6話 魂と体の回廊




------(第三者視点)------☆



 テンタ達が居る大陸とは別の大陸の地下深く岩でできた、


地下城の小さな謁見の間の様作りの部屋で、玉座に座るダリウス


(オトアの体)。


 ダリウス(オトアの体)正面に膝まづくのは、悪魔男爵バンバ


(坊主頭に、青白い顔つきの男)とその後ろに、同じく膝まづく9人


のバンバ配下の悪魔幹部達。


 悪魔男爵バンバは、すくっと立ち上がり、振り向き自身の後ろに


控える配下の悪魔幹部達に言う。


「ウーヌム、ドゥオ、トリア、クァトゥオル、クインクゥエ、セクス、


セプテン!其の方らは、悪魔子爵ゴースン殿復活のため、人間どもを


狩ってまいれ!」


「はっ、は!」×7


7人の悪魔は、そう返事を返すと、その場から、さーっと消えて行った。


 7人の悪魔に命令した悪魔男爵バンバは、、再びダリウス(オトアの体


)の方に振り返り、膝まづいた。


 そこへ、\ぼわっ/と現れたのが、執事風の男デケムであった。


デケムは、姿を現すとすぐさまダリウス(オトアの体)に跪き、


「ご報告がございますダリウス(オトアの体)様、バンバ様」


と言う。


「おお、デケムか、報告を聞こう!」


とダリウス(オトアの体)の言葉を聞いて、デケムは、一度頭を深く


下げ直して言う。


「ははっ、やはり私の推論は、当たっていたようでございます」


その言葉に悪魔男爵バンバは驚き言う。


「何と!」


そのバンバの言葉を手で制し、ダリウス(オトアの体)は、デケムに問う。


「して、我の体にあった魂がその猫に……」


「はい」


ダリウス(オトアの体)の問いに静かに返事をするデケム。


そして、言葉を続ける。


「あの猫と、連れの男はどうやら仲間の様で、あの後、冒険者の


一行に保護されたようです。」


「ほう~」


「して!」


デケムの話を落ち着き聞く、ダリウス(オトアの体)に対して、


焦ったように続きを催促するバンバ。


「はい、保護した冒険者が、本国に送った手紙を盗み見した


ところ、ダリウス(オトアの体)様の体にあった女の魂は、


理由はわかりませぬが、あの猫にあるようです」


そこまでの話を聞いたバンバが、慌ててデケムに言う。


「ならば、早う~、その猫をひっとらえて、魂をダリウス


(オトアの体)様の体にお戻しせねば!」


と言うバンバに、ダリウス(オトアの体)は諫める。


「これ、バンバ焦るでない!」


「ははっ」


バンバが黙るのを見て、デケムは静かに話し出した。


「ダリウス(オトアの体)の体にお戻しするのは……


少々危険かと思われまする」


その言葉にバンバが憤慨して言う。


「な・なぜじゃ、何が危険なのじゃ!」


デケムに食って掛かるバンバを見て、


「これ、バンバ、少し控えておれ」


と再び諫めるダリウス(オトアの体)。


「ははっ」


ダリウス(オトアの体)に言われ再び首を下げ、固まるバンバ。


固まるバンバを見て、デケムは再び話し出す、


「ダリウス(オトアの体)様の体にお戻しするには、まず、あの


猫の魂との回廊を絶たねばなりません」


「回路をそのままにして、お戻しすれば、ダリウス(オトアの体)


