43日目 美織とのデート
5月21日、テスト明けの土曜日の練習の終え、卓球台を片付けているとき、
「大森君、ショッピングモールに3時にね。」
美織がみんなに聞こえないように小声で話しかけてきた。
「このあと、一緒に行くかと思った。」
「女の子は、いろいろ準備があるの。」
卓球台を倉庫にかたづけ終わると、ちょっとテンション高めで嬉しそうな美織は部室に向かって走っていた。
3時まで時間を持て余すかと思ったら、先輩の居残り練習に付き合っていたら、ギリギリの時間になってしまった。
学校からバスに乗り、待ち合わせのショッピングモール入り口に着くと、私服姿の美織はすでに待っていた。学校から自宅に戻りわざわざ着替えてきたみたいだ。
「大森君、遅いよ。普通男の方が早くきておいて、女の子がくるのを待ってものじゃないの?」
「悪い、部室で漫画読んでたら、先輩が居残り練習するから付き合えって言われて、今まで練習していた。」
「それじゃ、仕方ないね。」
美織を怒らせずに済んだことに修平はほっとした。
「じゃ、中に入ろうか。」
先に進む美織の足が見える。いつも部活の時に見ている美織の足も、淡い水色のショートパンツを履いていると妙に色っぽく感じてしまう。
プリクラを撮りたいという美織の希望で、モール内にあるゲームセンターに向かった。そこに向かいながら黙っておくのも悪い気がして、修平は話しかけた。
「来週はいよいよ大会だね。」
「せっかく、二人きりでデートしてるんだから、部活の話はやめようよ。」
いままで部活の仲間としか思っていなかった美織と共通の話題がみつからない、修平はひとまず今日の私服を褒めることにした。
「坂下さんの私服初めて見たけど、なんか新鮮でかわいく見える。」
「ありがとう。でも、『かわいく見える』よりも『かわいい』って言ってもらった方が嬉しかったかな。」
「ごめん、坂下さんをかわいいと思う対象に見たことなかったから。」
「ひどい、女の子に言う台詞じゃないよ。」
お互い言いたいことを、遠慮なく言い合う。なんとなく楽しくなってきた。
ゲームコーナーに着いたところで、プリクラを一緒に撮った。
「坂下さん、修正しすぎ。原形とどめてないじゃん。」
「彼女のかわいい写真持っておきたいでしょ。それに、そろそろ『坂下さん』って辞めてよ。下の名前で呼んで。」
「まだ彼女じゃないし。」
「細かいことはいいから。次はエアホッケーやりに行こう。負けたらアイス奢って。」
そういって美織は修平の手をとり、エアホッケーのある方へ向かっていった。
エアホッケーでは修平が負け、美織にアイスを奢ることになった。アイスを食べながら、修平は気になっていたことを聞いた。
「美織、俺のどこがよかったの?ほかにもかっこいい男子いるし、卓球が強いなら山下の方が強いし。」
「自分が背伸びして付き合っても楽しくないかなと思って。大森君とならお互い楽しく、友達の延長線上で付き合っていけそうだったから。」
たしかに今日の美織とのデートは、デートと言うより男友達とゲーセンに来たような感覚で気を遣わず楽しかった。
「こんな感じで付き合っていけたらいいから。また遊びに行こう。」
「まあいいけど。」
修平が思っていたデートとは違い、デートっぽくはなかったが楽しかったのは事実だ。美織にこんなデートもあることを教えてもらった。
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