1日目 告白
翌4月9日、土曜日で学校は休みだが、修平は卓球部の練習のため学校にきていた。午前中の練習を終えたところで帰ろうとしたところ、
「大森君、ちょっと時間ある?」
片桐さんが話しかけてきた。片桐さんも吹奏楽部の練習で学校にいたみたいだ。
「時間あるけど、何か用ですか?」
片桐さんに話しかけられるなんて初めてのことで、緊張してしまい思わず敬語になってしまった。
「ちょっとこっちにきて。」
片桐さんと一緒ならどこでも行くよと思いながら、連れらるままに体育館裏にたどり着いた。
「ヒロちゃん、お待たせ。連れてきたよ。あとは頑張ってね。」
体育館裏ではヒロが待っていた。片桐さんは、ヒロに一声かけた後去っていった。ヒロも吹奏楽部の練習で学校にきていたみたいだ。
片桐さんと話せると思っていただけに、落胆した気持ちで、ヒロに話しかける。
「ヒロが呼んだの?」
「うん、ごめん。」
「で、何の用?」
修平はぶっきらぼうに聞いたが、ヒロは黙ったままだった。修平が痺れを切らして、何か言おうと思った時、緊張した声でヒロは話し始めた。
「修ちゃん、好きです。付き合ってください。」
突然の告白に、修平は動揺した。
「ちょっと待って、ヒロと俺とは男同士だよね。」
「そう、去年同じクラスになった時からずっと好きだったけど、修ちゃん男には興味なそうだから、女の子になったの。これなら付き合ってくれる?」
今振り返ると、男同士の割には距離感が近く、スキンシップも多めではあったが、まさか恋愛感情を持っていたとは気づかなかった。
「ごめん、」
さすがに男には興味はない、断ろうとしたときヒロの後ろに、おそらくヒロと同じ吹奏楽部だろうと思われる、女子数名が見守っている姿が見えた。その中に片桐さんもいた。
ここでヒロの告白を断ると、昨日みたいに片桐さんにも嫌われる、逆にヒロと付き合えば、同じ吹奏楽部つながりで片桐さんとも仲良くなれる、そんな打算が修平の脳裏に浮かんだ。
「急に言われても決められないから、まずは友達から始めよう。」
「友達からって、修ちゃんと私は友達じゃなかったの?今まで一緒に漫画を回し読みしたり、ゲームもいっぱいやったのに?」
まずい、ヒロがまた泣きそうになっている。ヒロは女じゃないけど、女の涙はずるい。
「じゃ、友達以上恋人未満の関係から始めよう。それでいい?」
修平の苦し紛れの提案に、ヒロが抱きついてきた。
「友達以上だから抱きついてもいいよね。」
「まあ、いいけど。」
男に抱き着かれたが、不思議と拒絶する気にはなれず、自分より身長が10センチ以上低いヒロの頭をなでてあげた。
抱き合った事で告白が成功したと思ったのか、後ろから吹奏楽部の女子たちが駆け寄ってきた。ヒロも修平から離れそちらの方に行った。
「ヒロちゃん、よかったね。」
「みんな応援してくれてありがとう。」
ヒロはみんなから祝福されている。まだ付き合うって決まったわけではないんだけどと修平は思ったが、ヒロが嬉しそうにしているのをみて、なんとなく自分も嬉しくなった。
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