様自身が、あの猫に乗っ取られるやもしれません」



その言葉に、バンバが反論する。


「んっな、馬鹿な!あり得ん、あり得んだろうデケム!我ら


悪魔の魂は人間の魂より高位の魂ぞ!その高位の魂でできた


我等悪魔の意思が、人間の意思に乗っ取られるだと!バカも


休み休み言え!」


と憤慨するバンバにダリウス(オトアの体)が一言言う。


「いや、ある!」


「へ?」


そのこと場に驚き固まるバンバ。


「そもそも、我ら悪魔を人間は恐れる……」


「我等の存在に恐怖し、恐れ畏怖おののくからこそ、人間の


肉体と魂の回廊を絶ち切れるのじゃ」


「それを持たぬ者には、肉体と魂の回廊を絶ち切れぬ」


「断ち切れぬのなら……」


とダリウス(オトアの体)が言いかけ言葉を止める。


「憑依した悪魔の意思を乗っ取られる」


言葉を止めたダリウス(オトアの体)に代わりにデケムが


言う。


その言葉に、黙ってうなずくダリウス(オトアの体)。


ダリウス(オトアの体)とデケムの会話に唯、ただ、驚く


バンバ。


「人間にはまれに、そのような魂が存在する……


と言うことよのうデケム」


「ははっ、」


と傅くデケム。


「では、どうやって!?」


と驚きながらも答えを求めようとするバンバ。


「簡単でございまするバンバ様」


バンバに対して冷静に答えるデケム。


「簡単!じゃと」


と聞き返すバンバに、


「恐怖を与え、恐れ畏怖おののかせばよい……


そうじゃなデケム」


とダリウス(オトアの体)が言う。


「さようで」


ダリウス(オトアの体)の言葉にそう答えるデケム。


「どうやって!?」


とデケムの方に向き言うバンバに、


「あの猫の連れの男を、さんざんいたぶった後、猫の目の前で


殺すのです」


と、デケムの言葉にバンバが聞く。


「なぜその男をいたぶり殺すことが、猫に恐怖を植え付ける


ことになるのじゃ?」


「はい、あの男とあの猫は幼馴染で、恋人同士だからでございま


する」


「自身の目の前で、恋人が、いたぶられた挙句殺されるところ


を目の当たりすれば、恐怖と絶望で……」


「なるほどのう~」


デケムがここまで説明して、やっと納得したって感じのバンバ。


「ならば、早う参れ!」


納得したと同時に、急に立ち上がりバンバがデケムに言う。


「ははっ」


バンバに言われ、すくっと立ち上がったかと思うと、バンバと


ダリウス(オトアの体)に会釈をして、その場から\ぼわっ/


っと、消えたのだった。











 カザード国(ドワーフの国)西にある廃墟の町オルビド(ダンジョン)。


 嘗て、ドワーフ達の先祖が住んでいたとされる町の跡。


 火山ボルカン山の麓で栄えた町ではあるが、千年前のボルカン山


噴火で滅んだ町とされる。


 今は廃墟となり、魔物が住むダンジョンと化している所。


 2階建ての石造りの建物が並ぶ町だったが、噴火したボルカン山


の溶岩が町になだれ込み、1階部分が溶岩で埋まり、かろうじて


2階部分が露出している。


 そこに居たのは、チームリーダー セルジュ・コーポー(男性)


率いる冒険者チーム『シロッコ』面々だった。


 剣士(リーダー)1名、アサシン1名、弓矢2名、魔法師2名


の計6名からなるメンバーが、ここで、『火鼠』と言う体長


134Cm(カピパラ)くらいの大きさの魔物を狩っていた。



「ボス、もういいんじゃないですか」


倒した『火鼠』を『小槌』を振るい収納するメンバーで、


アサシンをしている1人が言った。


「んっ……何匹になる?」


そのアサシンにリーダーのセルジュは聞く。


「そーですね……50匹くらいでやすかね」


その答えを聞いて、セルジュはメンバー全員に言う。


「ぼちぼち引き上げるか」


「へーい」×5人


セルジュの言葉に他のメンバー全員が返事をし、帰り支度を


始めると……。


”ガルルルル”


街の通りの先に魔物が現れた。


「やっべ、マンテコラだ!」


部下の1人が叫ぶ。


それを聞いたリーダーのセルジュは、メンバーに向かって


叫ぶ。


「野郎ども陣形を組め!」


「へいっ!」×5人


フルプレートアーマーに盾を持ったリーダーのセルジュ


の後ろに、アサシンの部下が着き、その後ろに弓矢を


持ったメンバー2人が着く。


 そして、その後ろに魔法師2名が着いたのを確認した


セルジュは言う。


「俺に強化魔法を!と同時に弓矢を撃て!」


魔法師が強化魔法の呪文を唱え始めると同時に、弓矢


の2名が矢を射つ。


”シュッ””シュッ”


 しかし、放たれた矢を軽くよける魔物。


大きさは250Cmの雄ライオンくらいで、


尻尾には毒針を持っている魔物だ。


 マンテコラは毒針の尻尾を立てて、すぐさま反撃する。


”シュッ””シュッ”


\カン/、\カン/


魔法師がかけた『強化魔法』とオリハルコン製の鎧と盾が


、マンテコラの毒針を跳ね返した。


「野郎ぅ~」


そうセルジュは言うと、


”シュン”


自身の剣を抜き、それを振りぬきざまに叫ぶ。


「ウインドーブレード!」


\\ピシュー//


振りぬかれた剣から『風の刃』が飛んで行き、マンテコラ



\ブシュ/


と、真っ二つに切った。


「ふん」


そう呟いて、剣を鞘に納めた時、


”パチパチパチ”


と拍手が聞えた。


「んっ?」


セルジュが拍手が聞える方を見ると、建物の屋根の部分


に立つ、クレオパトラ風の姿をした女性が立っていた。


「何だ?あんたは」


セルジュの問いに、


「あら、わたくしは、通りすがりの悪魔ですわぁw」


と言ってのける女。


「何っ、悪魔だと!」


セルジュの部下のアサシンの男が怒鳴る。


その部下を制して、セルジュは女に言う。


「その、通りすがりの悪魔のお嬢ちゃんが、俺達に


何の用があるんだい?」


と軽く往なす様に言うと、


「あら、わたくしはただ、あなた達の体と魂を頂き


たいだけですわw」


と笑いながら言う。


「何を!」


と言うや否や、いきり立つ弓矢の部下が、矢を放つ。


”シュッ”


それを右手の中指と人差し指で、軽くはさみ止めた


女は言う。


「こんなものでわたくしを……倒せるとでも思った


か外道!」


笑顔から、目が金色に輝き口が裂け、悪魔の形相に


変わる。


「ヤバイ、陣形を!」


とセルジュが部下に命令しようと振り返ると、部下


達はみんな恐怖の形相のまま固まていた。


「何っ!」


セルジュはそう言うと、素早くその場から離れ、


剣を抜いて構える。


そして、剣を振りぬきざまに叫ぶ。


「ウインドーブレード!」


\\ピシュー//


セルジュの放つ風の刃は、女に向かうが、それを


女が右手を添えて、”ふっ”と息を掛けた瞬間。


風の刃は立ち消えてしまう。


「おげっ!」


驚くセルジュの側に女の顔があった。


「あ――っ!」


恐怖に驚き、セルジュは気を失った。


その側で、ほくそ笑む女。


女の名は、ウーヌム。


悪魔男爵バンバ配下No1の悪魔である。


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