・わかった、わかった」


と、もがきながら執事風の男に答えるランドウ。


そのランドウにさらに執事風の男が言う。


「くれぐれも言いますが、いたぶり殺すのですよ」


「……っ、はい」


そのランドウの答えを聞くと、執事風の男はランドウの腕を離し、


ゆっくりとその場に立って、巾着から出したクリスタルコイン


10枚をランドウの顔の前にバラまいた。


\チャリン、チャリン/


そして、


\バサッ/


背中から蝙蝠の羽を出し、自身の体を包みこみ、\ぼわっ/と


その場から消えた。



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