13話  テンタ、オトア襲撃事件




------(第三者視点)------☆




 夜も更け、午後11時頃。



 冒険者チーム『ガンブレイブ』のチームハウス付近に、男の


影が……。


「くっくっくっ~」


「奴らに手を打たれる前に、先手必勝と参りましょう」


”パチン”


と指を鳴らすと、男の前に顔がヤギで、体はミノタウロスのよう


に紫の筋肉質で、背中には蝙蝠の翼が生えた4体のレッサーデー


モンが現れた。


 男の前に現れた、レッサーデーモン4体は、男の前で跪いてい


た。


「お前達わかっておるな、男と猫を私の前に連れて参れ」


と男がレッサーデーモン4体に命令すると、4体のレッサーデー


モン達は黙って頭を下げ『ガンブレイブ』のチームハウスへ向か


った。


それを確認すると、男は背中に蝙蝠の羽を出し、その羽で自身を


包み込むと、”ボワ”と黒煙と共に消えた。











 4体のレッサーデーモンが、『ガンブレイブ』のチームハウス


の2階のテンタの部屋へ向かう。


 4体のレッサーデーモンは、部屋の外側の壁をすり抜け、テン


タの部屋へと”スー”と入った。


 彼らの体は、アストラル体(精神体)なので、物質をすり抜け


られるのである。


4体のレッサーデーモンが、部屋の窓側にあるテンタのベッドへ


と近づき、4体のうちの1体が、手をかざす。


すると、テンタが掛けている毛布が、するりと外れ寝ているテンタ


が……。


 テンタを見て、レッサーデーモン達は驚く。


寝ているのがテンタだと思っていたら、そこにはテンタの人形と、


猫のぬいぐるみだった。


 4体のレッサーデーモン達が驚いていると、


「SSフィールド拡大!」


とトム(バルジャン)の声。


 トム(バルジャン)の声と共にSSフィールドが拡大され、その


中に、4体のレッサーデーモンが取り込まれた。



 ※SSフィールドとは、宇宙シェリフが使う特殊能力で、


  劇中、バルシャンを始め宇宙シェリフ達が、街中での


  怪人との戦闘で、街の人や建物の被害を出さないため、

  

  自身と怪人を、異次元空間に閉じ込める能力のことで


  ある。


   なお、異次元空間であるSSフィールド内から、


  フィールドの外の様子は見えるが、外からフィールド内


  の様子は見えないのである。


   また、外の空間が狭くても、異次元空間であるSS


  フィールド内は、それより広く広大である。


   つまり、今のテンタの部屋は8畳だが、その中で、


  SSフィールドを張っても、フィールド内は東京ドーム


  数個分の広さがある。


 


 SSフィールドに閉じ込められた、4体のレッサーデーモン


の前に居たのは、宇宙シェリフバルシャン(トム)と、紺色の


尖がり帽子に、紺色のマント姿の、悪特隊あとくたいの女性隊員


のオーブ隊員と、ガードマン風のいでたちに腰にサーベル


を付けCG隊(クリスタル警備隊)の女性隊員のアンヌ


隊員だった。



"ゴー”


