36日目 美織と勉強
5月14日土曜日、修平は部活の練習を終え、美織に数学を教えてもらう前に昼ご飯を食べようと、体育館裏の日陰のところでコンビニで買ってきたパンを取り出し食べようとしていた。
「私も一緒に食べてもいい?」
修平が答える前に、コンビニ袋を抱えた美織が修平の隣に座った。修平も断る理由もないので、一緒に食べることにした。修平は焼きそばパンにかぶりつき、運動後のダブル炭水化物のおいしさに満足していると、
「大森君って、好きな人いるの?」
美織が突然聞いてきたので、修平はパンがのどに詰まりむせてしまった。修平がペットボトルの水を飲んで落ち着いたところで、
「突然で驚いた。」
「ごめん。あのあとなかなか二人きりになれなかったから、どうしても聞きたくて。普通女子から告白受けたら、男子ってすぐに受け入れない?小島君とは友達って言ってたから、他に好きな人でもいるのかなと思って。大森君って、意外と一途なんだね。」
小島は男だし、片桐さんは好きというより憧れの存在だし、美織の告白に即答しなかったのは、単なる優柔不断なだけだ。
「好きな人がいる訳じゃないけど、正直美織のことを今まで同じ卓球部員としてか見ていなかったから、いきなり告白されて戸惑っている感じかな。好きでもないのに、付き合うのも無責任かなと思って。」
「じゃ、友達以上恋人未満ってことでスタートして、少しずつ好きになってもらったらいいから。大森君に好きな人ができたら、すぐに身を引くから言ってね。」
修平はどこかで聞いた話だなと思いながら、そこまで譲歩してもらって断るのも悪いので、
「わかった、美織がそれでいいならそれでいいよ。」
昼ご飯を食べ終わり、美織に数学を教えてもらうために自習室に移動した。自習室の机に二人並んで座った。
「美織、なんか距離近くない?」
「友達以上なんだから、いいでしょ。それにこっちの方が教えやすいし。」
これもどこかで聞いた気がする。
「それで、どこからわからないの?」
「どこからって、全部。ベクトルが何なのかわからない。向きがあるのは分かるけど、図形かと思ったら計算もあるし、何なの?」
「図形と数の中間かな?深く考えずに、公式に当てはめていけば赤点は回避できるから、やっていこ。」
「この問題どうやって解くの?」
修平は基本例題のプリントの問題を指差しながら言った。
「この問題は、この公式を使えばいいよ。」
美織は修平のプリントに書き込み始めた。近づいてきた、美織の肩と修平の肩が触れ合った。ちょっとドキドキしてしまう。
「なるほど、『平行』って問題文に書いてあったら、この公式を使えばいいんだ。」
「まあ、中間テストぐらいだったらそんな感じで覚えておいてもいいよ。」
問題を解き終わったところで、美織が離れていった。修平は名残惜しい気持ちになってしまった。
その後も例題の解き方を美織に教えてもらい、少しずつ理解ができるようになってきた。
「あとは、家でもう1回自分で解いてみて。なんとなく分かったじゃ、本番では解けないから、解けるまで何回もやってみて。」
「ありがとう。明日から部活休みだから、やってみるよ。」
「来週の土曜、練習終わったらデートしよ。」
「デートって、付き合ってないだろ。」
「友達同士で遊びに行く感覚でいいよ。テストも終わったし、いいでしょ。」
熱心に教えてもらったこともあり、断り切れずに修平は約束してしまった。
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