12話 テンタの意外な才能





「到着しましたよw」


俺達の乗っていたカーペットがふわりと、冒険者チーム『ガンブレイブ』


のチームハウスの前に降りた。


悪特隊あとくたいのオーブ隊員は、カーペットが飛んでいる間、


「わぁー!」≪キャー!≫言う、俺と三毛猫オトアの様子を見て、


終始笑っていた。


「おお、ありがとな」


そんなオーブ隊員に、お礼の言葉を言いながら、カーペットから降り


るトム(バルジャン)さん。


 俺と、俺と三毛猫オトアは、すでにカーペットから降りていたが、


慌ててオーブ隊員に、お礼を言う。


「ありがとうございました」


≪ありがとうございました≫


そんな俺達2人(1人と1匹)に笑いながら、


「いいえ、どういたしましてw」


と答えてくれるオーブ隊員。


 しかし、オーブ隊員はすぐさま、トム(バルジャン)さんに視線を


変え言う。


「では、いったん私はこれで……」


「おお」


お辞儀をしながら言うオーブ隊員に、”じゃ”って感じで手を上げ言う


トム(バルジャン)さんに、オーブ隊員は続けて言う。


「後で、わたくしと、CG隊(クリスタル警備隊)のアンヌ隊員が


参りますので……」 


「ああ、部屋は開けておくよう言っておく」


「ではw」


そう言うと、


「ウォラーレ~」


カーペットがふわりと浮いて、


「ウエーローキタース」


すごいスピードで、オーブ隊員は飛び去って行った。


それを見送り、


「じゃ、昼飯を食おう~」


と俺達に明るく言うトム(バルジャン)さんだった。




 今日はお店(喫茶店)がお休みなので、正面玄関から建物に入る。


玄関に入って、


「ただいま~」


「ただいまです」


≪ただいま~≫


右の扉から店に入って言う、トム(バルジャン)さんと俺と、


三毛猫オトア


「「「お帰り~w」」」


と声をそろえて言う、ミリーさんにシェリーさんとタミーさん。


「パパ、私たちの部屋片付けておいたけど……」


「おお、そうか」


シェリーさんの言葉の途中で、トム(バルジャン)さんが答える。


「でも、いいの、タミーの部屋にはベッドないけど……」


と続けて言うシェリーさんに、


「ああ、大丈夫だ、自分らで持ってくるってさ」


と答えるトム(バルジャン)さん。


そこへ、ミリーさんが、トム(バルジャン)さんに聞く。


「私達は、先にお昼食べたけど……」


そうミリーさんに言われ、トム(バルジャン)さんが、店の壁に


掛けてある時計を”チラ”って見て言う。


「ああ、昼過ぎていたか」


「じゃ、食べる?」


とミリーさんが聞くと、


「ああ、俺もだが、テンタ達も腹ペコだろうからな」


と俺達を見て言った。


(まぁ、確かにお腹すいていますけど)


「あらら、じゃ、今から用意するから少し待ってね、


テンタ君、オトアちゃん」


と言いながら厨房へと向かった。












「「いただきますw」」


≪いただきます≫


俺、トム(バルジャン)さんは手を合わせ言う……


三毛猫オトアも一応前足を合わせた……のかな?



お昼のメニューは、ミリーさんが作ってくれた


『ペーシェエ フリッテ パタータ』?


ようは、イギリスの”フィッシュアンドチップス”


ぽい料理。


 魚は何の魚かはわからないw。


 でも、魚のフライに掛かっているタルタルソースぽい


のは、俺の食欲をそそる。


 いつものように三毛猫オトアが俺に言う。


≪先に食べてw≫


「わかった」


って、いつものように俺が先に食べようとしたら、タミーさん


が、三毛猫オトアの皿を取り、三毛猫オトアをひょいと


抱え、


「こっちで、私が食べさせてあげるからw」


と連れて行った。


(まぁ、はい、恐縮です)