\\\バリバリバリ~///


 トム(バルジャン)達に向け、2体のレッサーデーモン、


が口から火を吐き、別の2体が雷を吐いた。


「マジックシールド」


悪特隊あとくたいのオーブ隊員が手に持った杖で即座に”魔法障


壁”を展開する。


\\\バキバキバキ///


”魔法障壁”にかなりの振動が伝わるが、


「くっ!」


踏ん張るオーブ隊員。


 4体のレッサーデーモン達は自分達の攻撃が通じないと


思うと、


すぐさま、この場を逃げようとするが……。


「そうは、させん!」


トム(バルジャン)が、SSフィールドの範囲を縮める。


\ゴン/


4体のレッサーデーモン達は、SSフィールドの壁に頭を


ぶつけ、その場に倒れた。


「あほか!お前ら、このフィールドは、俺の思うままに


大きさを変えられるんだ……。


それにな、俺が許可しないものは、ここから出られねぇー


んだよ!」


と、レッサーデーモン達に告げる。


 その間に素早く、CG隊のアンヌ隊員が、攻撃を加える。


背を向ける1体のレッサーデーモンに向け、


「レイブレード!」


サーベルを振るい、光刃を放つ。


アンヌ隊員が、放った光刃は、そのレッサーデーモンを袈裟切


りにした。


\\グギャ!//


アンヌ隊員に切られた1体のレッサーデーモンが、声とも泣き声


ともわからない声を出し絶命する。


絶命したレッサーデーモンは、その肉体が崩れて消え去る。


その間に素早く立ち上がった、レッサーデーモン3体は、トム


(バルジャン)達の方に向き、覚悟を決めたかのように戦闘態勢


を取った。


右手に槍、左手に黒い盾を自身の能力で出現させる。


「気を付けてください、バルジャン(トム)さん、アンヌ隊員!」


と悪特隊(あとくたい)のオーブ隊員が2人に警告する。


「あの槍は、肉体にはダメージがありませんが、魂を破壊します!」


オーブ隊員の警告に、身構えるトム(バルジャン)とCG隊の


アンヌ隊員。


 トム(バルジャン)は、腰の装甲を開き、ライトソードの柄を


出し、光の刃を出し、3体のレッサーデーモンに切り込んで行く。


「チョー!」


1体のレッサーデーモンの突き出す槍を払い、すぐさま回転して、


レッサーデーモンに切りつけるものの、盾で攻撃を防がれてしまう。


直後に近づく別のレッサーデーモンを後ろ蹴りで、飛ばそうとした


が、蹴った足が、レッサーデーモンの体をすり抜けてしまった。


「しまった!」


体制を崩すトム(バルジャン)。


そこに、2体のレッサーデーモンの突き出す槍が迫る。


「ライトアロー!」


「レイブレード!」


悪特隊あとくたいのオーブ隊員が杖から放つ放つ光の矢と、CG隊の


アンヌ隊員の放つ光刃が、体制を崩すトム(バルジャン)に襲い


掛かろうとして、槍を突き出す間に、防御の盾が横を向き、がら


空きとなった2体のレッサーデーモンの左胸にヒットする。


\\グギャ!//


\\グギャ!//


2体のレッサーデーモンは、絶命し肉体が崩れて消え去る。


 呆気に取られて、それを見ていた最後のレッサーデーモンの


隙をつき、トム(バルジャン)が、自身のライトソードを、


最後のレッサーデーモンの喉元に突き刺した。


\\グギャ!//


最後のレッサーデーモンも絶命し肉体が崩れて消え去った。


「やりましたねバルジャン(トム)さん」


と声を掛けるCG隊のアンヌ隊員。


「だが、まだこいつらの親玉が残っているから油断できん」


「その通りですわバルジャン(トム)さん」


トム(バルジャン)の言葉に同意する悪特隊(あとくたい)の


オーブ隊員だった。



『今回のトム(バルジャン)達の作戦はこうだった。


時を戻してみよう。』












------(テンタ視点)------☆




 休憩……と言っても休憩中に手裏剣を投げさせられていた


んだが、その後も38口径(9mm)の銃の射撃訓練は続いた。


 ただ、俺の手裏剣の命中率を見たガイゼルさんがは、急に


何かを思ったみたいで、38口径(9mm)の他のリボルバー


式の銃や、オートマチック式の銃と、弾を出してくれたもの


の、射撃訓練には付き合ってはくれず、工房にこもって、


何かを制作していた。










 夕方になり、ガイゼルさんが出してくれた銃の弾も打ち尽


くしたので、それをガイゼルさんに報告すると、


「ん?……そうか、なら今日の射撃訓練は終わりだ」


と告げられる。


 なので、


「ありがとうございました」


って、お礼を言って三毛猫オトアを連れ、自分の部屋に戻ろう


とした時、


「あん、いや、テンタとオトアはしばらくここで、寝泊


まりしろ」


って言われた。


「はい?」


と聞き返すと、


「俺の部屋で、しばらくは寝泊まりしながら、射撃訓練と


明日からは、トムの戦闘訓練を受けるためだ」


と告げられる。


「はぁ」


(なんか様子が違う……)















 夕食は、アナさんが運んできてくれた。


 予備のテーブルを出し、木箱を椅子代わりにして、ガイゼル


さんとアナさんに俺と三毛猫オトアの4人ではなく……


ガイゼルさんは作業台で、何かの金属加工に夢中だ。


「さぁ、先にいただくべ」


とアナさんに促され、


「「いただきます」」


≪いただきます≫


3人で、手を合わせて食事をいただく。


メニューは、『グルニラグー』とパン。



『グルニラグー』って要は、ポークシチューかな?


