14日目 連れション
「これで授業終わりますが、来週月曜日に小テストをします。みんなしっかりと勉強してきてください。」
4月15日、金曜日の4時間目の英語の授業が終わった。全体的に成績の悪い修平であったが、英語はとくに成績が悪い。
修平は来週の小テストがあることで、気分が沈んでしまった。気分を切り替えるためにも、次の授業が始まる前に修平はトイレに行こうと思い教室を出た。
「修ちゃん、トイレ?なら一緒に行こう。」
ヒロがトイレについてきた。女の子になって最初のうちは恥ずかしがって、一人で1階にある多目的トイレに行っていたが、最近は慣れたのか普通に男子トイレに一緒に行くようになった。
モンバトで次はどのモンスターに倒しに行こうかを話していながら、廊下を一緒に並んであるいてトイレに行く。最初のうちは、ヒロと一緒に行くのがみんなに見られているようで恥ずかしかったが、登下校もずっと一緒なので気にならなくなった。
男子トイレに入るとすでに数名いたが、ヒロは気にせず入っていく。さすがにスカートで立ちションはしないので、個室の扉をあけて入っていた。
最初のうちは他の男子生徒は驚いていたが、ヒロのことが学年中に知れ渡るとだれも驚かなくなった。
「またせて、ごめん。」
修平から遅れてトイレから出てきたヒロが申し訳なさそうに謝った。普段の仕草も女の子っぽいし、顔もかわいい女の子なので忘れてしまいそうだが、こんな時ヒロは男だと再認識してしまう。
「スカートだと立ちションはできないから、仕方ないよ。」
「ありがとう。そんな優しい修ちゃんが好きだよ。」
ヒロが腕を組んできた。
その日の帰り道、修平は帰りながら気になっていたことをヒロに聞いてみた。
「ヒロ、女の子になるのに家族の反対はなかったの?」
「うん、むしろお母さんはもともと女の子が欲しかったみたいで、ノリノリで応援してくれたよ。」
「お父さんの方は?」
「お父さんも、娘ができたって喜んでいる。」
「ヒロって、もともと女の子になりたかったの?」
「ちがうよ。修ちゃんが好きだから女の子になってるだけ。修ちゃんが男のままの私が好きだって言ったら、いつでも戻るよ。」
「いや、かわいいから女の子のままの方がいい。」
ヒロが男に戻ったとしても、同じような距離感で接してくるはずだ。なら、かわいい女の子の方がまだいい。
「ところで、修ちゃん来週小テスト大丈夫?」
「大丈夫じゃないけど、例文暗記すればいいだけなら、頑張って暗記してみる。」
小テストといえどもその成績がよければ、定期テストで赤点になった時の救済処置があるので、範囲の広い定期テストよりは、出るところがわかっている小テストの方が修平にとっては大事だ。
「ただの丸暗記だと忘れるから、ちゃんと意味を覚えた方がいいよ。」
「意味って?」
「受動態とか、現在進行形とか、英文法の規則を理解したらいいよ。」
「それがわからないから、いつも丸暗記してる。」
「修ちゃん、明日も部活午前中だけ?」
「そうだけど。」
「じゃ、午後から一緒に勉強しよう。」
ヒロの好意を無視するわけにもいかず、実際このままだとテストに苦戦しそうなので、その行為に甘えることにした。
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