58日目 ヒロへのプレゼント

 6月5日、個人戦の2日目が行われたが、2日目に残った山下と美織は早々と敗退して午前中には終わってしまった。

 会場の片付けのある1年生を残して、解散となった。

「大森君、この後どうする?みんなカラオケに行くらしいけど、大森君行かないなら一緒にデートでもいいよ。」

 美織が嬉しそうな顔で尋ねてきた。

「いや、今週ヒロの誕生日だからプレゼントでも探しに行こうかなと思っていたけど。」

「じゃ、一緒に買いに行こ。そこのショッピングモールでしょ、そこでお昼食べてプレゼント探そうよ。」

「いや、一人で行くよ。」

 修平は断ったものの、

「大森君、何のプレゼントがいいか考えてないでしょ。女性目線で選んであげる。」

 結局、美織に押し切られて一緒に買い物行くことになった。


 ショッピングモールに着いた二人は、まずは腹ごしらえのためにモール内にあるハンバーガショップに入り、お昼ご飯を食べることにした。

「思ったけど、今のヒロには男向けと、女子向け、どっちのプレゼントが喜ぶのかな?女の子の格好してるけど、男の部分も残っているし、どっちかな?」

 修平がハンバーガを食べながら、美織に聞いた。

「それは、女の子じゃないの?修ちゃんのために、女の子になろうとしているなら、女の子として扱った方が喜ばれると思うよ。」

「ところで、美織は俺がヒロと仲良くするのをみて何も思わないの?」

「それって、嫉妬とかやきもち焼いてほしいってこと?焼いてほしいなら焼いてもいいよ。束縛すると逆に自分も縛られるような感じがして、束縛するのってあんまり好きじゃないんだ。」

 美織は修平のタイプではないとはいえ、女子は女子。男のヒロには勝てると思っているみたいで、束縛して嫌われるよりは懐の広い余裕をみせているみたいだ。


「大森君、ポテトいる?」

 セットでポテトを付けるぐらいなら、ハンバーガーをもう一つ食べたい修平に、美織がポテトを勧めてきた。

「くれるならもらうけど。」

 嬉しかったけど、できるだけ素っ気なく答えた。

「じゃ、どうぞ。」

 美織はポテトを1本とると、修平に近づけてきた。それを修平が口に入れた。美織が嬉しそうにしていた。


 お昼ご飯を食べ終わった後、モール内を歩きながらヒロへのプレゼントを探し始めた。

「大森君、私と一緒に来てなければ何をあげるつもりだったの?」

「漫画かお菓子かな?ヒロだったら、何でも喜びそうだし。」

 美織は頭を抱えながら、

「大森君、女心をわかってないね。もう少し、記念になるものというか、見るたびに彼氏のことを思いだすようなものの方がいいよ。」

「そんなもんなんだ。」

 美織からダメ出しをくらったところで、雑貨屋さんがあったので入ってプレゼントを物色し始めた。

「これはどうかな?」

 修平はぬいぐるみを手に、美織に聞いてみたが、

「女の子だから、ぬいぐるみが好きって短絡すぎ。それに好みの問題もあるものは、避けておいた方がいいよ。」

 改めてプレゼント選びの難しさを知った。


 結局モール内を1周して、シャーペンにすることにした。修平も同じものを買うことになった。美織曰く、「これだと授業中も使えるし、彼氏と同じものを持っていると連帯感がでていいと思うよ。」とのことだった。

「美織、買い物付き合ってもらって、ありがとうね。」

 修平は帰り際に美織にお礼を言った。

「私の誕生日、7月7日七夕の日だから。食べ物とシャーペン以外でお願いね。」

 そう言い残して、美織は去っていった。

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