2話 転生者がいる世界





 半信半疑ながら、一応俺達の話を信じてくれたガーフィールドさん。


ゴブリンの消えた付近で作業している黄の人と紫の人を呼び寄せた。


「♯<¥♯$%*@$%!、$%*@$%♯<¥」


相変わらず何を言ってるのかわからない。


 黄の人と紫の人は、俺の前まで来て、


「「リバース!」」


それぞれのバトルスーツの姿を解いた。



 紫の人は、紫のロングヘヤーで、紫の袖なしチャイナドレスに


チャイナシューズを着たいでたち。


しかも、胸元はぱっくり空いている……かなりのお胸。


(豊満な胸……オトアより大きい……妖艶な美人さんって感じだな)


 黄の人は、金髪のショートヘーヤーで、白のブラウスに黄色のベスト


に同じく黄色のミニスカートに白のショートブーツ……。


 ウエスタンぽいいでたちだ。


(胸はそこそこ……かわいい系かな)


「娘のシェリーとタミーだ」


と紹介される。


(紫の人がシェリーさんで、黄の人がタミーさんね)


ガーフィールドさんに紹介され、シェリーさんとタミーさんが


俺にお辞儀をし、


「♯<¥♯$%*@$%〇」


「$%*@$%♯<¥〇」


それぞれ何か言うが、俺にはわからない。


俺がきょとんとしていると、ガーフィールドさんがそれに気づき、


「ああ、悪い悪い」


と言いながら、着ていた革ジャンのポケットから何かを出した。


(なんだそれ)


 ガーフィールドさんが出してきたのは、手のひらサイズの


『打ち出の小槌』。


(神社などで見る縁起物の飾りに似てる)


それを見て、シェリーさんとタミーさんも同じように小槌を出した。



「「「%♯<¥〇$%*@」」」


と何やら言って、それを”コンコン”と左掌の上で振る3人。


すると、”ぼあっ”と3人の掌の上に現れたのは……。


俺達の世界で言う、『片耳用マイク付きイヤホン』のような


ものだった。


「ほれ」


とガーフィールドさんが俺に手渡す……。


「あっ、はい」


とりあえず、受け取っては見るが……。


(どうすりゃいいんだ?)


と思っていたら、シェリーさんとタミーさんが、それを左耳に


着けたのを見て、真似てみる。


「あぁ、あぁ!……わかる?私達の言葉」


着けると同時に紫の人……いやシェリーさんが俺に話しかけた。


そして、タミーさんが、


「あなたの言葉で、そのまま話してみて」


と言うので、


「あっ、はい、わかります」


「えーと、初めまして、日向天太ヒムカイテンタです」


と言いながら2人にお辞儀をすると、


「改めまして、私は姉のシェリーよw」


と笑顔で挨拶してくれた。


続いて、


「私が妹のタミーよw」


こちらも笑顔で挨拶してくれた。


俺は、手招きして三毛猫オトアを呼び、抱きかかえて言う。


「こちらは僕の彼女の涼風 スズカゼオトアです」


”ニャー”


俺の紹介に連動するように三毛猫≪オトア≫が鳴いた。


「あら、かわいいw」


「かわいいねw」


シェリーさんは、三毛猫オトアの顔を覗き込み、タミーさんは


軽く三毛猫オトアの頭をなでながら言う。












 ガーフィールドさん達は、冒険者をやっているそうだ。


ガーフィールドさんは、元Sクラスの冒険者チームのリーダーで、


姉のシェリーさんが、生まれたのを機に本来、冒険者を引退して


いたんだが、娘2人がどうしても冒険者になりたいというので、


チームを復活させて、自身も冒険者として復帰したそうだ。


 何でも、娘のシェリーさん、タミーさんのレベルアップのため、


一緒にゴブリン狩りをしていたそうだ。


 ガーフィールドさんの話では、何でもゴブリンは、光るものを


好むそうで、狩りの途中、突然現れた光の柱を見て、ゴブリン達


が集まってくるのではと思い、ここに来てみたら……


ゴブリン達に囲まれた俺達に遭遇したって訳。


「じゃ、戻るぞ!」


ガーフィールドさんが娘のシェリーさん、タミーさんに声をかける。


「え―――っ!」


不満げに言うシェリーさんに妹のタミーさんが言う。


「お姉ちゃん、仕方ないんじゃない」


「だって、まだ……」


不満げに言い返すシェリーさんに再び妹のタミーさんが言う。


「お荷物できたんだから」


と俺と三毛猫オトアをチラッとみて言う。


(ああ、俺、お荷物なんだ……)


タミーさんの言葉に少し傷つく俺。


その様子を察したのか、タミーさんが慌てて付け加えが、


「いや、そういう意味でなくてね……なんて言うか」


どう言ったらいいかわからないって感じで、口ごもる。


そこへ、ガーフィールドさんが口をはさむ。


「シェリー、冒険者には、一般の民間人を守る義務があるんだぞ」


「そーだけど」


と父親に不満そうに言い返すシェリーさん。


「そうよ、ねーさん、クリスタル教の教義にもあるでしょ、


弱きものを守れって……」


(クリスタル教ってなんだ?冒険者と何の関係があるんだろう?)


