63日目 ヒロの誕生日

 6月10日、修平はいつものように駅で待っていてくれたヒロに、

「ヒロ、おはよ。あとこれ誕生プレゼント。」

「修ちゃん、ありがとう。中身気になるから開けてもいい?」

「いいけど。」

 ヒロは嬉しそうに、その場でプレゼントのラッピングをきれいに開け始めた。

「シャーペンだ。ありがとう。」

「俺も同じもの買ったから。」

 修平も鞄からシャーペンをとりだした。

「修ちゃんとお揃いなんだ、嬉しい。これで授業中も、修ちゃんとつながっていれるね。修ちゃんにしては、気が利くね。」

 そう言って、ヒロは嬉しそうにシャーペンときれいに畳んだラッピングの包装紙を鞄に入れた。喜んでいるので、美織に選んでもらったことは内緒にしておこう。

「修ちゃん、誕生日プレゼントありがとうね。プレゼントついでに、ひとつお願いしたいことがあるけどいいかな?」

「内容によるけど、何?」

 ヒロは耳打ちで、お願いを伝えた。伝えた後の恥ずかしそうにしているヒロをみると、断るのも悪い気がした。どうせ減るものでもないので、

「いいよ。じゃ、昼休みね。」

「わかった。楽しみにしてる。」


 その日の昼ごはんは、ヒロの誕生日と日ごろのお礼も兼ねて学食でヒロに奢ることにした。ヒロはいつものかつ丼ではなく、うどんだった。

「かつ丼でなくていいの?遠慮しなくていいのに。」

 修平が聞くと、

「この後のことを考えると、緊張しちゃってあんまり食欲ないから。」

 ご飯を食べているときは、いつも笑顔で話しかけてくるが、今日はあんまり話しかけてこなくて、うどんをあっという間に食べ終えた。


 修平が食べ終わるのをみて、ヒロが声をかけてきた

「修ちゃん、そろそろお願いしてもいい?」

「わかった、いいよ。」

 食べ終わった食器を戻し学食を出た後、修平はヒロを連れて、屋上へとつづく階段へと向かった。アニメや漫画と違い、普通の学校の屋上は閉鎖されているので、屋上へと続く階段には通常誰も来ない。ここでなら誰にも見られないだろうと、修平はヒロをここに誘った。

「修ちゃん、おねがい。」

 ヒロは少し照れた笑顔で修平にお願いすると、修平はヒロの体をギュッと抱きしめた。朝ヒロからお願いされた、誕生日プレゼントだ。

 抱きしめると、小柄であっても筋肉質な体が、改めてヒロが男であることを再認識させる。

「頭も撫でて。」

 ヒロが小声で、お願いの追加をしてきた。まあ、ここまで来たら頭をなでるぐらい断る理由もないので、ヒロの頭をなでた。その直後修平の太ももに、何か硬いものが触れている感触がした。

「ヒロ、今俺の太ももにあたっているのって?」

「修ちゃんにもついているものだよ。ごめん、興奮しちゃって。」

 こんなにかわいいのにヒロはやっぱり男なんだなと思っていると、階段の下に人がいる気配を感じだ。視線をそちらの方にやると、慌てて誰かが隠れているのがわかった。

 まずい、ヒロと抱き合っているのが誰かに見られたと思ったが、ヒロは顔を修平の体にうずめているので、ヒロであることは分からないだろう。たまに、学校でいちゃつくカップルもいるので、同じように思ってくれると楽観的に考えることにした。

 数分間抱きしめた後、

「修ちゃんもういいよ。ありがとう。」

 修平がヒロの体から離れると、ヒロは光悦の笑顔だった。教室に戻ろうと階段を降りると、

「修ちゃん、先に行ってて。ちょっとトイレに寄ってから、教室戻るね。」

 ヒロはそういって、股間の部分を不自然に押さえながらトイレに向かっていった。


 

 

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