10話 オトアの秘密



 キャップ(隊長)のドルフさんから、悪特隊あとくたいのメンバー


の紹介を受ける。


 悪特隊あとくたいとは、正式名称”悪魔特別捜査隊”。


この聖クリスタル教本部に5名と、各東西南北支部にも


5名ずつ配備されている組織だそうで、おおよそ100


年前にクリスタルマンとその兄弟(5柱)が倒した悪魔


の復活の兆候を探る目的で組織されたそうだ。


 悪魔と言うのは肉体が倒されても、アストラルボディ


(精神体)を分離して、生きながらえることができるそ


うで、ただ、復活には人間の体とその魂を利用するとの


こと。


 で、話を元に戻すと。


先ほど地図を眺めていたのが、フォルン隊員(ヴィテス・


フォルン)。


「冒険者が姿を消すのは不思議ではない」


と言っていたのが、グラン隊員(ウラガン・グラン)。


それに反論していたのが、アルバ隊員(ミーヤ・


アルバ)。


 そして、初めに声を掛けてくれた女性隊員


が、オーブ隊員(グリシーヌ・オーブ)。


 全員エルフで構成されたチーム。


 ちなみに、キャップ(隊長)のドルフさんは金髪。


フォルン隊員は、銀髪で、グラン隊員とアルバ隊員


は緑色の髪で、唯一の女性隊員のオーブ隊員真っ赤な


髪の毛。


「では、教授もお呼びしてるので、向かいの部屋へ」


とキャップ(隊長)のドルフさんに案内され、この


部屋を出る。











\ガチャ/


 悪特隊あとくたいの向かいの部屋へと案内される。


(ここは自動ドアではないのね)


部屋に入るとそこは、いかにも科学の実験してます風


の部屋。


先ほどの悪特隊の部屋とは違いランプが\ピカピカ/


光る大層な機械はないものの、何やら怪しい装置が


、並んでる感はある。


 そこには、白衣を着たエルフが3人。


その1人の黒髪のエルフの女性に、ドルフさん


(悪特隊キャップ)が、声を掛ける。


「教授、お連れしました」


「あら、ようこそお越しくださいましたw」


 黒い髪に黒い瞳のその女性。


(俺のエルフのイメージとは少し違う)


と言いながらトム(バルジャン)さんと握手する。


次いで俺の番、俺は先に名乗った。


日向天太ヒムカイテンタです」


「あら、若いのねw」


と俺ともにこやかに握手を交わし、


「この猫が涼風響スズカゼオトアです」


と俺が三毛猫オトアを紹介すると、


「あらあら、これがオトアちゃん!、ずいぶんと


かわいいことw」


と、顔をほころばせて言う。


俺達の名乗りに改めて、黒髪のエルフの女性は


、名乗った。


「ウエン・ディアです、普段は、魔法大学で教鞭を


取っておりますが、時折ここのお手伝いもしてます


のよw」


 ちなみに、ウエン・ディア教授は、通常のエルフ族


ではなく、ダークエルフと言う種族だそうだ。


 顔立ちは端正だが、どことなく日本人の俺には


親しみやすい顔をしてらっしゃる。


「では、さっそく調べてみましょうか」


と笑顔で、俺と三毛猫オトアを見て言うディア教授。


(え―、その笑顔……不気味ですディア教授)









「まずは、オトアちゃんの写真出してくれる」


と、にこやかに言うディア教授。


俺は言われるまま、スマホを出し、電源を入れ、写真を


見せる。


「ここら辺が、オトアの写真です」


スマホの画面をスクロールさせながら、ディア教授に


人間だったころの写真を数枚見せた。


「あら、猫の姿もかわいいけど、この姿もかわいいわねw」


と褒められ照れる俺。


その様子に、ディア教授が、


「なに、あなたが照れてるのよ」


と冷静に突っ込まれる。


ディア教授が、俺からスマホを受け取り、助手らしき


エルフの人に渡す。


「次の写真を見るのは、こうするみたい」


とスマホの操作を助手の人に説明した。


「あっ、はい、わかりました」


ディア教授の説明に頷く助手の人。


 助手の人は、ガイゼルさんと同じようにA4サイズ


のパラフィン紙のような薄い紙を出し、スマホ画面に


あて、


「トランスクリプション」


と唱え、それを数回繰り返していた。


 スマホから、写真を転写し終えた助手さんは、転写


した紙をディア教授に見せ、確認を取ると、俺に


スマホを返してくれた。


で、次にディア教授は、


「では次は、その台の上に載ってくれる」


と、にこやかに……と言うか不気味な笑みで言う。



「はい」


人1人が、かろうじて載れる丸い台の上に俺は載る。


「オトアちゃんは、こっちねw」


三毛猫オトアはテーブルの上にある小さな丸い台


に載せられる。


”ニャー”


\ピー/


円形の台の下から光の輪が上へと上がって行く。


「はーい、もういいわよw」


とディア教授に言われ、俺は台から降り、三毛猫オトア


、教授に台から降ろされた。


”ニャー”


 大昔のコンピュータのような大型機械が、”ガチャガチャ”


と音を立てながら動いている。


(何が始まるんだ?)


