22日目 漫画

 4月30日土曜日、午前中の部活の練習を終え、制服に着替えて帰ろうとしていた時、修平は美織から声をかけられた。

「大森君、お昼みんなで食べに行かない?」

「坂下さん、ごめん、ちょっと用事があるんだ。」

 修平はちょっと寂し気な美織を残して、足早に学校を出て駅前のハンバーガーショップへと向かい始めた。今日の昼ご飯は、同じく部活終わりのヒロたちと一緒に食べる約束をしていた。


 お店に入ると、すでにヒロ、片桐さん、村上さんはきており、食べ始めていた。ヒロが手を振ってくれた。

「遅れてごめん、ちょっと注文してくるね。」

 数分後、修平は注文したハンバーガーセットを受け取り、この前と同じようにヒロの向かいの席に座った。

「部活が長引いてごめん。」

「こちらこそ、先に食べ始めててごめんね。」

 ヒロは謝ったが、逆に待っててもらう方が恐縮するので食べてもらっていた方が気が楽だ。

「で、どうなった。どのモンスター倒しにいくの?」

 修平はハンバーガーを一口食べると、ヒロに聞いた。今日の目的は、この前と同様に明日みんなで遊ぶモンバトで、どのモンスターを倒すかの作戦会議だった。

「片桐さんが、『ジャック・オウ・ランターン』を倒したいって。一人で倒すのは難しいから、4人集まるならそれがいいって。」

 『ジャック オウ ランターン』はかぼちゃのお化けで、魔法攻撃と手下のコウモリによるコンビネーションの攻撃が厄介な敵だ。さすがの片桐さんでも一人では倒せないようだ。

「そうしようか。」

 修平が提案に同意したところで、村下さんが話し始めた。

「この前一緒にやっておもったけど、ヒロちゃんと大森君って息ピッタリよね。大森君がヒロちゃんを守って、大森君がダメージ受けたらヒロちゃんが助けて、良いコンビって感じ。」

「ずっとやってるからね。」

「それだけじゃないよね。もともと相性がいいのよ。」

 片桐さんまで、ヒロと修平の仲をひやかしてきた。ヒロをみると、相性がいいって言われたことに照れながらもうれしそうにしていた。その様子を見て、否定する気にもなれず、修平は話題を変えることにした。


「ヒロ、この前貸した漫画の続き持ってきたよ。読む?」

 修平は最近読み始めて面白いと思った漫画をヒロに貸していた。20年以上の漫画だが、最近実写化されたので興味をもち読み始めたら面白かったので、古本屋をめぐりながら全巻集めているところだ。

「修ちゃん、私も借りていたのを返そうと思ってもってきたよ。面白いね。続きも貸して。」

 修平とヒロがそれぞれ鞄から漫画を取り出し机の上に置いた。村上さんがその漫画をみて

「その漫画、弟も読んでいて、私も読んだけど面白いよね。」

 しばし村上さんと漫画の話題で盛り上がっていたら、

「どんな話?」

片桐さんも漫画に興味示してきた。

「幕末の維新志士の話で男子向けだけど、女子が読んでも面白いよ。」

「面白そう。大森君、私も借りていい?」

 ヒロから帰ってきた漫画をそのまま片桐さんに貸すことになった。自分が面白いと思ったことに、片桐さんが興味を示してくれたことが嬉しかった。

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