7話 ギルドマスター呼び出しと歓迎会




 結局、俺はコーヒー(ホット)で、三毛猫オトアは、


『ミカンジュース』。


三毛猫オトア”猫”なのに、ミカンジュースをストロー


で器用に飲んでる。


 ちなみに、ストローは、薄く剥いだ木の皮を特殊加工した


ものらしい。


「テンタ君ってコーヒー飲めるんだw」


と普通にコーヒーを飲む俺にタミーさんが不思議そうに聞い


てきた。


「いや、はい」


としか、俺は答えようがない。


「異世界の人は飲みなれてるからじゃない」


とカウンターのシェリーさんがタミーさんに言う。


「えー!苦いだけじゃん」


と渋い顔で、言い返すタミーさん。


その時、店の扉が開いた。


\ガチャ/


”カランコロンカラン”


「「いらっしゃい~w」」


シェリーさんは入り口に目線を変え、タミーさんは入り口の


方に振り向きながら同時に言う。


 店の入り口に立っているのは、ホテルのベルボーイ


(客の荷物などを部屋やロビーまで持ち運びし、案内する人)


のようないでたちで立つ1人の男性。


「いや、私は客ではないんです」


と言う20歳くらいの白人男性に、


「どちら様?」


入り口に立つ男性の方に歩み寄り聞く、タミーさん。


「はい、わたくしは、冒険者ギルド協会グランドマスター


山・武尊サンブソンの伝言をお伝えに来ましたフレディ・


ハサウェイと申します、『バルジャン』様は、もうお帰りで


しょうか?」


(バルジャンって誰!?)


と俺が思っていると、


「ああ、父なら戻っておりますけど……」


カウンターから、入り口の方に歩み寄りながら、


言うシェリーさん。


 ちなみに、この時は知らなかったが、通常、冒険者は


”コードネーム”を使って活動してるそうで、シェリー


さん、タミーさんのように本名をそのまま協会に”コード


ネーム”として登録使用している人もいるが、主に転生者


の冒険者は、自分のブランチ(変身できるアバター)の


名前を使用しているらしい。


「ではっ……」


とハサウェイさんが言いかけた時、シェリーさんが、


遮るように言う。


「父達は、あいにく会議中でして、しばらくそちらで、


お待ちいただけないでしょうか」


店のテーブル席を指し言う。


「あっ、はい、待たせていただきます」


とハサウェイさんは示された席へと向かった。










「どうぞw」


と言って、いたずらっぽい目で、テーブルに座るハサウェイさん


にコーヒー(ホット)をだすタミーさん。


「恐縮ですぅ」


と畏まるハサウェイさんが、目の前に置かれたコーヒー(ホット)


をじっと見て固まった。


「遠慮なさらずにw」


再びいたずらっぽい目で言うタミーさんに、意を決したような


面持ちで、コーヒー(ホット)カップに口をつけ、1口飲んだ


……ハサウェイさん。


「ぶっ、うえっ、」


あまりの苦みに、吐き出しそうになったのを、手で口を押さえ


必死で、飲み込むハサウェイさん。


それを見て


「イヒッ」


と笑うタミーさん。


(タミーさんって結構意地悪?)


