3話 オトアの声



「数珠に手を当てながら、話したい人を頭でイメージしてみぃ」


ミュラーさんの言う通り、俺は話したい相手をイメージする。


それは、当然、オトアだが……。


(えーと、どっちのオトアをイメージしたらいいのかな)


 まぁ、取り合えず、人間の頃のオトアをイメージして念話してみた。


≪オトア聞えるか?≫


≪うん、聞えるよテンタ君w≫


(なるほど……)


 結局、人間のオトアでも今の三毛猫オトアでもすんなり話せた。


30分くらいオトアと話すが、明日、夜明けとともに出発するって


ことで、この日はもう寝ることにした。


 野営では、全員寝るわけには行かない。


が、


俺と三毛猫オトアが夜の見張りに立つことはなかった。


 それは、異世界から来てなれてないのもあるが、元々戦力外でも


あるので、馬車の上のテントで寝ることになった。


 夜の見張りは、ケンタウロスの2人と俺達を除く4人で交代でする


そうだ。


「おやすみなさい」


みんなに頭を下げて、三毛猫オトアと共に馬車の屋根の上の


テントにもぐりこんだ。


≪おやすみテンタ君w≫


≪おやすみオトアw≫











------(第三者視点)------☆





 日向天太ヒムカイテンタ涼風響スズカゼオトアが、


飛ばされた世界イデアにあるユジア大陸。


とは、反対に位置する名もなき大陸。


 この大陸の中央部にある森の地下深く、それはあった。


 岩でできた、小さな謁見の間の様作りの部屋。


 部屋の奥の1段高くなった場所の中央に簡素な玉座があり、


そこに座るダリウス(オトアの体)。


 ダリウス(オトアの体)正面に膝まづくのは、悪魔男爵バンバ。


坊主頭に、青白い顔つきで、顔に数か所、傷……と言うよりヒビが


入った容姿。


その後ろには10人のバンバに使える幹部が膝まづいていた。


 その名をナンバーズと言い。


No1 ウーヌム


    ・エジプトの女王クレオパトラ風の姿。


No2 ドゥオ

    

    ・ギリシャのヘラクレス風の姿。


No3 トリア

    

    ・中国の皇帝風の姿。  


No4 クァトゥオル

    

    ・ヨーロッパの王妃(マリーアントアネット)風の姿。


No5 クインクゥエ

    

    ・フルプレートアーマーの騎士風の姿。 


No6 セクス

    

    ・白シャツ吊りバンドの半ズボン姿の子供姿。 


No7 セプテン

    

    ・ゴスロリ風の姿。 


No8 オクトー

    

    ・白のタキシードにシルクハットの紳士風の姿。


No9 ノウェム

    

    ・眼帯をした紳士風の姿。


No10 デケム

    

