65日目 水族館デート
6月12日、修平はヒロと美織と待ち合わせしている駅に向かっていた。昨日の県大会は、団体、個人ともにあっさりと1回戦で負け、2日目に勝ち進むことができず2日目の今日は完全オフとなった。
そこで美織が約束のデートに行きたいと言い出したので、ヒロを誘ってみたところヒロも二つ返事でOKしたので、3人で遊びに行くことになり、行先は美織のリクエストで水族館となった。
約束の10分前に待ち合わせの駅に着くと、黒のキャミソールワンピースを着たヒロはすでに待っていた。
「ヒロ、おはよ。早いね。」
「修ちゃんとデートできるって思ったら、家にいても落ち着かないから早く来ちゃった。」
遠足の日の小学生のような、期待に満ちた表情でヒロが答えた。ヒロといつものように、漫画の話題で話しながら美織の来るのを待った。
約束より5分遅れて、美織がやってきた。オフショルダーのトップスに、ミニスカートと少し露出が多めで目のやり場に困る。
「お待たせ。ごめん、ちょっと遅れちゃった。小島さんの服、カワイイ。」
「ありがと。坂下さんの服もかわいいよ。」
ヒロと美織がお互いの服を褒めあっている。
「美織、5分遅刻だよ。」
修平が美織に遅刻したことを注意すると、
「女の子は準備に時間がかかるの。それに、デートで女の子がきたら、服装とか髪型とか、普段と違うところ見つけて褒めるんだよ。小島さんも、大森君から何か言われた?」
「何も言われてないけど、そんな粗雑なところも含めて修ちゃんの事好きだよ。」
「ほら大森君、ちゃんと小島さんの服見ないと。」
美織に促された修平は、
「ヒロ、今日の服かわいいよ。」
早速ほめてみたが、美織は渋い表情をくずさなかった。
「そんなんじゃなくて、トップスの袖口のフリルがかわいいね、とか後ろのレースアップが良いねとかあるでしょ。」
再び美織からダメ出しを食らってしまった。
水族館行きのバスに乗り、2列シートの座席にヒロと美織が座り、その後ろに修平が一人で座った。一人になった修平は、やることもなくスマホを見ていたが、ふと前の二人をみると、会話が盛り上がっており、いつの間にかお互いの呼び名も「ヒロちゃん」と「美織ちゃん」になっていた。
水族館に入り、まずはこの水族館の水泥湖の一つであるパノラマ回遊水槽に向かうことにした。向かっている途中、ふと気づくと美織とヒロが手をつないでいた。いぶかしく見ている修平に気づいたのか、美織が、
「女の子同士、手ぐらいつなぐよ。ね~、ヒロちゃん。」
「そうだよね。」
二人はそのまま手をつないだまま、水族館の展示を見て回った。美織は女の子同士といったが、実際ヒロは男だ。仲良くなりすぎて、男女の関係になってしまったらと想像してしまうと、ちょっと不安になってしまう。
イルカショーが始まるアナウンスがあったので、イルカショーの会場へと向かっている途中、
「ごめん、お手洗い行ってくるから先に行ってて。」
美織はトイレへと去っていった。ヒロと二人になったところで、
「修ちゃん、ごめん。バスに乗っているとき美織ちゃんが、『二人が仲良くしてると修ちゃんが焦ってくれるかな?』っていって、ちょっと悪戯しちゃった。」
「そうだったんだ。」
「修ちゃんは、どう?ちょっと焦った?」
ヒロが悪戯っぽく尋ねてきた。
「ちょっとね。ヒロと美織が付き合ったらどうしようと思ってた。」
「私は修ちゃん一筋だから大丈夫だよ。」
そう言ってヒロが修平の腕にしがみついてきたところで、トイレを終えた美織がや戻ってきた。
「その感じは、ヒロちゃん、ばらしちゃった?」
「ごめん、不安そうな顔してたから、可哀そうになっちゃって。せっかくのデートだし、楽しい方がいいかなと思って、ばらしちゃった。」
美織が悪戯が成功した子供のような表情をみせた。修平は何か言いたかったが、言うと不安になっていたことがバレるので、言えずに苦笑いするだけが精一杯だった。
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