 しばらくして、機械が止まると、紙が2枚出てくる。


それを、真剣に見るディア教授。


「なるほど」


それを、キャップ(隊長)のドルフさんに渡す。


「ほう」


ドルフさんもその2枚の紙を見る。


そして、トム(バルジャン)さんにそれを渡した。


「うーん、やっぱりか……」


(何が、やっぱりなんだ?……)


唸りながら、2枚の紙のうち1枚を俺に見せる。


「これ、お前のステータスだ」


「えっ、はい」


書かれていた内容が、




『テンタステータス』


HP    80


MP     3


運動性   30


攻撃力   30


防御力   30


命中    56


回避    40


HPはヘルスポイント(体力等)で、MPは


(マジックポイント)だそうだ。


俺のステータスを見て、ディア教授、トム(バルジャン)さん


悪特隊あとくたいキャップ(隊長)のドルフさん3人が言う。


「魔力はともかく……ほかの数値が平凡ね」


「転生者ではないとは言え……」


「そうですね、召喚者と考え、もう少し数値があると


思いましたが……」


(えっ、なにナニ、俺、平凡なの?)


みんなの反応に俺は少し焦ったが……。


 ディア教授が言う。


「テンタ君のことは一先ず置いておくとして……


オトアちゃんだけど」


「やはり、オトアちゃんのこの姿(猫の姿)は、


ブランチね」


『オトアステータス』


HP     30


MP     10


運動性   不明


攻撃力   不明


防御力   不明


命中    不明


回避    不明


ブランチレベル1


【ブランチスキル】


『テンタへの愛』



「ブランチレベル1やブランチ【ブランチスキル】の項目があること


から、そう考えるのが、妥当だろうよ」


とトム(バルジャン)さんの発言に続き、


「でも、【ブランチスキル】『テンタへの愛』って何ですか教授?」


と、悪特隊あとくたいキャップ(隊長)のドルフさんが、ディア教授に


尋ねる。


「わからないわ……」


と答えるディア教授に、トム(バルジャン)さんが言う。


「何の能力かわからんが、少なくともこのスキル、テンタに


関係してる……と考えるのが妥当だろうよ」


「そうね」


と同意するディア教授。


その話についていけない俺……と、たぶん三毛猫オトア












 わからない俺と三毛猫オトアのために、ディア教授が説明する。

 

 そもそもこの世界イデアでは魂が輪廻転生(生まれ変わる


こと)で、人の数を維持しているのだとか、死んだ人の魂が

”輪廻”の世界に行き、そこで浄化(前世の記憶などを消す)し、


再び生まれ変わり、人の数を維持しているんだそうで、例えば、


エルフに生まれ、死んだ人が、次は獣人や、普通人族へと生まれ


変わる。


 生まれ変わるに際し、得を積んだから、エルフに生まれ変わる


とか、悪事をしていたから、動物や、昆虫に生まれ変わるって言


うのではなく、ランダムに生まれ変わるため、前世の記憶や、


経験を持っていると、生まれ変わってからの人生に影響を与えるの


で、一旦リセット。


 つまり浄化して、生まれ変わるのだそうだ。


 しかし、ここで例外がある。


それは、召喚者や、転生者。


 このうち、召喚者は、この世界の人々が魔術を使い召喚するものを


言うそうで、この場合、召喚者の強い意志と、召喚儀式での大量の


魔力を使い召喚出来るのだが、その際、召喚される者の魂に大量の


魔力が注がれるので、通常のこの世界の人とは、体力、魔力量が、


けた外れに高くなるそうだ。


 問題は、転生者。


 本来この世界には、元々転生者は存在しなかった。


 では、なぜ今この世界イデアでは、転生者が増えているのか?


 それは、この世界に悪魔の存在が影響をおよぼしているらしい。


 悪魔は、本来悪魔界(アストラル界、つまり精神体の世界)に存在


する。


 それを、人間などが自分の欲望を叶えるため、この世界に召喚。


その際、供物として、肉体と魂を供える。


 召喚した者は、確かに願いを叶えてもらえるのだが……。


 欲深い悪魔は、それだけで満足するはずもなく、やがて悪魔


は、召喚者を利用……使役して、自分の欲望を果たそうとする。


 そして、より多くの人間の魂を狩り……喰らうのだそうだ。


そうすると、この世界の秩序である魂の輪廻転生が崩れることに


なる。


 そこで、神(この世界のシステム)が、魂の数を保とうとして、


他の界(世界)より、魂をスカウトするのだそうだ。


 他の界(世界)より魂をこの世界に持ってくるに際し、


神(この世界のシステム)は、その魂に1回だけギフト(特殊能力)