そこへトムさんが、2階から店に戻って来た。


 タミーさんから、冒険者ギルド協会グランドマスター


の伝言をお伝えに来た人だと告げられ。


ハサウェイさんが座る席に行き、


「俺がバルジャンだが……」


と言うと、


初めまして、わたくし冒険者ギルド協会のフレディ・


ハサウェイと申します、グランドマスターが


お呼びです」


と言うと、それを聞いたトムさんが、


「ああ、手紙を見てくれたか、わかった今からすぐ、


用意するから、もう少し待ってくれ」


と言い、それにハサウェイさんは、


「わかりました」


と返事するのだった。












 トムさんと、ハサウェイさんが、冒険者ギルド協会


本部がある総合ギルド会館に向かう。


 ちなみに総合ギルド会館には、冒険者だけでなく

商業ギルド協会、生産ギルド協会(農業、工業)など


も本部を置いている場所らしい。


「じゃあ、ガイゼル、この子たちを部屋に案内してあげて」


とミリーさんがガイゼルさんに言う。


「ああ、」


ガイゼルさんはミリーさんにそう答え、俺と三毛猫オトア


の方を向いて、


「2階の部屋に行くぞ」


と頭でクイッと合図する。


「はい」


≪はい≫


と、俺と三毛猫オトアはガイゼルさんに返事を返し、


後を着いて行くところで、


「シェリー、タミー、どっちの部屋からでもいいから、


ベッドをトムの部屋の隣に持って行って~」


とミリーさんがシェリーさん、タミーさに言うと、、


「何で?」


って聞き返すタミーさんに、


「何でって、テンタ君達に使ってもらうからよ」


とシェリーさんがタミーさんに言う。


「ああ、そうか、わかった」


 俺と三毛猫オトアガイゼルさんの後について、


店からエントランスに向かう扉を開けたところに、


シェリーさんがタミーさんも合流する。


 階段を上がり、ガイゼルさん、俺、三毛猫オトアは、


右に、シェリーさんとタミーさんは左へと別れた。











\ガチャ/


ガイゼルさんに案内され、俺と三毛猫オトアは、


トムさんの隣の部屋に入る。


 広さ……8畳ほどだろうか。


 何もない部屋。


 そこに、


「「うんしょ、うんしょ」」


とベッドを2人で運んでくるシェリーさんとタミーさん。


それを見て、俺が慌てて手伝おうとすると、


「いいから、いいから」


とタミーさん。


そして、シェリーさんが俺に言う。


「私達は、こう見えても冒険者の端くれ、悪いけど、


今のテンタ君より、体力は負けないよ~w」


って言われた。


「はぁ、」


俺は”はぁ”としか答えようがなかった。


「どこに置く?」


タミーさんが俺に聞いてくる。


(どこって言われても……)


と思った時、三毛猫オトアが俺に念話で言う。


≪部屋の奥の窓際の方が、朝起きやすいんじゃない?≫


って言うので、俺はそのまま言った。


「あっ、窓際の方でお願いします」


「「OK~」」


シェリーさんとタミーさんは、俺にそう答えながら、


ベッドを窓際に設置してくれた。


「でも、いいんですか、僕達がこれを使わせても


らって……」


「うん、いいのよ、どうせ私達ここで寝泊まりして


ないから~」


と俺の言葉にそう答えるシェリーさん。


すると、ガイゼルさんがこれに付け加える。


「本来は、チームハウスってチームで住むものなんだがね、


俺とトムはいったん引退して家買っているから、ここには


住んでないんだ」


その言葉に、


「そっ、私達ここには通いなの、ここに住んでるのは、


ケンタウロスのレツさんとダイさん、それにマネージャー


のヴィクセンさんだけなのよ」


とシェリーさんも言う。


「そうなんですか」


としか、俺は答えようがなかった。












2階の部屋から店に戻ると、店の照明(光石)は消え、


店には、ヴィクセンさん1人だった。


「あれ、ママ達は?」


とタミーさんが、ヴィクセンさん聞く。


「ミリーさんとアナさんは、レツさんとダイさんを連れて


お買い物です」


「何で?」


と聞き返すタミーさんに、ガイゼルさんが言う。


「テンタとオトアの歓迎会だろうて」


「ああ」


ガイゼルさんの言葉に納得するタミーさんだった。


 しばらく、店で待っていると入り口で、


「おーい、開けてけろ!」


とアナさんの声がした。


それ聞いて、タミーさんが、店の扉を開ける。


手には木箱を持っていて、食材らしき物がいっぱい


入ってる。


「ああ、持ちますよ」


「そうかい」


と俺が店の扉の前で、アナさんが持つ木箱を持とう


として、”ズシ”


持った瞬間、落としそうになる。


「ああ」


(なんだこの重さ)


俺はそう思いながら、何とか踏ん張り持つ。


「ど・どこへ置きますぅっ」


と聞くと、アナさんが、


「それは、厨房の方に運んでけろ」


と言うので、何とか落とさないように頑張って運んだ。


 アナさんの後ろから、ケンタウロスのレツさん、


ダイさんが、これもまた、木箱を抱え、頭を入り口の扉に


当たらないように屈んで入ってくる。


 店の天井までの高さは、1.5階分の高さがあるので、


店に入ってからは、屈むのをやめた。


レツさん、ダイさんが手に持っている木箱は、シェリーさん


タミーさんが厨房まで運んでいた。


(あっちの木箱の方が軽かったのかな?)


なんて思いながら、厨房から出ると、一番後から入って来た


ミリーさんに声を掛けられる。


「テンタ君、それ脱いで、これに着替えなさい」


とトートバックのようなものから服を出してきた。


それを受け取り、


「えっ?」


見ると、黒のスエット。


驚く俺に、ミリーさんが、


「うちの人のお古だけど……」


と言われ、


「はぁ」


としか答えようがない俺。


それを見て、ミリーさんは言う。


「ほら、テンタ君それ、肩、解れてるでしょ、縫ったげる


から、それ脱いで、これに着替えてきなさい」


「へっ」


俺は自分の肩を見て、


(そういえば、ブレザーの肩解れてたわ)


