44日目 ヒロとのデート
5月22日、いつもは部活は休みの日曜日だが、大会前ということで特別に行われた日曜日の練習を終えると、修平はヒロとのデートの約束のため、昨日と同じショッピングモールに移動した。
バス停をおり待ち合わせの入り口につくと、ヒロはすでに待っており、修平の姿を見つけると手を振ってくれた。
「ごめん、待たせたね。」
「いいよ。修ちゃん部活だったんでしょ。お疲れ。」
ヒロは、ピンクのかわいいワンピースを着ていた。ようやく制服姿のヒロには慣れてきたが、私服の姿は初めて見たのでドキドキしてしまう。ヒロが男だと忘れて惚れてしまいそうになる。
「どう、修ちゃんかわいい?」
修平がヒロの姿に見惚れていることに気づいたのか、ヒロが聞いてきた。
「かわいいよ。」
「そうでしょ。修ちゃんの好みかなと思って、これにしたの。」
去年ヒロがまだ男のころ、理想の彼女のファッションについて語り合ったことがあったが、それで自分の好みがリサーチされているとは思ってもみなかった。
デートの約束はしたものの、特になるをするとは決めてなかったので、ヒロに何がしたいと聞くと、
「プリクラ撮りたいから、ゲームコーナーに行こう。」
昨日の美織と同じ展開となってしまった。ゲームコーナーに向かいながら、嬉しそうにしているヒロに話しかけた。
「ヒロ、産まれてくる性別間違えたんじゃないか?」
「私もそう思うよ。肩幅とか骨盤とかの違いで着れる服選ぶのも大変だし、女の子に生まれていたら修ちゃんと付き合えたし。」
ヒロが少し落ち込んだ表情になった。
「やっぱりヒロが女の子だったら、ゲームや漫画の話題で盛り上がることもなかったから、男でよかったと思うよ。」
「ありがとう。そうだよね、女の子に生まれていたら、修ちゃんと仲良くなることなかったかもね。」
ヒロに笑顔がもどった。やっぱりヒロは笑っていた方がいい。
「ヒロは、プリクラ修正しないんだな。」
「あんまり修正すると、自分が自分じゃなくなるみたいだから好きじゃないんだ。それとも、修正してかわいい彼女ってみんなに見せたかったの?」
「そんな訳じゃないけど…」
修平は言葉を濁しながら、プリクラを財布の中に入れた。
その後、ゲームコーナーでヒロと一緒に遊んだ。ヒロがかわいいワンピースを着ている以外は、今までと同じだ。
実際は男二人で遊んでいるだけだが、周りからみればカップルで仲良くゲーセンでデートしている様に見えているのだろう。
ヒロがもし女の子だったらデートでゲーセンにはきていないだろうから、やっぱりヒロは男で良かったのか?
ひとしきり遊んだところで、修平はトイレに行きたくなってきた。
「ヒロ、ちょっとトイレ行ってくる。」
「私も行く。」
ヒロが学校と同じようにトイレについてきた。学校では、男子トイレに女子制服を着たヒロが入ってくることにはみんな慣れたが、今日は不特定多数の人がいるショッピングモールだ。
「ヒロ、トイレはどうするの?」
「多目的トイレ使うから大丈夫だよ。最近は、だいたい多目的トイレあるから助かる。」
「ないときはどうしてるの?」
「基本我慢してるけど、この前吹奏楽部でファミレス行ったときは、男子トイレしかなかったから男子トイレでしたよ。入ったら中に人がいて、びっくりされた。」
男にうまれて女の子で生きていくヒロの苦労に、修平は少し同情した。
「はい、これ奢りだから。」
「ありがとう。修ちゃん優しいね。」
修平のために苦労しながらも女の子になったヒロに、せめてものお返しにとジュースを奢ることにした。
「ごめんな、ヒロ。俺のために女の子になってくれたのに、まだ態度決めきれずにいて。」
「修ちゃん、気にしなくていいよ。女の子になるって決めたのは私だから。こうやって、修ちゃんとデートできて楽しいよ。」
そう言いながら、ヒロは肩を寄せ合ってきた。幸せそうなヒロの笑顔をみて、修平も嬉しい気持ちになってきた。
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