タミーさんの言葉に疑問が頭に浮かぶ俺。


「でも、レベリングが……」


と、まだ不満そうなシェリーさんに、ガーフィールドさんが言う。


「それにな日向君の言うダリウスと言う悪魔が気になる」


「ああ、それって100年前くらいに”柱”達が倒したって言う


悪魔じゃないの?パパ」


と、ガーフィールドさんの言葉に、すぐさま反応するシェリーさん。


「ああ、もし本当に復活したとなると、えらいことになりそうだ、


早く、グランドマスターや元老院に報告せねばなるまい」


(柱、元老院?グランドマスター?)


2人の言う知らない単語に、ますます俺の頭の中に”?”が


浮かぶのだった。













 丘と言うか、岩をみんなで降りて、しばらく平坦な場所を歩いた。


 20分くらい歩いたろうか、なんかサボテンもどきが生えている


場所が見えてきた。


 そして、そこには、木製の馬車に金属プレートが打ち付けたよう


な黒い馬車と、その周りに立つ男達……いや、1人の男性と、馬


2頭?ってか、あれ何っ!


 そう、馬に見えたのは……ケンタウロス!そう、ゲームや神話に


出てくるそれだった。


 驚く俺をしり目に、3人?1人と2頭?は近づく俺達に気づき、


こちらを見る。


で、1人の男性……赤毛……いやピンクの髪と髭にずんぐり


むっくりの体……あれはドワーフかな?


そのドワーフらしき人がが声をかけてくる。


「よう!どした、えらく早かったじゃないか」


「おお、カイゼル、ちょっと急用が出来てな」


とガーフィールドが後方を歩く俺を”チラ”っと見て言った。


その目線を見て、ドワーフの男の人が俺を見る。


「ん?なんだこの小僧は……」


とドワーフの男の人が言う。


「俺達とご同郷の人だ」


とガーフィールドが答えると、


「んっ!?日本人か?」


とドワーフの男の人の質問に黙って頷くガーフィールドさん。


 すると、そのドワーフの男の人は俺に近づいてきて握手を求める。


俺は思わず、ドワーフの男の人の手を握り握手をした。


「俺は、カイゼル・ミュラー 御覧のとおり今はドワーフだが、


転生前は、芝原 宏明しばはらひろあき、日本人だ」


「あっ、僕は日向天太ヒムカイテンタです」


握手をしながらお互い挨拶を交わす。


(俺達は、本当に異世界に来たんだな)


と俺は心でつぶやいた。











 馬車を引くケンタウロス族の2人は、レツさんと、ダイさん。


ガーフィールドさん達の冒険者チーム『ガンブレイブ』専属の……


馬?ケンタウロスらしい。


弓を持っている方が、ダイさんで、槍を手に持っている方が、レツ


さん。


ガーフィールドさん達がゴブリン狩りをしている間、ミュラーさん


共々馬車の警護をしていたらしい。


 この2人とも俺は軽く挨拶をする。


「で、どうするトム」


ミュラーさんが聞く。


「そーさなぁ……、今出発しても夜までには、ホブゴブリンの村


には着きそうもないから……」


「ここで野営だな」


ガーフィールドさんが言う前にミュラーさんが答えた。


「だな」


それに返事を返すガーフィールドさんだった。


(ホブゴブリンの村って何?)


ガーフィールドさん達の会話に俺の頭にまたもや疑問が浮かんだ。










 まだ、夕方の4時ぐらいか?スマホの時計だと4時だがこの世界


の時間を示しているとは限らない。


 が、たぶん感覚的にはそれぐらいだと俺は思う。


 まず、馬車から少し離れたところに、6本の支柱を立てそこに


ロープを張り固定。


そこにタープを固定する。


(屋根だけテントって感じかな)


ここは、ケンタウロス族2人の寝床らしい。


そして馬車後方の扉をあけ左右に並ぶ3人掛けのシートをアレンジ


して、ベットを作る。


ここは、シェリーさんとタミーさんの寝床になるらしい。


でもって、馬車の天井に備え付けのテントを張る。


(張るって言っても、あらかじめ倒していたテントを起こせば


完成、簡単だね)


次に、ミュラーさんが例の小槌を出してきて振る。


と、薪がたくさん出てきた。


(本当、それ便利だよね)


その薪を積み上げ火をつける……。


ミュラーさんが薪に手をかざし言う。


「輝き燃える赤き炎よ 我に従い力となれ!ファイヤー」


手から炎が出て薪に火をつけた。


(おお!)