と思い、


「ああ、はい」


と返事をして、ブレザーを脱ぎミリーさんに渡して、


俺は服を着替えに2階の部屋に向かうのだった。












 2階の自室で俺はスエットに着替える。


やはり、思った通りトムさんのスエットは、俺には少し


大きい。


 なので、裾を少し折り返し、袖を少しまくるようにし


て着る。


 着替え終わったので、1階のお店に戻ると、消えていた


店の照明(光石)もつけられ、ミリーさん、アナさんの


指導の下、シェリーさん、タミーさん、それにヴィクセン


さんがテキパキと動く。


 ヴィクセンさんが、丸テーブルの5つあるテーブルの


うち、一番入り口側のテーブルを倒し、テーブルの支柱


をくるくる回すと、”スー”ってテーブルの高さが高く


なる。


(なんじゃこれ)


 これは、ケンタウロスのレツさん、ダイさんが、食事


をするためのテーブル。


 なんせ2人は馬だけに普通に椅子に座れなし、通常の


テーブルだと低すぎて食事がしずらいからなんだってさ。


「俺もなんか手伝います」


って言ったんだけどさ、みんな、俺と三毛猫オトア


は、主役だから何もしなくて良いと言われ、準備が整う


まで、奥のテーブル席で待つ……こと約1時間。


 準備が整ったようだ。


 この国(聖クリスタル国)には、俺達の世界同様、歴が


存在し、もちろん曜日もある。


で、


 明日は日曜日で、聖クリスタル教徒は、ミサに出かけるた


め、仕事を休むんだと、トムさん達は別に聖クリスタル教徒


ではないが、一応、下部組織の冒険者ギルドに所属している


ので、チームハウス内にあるこの店も、明日はお休みって


ことで、店で出す軽食の在庫一斉セールと言わんばかりに


店の軽食メニューも並ぶ。


〇ナポリタンスパゲッティー


〇ミートソーススパゲティー


〇ミックスサンド


〇カツサンド


〇ピラフ


〇オムライス


〇カレーライス


これらを大皿に盛り、さらに、アナさん、ガイセルさんの


出身地の『カザード国』(ドワーフの国)の料理も大皿に


盛り並べる。


 沢山のウインナーやソーセージ、『フリテ―レン』と言


う一種のカツレツ、ポトフみたいなものや、カマンベール、


ロックフォールなどの沢山のチーズ類や、『シュペッツレ』


と言う、マカロニ?パスタ?のような料理も並び、大変豪華


な感じになった。


 ちょうど準備が整ったころ。


\ガチャ/


”カランコロンカラン”


トムさんが帰って来た。


「悪い待たせたな」


と言うトムさんに、シェリーさんが、ニッコリ笑って、


「パパ、グットタイミングよw」


と声を掛ける。


「そうか」


そう言いながらトムさんもテーブルに着く。


そして、トムさんが音頭を取り、


「テンタとオトアと俺達の出会いにw」


『カンパ~イw』


大人達はみんなエール(ビール)で、シェリーさん、タミーさん


は、レモネード。


俺は、レモネードソーダで、三毛猫オトアがミカンジュース


を選択しての乾杯になる。


みんな一斉に料理に手を付ける中、



「ヴィクセン、悪いあそこのソーセージとチーズ取ってくれ」


とケンタウロスのレツさんが言う。


「はいはぁ~い」


と言いながらレツさん達のテーブルに料理を運ぶヴィクセンさん。


 レツさんダイさんが、動くと店の中がある意味大変になるので、


2人の料理を運ぶのは、ヴィクセンの役目らしい。


その様子を、微笑ましく見ていた俺の席の横に、不意にシェリー


さんと、タミーさんが座り言う。


「ねぇ、ねぇ、オトアちゃんのシャーシン(写真)っての持って


るんでしょw」


「見せて、見せてw」


と、俺にせがむシェリーさんと、タミーさん。


 あまりに言うので、仕方なくスエットのズボンのポケットから


スマホを取り出し、写真を見せると……。


「「わーかわいいw」」


と大きな声で2人が言うので、みんながそれぞれ、見たいみたい


と言いだし、俺は、スマホを持ちながら、みんなのところに見せに


行くはめになった。


「おー、この絵すごく上手に描けているじゃないか!」


「そうだな、まるで生きてるみたいだw」


とスマホのオトアの写真を見て感想を言う、ケンタウロスのレツ


さんにダイさん。


(いやいや、これは写真だつーの)


と心には思ったが、顔には出さず、ただ”えへ”って笑って


ごまかす俺。


「かわいいw」


「あら、本当、かわいいじゃないw」


と素直に褒めてくれるヴィクセンさんとシェリーさん。


「あら、おらの方がイケてるだよ」


とオトアの写真を見て、胸を張るアナさん。


≪ねぇ、私、アナさんよりイケてないかな?≫


と俺に念話で聞いてくる三毛猫オトアに、


≪そんなことないよ、オトアが一番だよ~≫


と答える俺。


(第一、オトアの方が胸大きいし……)


っておもわず思ってしまったら、


≪え―っ、私って胸だけぇ~!≫


と少しすねられた。


(あちゃ~、念話中だったわ)


と自分の行動を反省する俺だった。

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