46日目 テストの点数
5月24日の昼休み、修平はヒロを学食に誘った。券売機にお金をいれた。
「さあ、ヒロ好きなのを選べ。」
「修ちゃん、ありがとう。それじゃ、遠慮なくかつ丼頂くね。」
ヒロはこの前と同じかつ丼を選び、修平はカレーとコロッケにした。それぞれ注文したものを受け取り、混雑する学食の中をこぼさないように慎重にテーブルに運んだ。
「いただきます。修ちゃん、ありがとうね。お弁当のことは気にしなくて良かったのに。」
「弁当の件もあるけど、ヒロが教えてくれたおかげで、古文のテストの点数良かった。それで、そのお礼だよ。」
「何点だったの?」
「43点。赤点じゃなかったの、久しぶり。ヒロが教えてくれたおかげだよ。」
今日の2時間目、古文の授業で先週の中間テストがかえってきた。修平は赤点回避の43点だった。テスト前にヒロに教えてもらった係り結びの問題が、いくつか出てくれたので赤点を回避することができた。
ヒロはせっかく教えたのに43点という点数に少し不満気だが、赤点回避が目標だった修平にとっては大満足だ。
「とりあえず、赤点じゃなくてよかったね。ところで今週末、修ちゃん大会だね。午前中は練習があるから、午後から応援に行くね。」
「無理に来なくてもいいから。」
「行くよ。カッコイイところ見せてね。」
ヒロと一緒に片桐さんもきてくれることの期待しながらも、負ける無様な姿を見られるかもしれない不安もあり、応援に来てほしいような来てほしくないような、複雑な気持ちだった。
夕方部活に行くと、部室はにぎやかに盛り上がっていた。今週末のインターハイ予選の抽選会を終え、キャプテンが持って帰ってきたトーナメント表を見ながら、みんなで対戦相手を確認しているところだった。
「キャプテン、くじ運いいですね。」
修平は、対戦相手を確認した後、キャプテンに話しかけた。
「運は使い果たした。試合でラッキーなことはないな。」
3回戦まで勝てば県大会にいけるが、1、2回戦は弱いところにあたり、3回戦でも強豪校とは当たらない組み合わせに、県大会への希望が膨らむ。
盛り上がっている男子とは対照的に、女子の方は1回戦に勝っても2回戦で強いところと当たる組み合わせとなり落ち込んでいた。
練習の休憩中、熱気のこもる体育館から抜け出した修平は同じように体育館の日陰で休んでいた美織を見つけた。他に誰もいないのを確認して、スポーツドリンクのペットボトルを美織に差し出す。
「美織、飲む?」
「ありがとう。奢り?珍しいね。」
美織は嬉しそうに受け取り、早速ふたを開け、ドリンクを飲み始めた。
「美織のおかげで、数学赤点じゃなかったから、そのお礼。」
「へぇ~、何点だったの?」
「51点。初めて50点超えたよ。」
点数を告げた途端、昼休みの時のヒロと同様にあきれた表情になった。
「あ~、どうしてこんなバカを好きになってしまったのかな。」
なぜか赤点じゃないのに、ヒロも美織も喜んでくれない。
「彼氏がバカだと恥ずかしいから、これから毎週土曜日練習終わったら、一緒に勉強しよう。」
「まだ付き合ってないから。」
修平が反論すると、
「今後、付き合うことになったとしてよ。それに、成績悪いよりはいい方が大森君にとってもいいことでしょ。」
そこまで言われると反論ができずに、修平は美織の提案を受け入れることにした。
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