なので、三毛猫オトアのことを気にせず、昼食をいただく


ことができた。


「「ごちそうさまでした」」


≪ごちそうさまでした≫


昼ごはんを食べ終えた俺に、トム(バルジャン)さんが、


「テンタ!食べ終わったなら、ガイゼルの部屋に行け」


と言うので、


「は~い」


と答え俺はガイゼルの部屋に向かった。


 ガイゼルさんの部屋に行こうとする俺に、三毛猫オトアが、


≪私も行く~w≫


と言うので、三毛猫オトアを肩に乗せ、店の正面玄関に


通じる扉から出た。


 ガイゼルさんの部屋は、ちょっとわかりにくい所にある。


って言っても、今、その目の前に居るんだけどね。


正面玄関正面にあるこの階段……が、ガイゼさんの部屋の


扉。


「開けゴマ」


 階段正面でそう言うと、階段が左右の壁に収納され、ガイ


ゼルさんの部屋に入れるようになる。


 この仕掛け、ガイゼルさんが作った訳ではない。


これは、ここのチームハウスの元の持ち主である、今は冒険


者ギルド協会の東支部マスター(支部長)の『ゴライジャー』


チームが、会議室……彼らは作戦室と呼んでたらしいが、


それと武器庫が併設されていたのを、ガイゼルさんが改造し、


自分の部屋件、工房として使用しているそうだ。


 俺は、床にある扉を開け、地下に通じる階段を降りた。


 階段を降りると、右手の扉が、ガイゼルさんの部屋で、左


手は、工房兼射撃場になっている。


 階段を降りると、いきなり左側からガイゼルさんに呼び止


められた。


「こっちだ!テンタ」


「あっ、はい」


俺は、ガイゼルさんの声のする工房兼射撃場に入る……って、


扉がないのでそのまま入れるんだけどね。


 手前に工房、奥に射撃場と言う構造。


「おお、オトアも一緒かw」


「あっ、はい」


≪はい≫


とガイゼルさんに声を掛けられ、返事する俺と三毛猫オトア


俺の肩から三毛猫オトアをそっと持ち上げ、


「オトアはここでおとなしくしてな」


と自分の座っている前にある作業台へ降ろす。


そして、俺を伴って奥の射撃場に入る。


 射撃レーンが3つあり、その真ん中のレーンへとガイゼル


さんに誘導された。


「これから射撃訓練だ!」


と、ガイゼルさんに言われたが、


「いや、僕、撃ったことないです」


と少し嫌がる俺に、


「お前、魔力もないんだから、せめて拳銃だけでも、扱える


ようにならないとな」


と肩を叩かれた。


(まぁ、その通りです)


 ここで、余談だが、ガイゼルさんは転生前、芝原宏明しばはらひろあき


言い、銃マニアだったそうだ。


 父親が銃マニアだったこともあり、子供のころから、モデル


ガンやガスガン等に触れる機会があり、自らも銃マニアになっ


たそうだ。


 いろいろなモデルガン、ガスガン等をカスタムしていくうち


に、本物の銃を扱いたくなり、渡米。


 苦労の末、アメリカで、銃のカスタムショップを経営するま


でになったとか。


 しかし、若干40歳にして、街で起こった銃乱射事件に巻


き込まれ死亡したそうだ。


 その時、好きだった映画が『ガンボー』。


 主人公が1人で、大勢の敵を倒していくのに憧れていた


そうで、本人曰く、その影響で、こちらに転生してきた時


のブランチ(アバター)がこの『ガンボー』になったので


はないか、と言っていた。


 『ガンボー』に変身すれば、主人公はもとより、その映


画で使用している銃器類は出せるそうだけど、普段からも


銃器を触りたい一心で、この世界に来てから、コツコツと


独学で銃器を作っていたそうだ。


 冒険者を一旦引退後、この冒険者エリアで、武器・防具


屋を営んでいた。


ただ、店で扱う武器・防具についてはガイゼルさんが作成


したものではなく、殆どは、『カザード国』(ドワーフの


国)の親戚が作成した武器・防具を取り寄せ売っていたら


しいのだが、時折、自身の作品の銃もお店に並べ売ってい


たらしい。


 ちなみに、その店は今、弟さんに任せているそうだ。


それと、ついでに言うと、『カザード国』で武器・


防具を取り寄せていた親戚の工房に、今ガイゼルさんの


息子さんが職人として修業しているとのことだ。


 話を戻す。


 まず、ガイゼルさんに渡された、目を保護するゴーグ


ルをつけ、次に射撃用イヤーマフラーを装着する。


 あっ、そうそう”射撃用イヤーマフラー”って要する


にヘッドホンみたいなやつね。


 木で出来た的を6~7mくらいにセットして、銃を構


える。


 俺が今持っている銃は、S&W M34キットガンと言


われてる拳銃をガイゼルさんが作成した4インチモデル。


 銃、初心者なので、初めは、22口径(5.5mm)


からだって言われた。


とりあえず、銃を構える……。


「違う違う!」


と、いきなり、ガイゼルさんに駄目だしを食らう。


グリップの握りはこう、腕はこうで、利き目と利き


腕は一直線に……」


(利き目って何?)