それと丸いハードロール系のパン。


三毛猫(オトア)の前には、先に冷ました『グルニラグー』


と、細かくちぎったパンが出された。


 作業台で、作業に夢中のガイゼルさんに、アナさんが『グルニ


ラグー』(ポークシチュー)を持っていき、スプーンでシチュー


をすくって、


「あーん」


”パク”


アナさんに食べさせてもらいながら、ガイゼルさんは、作業を続


けるのだった。


(仲いいのねw)












 食事の後、シャワーを浴びる。


この地下室へ通じる階段正面に、シャワー室とトイレがある。


 いつもだと、ガイゼルさんが、ここを1人で使ってる訳だ


が、何もガイゼルさんが特別扱いされているのではなく、


元々ここがゴライジャーチームの作戦室だった、名残なだけ


である。


 因みに、俺の部屋がある2階にもシャワー室とトイレが、


階段近くに設けられているが、それは男女で交代で使うこ


とになっている。


 そうそう、ついでに言うと、ここのトイレが変わってて、


所謂、水洗トイレではなく、昔の汲み取り式トイレのよう


に筒状になってるんだけど……。


用を足すと、下に転送魔法円があり、出したものは、汚物


処理場に転送される。


そこで、肥料等に加工されるんだと。


進んでるのか進んでないのかよくわからないシステム。


 ただ、匂いはないので、清潔かな?


 話を戻すと、俺がシャワーを浴びて、シャワー室から


出てきた時、ガイゼルさんとアナさんの会話が聞こえた。


「今日からヴィクセンをうちの家の方で、預かってくれ」


「うん、それは、ええだけんど、レツちゃんとダイちゃん


は、どうするんだべぇ?」


「ああ、レツとダイは、ギルド会館の方の部屋を押さえて


あるから、そっちに行ってもらう」


「そーだべか、なら安心だな」


 そこで、シャワーから俺が出てきたのを悟った2人は、


会話を止めた。


(なんか、変)










------(第三者視点)------☆



 テンタが、地下で射撃訓練をしている中、トム達は、準備を


していた。


 トムの部屋に簡易転移魔法円を作り、それを使って悪特隊あとくたい


のオーブ隊員とCG隊(クリスタル警備隊)のリス・アンヌ


隊員が、ガンブレイブのチームハウスに訪れていた。


「さっきは送ってもらって、ありがとうよ」


「いいえ、どういたしまして」


とトムとオーブ隊員が、挨拶をする。


続いて、初めて見る猫人と言葉を交わす。


「初めまして、CG隊のリス・アンヌ」です。


「おお、初めまして、バルジャン(トム)だ、今回はよろ


しくなw」


「こちらこそ」


握手を交わす2人。


「部屋は、シェリーとタミーの部屋を使ってくれ」


「「はい」」


悪特隊あとくたいのオーブ隊員とCG隊と(クリスタル警備隊)


のアンヌ隊員がそう返事を交わすと、


 トムが聞く、


「で、悪魔の動きは?」


それに悪特隊あとくたいのオーブ隊員が、


「はい、本部ではこの国に悪魔が入国した形跡は、


悪魔センサーで、キャッチしましたが、居場所の特定までには、


至っておりません」


と答えた。


「う~ん、いつ現れるかわからんのか……」


と考え込むトムに、悪特隊あとくたいのオーブ隊員が、付け加える。


「ですが、小型悪魔センサーを持参していますので、もし、


悪魔がこの建物の半径200mに近づきましたら、反応が


あるかと……」


「そうか、なら何とかなりそうだな」


トムの言葉に同意するかのように、悪特隊あとくたいのオーブ隊員


が頷くのだった。


 

 この後、ケンタウロスのレツとダイをギルド会館の方の部屋に


移動させ、夕食後、アナが、ガンブレイブマネージャーのヴィク


センを連れ自宅に帰り、当然、ミリーもシェリーとタミーを連れ


て自宅に帰った。


 そして、テンタの部屋に行き、テンタのベッドにテンタの


”小型の魔波動発生装置”を仕込んだ人形と、オトアの


”小型の魔波動発生装置”を仕込んだ猫のぬいぐるみを


セットしておいた。


そして夜、テンタの部屋で、トム(バルジャン)と、悪特隊あとくたい


のオーブ隊員とCG隊(クリスタル警備隊)のアンヌ隊員の


3人は、トム(バルジャン)が張るSSフィールドの中で、


悪魔がテンタ達を襲うのを待ち構えていたと、言う訳だ。



 ※”小型の魔波動発生装置”と言うのは、この世界に居る


人間や他の生き物を始め、無生物であるゴブリンも含む、


あらゆるものには、そこ個体の”魔波動”と言う物が存在して


いて、悪魔はそれをたどってくるだろうとの推論に基づいて、


作成仕込んだものだ。


 オトアはもとより魔力が微妙であるテンタでも、多少の魔力は


体内に存在する。


 テンタとオトアの”魔波動”は、先ほど『悪特隊本部』で、


能力検査をした折、ついでに測定していたものだった。





 今回の襲撃事件のことをテンタとオトアが知ったのは、


次の日の朝のことだった。


 




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