15日目 お勉強
4月23日土曜日、午前中に卓球部の練習を終え部室で着替えたあと、ヒロと勉強するために自習室に向かった。
修平は自習室に入ると、ヒロがすでに待っていて、修平を見つけると笑顔で手を振った。
「お疲れ、お昼食べた?」
「いや、まだ。って言うか、昼ご飯いること忘れて買ってない。」
いつもは午前中に部活を終えて、家にもどってから昼ご飯を食べているので、土曜日に昼ごはんの準備をするのを忘れていた。
「じゃ、これ食べる。おなかすいていると頭に入らないでしょ。」
ヒロは鞄からエナジーバーを取り出し、修平に渡した。
「ありがとう。」
修平はヒロからもらったエナジーバーをほおばった。頬張りながら、ヒロがエナジーバーを食べるところを見たことがないことに気づき、多分部活終わりでお腹を空かした修平のために準備していたと思うと、ヒロの優しさが身に染みた。
エナジーバーでおなかも満たされたところで、勉強を始めた。英語の例文が30個載ってあるプリントを取り出す。小テストはこの例文から出ることになっている。
「ヒロ、どうやって30個も例文暗記するの?何かコツがあるの?」
「別に暗記しなくてもいいでしょ。」
ヒロは当然のように言った。
「暗記しなくて、どうするの?」
「例えばこの例文、『It is fun for children to play soccer with friends.』だと、It is + 形容詞 + for人+ to不定詞ってことだけ覚えておけばいいから。」
「どういう意味?」
「人の前にはforがくるってこと。テストの問題も大体そんな感じで、例文丸ごと書くのはなくて、虫食いのところを埋めていく問題でしょ。」
「そうだったのか。いままで全部丸暗記で答えていたよ。だから応用が利かなくて、テストの点が悪かったのか。」
「ひょっとして、他の科目も?」
「そうだけど。だから地理とか世界史は得意だよ。」
修平は高校に入って、勉強についていけなくなった原因がわかった。中学までは、丸暗記でどうにかなったので高校にも合格できたが、高校に入ると丸暗記では対応できない理由がわかってきた。
「ヒロ、ありがとう。」
修平は思わずヒロの手をとって、お礼を言った。ヒロの顔が、照れくさそうに顔をそむけた。
そのあとも、それぞれの例文のポイントをヒロに教えてもらう。
「構文で大事なところ、蛍光ペンでマーカーしておくね。」
「ありがとう。」
ヒロは蛍光ペンをもって修平のプリントにマーカーを始めた。自然と距離が縮まり、ヒロと肩が触れ合った。
男同士で密着すると嫌な気になるが、同じ男なのに、ヒロだととくに嫌な気持ちにならない。また、時々ヒロが髪を耳にかける仕草にドキッとしてしまう自分がいる。ヒロのことを女の子として見始めている自分に気づいた。
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