 ガイゼルさん曰く、利き手と同じで、人には利き


目もあるそうで、効き目でない方で照準をつけても


微妙にずれるらしい……よくわからないけど、俺の


利き目は手と同じく右らしい。


”パ~ン”


「おお!」


軽い乾いた破裂音なので、思ったより音は気になら


なかったが、銃を撃った反動に驚く俺。


 当然、的には、かすりもしない。


「驚いてないで、次々撃つ!」


「はい」


”\\パン//”


”\\パン//”


”\\パン//”



連続で3回打ったうち、1発が的をかすめる。


「おお!」


俺が感動に浸っていると、ガイゼルさんが俺の銃を持っている


右手首を掴み。


「手首が曲がってる!」


グイと、まっすぐに直す。


\\パン//


\\パン//


\\バキ//


2発撃ったうち、1発が的に命中し、的を破壊した。


「おお!」


感動する俺に、ガイゼルさんが言う。


「弾切れだ、交換しろ!」


(へっ?どうやって交換するのかな……)











 的に7~8割当たりだしたところで、的を薄い金属板(缶


コーヒー位の厚さ)に変え、銃も38口径(9mm)の銃に変


える。


 薄い板だと当たると割れるので、的のどこに当たってるの


か、わかりずらい。


使用する銃は、S&W M36チーフスペシャル3インチ。


今度は5連発。


\\バキュン//、\\バキュン//


22口径で、ほぼホームが固まり、銃がぶれないので、結


構、的の真ん中あたりに当たりだした。


弾の交換の仕方も慣れてきた。


っと、ここで、


「はい、はぁ~い、ここらで休憩してけろ」


アナさんが、射撃場の俺とガイゼルさんに声を掛ける。


 俺は、射撃用イヤーマフラーをしているので、アナさん


の声は聞こえていない。


 銃を構え、的を狙う俺に、ガイゼルさんが俺の肩を叩き、


射撃用イヤーマフラーを外させ言う。


「休憩にしようかテンタ」


「あ?……はいw」


と答えるも、


(せっかく当たりだしたのにな……)


って思う俺だった。











 ガイゼルさんの作業台の周りに、木箱を置いて椅子代わり


にして、


「テンタ君ここさすわれ」


アナさん言われ、アナさんの向かいに座る。


 三毛猫オトアは、ガイゼルさんの向かいのテーブル


の上で、俺とガイゼルさんが来るのをおとなしく待っていた。


 俺とガイゼルさんが着席すると、テーブルには紅茶と、


『カザード国』(ドワーフの国)の家庭で作るお菓子、


『ニエベ エスフェラ』が置いてあった。


 ガイゼルさん曰く、元の世界のドイツのお菓子


(シュネーバル)に似てるそうで、小麦粉にバターと


玉子を加えた生地で小さな球を作りオーブンで焼いて、


仕上げに粉砂糖をまぶしたもらしい。


「「「いただきます」」」


≪いただきます≫


 ちなみに、三毛猫オトアのカップには紅茶ではなく、


みかんジュースが注がれている。


 紅茶とお菓子をいただきながら、しばしの休憩。


工房の壁に飾られている武器や防具を眺めていると、


大きな戦斧バトルアックスが俺の目に留まった。


「大きな斧ですね」


と、つい言ってしまった。


「あれかねぇ~、あれはオラの得物だで」


とアナさんが平然と言う。


「えっ!」


驚く俺に、


「嘘じゃないべぇ……」


と言うなり、壁にかけてある戦斧バトルアックスをひょいと


取り外し、振り回して見せる。


”ビューン”


(あっ、危ないってアナさん)


と心でひやひやする俺に、さらにアナさんが言う。


「これがメインで、サブでこれを使ってただよ」


と手裏剣を取り出し、投げる真似をするアナさん。


「手裏剣ですか!?」


驚く俺に、


「テンタ君、これわかるだかw」


と嬉しそうに言うアナさん。


「ええ、忍者が使う武器でしょ」


と言うと、


「そうらしいけんども、おら忍者つーのは知らんが、


この人が投擲武器を持ってた方がええつーんで、


作ってくれただよ」


「後で、見せたげるわな」


と、うれしそうに言い出した。


それに俺は、


「は~ぁ」


としか、答えられなかった。










 ”シュッ”\ストン/


 ”シュッ”\ストン/


 射撃場で、木の的に、所謂十字手裏剣を投げ、的の真ん


中命中させるアナさん。


「テンタ君もやってみろっ」


と笑顔で言うアナさん。


俺は、行き掛かり上、仕方ないな……と思いながら手裏剣を


受け取る。


(どうせ、あたんないや)


そう思いながら、人差し指と中指で手裏剣を挟み、手首の


スナップを生かし投げる。


 ”シュッ”\ストン/


 ”シュッ”\ストン/


 なぜか的の真ん中に突き刺さる。


「テンタ君、すごいだべ~、本当に初めて投げたのかね~」


驚くアナさん、そして投げた俺も驚いた。


 しかし、もっと驚いていたのは、それを冷ややかに見て


いたガイゼルさんだった。


 目を見開き俺に大声で言う。


「お前、そんな才能があったんか!」


そんなガイゼルさんに、


(いえ、自分でも驚いてるんですよ)


と思う俺だった。

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