    ・執事風の姿。


 このデケムが、ダリウスをここに転移させた悪魔。


 各ナンバーズの数字が低い方がより強者の悪魔で、各人10


体のレッサーデーモンを使役している。



「まずは、ご復活心よりお祝い申し上げます」


とバンバが頭を下げながら言うと、


「うむ、大儀であった」


ダリウス(オトアの体)がそう答えた。


「して、ここは?」


ダリウス(オトアの体)の問いに。


「ははっ、ここはクリスタルの連中が知らぬ場所……」


「奴らの居るユジア大陸の南に位置いたします


奴等にとっては未知の大陸でございます」


と答えるバンバの説明にダリウス(オトアの体)は、


「ほう~」


と答え。


「この地で、体制を整え一気に奴らを殲滅……」


バンバの言葉を遮り、ダリウス(オトアの体)は言う。


「まずは、他の者達の復活させねばのう」


「ははっ、」


ダリウス(オトアの体)の言葉にバンバが頭を下げる。


「しかし、解せんことがあるがのう」


と、手で顎をさすりながらダリウス(オトアの体)は言う。


「それは……」


と恐る恐る聞く、バンバに、


「いや、なに、この体には魂がなかった」


それを聞き、


「なんと!」


と驚くバンバ。


「この世界の人間ではなく、異世界人の体を得たことは、


上々なのだが……」


「如何せん魂がないと、我の本来の力が出せん」


ダリウス(オトアの体)を聞き、


「そっ、そんなはずは……私めが仕掛けた罠は生きた人間を


この世界に召喚するものだったはず……」


「死体を連れてくるとは……」


驚きを隠せないバンバ。


「いや、お前の仕掛けは間違っておらなんだ」


「憑依する寸前まで、確かに魂は存在しとった」


「ではなぜ!」


ダリウス(オトアの体)の言葉に思わず詰め寄ろとする


バンバだったが、


「わからんのだ」


と言うダリウス(オトアの体)の言葉に動きを止めた。


するとそこに、


「お恐れながら……」


と声をかけるデケムに、


「これ、控えよ!デケム、ダリウス様の御前である」


と大声でデケムをしかりつけるバンバ。


それを見たダリウス(オトアの体)は、しかりつけるバンバに、


「よい、バンバ!」


「はっ!」


ダリウス(オトアの体)の言葉に、控えるバンバ。


そのものは我をここに運んでくれたものよのう~」


「はっ!」


ダリウス(オトアの体)の言葉に畏まるデケム。


「名はデケムだったか?」


畏まるデケムにダリウス(オトアの体)は言葉を続ける。


「して、何か申したいのなら申してみよ」


「ははっ、」


再び畏まりながらゆっくり頭を上げデケムは、ダリウス(オトアの体)


に向かい言う。


「お恐れながら陛下、あの時いた猫が原因かと……」


その言葉に


「猫?はて、それは何じゃ」


と問い直す。


「陛下が男を襲おうとしておられた時、その男の前に出て、


陛下を威嚇していた小動物です」


デケムの言葉に、ダリウス(オトアの体)は思い出したかのように言う。


「ああ、あの小動物か……それがどうしたのじゃ」


と聞き返すダリウス(オトアの体)にデケムは言葉を続ける。


「猫と言う動物は、悪魔の気配を察知できる動物ではございますが……」


「我ら支配のレッサーデーモンならいざ知らず、高位の悪魔に対しては、


恐れおののき、威嚇など致しません」


「ほぉ~」


デケムの言葉に感心しながら聞くダリウス(オトアの体)。


「わたくしに対してでも。猫は恐れおののきますのに、恐れながら畏くも


それより高位にあらせられる陛下に威嚇するなど、ありえませぬ!」


デケムの発言を聞いてバンバが反論する。


「貴様、そうは申すが、わしは人間の魂が、小動物に変化するなど


聞いたことはないわ、戯け!」


と叱咤するバンバ。


「これ、控えよバンバ!」


それを制するダリウス(オトアの体)。


「ははっ、」


ダリウス(オトアの体)に言われ黙り控えるバンバ。


「あくまで、わたくしの推論ではございますが……」


と控えながら言うデケムに、


「申してみよ」


と発言を許すダリウス(オトアの体)。


「ははっ、」


デケムは畏まりつつも、話を続ける。


「このイデアの世界には、他の世界から、召喚、転生してきたものが


おりましょう」


「異世界人の魂が、召喚、転生によりこの世界に来た折、強力な力を


得ております」


「特に、転生者の魂には強力なソウルスキルと共に、ブランチと言う


もう一つの強力なアバターを生み出せる能力がございます。」


そこまでのデケムの説明を黙って聞いていたダリウス(オトアの体)が、


「しかし、この体は転生ではなく、召喚によるものぞ」


とデケムに聞き返す。


それを受け、デケムは話を続ける。


「はい、確かにそうでございます……しかしながら、あの猫が突然現れ、


陛下を威嚇したとたん、陛下は体の自由を奪われた、それまでは何とも


なかった……」


の言葉にダリウス(オトアの体)は少し考えこむ。


デケムは話をさらに続けた。


「あの猫に、陛下の体にあった魂が猫に移ったと考えれば話は通りまする」


「魂と体の回廊が切れておらず、よって、あの猫が自分の意志で体を止め


たと考えられませぬか」


「なるほど、一理あるなデケム」


「確かに帥の申す通りじゃ」


と納得気味に言う。


「しかし、あの猫の体はどう説明するのじゃデケム?」


とバンバが口をはさむが、


「それはわかりませぬ」


と答えるデケム。


それを聞いて、ダリウス(オトアの体)は言う。


「よし、デケム、ならばそれをそちが調べてまいれ、もし、その推論が


当たっておるのならば、その猫とやらをわしの前に連れてまいれ」


「ははっ、謹んでお受けいたしまする」


ダリウス(オトアの体)の勅命に畏まるデケム対し、バンバも言う。


「陛下の勅命だぞ、心してかかれ」


「ははっ、この命に代えましても……では、」


と言って、デケムは\ぼわ/と黒い煙と共に、その場から姿を消すのだった。










------(テンタ視点)------☆



 翌朝、日の出に起こされた。


(今、何時なんだろう……)