それを見た俺と三毛猫(オトア)が驚き目を丸くしていると、


タミーさんが、近寄り言う。


「そんなに驚かなくても……これは基本的な魔法よw」


と笑いながら言う。


「ひょっとして、魔法知らないの」


とタミーさんの横からひょっこり現れたシェリーさんが俺に聞く。


「いや、魔法ってのは知ってますけど、僕らの世界では、


それはゲームやアニメの世界の話ですから……」


と言い返すと、シェリーさんとタミーさんがきょとんとした顔で


言う。


「ゲーム?」


「アニメって何?」


それを言われた俺は困った。


(なんて説明するんだ?)











 テントを設置して、食事の用意をする。


 ここで、当然のように小槌が使われた。


 なんかの肉と玉ねぎぽい奴やらピーマンぽい奴が、交互に刺して


いた串焼きを数十本出し、野菜やらなにやら加工した食品も出した。


(いったいどう言う仕組みなんだろう?)


 焚火の周りに串焼きを並べる。


次に焚火の上に鍋を吊り、なんかわからない豆やら野菜やらをぶち


込み何らかの調味料で味付けして煮込む。


 このころになると空がだんだん暗くなってきた。


そして、ワンプレート皿に串焼きとカップによそったスープに


マッシュポテトを乗せ各自に配る。


「あぁ、ありがとうございます」


俺は自分の分と三毛猫オトアを受け取り、お礼を言う……


んだけど。


(えーと、オトアなんだけど、今は猫……人間の食べる


ようなもの食べれるのか?)


「では、いただこうか」


とみんなに声をかけるガーフィールドさん


で、全員で手を合わせて、



「「「「「いただきますw」」」」」


俺もつられて手を合わす。


(あれれ、こっちでも言うんだね)



 猫が人間のご飯が食べれるのか心配していたが、三毛猫オトア


は、元気よく食べる。


 ただ、やはりそこは猫、熱いものが苦手みたいだ。


なので、俺が”ふーふー”してから食べさせた。


 串焼きの肉は鹿の肉らしい。


(初めて食べたけど、臭みは感じられない、少々弾力があるものの


俺はおいしいと思う)


 野菜は……名前聞いたけど全然想像ができなかった。


(でも、おいしかったのでOK)


マッシュポテトはマッシュポテトだったし、


スープはブイヨンベースの味だった。


すべて、おいしくいただいた。


「「「「「「ごちそうさまでしたw」」」」」


最後はみんなで手を合わし言う。


 ”いただきます”と”ごちそうさまでした”の習慣は転生者で


あるガーフィールドとミュラーさんが『チームガンブレイブ』の


ルールとして決めたものらしい。


(元日本人だからね)












 食事の後片付けを手伝い……って言っても大半は小槌に収納する


だけなので、ほとんど俺は何もしてない。


ってなわけで、俺が三毛猫オトアを膝に抱き、焚火の火を


”ぼ~っと”見つめていると……。


ミュラーさんが、俺の横に座った。


それに気づき俺が会釈をすると、


「さっき、トムからあらかたの事情は聞いたよ」


「あぁ、はい」


ミュラーさんの言葉に、俺はただそう答えるしかなかった。


 しかし、


「大変だったなw……」


のミュラーさんの言葉に、俺は突然涙があふれ出てきた。


 俺は一生懸命涙をこらえようとしたが……泣いてしまった。


俺の泣き声にシェリーさんとタミーさんが、心配そうに俺を見るが、


ガーフィールドさんが、そんな2人の肩を”ポンポン”叩き、


まるでそっとしておいてやれと、言わんばかりに3人で俺の視界


から消えた。


ミュラーさんは、俺の背中を優しく叩きながら言う。


「試にこれを使ってみるかw」


 ミュラーさんは、そっと翡翠色の数珠を2つ俺に渡した。


「こ・これは……」


手渡された数珠を見て言う俺。


すると、俺の手から一つの数珠を手に取り、俺の左腕に着けた。


 そして,、自身の左腕の同じ翡翠色の数珠を触りながら目を閉じる。


≪どうだ、ボウズ聞えるか?≫


頭に響くミュラーさんの声。


「えっ、何ですか!?」


驚く俺に、ミュラーさんがニッコリ笑って


「念話の数珠だよw」


と言う。


「念話ですか……」


俺がきょとんとしていると、


「でな、ほれ、それ貸してみぃ」


手に持っている方の数珠を俺から取り、それを三毛猫オトア


の首に着けた。


すると……


≪テンタ君!聞えるぅ?≫


とオトアの声が頭に響き渡った。


「えっ、何、なに、ナニ!」


驚き、膝の上の三毛猫オトアを見ると、俺をジーっ見つめ


ている。


そして、


≪やっと話ができるw≫


またもやオトアの声。


「今、オトアがしゃべったのか!?」


と再び膝の上の三毛猫オトアを見ると、小さく頷いた。


「オトア~!!」


嬉しさのあまり大声で叫ぶ俺だった。


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