を付加する。


それが、転生者の特殊能力ブランチと言う訳。


 100年前の悪魔大戦で、多くのこの世界イデアの人の


魂が悪魔達に喰われた。


 そこで、それを補うべく、神(この世界のシステム)が、


多くの転生者をこの世界に呼び寄せた……と言うことらしい。


(まぁ、俺は、ここの神(この世界のシステム)に認められた


魂……ってことではないと、言うことだよな)


で、


 次に転生者のブランチについてトム(バルジャン)さんの例で、


説明を受ける。



 トム(バルジャン)さんは、転生前は、岩崎  いわさきつよしと言い、


特撮ヒーローのスーツアクターをしていたそうだ。 


 しかし、大病を患い引退、僅か40歳でこの世を去ったそうだ。


 そして、この世界に転生して、コラクル国の商人の家に次男


として生まれたんだって。


 生まれて3歳ぐらいの時、前世の記憶を持っていることに気づい


たそうで、その時、自分が転生者でブランチの能力があることにも


気づいたそうだ。


 初めて自分のブランチの姿を見た時、


(ああ、なるほど)


って思ったそうだ。


 その理由はと言うと、トム(バルジャン)さんのブランチの


姿は、自身が初めて主役のスーツを演じた『宇宙シェリフ・バル


ジャン』だったからだそうで、数あるスーツを着て演じた中で、


初めての主役って事で、トム(バルジャン)さんの心の中で、


一番思い出深いキャラクターだったからだそうだ。


 このトム(バルジャン)さんだけでなく、多くの転生者の


ブランチは前世で、一番思い入れがあるキャラクターや能力


だそうだ。


 転生者が、所謂”変身”する姿を一般にブランチと称して


いるのだが……。


 トム(バルジャン)さんいわく、”変身”してるわけでは


ないらしい。


 転生者のブランチは、一種のアバターで、普段は亜空間


(別次元)に収納されているそうだ。


そこで、トム(バルジャン)さんの場合は、『銀着!』と


叫ぶと、アバターであるブランチの肉体が、出現すると


同時に、本来の肉体は亜空間(別次元)に収納されるそう


で、この時、転生者の魂と出現したブランチの肉体に魂の


回廊が構築され、アバターであるブランチを自身の肉体と


してコントロールできると言う訳。



【トム(バルジャン)さんのステータス】




通常ステータス


HP     200


MP     100


運動性     80


攻撃力     98


防御力     60+300(魔法付与の革ジャン)


命中      65


回避      55



 これは、トム・ガーフィールドとしてのステータスで、


自身の体調で、数値は上下するらしい。


一見、数値が高いように思うが、若い時はもう少しHP


と、攻撃力が高かったらしい。


 年齢を重ね、数値が全体的に落ちてきてるんだって。


で、


これがブランチ(宇宙シェリフ・バルジャン)


としての数値



HP    2800


MP     600


運動性    180


攻撃力   2000(4000)


防御力   1600


命中      88


回避      70


ブランチレベルMAX(10)


ブランチスキル


『ゲームチェンジャー』


”自分が不利な状況から逆転できる"


( )内はブランチスキル発動時の数値。


こちらの数値は、体調、年齢に関係なくレベルは、


上がることはあっても下がることはないらしい。


 因みに、ブランチには、ライフと言う仕組みも


あるそうで。



ブランチレベル 1~3      ライフ1


ブランチレベル 4~6      ライフ2


ブランチレベル 7~9      ライフ3


ブランチレベル 10(MAX)  ライフ5



※ライフとは、ブランチ(アバター)の数。


 つまり、倒されても『リセット』と叫べば、


次のブランチ(アバター)を出せるということ。


※ブランチは1日たてば元の数に回復する。


 この辺りのことから、この世界の人々は、


転生者は”不死身”だって、噂されているのだ


とか……。


とは言え、本体が死ねばブランチも消える。



(一度に説明を聞いて、俺は少々頭が破裂しそうだわ)












 一気にこの世界のシステムやら、転生者の能力やらを


説明され、少々お疲れ気味の俺と三毛猫オトア


 ここで、この部屋にあるテーブルに着き、ブレイク


タイム。


ディア教授、悪特隊キャップ(隊長)のドルフさん、


トム(バルジャン)さんに俺。


 三毛猫オトアは俺の膝の上。


 暖かい紅茶とクッキー。


 三毛猫オトアだけは、カップにミルクを入れて


もらう。


 俺の膝の上から前足を伸ばし、クッキーを食べる


三毛猫オトア 。


「でねw」


と唐突にディア教授が、俺と三毛猫オトアに言う。


(なんだろう?)


って思ったら、いきなりこう切り出された。


「あなた達、悪魔皇帝ダリウスをおびき出す”えさ”に


なってくれないw」



「え――――っ!」


≪え――――っ!≫


突然の言葉に俺と三毛猫オトアはそう叫ぶのだった。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る