スマホの時計を見ればいいのだが、そろそろバッテリー残量がヤバイ


ので、今は電源を切ってある。


≪おはようテンタ君w≫


≪おはようオトアw≫


三毛猫オトアと念話でのあいさつ。


馬車の屋根の上のテントから出て、馬車の屋根から降りる。


「おはようございます」


≪おはようございます≫


×6人


「おはよう~」


×6人


みんなに挨拶して回る俺と三毛猫オトア


俺達の挨拶に、みんなもあいさつし返してくれる。


 朝ごはんは、オートミール粥。


 こちらの定番朝ごはんらしい。



 軽く朝ごはんを食べ、片付けしてから……出発。


例によって小槌使用で、とっとと出発する。


ミュラーさんが、ケンタウロスのレツさんと、ダイさんに


馬車を引く器具を装着し、全員で、馬車に乗り込む。













馬車の中は、左右に3人掛けのベンチがあり、右にガーフィー


ルドさん達、親子3人が座り、左の席にミュラーさんと俺と


三毛猫オトアが座った。


 馬車の中は、窓がない。


 いや、馬車の前方方向に馬車を引っ張るレツさん、ダイさん


と会話するための小窓があるか……。


 でも、全体に暗いのだが、馬車の内部の天井に石が設置


されている。


それに、ミュラーさんが魔力を込めると(約3分)……。


\パッ/と光った。


馬車の中は途端に明るくなる。


この石は光石と言うもので、魔力を込めると光りだす性質を利用


して、明かりに使うということらしい。


 馬車の速度は時速10Km程度、2時間おきの休憩を入れるのと、


お昼に食事休憩で1時間休むのを入れて、魔物の襲撃がなければ、


8時間くらいで目的の”ホブゴブリンの村に着くらしい。


 馬車の中では、みんなで念話で話した。


 念話で話すのは、三毛猫オトアが念話でないと話せないと言うのもあるが、


念話だと翻訳機がいらないからだ。


 念話は、基本頭の中のイメージを伝えるもので、本来言葉ではない


イメージのやり取りと言う訳で、言葉を変換する必要がないということ


だった。


≪まぁ、君達はガンブレイブのメンバーではないんだが……。≫


≪日向君、と涼風(三毛猫)さんのことは、これから、テンタ、オトア


って、呼んでいいか?≫


とガーフィールドさんが唐突に聞いてきた。


≪はい、僕は構いませんが……≫


≪私はオトアと呼んでもらう方がうれしいですw≫


俺と三毛猫オトアの言葉をうけて、ガーフィールドさんが、


≪いやな、うちのチーム(ガンブレイブ)内では、ファーストネームで


呼び合うって決めごとがあるんでな≫


と言う。


≪あっ、はい≫


≪はいw≫


俺達の返事を受け、


≪じゃ、今から俺のことをトム、ミュラーのことはカイゼルと呼んでくれ≫


とおっしゃるので、


≪えっ、はい≫


≪はいw≫


と俺と三毛猫オトアは了承をする。










馬車の中では、シェリーさんとタミーさんが、俺と三毛猫オトアのことを


いろいと聞いてきた。


 照れながら、話す俺と三毛猫オトア


≪えぇ~っ、6年もお互い片思いだったのぉ~!≫


驚くシェリーさん。


≪いいなぁ、そんなに思われたことない、私……≫


と、羨ましがるタミーさん。


 そんな、こんなの話が続き、7時間……たったかな?


 馬車を引く、レツさん、ダイさんが目的の村がある森が見えてきたと小窓に


向かって言ってきた。


「わかった」


とそれに返事したガーフィールドさん……改めトムさん。


≪みんな~おしゃべりはそのくらいにして、そろそろ準備しろ≫


≪はーい≫×2(シェリーさんとタミーさん)


≪あ、はい≫×2(俺とオトア)


(って、返事したけど……俺は何を準備したらいいんだろう?)



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